話はここまでにして、さっそく奉仕活動を始めることに。
私とアメリアさんがいるので、治療は何時でも大丈夫。
更に、教会の治癒師も治療に参加するという。
マリア様は教会の偉い人と話をするそうで、先に始めておいてと言って大教会の中に入っていった。
炊き出しは出来上がり次第にして、治療から始めることにした。
既に冒険者ギルドと軍の施設で治療しているので、だいたいの要領は分かっている。
なので、炊き出しの下ごしらえから抜けてスラちゃんに後をお願いした。
スラちゃんも、了解と触手をふりふりしていた。
既に鍋で煮込み始めているから、もう少しで炊き出しも完成しそうだった。
シュイン、ぴかー!
「だいぶ腰を痛めていましたね。背中も悪かったですよ」
「大工の仕事を続けていると、職業柄体中を痛めるんだよな。しかし、本当に凄い回復魔法だな。体中の痛いところが全部なくなったぞ」
治療には主に町の人が来ていたけど、職業柄の怪我をしていたり年配で足腰が弱っている人が多かった。
私の方に職人が多く並んでいて、アメリアさんの方に年配の人や子どもたちが並んでいた。
職人さん曰く、公爵家令嬢の聖女様に治療して頂くなんて畏れ多いらしい。
まあ、冒険者スタイルで庶民の私の方が気軽に話しやすいでしょう。
そこは、適材適所で行きましょう。
あと、子どもたちは私にもアメリアさんにも平気で話しかけてきていた。
「リンさんも、とても手早く治療していて凄いと思いますわ。昨日も思いましたが、やっぱり凄いと思いますわ」
そんな私にも、アメリアさんは優しく話しかけてきます。
流石は聖女様、その笑顔の破壊力が素晴らしい。
列に並んでいる屈強な職人も、思わずほんわかさせてしまった。
すると、私たちの背後から声をかける人が現れた。
「妾から見ても、リンは中々の腕前じゃ。才能があるものが増えて、王国としてもとてもありがたい」
「ええ、そうでございますな。優秀な治癒師がいるのは、教会としてもありがたいことですぞ」
「ウォン!」
マリア様と司教様が私ににこやかに声をかけてきたけど、何故か姿が見えなかったシルバまで一緒にいた。
どうやら新しい人に会えたのが嬉しくて、ずっとマリア様の側にいたらしい。
ちゃんと護衛任務もやっていますと尻尾を振りながら私にアピールしていたけど、お偉い二人が何も言っていないので余計なことを言うのは止めておこう。
そして、炊き出しの準備が出来たのでマリア様は他の聖職者とともに器によそったスープを配り始めた。
随分と手慣れた様子で配膳しているけど、アメリアさん曰くマリア様は小さい頃から奉仕活動を手伝っていたそうだ。
シルバも、マリア様の側に座っていてお仕事していますアピールです。
スラちゃんは、相変わらず触手で包丁を器用に使いながら野菜を切っていた。
もはや、一緒に仕込みをしている聖職者はスラちゃんに驚くことはなくなり、逆にどんどんと野菜を切ってとお願いしていた。
シュイン、ぴかー!
「ふう、これで骨折はよくなりましたよ。今度は転んで怪我をしないでね」
「おねーちゃん、ありがとー!」
腕を骨折していた男の子を治療したけど、この世界は医療体制が脆弱だから感染症が出たらあっという間に死んでしまうだろう。
だからこそ、こういう治療の機会を逃さないようにしないと。
しかし、治療開始から二時間経ったのに、一向に人の列が途切れないなあ。
「聖女様が行う月イチの奉仕活動には、王都中から人が集まります。もちろん回復魔法が使える聖職者を出してはおりますが、今日はリン様がいてくれて本当に助かりましたぞ」
司教様、さらりととんでもないことを言いませんでしたか?
王都ってかなりの人口があるように思えましたし、流石にアメリアさんに負担をかけすぎじゃないかな。
「リンのように、アメリアのことを気遣うものは稀じゃ。残念ながら、聖女たるアメリアにすがるものはとても多い。妾たちも、何とかしないと思っている」
マリア様、私の心の中を見透かしたように回答しないで下さい。
王族はこの状況をどうにかしようとしているみたいだけど、直ぐに改善をするのは難しそうだ。
今は私が手伝えるかもしれないけど、もう少し人手は欲しいよなあ。
軍の治療班を動員する手もあるけど、昨日の体たらくを見ると考えものです。
この辺りの難しいことは、偉い人に考えてもらいましょう。
そして、更に一時間が経って昼食時になったタイミングで、予想外の事件が起きた。
大教会に、重傷患者が運ばれてきたのだ。
「重傷者だ、通してくれ!」
「喧嘩が元で、腹を刺されたぞ!」
「うう……」
兵が担架を運んできたけど、腹部に刺し傷があってタオルで押さえているのに出血が全く止まらない。
私とアメリアさんは、同時に動き出した。
「これは酷い! なんということでしょうか」
「アメリアさん、私も回復魔法をかけます」
「これでは私一人では治療は無理だわ。リンさん、お願いします」
シュイン、シュイン、シュイン。
私とアメリアさんは、同時に魔力を溜め始めました。
それぞれでは治療するのは不可能だと思ったので、一か八か同時に回復魔法を放った。
シュイン、シュイン、ぴかー!
「おお、なんということか。とんでもない数の魔法陣が現れているぞ!」
「ま、眩しい! これが聖女様の本気の魔法なのね」
町の人が口々に私たちのことを言っているけど、今は目の前の重傷者に意識を集中した。
アメリアさんも真剣な表情で治療していたけど、果たして結果はどうか。
「うう…」
「良かった、何とか傷が塞がったわ」
男性は意識を取り戻していないけど、腹部の刺し傷を塞ぐことが出来た。
しかし、出血量が多いので、直ぐに教会付属の治療施設に運ばれた。
私も、ホッと胸を撫で下ろした。
ダッ、ガバッ。
「ウォン、ウォン!」
「わあ、こらシルバ、はしゃぎたい気持ちは分かるけど落ち着いて!」
「ウォン!」
シルバが、治療が凄かったと大興奮で私に飛びついてきた。
尻尾をブンブンと振りながら興奮収まらない感じだけど、何とかなだめて落ち着かせた。
すると、今度は町の人が大興奮状態だぅた。
「すげー! やっぱり聖女様の治療は半端ないな!」
「瀕死の重傷者を治療しちまったぞ。これは凄いぞ」
「ちっこい嬢ちゃんもすごい腕だな。いやあ、大したもんだ!」
次から次へと私と町の人がアメリアさんに話しかけてきたけど、実はそれだけ凄いことをしたらしい。
普通あれだけの大怪我だと、ポーションは全く効かずに普通の治癒師でも対応できないらしい。
アメリアさんも一人では無理だと言っていたから、二人で治療したのが良かったのだろう。
しかし、今の治療で私もアメリアさんもかなり魔力を使ってしまった。
流石にアメリアさんも、肩で息をする程に体力を消費していた。
かくいう私も、治療を直ぐに再開するのは難しそうだ。
すると、ここで助け舟を出してくれた人が。
「アメリアもリンも、少し休むが良い。これ以上無理をしては、元も子もないぞ」
「そうじゃのう。教会の聖職者に代わってもらいなさい」
「申し訳ありません、お言葉に甘えさせて頂きます」
助け舟を出したのがマリア様と司教様なので、周りの人が文句を言える訳が無い。
それに、町の人も疲労困憊の私たちに無理をしろとは言えなかった。
アメリアさんも、無理をせずに素直に提案を受け入れていた。
タイミング良く治療の列に並んでいる人も少なくなったので、私たちは大教会の中に入って休むことにした。
私とアメリアさんがいるので、治療は何時でも大丈夫。
更に、教会の治癒師も治療に参加するという。
マリア様は教会の偉い人と話をするそうで、先に始めておいてと言って大教会の中に入っていった。
炊き出しは出来上がり次第にして、治療から始めることにした。
既に冒険者ギルドと軍の施設で治療しているので、だいたいの要領は分かっている。
なので、炊き出しの下ごしらえから抜けてスラちゃんに後をお願いした。
スラちゃんも、了解と触手をふりふりしていた。
既に鍋で煮込み始めているから、もう少しで炊き出しも完成しそうだった。
シュイン、ぴかー!
「だいぶ腰を痛めていましたね。背中も悪かったですよ」
「大工の仕事を続けていると、職業柄体中を痛めるんだよな。しかし、本当に凄い回復魔法だな。体中の痛いところが全部なくなったぞ」
治療には主に町の人が来ていたけど、職業柄の怪我をしていたり年配で足腰が弱っている人が多かった。
私の方に職人が多く並んでいて、アメリアさんの方に年配の人や子どもたちが並んでいた。
職人さん曰く、公爵家令嬢の聖女様に治療して頂くなんて畏れ多いらしい。
まあ、冒険者スタイルで庶民の私の方が気軽に話しやすいでしょう。
そこは、適材適所で行きましょう。
あと、子どもたちは私にもアメリアさんにも平気で話しかけてきていた。
「リンさんも、とても手早く治療していて凄いと思いますわ。昨日も思いましたが、やっぱり凄いと思いますわ」
そんな私にも、アメリアさんは優しく話しかけてきます。
流石は聖女様、その笑顔の破壊力が素晴らしい。
列に並んでいる屈強な職人も、思わずほんわかさせてしまった。
すると、私たちの背後から声をかける人が現れた。
「妾から見ても、リンは中々の腕前じゃ。才能があるものが増えて、王国としてもとてもありがたい」
「ええ、そうでございますな。優秀な治癒師がいるのは、教会としてもありがたいことですぞ」
「ウォン!」
マリア様と司教様が私ににこやかに声をかけてきたけど、何故か姿が見えなかったシルバまで一緒にいた。
どうやら新しい人に会えたのが嬉しくて、ずっとマリア様の側にいたらしい。
ちゃんと護衛任務もやっていますと尻尾を振りながら私にアピールしていたけど、お偉い二人が何も言っていないので余計なことを言うのは止めておこう。
そして、炊き出しの準備が出来たのでマリア様は他の聖職者とともに器によそったスープを配り始めた。
随分と手慣れた様子で配膳しているけど、アメリアさん曰くマリア様は小さい頃から奉仕活動を手伝っていたそうだ。
シルバも、マリア様の側に座っていてお仕事していますアピールです。
スラちゃんは、相変わらず触手で包丁を器用に使いながら野菜を切っていた。
もはや、一緒に仕込みをしている聖職者はスラちゃんに驚くことはなくなり、逆にどんどんと野菜を切ってとお願いしていた。
シュイン、ぴかー!
「ふう、これで骨折はよくなりましたよ。今度は転んで怪我をしないでね」
「おねーちゃん、ありがとー!」
腕を骨折していた男の子を治療したけど、この世界は医療体制が脆弱だから感染症が出たらあっという間に死んでしまうだろう。
だからこそ、こういう治療の機会を逃さないようにしないと。
しかし、治療開始から二時間経ったのに、一向に人の列が途切れないなあ。
「聖女様が行う月イチの奉仕活動には、王都中から人が集まります。もちろん回復魔法が使える聖職者を出してはおりますが、今日はリン様がいてくれて本当に助かりましたぞ」
司教様、さらりととんでもないことを言いませんでしたか?
王都ってかなりの人口があるように思えましたし、流石にアメリアさんに負担をかけすぎじゃないかな。
「リンのように、アメリアのことを気遣うものは稀じゃ。残念ながら、聖女たるアメリアにすがるものはとても多い。妾たちも、何とかしないと思っている」
マリア様、私の心の中を見透かしたように回答しないで下さい。
王族はこの状況をどうにかしようとしているみたいだけど、直ぐに改善をするのは難しそうだ。
今は私が手伝えるかもしれないけど、もう少し人手は欲しいよなあ。
軍の治療班を動員する手もあるけど、昨日の体たらくを見ると考えものです。
この辺りの難しいことは、偉い人に考えてもらいましょう。
そして、更に一時間が経って昼食時になったタイミングで、予想外の事件が起きた。
大教会に、重傷患者が運ばれてきたのだ。
「重傷者だ、通してくれ!」
「喧嘩が元で、腹を刺されたぞ!」
「うう……」
兵が担架を運んできたけど、腹部に刺し傷があってタオルで押さえているのに出血が全く止まらない。
私とアメリアさんは、同時に動き出した。
「これは酷い! なんということでしょうか」
「アメリアさん、私も回復魔法をかけます」
「これでは私一人では治療は無理だわ。リンさん、お願いします」
シュイン、シュイン、シュイン。
私とアメリアさんは、同時に魔力を溜め始めました。
それぞれでは治療するのは不可能だと思ったので、一か八か同時に回復魔法を放った。
シュイン、シュイン、ぴかー!
「おお、なんということか。とんでもない数の魔法陣が現れているぞ!」
「ま、眩しい! これが聖女様の本気の魔法なのね」
町の人が口々に私たちのことを言っているけど、今は目の前の重傷者に意識を集中した。
アメリアさんも真剣な表情で治療していたけど、果たして結果はどうか。
「うう…」
「良かった、何とか傷が塞がったわ」
男性は意識を取り戻していないけど、腹部の刺し傷を塞ぐことが出来た。
しかし、出血量が多いので、直ぐに教会付属の治療施設に運ばれた。
私も、ホッと胸を撫で下ろした。
ダッ、ガバッ。
「ウォン、ウォン!」
「わあ、こらシルバ、はしゃぎたい気持ちは分かるけど落ち着いて!」
「ウォン!」
シルバが、治療が凄かったと大興奮で私に飛びついてきた。
尻尾をブンブンと振りながら興奮収まらない感じだけど、何とかなだめて落ち着かせた。
すると、今度は町の人が大興奮状態だぅた。
「すげー! やっぱり聖女様の治療は半端ないな!」
「瀕死の重傷者を治療しちまったぞ。これは凄いぞ」
「ちっこい嬢ちゃんもすごい腕だな。いやあ、大したもんだ!」
次から次へと私と町の人がアメリアさんに話しかけてきたけど、実はそれだけ凄いことをしたらしい。
普通あれだけの大怪我だと、ポーションは全く効かずに普通の治癒師でも対応できないらしい。
アメリアさんも一人では無理だと言っていたから、二人で治療したのが良かったのだろう。
しかし、今の治療で私もアメリアさんもかなり魔力を使ってしまった。
流石にアメリアさんも、肩で息をする程に体力を消費していた。
かくいう私も、治療を直ぐに再開するのは難しそうだ。
すると、ここで助け舟を出してくれた人が。
「アメリアもリンも、少し休むが良い。これ以上無理をしては、元も子もないぞ」
「そうじゃのう。教会の聖職者に代わってもらいなさい」
「申し訳ありません、お言葉に甘えさせて頂きます」
助け舟を出したのがマリア様と司教様なので、周りの人が文句を言える訳が無い。
それに、町の人も疲労困憊の私たちに無理をしろとは言えなかった。
アメリアさんも、無理をせずに素直に提案を受け入れていた。
タイミング良く治療の列に並んでいる人も少なくなったので、私たちは大教会の中に入って休むことにした。


