病室を出てから、俺は廊下の窓から外を眺めた。
遠くのビルの灯りが、ぼんやりとにじんでいた。 空気は冷たく、秋が終わって、確かに冬が来てることを感じさせる。
白藍は「イルミネーション、見に行かない?」って言った。 あんな弱い声で、笑いながら。
叶えられるわけないって、あいつも思ってる。 俺だって、わかってる。
でも、あのとき「いいよ」ってしか言えなかった。 他に、何を言えばよかったんだろう。
エレベーターに乗ると、無意識に手がポケットを探った。 そこには、折れかけたチケットの半券がある。
奏と行く予定だった、夏の花火大会のチケット。
結局、あいつはその日を境に意識が戻らなかった。
気づけば、俺の隣にいる「大切な人」は、いつもいなくなる。 それは、もう呪いなんじゃないかって思うくらいに。
だけど。
今、白藍はまだ、ここにいる。
「……俺は、どうしたらいいんだよ」
誰にも届かない小さな声が、エレベーターの狭い空間に沈んだ。
怖い。
好きだって思えば思うほど、終わりが近づいてくる気がして。 もう二度とあんな思いしたくないのに。
それでも、あいつが笑うと、 俺の中に灯るものがある。
あったかくて、でもどこか痛くて。 あんな笑顔、忘れられるわけがない。
だからこそ、今はまだ踏み出せない。 「好き」とは、言えない。
その言葉は、呪いの引き金になる気がして。
病院の出口を出た瞬間、冷たい風が頬を刺した。 吐いた息が白くて、現実がすぐそこにあるようだった。
冬は、もう来てる。
だけど俺の中の答えは、まだ出ないまま。 ただ、チケットの半券をポケットの中で強く握りしめた。
白藍はきっともうわかってる
俺もわかる。
もうすぐいなくなるんだろう
その時が近いということはお互いわかっている
白藍を奏と重ねるのは良くない。
わかってる。だけど、重ねる対象がない
このままでは白藍を傷つける
俺にできることがない…
もう会わないことが…白藍の幸せなのかな…
「俺は…それで良いのか…?」
好きというのが怖い
好きになっていなくなられるのが怖い
本当の俺は俺は弱いんだ…

