「お飲み物をご用意いたしました」
「わざわざありがとうございます」

 聖職者が用意してくれた飲み物を、アメリアさんがお礼を言ってから受け取った。
 私も飲み物を受け取ったが、中身は甘いブドウジュースで疲れた体に染み渡った。
 タオルで汗を拭き、二人ともようやくひと息つくことができた。
 すると、アメリアさんが私にあることを提案してきた。

「やはり、リンさんは腕の良い治癒師です。この後確認するのですけど、リンさんにある人の治療をお願いしたいと思っています」

 アメリアさんはだいぶ思い詰めた表情で私に話しかけたけど、それだけ治療に手間がかかる人なのかもしれない。
 手間と言っても、治療が大変なのか治療する人を相手にするのが大変なのかの二択になりそうだ。
 何にせよ、治療が必要な人なら私も頑張るだけだ。
 すると、タイミングが良かったのかマリア様が教会内に姿を現したのだ。

「ふむ、その話なら妾が進めておこう。そうじゃのう、四日後なら問題はない。教会集合で良いじゃろう」
「ウォン!」

 何故かシルバもその通りだと元気よく吠えていたけど、あなたは何も話を聞いていないでしょうが。
 そして、アメリアさんが私に治療を依頼した人は、マリア様の関係者で間違いなさそうだ。
 となると、治療的にも人的にも面倒くさい治療になるみたいだな。
 アメリアさんに顔を向けると、予想以上に話が進んでかなりビックリしていた。

「その、リンさん宜しくお願いします」
「私こそ、できることなら何でも頑張りますので」
「ウォン!」

 シルバが私の前に出てアメリアさんに尻尾をブンブンと振っていたけど、とにかく話がまとまってホッとした。
 そしてスラちゃんが作ってくれた炊き出しを食べて、私たちも無事に体力回復した。
 治療に戻ると、またもや多くの人が治療に並んでいた。
 しかし、さっきアメリアさんと同時に治療をしたのもあってか、かなり魔力制御も上達していた。

「相変わらず、スラちゃんは料理が凄いね。これだけの料理を作る人は、そうそういないわ」

 シスターさんが手早く料理を作っているスラちゃんに声をかけていたけど、確かにスラちゃんは私よりも料理の腕はあるのかもしれない。
 スラちゃん曰く、どこかで私の血などを吸収して覚えたらしい。

「ウォン、ウォン!」
「「「わーい」」」

 そして、シルバはまた子どもたちの相手を全力でしていた。
 子どもも大きな体のシルバに面白そうに抱きついたりしていて、ある意味保育所みたいだった。
 そんなこんなで、無事に奉仕活動は終了を迎えたのだった。

「リンよ、今日は大義であった。また、奉仕活動を頼むかもしれないが、その際には宜しく頼むぞ」
「はい、宜しく……」
「ウォン!」

 シルバよ、何故私がマリア様に挨拶をしている最中に元気よく挨拶をするの。
 マリア様もアメリア様も、もちろんシスターさんも思わず苦笑いしていた。
 すると、シルバの頭の上に乗っていたスラちゃんがぴょんと教会の床に飛び降りた。

 たしたし、たしたし!

「キューン、キューン……」

 そして、スラちゃんはシルバに調子に乗らないと床を叩きながら説教を始めていた。
 シルバもスラちゃんに怒られて完全に項垂れていたけど、私が怒るよりもスラちゃんが怒る方が明らかに効果がありそうだ。
 こうして説教が終わってから、私たちは完了手続きをするために教会を出た。
 はあ、なんだか色々と疲れてしまったぞ。

「では、こちらが今日の報酬となります」

 冒険者ギルドで手続きを行うと、かなりびっくりする額の報酬を受け取った。
 これだけあれば、当分の生活は問題ないだろう。
 市場で朝食のパンを購入して、私たちは宿に戻った。

「キューン、キューン……」

 ぐー。

 宿に帰ると、シルバにはスラちゃんにより私たちが夕食を食べ終えるまで「待て」をさせられていた。
 シルバのお腹が鳴る音が聞こえて来るけど、罰は罰なのでしっかりと受けてもらわないと。
 そして、私が夕食を食べ終えると、シルバは待っていたかの如くもの凄い勢いでお肉を食べ始めた。
 食欲全開なシルバを見ると、なんだかほっこりとしちゃうよね。

「じゃあ、明日は薬草を取りに行くよ。せっかくだから、訓練も外でやろう」
「ウォン!」

 シルバが夕食を食べ終えてから話をしたけど、ようやく冒険者らしい活動ができる。
 剣の訓練もしないとならないし、明日は森でできるだけ動くようにしよう。
 あと、体力的にも魔力的にもかなり消費してしまったので、今日も生活魔法で体を綺麗にした。
 明日こそは、町の銭湯に行って気持ちよくなろうと心に決めたのだった。