高校3年生になると、俺はなぜかモテはじめてるらしい。

「湊くん…付き合って…ください」

頻繁に後輩の女子からの告白がくる。
でも俺はまともな回答ができない。

「ごめん。俺、好きな人がいるんだ」

「ねぇ……いつもいつもそう言ってみんなの告白断ってるけど、誰なの…?」

この人に言ったって、わかるはずがない。
俺だけが、わかっていればいい。

「さぁね?」

最近ほんと、こういう事が多い。
昼休みになると、教室の入り口にはいろんな学年の女子が集まる。

放課後は

「なぁ湊」
「ん?」
「お前なんで彼女作んねーの?こんだけモテりゃあ、しょーじき選び放題だろ」

クラスの男子からも、質問が止まない。

「残念ながら、俺、好きな人がいるんで。じゃ。」

白藍。
俺は俺のために生きる。
それが自然と、白藍のためにもなっていたら嬉しい。

元気ですか。
白藍に会いたいけど、会いにいってもきっと悲しむよな。

だから、どうか
奏と仲良くしててくれよ。

俺も、がんばるな。

空を見上げると、少しだけ、白藍の声がした気がした。


――ほんと、真面目な子。

「え……」


俺の中に、ちゃんと残ってる。
あの日の約束も、イルミネーションも、白藍の笑顔も。

……だから、俺はもう大丈夫。




あの日、言えなかった“好き”は、
今もこの青い空の下、白く藍色に残ってる。





(了)