「っていう感じ」
「そうしてお父さんと仲直りしたんだ」
「まぁ、そうね」
話を聞き終えて再度、刀真の意識は現在に戻る。鏡花は少し恥ずかしそうにしながらも、スッキリとした表情になっていた。
「うぅ……感動しちゃうなぁ」
「あ、茜さん……」
「泣いてるし」
そして一緒に聞いていた茜は静かに瞳から涙を流していていた。
「やっぱり仲良くなれて良かったなって……前からずっと微妙な関係で、いつか良くなって欲しいって思ってたから、ようやくそうなって……その時の気持ちがまた溢れてきちゃった」
「もう、私まで泣きそうになってくるじゃない」
過去の事を話した余韻と茜の涙に影響されたからか、鏡花の目も潤んでいく。
「……」
同じ気持ちを完全には共有出来ずにいるため、少々気まずくなる。
「二人とも、良かったね」
「お兄さん……」
嬉しそうにしている二人を見ると、つい自分の結末と比較してしまう。
「……ねぇ、この流れで聞くのもあれなんだけどさ」
「うん」
「お兄さんの話も聞いていいかな」
自然な流れであるが、鏡花は言いづらそうにしながらも、言い淀む事なく尋ねる。
「そろそろ詳しく聞きたいなって思ったのだけど」
「……」
「あたしもどんな話をしたか聞きたいな。結末と大まかな事しか聞けていないから」
鏡花と同様に一区切りついてから時間が経っていた。過去を話せる精神状態でもあって。
「……わかった」
今なら言葉に出来る、そう思えて刀真はゆっくりと口を開いた。
※
鏡花が家へと帰ったその日に父親と上手く和解したという連絡を茜から受け、それから数日が経った。
しばらくは家に滞在するというので刀真は久しぶりに一人暮らし状態でいる。少し前までは当たり前だったが、突然人の存在がなくなると、心が寒暖差にすぐには適応出来ないでいた。
「……ついに明日か」
金曜の夕暮れの窓を眺めて刀真はそう呟く。その言葉は、今日の先に向けられていて。
「鏡花もやったんだし俺も」
土曜となる明日に父と母、それぞれと会う約束をしていた。不安や恐怖がありつつも、彼女の頑張りから見て貰った勇気と優しさに応えなければという想いが重なり背中を押されていた。
「やっぱり凄いなお嬢様は」
実行して上手くやってしまうのは、素直にカッコいいと思わされ、尊敬すると共に自分もと刺激にもなる。
「ん……」
ベッドの上に転がっていたスマホから着信音が響いた。画面を見ると鏡花からだ。別れ際に連絡を交換していて、メッセージのやり取りは何度かしていたが、電話は初めてで、ぎこちない手つきながら急いで電話に出る。
「もしもし」
「もしもしお兄さん、今時間大丈夫?」
「うん、暇だよ」
電話越しであるが、久しぶりに声が聞けて嬉しくなる。
「ふふっ、やっぱりそうよね。どうせ一人でぼーっとしてたんでしょ」
「はい、その通りです」
こんな風に言葉で刺してくるのも、そこまで日が経っていないにも関わらず懐かしかった。
「何だが凄い久しぶりって感じがする。そんな日も経ってないのに」
「同じ事思った。それに俺、姉ちゃん以外と人と話すのも久しぶりなんだよね」
「相変わらずね……じゃあ寂しくなっていんじゃない?」
鏡花のからかうような口調を聞くと、自然と向こう側の表情も見えてくる。
「まぁ、そうだね」
「……意外、強がるのかと思ったのに。お兄さん、大丈夫?」
素直に気持ちを吐露してしまい、心配させてしまう。
「大丈夫、大丈夫。それよりも、どうして電話を?」
「お父さんと上手くいったっていう報告とお兄さんもご両親とお話しするって聞いたから」
当然、茜からもメッセージでも教えて貰っているため結末は知っている。それでも電話でも言ってくれるというのは律儀だなと鏡花らしさを感じた。
「改めてだけど、おめでとうお嬢様」
「ありがとお兄さん。あの時背中を押してくれたから、今があると思う」
「大した事はしてないよ、お嬢様が勇気を出して頑張ったからだよ」
そう言うと改めて鏡花からお礼を伝えられる。
「私の話はここまでにして、次はお兄さんの事。ついに会うのよね」
「うん、明日話してくる。……情けないけどめっちゃ緊張してる」
「情けない事なんかないわ。向き合うのって勇気がいるもの。私が言うんだから間違いない」
「確かに、説得力ある」
一人で抱え込んでいた時から鏡花と話していると、気持ちが幾分か楽になる。
「怖いならついていってあげてもいいけど?」
「恥ずかしいから止めて」
「ふふっ」
そこまで落ちぶれてはいないと自身を肯定しつつも、一瞬来て欲しいとも思ってしまった自分もいた。
「でも、終わったら会わない? お互い頑張ったし」
次の提案は本気のもので、刀真にそれを否定する理由は見当たらなかった。
「いいけど、どこで会おうか」
「せっかくだし、あのベンチとかどう? お兄さんの家の前の」
それは最初に鏡花と出会った思い出の場所だった。
「いいセンスだね」
「でしょ?」
互いに口角が上がった声音で理解し合う。不思議な一体感に少し体温が上がる。
「約束ね」
「了解」
「……頑張ってねお兄さん」
「……うん」
鏡花の応援の言葉を最後に、別れの挨拶をして通話は切れた。
外は藍色に変わっていて明かりをつけていない部屋はいつの間にかとても薄暗くなっている。刀真は電気をつけずに、ベランダに出た。肌寒いが、鏡花と話したことで浮ついてい気持ちをリセットするにはちょうど良かった。
「……母さん、父さん」
夜空に向かって久しぶにそう両親の呼び名を声に出す。その先にある藍染の空には星々の煌めきはなく、一色に塗りつぶされていた。
「そうしてお父さんと仲直りしたんだ」
「まぁ、そうね」
話を聞き終えて再度、刀真の意識は現在に戻る。鏡花は少し恥ずかしそうにしながらも、スッキリとした表情になっていた。
「うぅ……感動しちゃうなぁ」
「あ、茜さん……」
「泣いてるし」
そして一緒に聞いていた茜は静かに瞳から涙を流していていた。
「やっぱり仲良くなれて良かったなって……前からずっと微妙な関係で、いつか良くなって欲しいって思ってたから、ようやくそうなって……その時の気持ちがまた溢れてきちゃった」
「もう、私まで泣きそうになってくるじゃない」
過去の事を話した余韻と茜の涙に影響されたからか、鏡花の目も潤んでいく。
「……」
同じ気持ちを完全には共有出来ずにいるため、少々気まずくなる。
「二人とも、良かったね」
「お兄さん……」
嬉しそうにしている二人を見ると、つい自分の結末と比較してしまう。
「……ねぇ、この流れで聞くのもあれなんだけどさ」
「うん」
「お兄さんの話も聞いていいかな」
自然な流れであるが、鏡花は言いづらそうにしながらも、言い淀む事なく尋ねる。
「そろそろ詳しく聞きたいなって思ったのだけど」
「……」
「あたしもどんな話をしたか聞きたいな。結末と大まかな事しか聞けていないから」
鏡花と同様に一区切りついてから時間が経っていた。過去を話せる精神状態でもあって。
「……わかった」
今なら言葉に出来る、そう思えて刀真はゆっくりと口を開いた。
※
鏡花が家へと帰ったその日に父親と上手く和解したという連絡を茜から受け、それから数日が経った。
しばらくは家に滞在するというので刀真は久しぶりに一人暮らし状態でいる。少し前までは当たり前だったが、突然人の存在がなくなると、心が寒暖差にすぐには適応出来ないでいた。
「……ついに明日か」
金曜の夕暮れの窓を眺めて刀真はそう呟く。その言葉は、今日の先に向けられていて。
「鏡花もやったんだし俺も」
土曜となる明日に父と母、それぞれと会う約束をしていた。不安や恐怖がありつつも、彼女の頑張りから見て貰った勇気と優しさに応えなければという想いが重なり背中を押されていた。
「やっぱり凄いなお嬢様は」
実行して上手くやってしまうのは、素直にカッコいいと思わされ、尊敬すると共に自分もと刺激にもなる。
「ん……」
ベッドの上に転がっていたスマホから着信音が響いた。画面を見ると鏡花からだ。別れ際に連絡を交換していて、メッセージのやり取りは何度かしていたが、電話は初めてで、ぎこちない手つきながら急いで電話に出る。
「もしもし」
「もしもしお兄さん、今時間大丈夫?」
「うん、暇だよ」
電話越しであるが、久しぶりに声が聞けて嬉しくなる。
「ふふっ、やっぱりそうよね。どうせ一人でぼーっとしてたんでしょ」
「はい、その通りです」
こんな風に言葉で刺してくるのも、そこまで日が経っていないにも関わらず懐かしかった。
「何だが凄い久しぶりって感じがする。そんな日も経ってないのに」
「同じ事思った。それに俺、姉ちゃん以外と人と話すのも久しぶりなんだよね」
「相変わらずね……じゃあ寂しくなっていんじゃない?」
鏡花のからかうような口調を聞くと、自然と向こう側の表情も見えてくる。
「まぁ、そうだね」
「……意外、強がるのかと思ったのに。お兄さん、大丈夫?」
素直に気持ちを吐露してしまい、心配させてしまう。
「大丈夫、大丈夫。それよりも、どうして電話を?」
「お父さんと上手くいったっていう報告とお兄さんもご両親とお話しするって聞いたから」
当然、茜からもメッセージでも教えて貰っているため結末は知っている。それでも電話でも言ってくれるというのは律儀だなと鏡花らしさを感じた。
「改めてだけど、おめでとうお嬢様」
「ありがとお兄さん。あの時背中を押してくれたから、今があると思う」
「大した事はしてないよ、お嬢様が勇気を出して頑張ったからだよ」
そう言うと改めて鏡花からお礼を伝えられる。
「私の話はここまでにして、次はお兄さんの事。ついに会うのよね」
「うん、明日話してくる。……情けないけどめっちゃ緊張してる」
「情けない事なんかないわ。向き合うのって勇気がいるもの。私が言うんだから間違いない」
「確かに、説得力ある」
一人で抱え込んでいた時から鏡花と話していると、気持ちが幾分か楽になる。
「怖いならついていってあげてもいいけど?」
「恥ずかしいから止めて」
「ふふっ」
そこまで落ちぶれてはいないと自身を肯定しつつも、一瞬来て欲しいとも思ってしまった自分もいた。
「でも、終わったら会わない? お互い頑張ったし」
次の提案は本気のもので、刀真にそれを否定する理由は見当たらなかった。
「いいけど、どこで会おうか」
「せっかくだし、あのベンチとかどう? お兄さんの家の前の」
それは最初に鏡花と出会った思い出の場所だった。
「いいセンスだね」
「でしょ?」
互いに口角が上がった声音で理解し合う。不思議な一体感に少し体温が上がる。
「約束ね」
「了解」
「……頑張ってねお兄さん」
「……うん」
鏡花の応援の言葉を最後に、別れの挨拶をして通話は切れた。
外は藍色に変わっていて明かりをつけていない部屋はいつの間にかとても薄暗くなっている。刀真は電気をつけずに、ベランダに出た。肌寒いが、鏡花と話したことで浮ついてい気持ちをリセットするにはちょうど良かった。
「……母さん、父さん」
夜空に向かって久しぶにそう両親の呼び名を声に出す。その先にある藍染の空には星々の煌めきはなく、一色に塗りつぶされていた。



