だが、あの馬鹿令嬢四人は、王城に着いてから大問題をやらかした。
それは、大教会から王城についてからの事だった。
披露宴会場となる大部屋に着いたのだが、ここで私は王家と公爵家の面々と少しだけ離れた。
「申し訳ございません。お手洗いに行ってきます」
「うむ、気を付けていくのじゃ」
私は隣にいたマリア様に声をかけて、大部屋の側にあるお手洗いに向かった。
既に他の貴族も集まってきているし、特に問題はないだろうと軽く考えていた。
しかし、その考えは完全に失敗だった。
「ふう、やっぱり緊張……」
バシャ!
「きゃっ、えっ?」
トイレから出て手を洗っていたら、突然水をかけられたのです。
しかも、ドレスを濡らすこの色はもしかして赤ワイン?
ジャキッ、パラッ。
訳が分からないでいたら、今度は私が着ていたドレスの肩の部分を切られたのです。
肌がはだけない様に慌ててドレスを抑えると、ニヤニヤとしたあの四人の令嬢がお手洗いの入り口のところにいたのです。
一人の手には鋏が握られていたけど、よく見るとニース様に足をひっかけて転ばせた令嬢だった。
というか、私も緊張していたのもあったけど何でこの四人はこんな時に限って分け分からないステルス性能を発揮するのよ。
全く気配に気がつかず、私は内心悔しい思いをしていた。
すると、ニース様を転ばせた令嬢が私に鋏を突きつけながら鬼のような形相で叫んできた。
「何であんたが転ばないのよ! お陰でとんでもない恥をかいてしまったわ。その報いを受けてもらうわよ!」
「「「下人の虫けらは、大人しくくたばるがいいわ!」」」
シュッ、ガキン、ガキン。
鋏を握りしめた令嬢がまるで親の仇を取るような表情で、私に鋏を振り下ろしてきた。
しかし、こいつ等は碌な事をしないだろうという考えでいたので、ベラベラと喋っている内に魔法障壁を展開しておいた。
他の三人も私に鋏を振り下ろしてきたが、私の魔法障壁はこんな程度で壊れるような軟弱なものではない。
そして、令嬢の攻撃を防いでいる内に、私はある意味冷静になってしまった。
この四人を派手にぶっ飛ばしたいのだけど、それこそ披露宴でたくさんの貴族が集まり始めているところで大騒ぎになってしまう。
アーサー様とアメリアさんの披露宴への影響を最小限にしたいのだが、果たしてどうすれば良いのだろうか。
すると、ここでお手洗いに小さな救世主が現れた。
ぴょんぴょん。
「「「何でスライムがここに?」」」
スラちゃんが、ひょこひょことお手洗いに姿を現したのだ。
四人の令嬢は、突然現れたスライムに一瞬動きが止まった。
私は、四人の令嬢の動きが止まったその瞬間を見逃さなかった。
シュイン、シュッ。
「「「あっ! き、消えた?」」」
私は身体能力強化魔法を発動し、最大スピードでお手洗いから抜け出した。
スラちゃんも私と同じタイミングでお手洗いから抜け出したので、四人の令嬢はまるで私とスラちゃんが目の前から消えたように見えたらしい。
一瞬だけ、四人の令嬢があたふたする姿を視界の端に捉えることができた。
そして、お手洗いの前ではマリア様、フレイア様、そしてなんと陛下とルーカス様の姿もあったのだ。
あわわ、予想以上に大事になっているよ。
そして、ワインをかけられてドレスを切られた私のボロボロな姿でへたり込む私を見た四人は、一気に怒りが大爆発してしまった。
「不届き者を、いま直ぐ捕えてここに連れてくるのだ!」
「「「はっ」」」
顔を真っ赤にして激怒している陛下が、複数の近衛騎士に命令した。
そして、お手洗いは直ぐに大捕り物の部隊となってしまった。
「へ、陛下、それに皆様。ご、ご迷惑を……」
「リンは、何も迷惑をかけておらぬ。あの馬鹿四家に最後の情けをかけた余が愚かじゃった」
陛下は、私の謝罪の言葉を遮った。
私は魔法袋から大き目のタオルで体を覆い、生活魔法で体とドレスを綺麗にした。
しかし、髪型もメイクも崩れてしまっていて、タオルで体を覆いながら座り込む私の姿は思いのほか大きな影響を与えていて、周囲に複数の貴族が集まっていた。
そんな中、お手洗いから拘束された四人の令嬢が引きずり出されたのだが、驚く事が報告された。
「陛下、拘束完了いたしました。しかし、四人が激しく抵抗した為に複数の近衛騎士が負傷しております」
「何という事だ。これでは、ただの殺人未遂犯ではないか!」
近衛騎士の報告を聞いた陛下は、四人の令嬢をギロリと睨みつけながら思わず叫んでいた。
周りにいた貴族もざわざわと騒めいている中、複数の負傷した近衛騎士がお手洗いから運び出されてきた。
腕などを鋏で刺されていて結構な出血があり、またもや多くの貴族の動揺を誘っていた。
私は、直ぐに負傷した近衛騎士の元に歩み寄り、負傷箇所の治療を始めた。
「おい、俺を誰と思っている!」
「私は、伯爵夫人ざます! 不敬ざます!」
治療を行なっている私の横に、更に四人の家の者が近衛騎士によって引きずり出されてきた。
八人はギャーギャーと大騒ぎしていたが、後ろ手に拘束されている顔面蒼白な娘を見た瞬間ピタリと騒ぐのを止めた。
「貴様らの娘は、王家が直々に招待したリンに侮辱的な行動を取っただけでなく、あろうことか複数の近衛騎士に危害を加えた現行犯だ。そもそも、貴様らは空気の読めない服装をしてきただけでなく、孫のニースにも危害を加えた」
陛下が怒りの言葉を向けている間、近衛騎士が四家の夫妻をあっという間に拘束した。
今更になって、自分の娘がとんでもない事をやらかした事に気が付いたみたいだ。
「「「お、お許しくだ……」」」
「ならぬ!」
四家の全員がガタガタと震える中、何とか陛下に許しを乞おうとした。
しかし、陛下は直ぐに全員の言葉を遮った。
「「「全員を、王家の結婚式をぶち壊そうと企み、実際にニース、リン、近衛騎士に危害を加えた反逆罪で取り調べる。全員を重犯罪者用の牢屋にぶち込み、屋敷にも即時強制捜査に入るのだ!」
「「「はっ!」」」
四家の全員が、陛下の命を受けた近衛騎士によって連行されていった。
集まった貴族も、連行されていく四家の者に厳しい視線を向けていたのだった。
それは、大教会から王城についてからの事だった。
披露宴会場となる大部屋に着いたのだが、ここで私は王家と公爵家の面々と少しだけ離れた。
「申し訳ございません。お手洗いに行ってきます」
「うむ、気を付けていくのじゃ」
私は隣にいたマリア様に声をかけて、大部屋の側にあるお手洗いに向かった。
既に他の貴族も集まってきているし、特に問題はないだろうと軽く考えていた。
しかし、その考えは完全に失敗だった。
「ふう、やっぱり緊張……」
バシャ!
「きゃっ、えっ?」
トイレから出て手を洗っていたら、突然水をかけられたのです。
しかも、ドレスを濡らすこの色はもしかして赤ワイン?
ジャキッ、パラッ。
訳が分からないでいたら、今度は私が着ていたドレスの肩の部分を切られたのです。
肌がはだけない様に慌ててドレスを抑えると、ニヤニヤとしたあの四人の令嬢がお手洗いの入り口のところにいたのです。
一人の手には鋏が握られていたけど、よく見るとニース様に足をひっかけて転ばせた令嬢だった。
というか、私も緊張していたのもあったけど何でこの四人はこんな時に限って分け分からないステルス性能を発揮するのよ。
全く気配に気がつかず、私は内心悔しい思いをしていた。
すると、ニース様を転ばせた令嬢が私に鋏を突きつけながら鬼のような形相で叫んできた。
「何であんたが転ばないのよ! お陰でとんでもない恥をかいてしまったわ。その報いを受けてもらうわよ!」
「「「下人の虫けらは、大人しくくたばるがいいわ!」」」
シュッ、ガキン、ガキン。
鋏を握りしめた令嬢がまるで親の仇を取るような表情で、私に鋏を振り下ろしてきた。
しかし、こいつ等は碌な事をしないだろうという考えでいたので、ベラベラと喋っている内に魔法障壁を展開しておいた。
他の三人も私に鋏を振り下ろしてきたが、私の魔法障壁はこんな程度で壊れるような軟弱なものではない。
そして、令嬢の攻撃を防いでいる内に、私はある意味冷静になってしまった。
この四人を派手にぶっ飛ばしたいのだけど、それこそ披露宴でたくさんの貴族が集まり始めているところで大騒ぎになってしまう。
アーサー様とアメリアさんの披露宴への影響を最小限にしたいのだが、果たしてどうすれば良いのだろうか。
すると、ここでお手洗いに小さな救世主が現れた。
ぴょんぴょん。
「「「何でスライムがここに?」」」
スラちゃんが、ひょこひょことお手洗いに姿を現したのだ。
四人の令嬢は、突然現れたスライムに一瞬動きが止まった。
私は、四人の令嬢の動きが止まったその瞬間を見逃さなかった。
シュイン、シュッ。
「「「あっ! き、消えた?」」」
私は身体能力強化魔法を発動し、最大スピードでお手洗いから抜け出した。
スラちゃんも私と同じタイミングでお手洗いから抜け出したので、四人の令嬢はまるで私とスラちゃんが目の前から消えたように見えたらしい。
一瞬だけ、四人の令嬢があたふたする姿を視界の端に捉えることができた。
そして、お手洗いの前ではマリア様、フレイア様、そしてなんと陛下とルーカス様の姿もあったのだ。
あわわ、予想以上に大事になっているよ。
そして、ワインをかけられてドレスを切られた私のボロボロな姿でへたり込む私を見た四人は、一気に怒りが大爆発してしまった。
「不届き者を、いま直ぐ捕えてここに連れてくるのだ!」
「「「はっ」」」
顔を真っ赤にして激怒している陛下が、複数の近衛騎士に命令した。
そして、お手洗いは直ぐに大捕り物の部隊となってしまった。
「へ、陛下、それに皆様。ご、ご迷惑を……」
「リンは、何も迷惑をかけておらぬ。あの馬鹿四家に最後の情けをかけた余が愚かじゃった」
陛下は、私の謝罪の言葉を遮った。
私は魔法袋から大き目のタオルで体を覆い、生活魔法で体とドレスを綺麗にした。
しかし、髪型もメイクも崩れてしまっていて、タオルで体を覆いながら座り込む私の姿は思いのほか大きな影響を与えていて、周囲に複数の貴族が集まっていた。
そんな中、お手洗いから拘束された四人の令嬢が引きずり出されたのだが、驚く事が報告された。
「陛下、拘束完了いたしました。しかし、四人が激しく抵抗した為に複数の近衛騎士が負傷しております」
「何という事だ。これでは、ただの殺人未遂犯ではないか!」
近衛騎士の報告を聞いた陛下は、四人の令嬢をギロリと睨みつけながら思わず叫んでいた。
周りにいた貴族もざわざわと騒めいている中、複数の負傷した近衛騎士がお手洗いから運び出されてきた。
腕などを鋏で刺されていて結構な出血があり、またもや多くの貴族の動揺を誘っていた。
私は、直ぐに負傷した近衛騎士の元に歩み寄り、負傷箇所の治療を始めた。
「おい、俺を誰と思っている!」
「私は、伯爵夫人ざます! 不敬ざます!」
治療を行なっている私の横に、更に四人の家の者が近衛騎士によって引きずり出されてきた。
八人はギャーギャーと大騒ぎしていたが、後ろ手に拘束されている顔面蒼白な娘を見た瞬間ピタリと騒ぐのを止めた。
「貴様らの娘は、王家が直々に招待したリンに侮辱的な行動を取っただけでなく、あろうことか複数の近衛騎士に危害を加えた現行犯だ。そもそも、貴様らは空気の読めない服装をしてきただけでなく、孫のニースにも危害を加えた」
陛下が怒りの言葉を向けている間、近衛騎士が四家の夫妻をあっという間に拘束した。
今更になって、自分の娘がとんでもない事をやらかした事に気が付いたみたいだ。
「「「お、お許しくだ……」」」
「ならぬ!」
四家の全員がガタガタと震える中、何とか陛下に許しを乞おうとした。
しかし、陛下は直ぐに全員の言葉を遮った。
「「「全員を、王家の結婚式をぶち壊そうと企み、実際にニース、リン、近衛騎士に危害を加えた反逆罪で取り調べる。全員を重犯罪者用の牢屋にぶち込み、屋敷にも即時強制捜査に入るのだ!」
「「「はっ!」」」
四家の全員が、陛下の命を受けた近衛騎士によって連行されていった。
集まった貴族も、連行されていく四家の者に厳しい視線を向けていたのだった。


