アメリアさんは、結婚式の準備をしつつ時間が空いた時には積極的に大教会での奉仕活動を行っていた。
私達もアメリアさんが大教会で治療をする際には一緒にいる様にして、アメリアさんが暴漢に襲われないように注意していた。
というのも、アメリアさんがアーサー様と結婚する事は既に国中に広まっていて、アメリアさんにお祝いの言葉を伝えようと話しかけてくる人がかなりいたからだ。
なので、必ずシルバをアメリアさんの側につけて、アメリアさんの護衛役をさせていた。
シルバも、アメリアさんを守るぞと気合を入れて側にいた。
そんな中、私は治療を受けに来た冒険者にあることを聞いてみた。
「ああ、嬢ちゃんが『フェンリル連れの治癒師』って言われている件か? そんなの、もうとっくに冒険者の間じゃ有名な話だ」
「こんな特徴的なものを連れているんだ、直ぐにフェンリル連れの冒険者だって分かるだろう」
「それに、嬢ちゃんはいきなり軍や教会でデカい事をやったんだ。オークキングも倒した上にならず者を素手でぶん殴ったりしているから、嬢ちゃんを怒らせる事はできるだけしないようにしているぞ」
あの、そういう情報はできる限り教えてくれると助かります。
別に、私は余程の事がなければ怒りませんよ。
流石に、この前冒険者ギルド前で私に喧嘩を売ってきた馬鹿な貴族が現れた時にはガチギレしたけど。
その他に、冒険者はとんでもない事を言ってきた。
「嬢ちゃんが軍と一緒に害獣駆除に行く際に、いつも第三王子様と仲良く話しているって噂をしているぞ。あの第三王子様は、近くに女性を置かない事で有名だったからな」
「しかも、嬢ちゃんがオークキングを撃破して第三王子様を救ったんだろう? もしかしたら、冒険者が王子様の嫁に行くんじゃないかって噂になっているぞ」
「正妻は無理でも、側室くらいは十分にありえるだろう。嬢ちゃんは、既に勲章を貰っている訳だしな」
あの、その話は冒険者は皆知っているの?
知っている?
あっ、そうですか……
というか、町の人も私とルーカス様の事を知っていて、頑張るんだよと応援するおばちゃんも複数いた。
思わずアメリアさんの方を振り返ったけど、アメリアさんもこの話を知っていた。
「王子様と庶民の女性が恋に落ちるという、おとぎ話みたいな事が実際に起きています。なので、リンさんを応援したい人がたくさんいるのですよ。その、娯楽が少ないっていうのもありますが……」
「ウォン!」
シルバもアメリアさんと一緒になってそうだよと吠えていたけど、そもそもシルバはこの話を知らなかったでしょうが。
しかし、何とスラちゃんはおとぎ話みたいな話だということを知っていた。
私が混乱しない為に、敢えて言わなかったらしい。
スライムなのに、スラちゃんは本当に気遣いができます。
そんな事を話しながら、私はアメリアさんと治療を続けていった。
時折スラちゃんと炊き出しの仕込みをしつつ、平和に時間が過ぎていった。
かと思われた……
ザッ。
「貴方がリンね」
「えっ、はい。そうですけど……」
たまたまアメリアさんが不在のタイミングで、治療をしていた私の前に貴族令嬢と思わしき四人の女性が現れた。
如何にもって感じの綺麗なドレスを身にまとい、大きな宝石をあしらった豪華なアクセサリーを身に着けていた。
そして、四人の女性は私のことを見下すような視線で半ば睨んでいた。
「こんな貧乏人がルーカス様の相手だなんて、信じられませんわね」
「貧乏人には、貴族の世界から退場してもらう必要がありますわ」
「大教会で治療をしているのも、ルーカス様に媚びを売るために違いありませんわ」
「これだから、卑しい貧乏人は嫌いなのよ」
四人の令嬢はいきなり口々に私の事を非難してきたが、直ぐに発言の裏側を知った。
この四人の令嬢はルーカス様に輿入れする事を狙っているのに、当のルーカス様はこのご令嬢達に完全に塩対応。
そこにルーカス様と仲の良い私という庶民の存在が現れたので、貴族令嬢として我慢がならないのだろう。
うーん、貴族のプライドって本当に面倒くさいですね。
それに、この程度の脅しなんて全く怖くないので、私は思わずたははと苦笑してしまった。
「な、なんですのいきなり笑って。私達のことを馬鹿にしているのね」
「どうやら、痛い目に合わないと分からないようですわね」
貴族令嬢達は私の苦笑を馬鹿にされたと取ったみたいで、顔を真っ赤にしながら怒りだした。
面倒くさい相手だなと思った時、私の後方から鋭い声が大教会の中に響いた。
「貴方達、何をしているの! 自身がそんな態度を取っているからこそ、ルーカス様は全てを見抜いて貴方達を相手にしないよ」
「グルルルル……」
「「「げっ……」」」
ここまで怒るアメリアさんはとても珍しく、シルバの唸り声も合わさってかなりの迫力だった。
貴族令嬢は風向きが悪いと察すると、脱兎の如くあっという間に逃げて行った。
逃げ出すのは、もの凄く速いなあ。
「アメリアさん、助けてくれてありがとうございます。シルバもありがとうね」
「この前私がリンさんに助けられましたし、今回リンさんを助けることができて本当に良かったですわ」
「ウォン!」
シルバは、頑張ったと尻尾をぶんぶんと振っていた。
そんなシルバの頭を撫でながら、アメリアさんは少し気になる発言をしてきた。
「あの四家は、なんとしてもルーカス様に嫁を出したいとあの手この手を使ってくる貴族家です。なので、この後は少し注意する必要がありますね」
何となく予想していたとはいえ、やはり面倒くさい貴族家だったのか。
私のところにやってきたスラちゃんも、面倒くさい事になりそうだと警戒していた。
そしてアメリアさんの側に近衛騎士が控えていて、私に貴族令嬢が絡んでいた事を伝える為に王城に向かったのだった。
すると、程なくして王太子妃様とニース様が大教会まで馬車に乗ってきたのだ。
あわわ、話がとても大きくなったぞ。
「お、王太子妃様、そのわざわざ申し訳ありません」
「このくらいは別に良いのよ。義弟に関わる事だし、あの四家はしつこくて本当に迷惑しているのよ。王家としても、警戒をした方が良さそうね」
「あのねーね、きらーい」
王太子妃様も問題視する程の貴族家らしく、あのいつもニコニコしているニース様が露骨に嫌悪感を出しているレベルだ。
きっと、当主も問題ありありなのだろう。
そして、王太子妃様はある手配を既にしていた。
「ノルディア公爵家に、リンの事を保護するように要請したわ。今リンに何かあったら、大変な事になるわ」
あの、話がとんでもなく飛躍していませんか?
私が、いつの間にかもの凄い重要人物扱いになっているのですけど。
私達もアメリアさんが大教会で治療をする際には一緒にいる様にして、アメリアさんが暴漢に襲われないように注意していた。
というのも、アメリアさんがアーサー様と結婚する事は既に国中に広まっていて、アメリアさんにお祝いの言葉を伝えようと話しかけてくる人がかなりいたからだ。
なので、必ずシルバをアメリアさんの側につけて、アメリアさんの護衛役をさせていた。
シルバも、アメリアさんを守るぞと気合を入れて側にいた。
そんな中、私は治療を受けに来た冒険者にあることを聞いてみた。
「ああ、嬢ちゃんが『フェンリル連れの治癒師』って言われている件か? そんなの、もうとっくに冒険者の間じゃ有名な話だ」
「こんな特徴的なものを連れているんだ、直ぐにフェンリル連れの冒険者だって分かるだろう」
「それに、嬢ちゃんはいきなり軍や教会でデカい事をやったんだ。オークキングも倒した上にならず者を素手でぶん殴ったりしているから、嬢ちゃんを怒らせる事はできるだけしないようにしているぞ」
あの、そういう情報はできる限り教えてくれると助かります。
別に、私は余程の事がなければ怒りませんよ。
流石に、この前冒険者ギルド前で私に喧嘩を売ってきた馬鹿な貴族が現れた時にはガチギレしたけど。
その他に、冒険者はとんでもない事を言ってきた。
「嬢ちゃんが軍と一緒に害獣駆除に行く際に、いつも第三王子様と仲良く話しているって噂をしているぞ。あの第三王子様は、近くに女性を置かない事で有名だったからな」
「しかも、嬢ちゃんがオークキングを撃破して第三王子様を救ったんだろう? もしかしたら、冒険者が王子様の嫁に行くんじゃないかって噂になっているぞ」
「正妻は無理でも、側室くらいは十分にありえるだろう。嬢ちゃんは、既に勲章を貰っている訳だしな」
あの、その話は冒険者は皆知っているの?
知っている?
あっ、そうですか……
というか、町の人も私とルーカス様の事を知っていて、頑張るんだよと応援するおばちゃんも複数いた。
思わずアメリアさんの方を振り返ったけど、アメリアさんもこの話を知っていた。
「王子様と庶民の女性が恋に落ちるという、おとぎ話みたいな事が実際に起きています。なので、リンさんを応援したい人がたくさんいるのですよ。その、娯楽が少ないっていうのもありますが……」
「ウォン!」
シルバもアメリアさんと一緒になってそうだよと吠えていたけど、そもそもシルバはこの話を知らなかったでしょうが。
しかし、何とスラちゃんはおとぎ話みたいな話だということを知っていた。
私が混乱しない為に、敢えて言わなかったらしい。
スライムなのに、スラちゃんは本当に気遣いができます。
そんな事を話しながら、私はアメリアさんと治療を続けていった。
時折スラちゃんと炊き出しの仕込みをしつつ、平和に時間が過ぎていった。
かと思われた……
ザッ。
「貴方がリンね」
「えっ、はい。そうですけど……」
たまたまアメリアさんが不在のタイミングで、治療をしていた私の前に貴族令嬢と思わしき四人の女性が現れた。
如何にもって感じの綺麗なドレスを身にまとい、大きな宝石をあしらった豪華なアクセサリーを身に着けていた。
そして、四人の女性は私のことを見下すような視線で半ば睨んでいた。
「こんな貧乏人がルーカス様の相手だなんて、信じられませんわね」
「貧乏人には、貴族の世界から退場してもらう必要がありますわ」
「大教会で治療をしているのも、ルーカス様に媚びを売るために違いありませんわ」
「これだから、卑しい貧乏人は嫌いなのよ」
四人の令嬢はいきなり口々に私の事を非難してきたが、直ぐに発言の裏側を知った。
この四人の令嬢はルーカス様に輿入れする事を狙っているのに、当のルーカス様はこのご令嬢達に完全に塩対応。
そこにルーカス様と仲の良い私という庶民の存在が現れたので、貴族令嬢として我慢がならないのだろう。
うーん、貴族のプライドって本当に面倒くさいですね。
それに、この程度の脅しなんて全く怖くないので、私は思わずたははと苦笑してしまった。
「な、なんですのいきなり笑って。私達のことを馬鹿にしているのね」
「どうやら、痛い目に合わないと分からないようですわね」
貴族令嬢達は私の苦笑を馬鹿にされたと取ったみたいで、顔を真っ赤にしながら怒りだした。
面倒くさい相手だなと思った時、私の後方から鋭い声が大教会の中に響いた。
「貴方達、何をしているの! 自身がそんな態度を取っているからこそ、ルーカス様は全てを見抜いて貴方達を相手にしないよ」
「グルルルル……」
「「「げっ……」」」
ここまで怒るアメリアさんはとても珍しく、シルバの唸り声も合わさってかなりの迫力だった。
貴族令嬢は風向きが悪いと察すると、脱兎の如くあっという間に逃げて行った。
逃げ出すのは、もの凄く速いなあ。
「アメリアさん、助けてくれてありがとうございます。シルバもありがとうね」
「この前私がリンさんに助けられましたし、今回リンさんを助けることができて本当に良かったですわ」
「ウォン!」
シルバは、頑張ったと尻尾をぶんぶんと振っていた。
そんなシルバの頭を撫でながら、アメリアさんは少し気になる発言をしてきた。
「あの四家は、なんとしてもルーカス様に嫁を出したいとあの手この手を使ってくる貴族家です。なので、この後は少し注意する必要がありますね」
何となく予想していたとはいえ、やはり面倒くさい貴族家だったのか。
私のところにやってきたスラちゃんも、面倒くさい事になりそうだと警戒していた。
そしてアメリアさんの側に近衛騎士が控えていて、私に貴族令嬢が絡んでいた事を伝える為に王城に向かったのだった。
すると、程なくして王太子妃様とニース様が大教会まで馬車に乗ってきたのだ。
あわわ、話がとても大きくなったぞ。
「お、王太子妃様、そのわざわざ申し訳ありません」
「このくらいは別に良いのよ。義弟に関わる事だし、あの四家はしつこくて本当に迷惑しているのよ。王家としても、警戒をした方が良さそうね」
「あのねーね、きらーい」
王太子妃様も問題視する程の貴族家らしく、あのいつもニコニコしているニース様が露骨に嫌悪感を出しているレベルだ。
きっと、当主も問題ありありなのだろう。
そして、王太子妃様はある手配を既にしていた。
「ノルディア公爵家に、リンの事を保護するように要請したわ。今リンに何かあったら、大変な事になるわ」
あの、話がとんでもなく飛躍していませんか?
私が、いつの間にかもの凄い重要人物扱いになっているのですけど。


