そして、昼食は何故かアメリアさんと一緒に王家の方々と食べることになった。
　しかも、王家専用の食堂でかなり豪華な料理が運ばれてきたのだ。

「ウォン、ウォン！」

　とても美味しそうなお肉の匂いに、シルバはもう大興奮だった。
　しかし、私は豪華な食事の前に怖気ついてしまった。
　えーっと、食事のマナーってどうすれば良いんだっけ。
　前世の高校生の時に修学旅行用に食事マナーを学んだのを、脳の奥底から引っ張り出さないと。

「まあ、リンさんは食事マナーもできるのですね」
「その、アメリアさんの真似をしつつ何とか頑張っております」

　アメリアさんは、流石は公爵家のご令嬢と言わんばかりのとても優雅な食事マナーを披露していた。
　記憶の中から何とか引っ張り出した食事マナーに加えて、アメリアさんの真似をして何とか豪華な食事を食べることができた。
　ちなみに、前世も含めて食べたことのない高級感溢れる味で、衝撃が脳を突き抜けていった。
　お肉も柔らかくてソースも美味しいし、スープも旨味に溢れていた。
　うん、表現力が無くなって上手いとしか言えなかった。

「ハグハグハグ」

　シルバも、こんなに美味しいお肉は初めてなのか物凄い勢いで食べていた。
　スラちゃんもいつもとは違って優雅に食事をしていて、なんというかとても珍しい経験となった。
　そんな中、同じく王家専用食堂で食事をしていたルーカス様が、明日の予定について話してきた。

「リン、明日は軍の治療予定から害獣駆除に変更になった。どうも、魔物が多めに現れるところがあるらしい」
「あっ、分かりました。なら、朝から治療兵用の服を着て軍に向かいます」
「頼む。今回は、新兵もいるがベテラン兵も多めに連れて行く。先日兄上と共に害獣駆除をしたリンの活躍を、ベテラン兵も見てみたいそうだ」

　ルーカス様、私はベテラン兵のおもちゃになるのでしょうか……
　とはいえ、殆ど新兵だった時に比べるととても気が楽だった。
　その上で、ルーカス様は本来明日やる予定の事をアメリアさんと私に頼んできた。

「悪いが、午後時間があるようならアメリアとリンに軍の治療施設に入院している兵の治療を行って欲しい。もちろん、指名依頼としてきっちり手続きをする」

　元々明日予定の話だし、私も予定がないから全く問題なかった。
　アメリアさんの方を向くと、アメリアさんも私の方を向いてコクリと頷いた。

「時間と魔力に限りがありますが、できる限りの治療を行います」
「私は、明日も兵の方々の治療を行います。元々の予定ですし、リンさんは明日は害獣駆除を頑張るのに私だけのんびりはしていられませんわ」
「二人とも、協力感謝する」

　ということで、今日の午後と明日の予定も無事に決定した。
　王太后様への治療でかなりの魔力を使っているが、普通に兵の治療くらいは可能だ。
　それに、明日害獣駆除から戻ってきて時間があればアメリアさんのところに合流すればいい。
　無理をしない範囲で頑張れば良いことだ。
　その後も暫く他の人とも話をしていたけど、目の前でアーサー様とアメリアさんがラブラブな雰囲気を全く隠していなかった。
　そして、思わずボソッと言ってしまった。

「美女と野獣……」
「全くだな。ああ見えて、兄上はアメリアへの贈り物を欠かさないがな」

　たまたま私の呟きを聞いたルーカス様も、思わず苦笑しながらラブラブな二人を見ていた。
　マリア様も激しく同意していたけど、どうやら私の認識は間違いなかったみたいだ。

「ワンワーン！」
「ウォン！」

　そして、シルバは相変わらずニース様と一緒にいた。
　この分だと、午後もシルバとニース様は一緒に遊んでいそうですね。
　王太子妃様とスラちゃんもいるし、きっと大丈夫でしょう。
　ということで、私とアメリアさんは軍に戻るアーサー様とルーカス様と共に軍の治療施設に向かった。
　幸いにして重傷者は多くなかったけど、思ったよりも多くの怪我人がいた。
　そして、シルバはニース様とのお昼寝まで一緒だったらしく、とてもご機嫌だった。
　まあ、ニース様に楽しんで貰ったからスラちゃんも良しとしていました。