入院して何日経っただろう
隣の窓から雲が流れるのを見て、点滴が減っていくのを見ているだけの毎日はあっという間。
仕事の合間にお母さんは顔を出してくれていた
看護師さんとも話せるようになった
頭痛が起きることは定期的に。
たまにものすごいのが来る
今日の外は灰色に染まっている
雷は止まることを知らず鳴り響いている
「白藍ちゃーん。おはよ。今日雷すごくない?」
看護師さんが私の病室に来た
まだ点滴も何もなくなっていないのに
「おはようございます!それな。外もずっと雨。ってかなにかありました?まだ点滴なくなってないですけど」
「いや!さっき白藍ちゃんのお母さん少しだけ来てて、これ預かったの。時間ある時読んでって」
それは手紙?だった
「で、白藍ちゃんはCT撮りいくよ!」
「あ、はい!」
私はそれを棚の上に置いてCTを撮りに向かった
なんの手紙だろう?
しばらく経って
CTの検査が終わり、自分の病室へ向かっていると、看護師とぶつかってしまった
「うおっ!ごめんなさい!」
「あ!白藍ちゃん!ごめんね!」
なにかあったのかな?
自分の病室へ戻って棚の上に置いたままになっていた封筒を、私はゆっくり開けた。
見慣れた字が並ぶ白い紙。
その瞬間、
外で雷がひときわ大きく鳴った。
窓ガラスがかすかに揺れて、胸の奥までびりびりと響いた。
私は、目を落とした。
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【「白藍へ」
ごめんね。
今日もあなたの病室で笑うことができなかった。
あなたが「大丈夫だよ」って笑ってくれるたびに、
私はますます、母親として何もできていないことが苦しくなっていきました。
本当はもっとそばにいたかった。
ずっと隣で手を握っていたかった。
でも、私にはあなたを前向きに支える強さがなかった。
白藍、あなたは本当に、よく頑張ってるよ。
だからこそ、もう私の弱さを見せたくないの。
最後まで「お母さん」としていたいの。
ごめんなさい。
あなたより先にいなくなるなんて、最悪で最低のお母さんです。
でも
あなたがこの世界に生まれてきてくれて、本当に幸せでした。
ありがとう。
愛してるよ、白藍。
またね
お母さんより】
読んでいる途中から、
視界の端が、だんだんにじんでいった。
それが雷のせいか、涙のせいか、もうわからなかった。
外では、相変わらず雷が鳴っている。
空が、怒っているみたいに。
この世界のどこかで、お母さんが消えていったことに、空が気づいて泣いてるみたいに。
私は、ただベッドの上で膝を抱えていた。
涙が落ちた場所に、「ありがとう」の文字だけが滲んでいた。
後に、お母さんが亡くなったことが告げられた
お母さんが最悪で最低なら私は最低で最悪
もちろんお葬式になんて行けなかった

