言えなかった2文字は白く藍色に残っている




私は運動がてらに病院内をウロウロした
きっと奏ちゃんの病室を探す以外にもまた湊くんに会えるかもという期待はあった

奏ちゃんは7階にいるわけはないか
7階はもう死が決まってる人達の病室
もちろん私は7階

「はぁ、はぁ、はぁ」

全然体動かさないから少し歩いただけで息があがる

ふと1つの病室の前に止まった
時間が止まったように感じた

【瀬川奏】

「う、そ……でしょ……」

私の病室とは少し離れてはいるけど7階に奏ちゃんの病室はあった
この階に奏ちゃんの病室があるなんて思ってなかった
いや信じたくなかったのかもしれない

あのやわらかい目をした湊くんが、7階に来る人だなんて。

頭がグラッとした
その時後ろから声がした

「………あれ?白藍さん?」

振り返ると湊くんが立っていた
制服ではなくただの男の子の顔で

「あ、ごめん。こんなとこで何してるの?」

心臓がドクンと鳴った
さっきまでの息切れとは別の理由で

「あ!別についてきたわけじゃないよ!?」
「う、うん!」

湊くんは苦笑いを浮かべた
でも、湊くんの目は明らかに戸惑っていた
たぶん、私がここにいるのが意外だったんだと思う

「私こそ。ちょっと歩きたくて」

本当の理由はまだ言えないままか
まさか、あなたの妹さんを探してましたなんて。

「………そっ、か?偶然だね」

そう言って湊くんは私の隣に並んだ
病室のプレートをちらっとみて小さく頷いた

「………あぁ、見ちゃった?」
「………うん。でも何も言わないよ」

私の言葉に湊くんは少しだけ目を細めた

「ありがと」

ほんの少し、沈黙が流れる
でもなぜかそれが心地よかった

「……今さ、俺少し出るんだけど妹の相手してくれない?」
「えっ」
「いや、無理にじゃなくて。話したら喜ぶと思うし。たぶん白藍さんみたいな人と話すの、好きな子だから」
「私そんなにいい子じゃないよ?」
「うん。そういうとこも含めて、だよ」

私は笑った
心の奥で何かが静かにほどけた気がした

「わかった。奏ちゃんだよね。」
「そう。じゃあよろしく」

湊くんはまた引き返していった