屋上に久しぶりに来た
風が少し冷たくなっていた。
季節が夏から秋へと、ゆっくり移ろい始めていた。
二人で並んで、前と同じベンチに腰を下ろす。
「やっぱ、ここ好きだな」
「うん、やっぱ落ち着くよね」
その日はもう、言葉は多くなくてよかった。
ただ並んで、風の音を聞いていた。
そして私は、心の中でそっと思った。
また、生きたい。
この人ともっと話したい。
もっと笑いたい。もっとちゃんと、残したい。
未来のことは、まだわからない。
でも、今はそれでいい。
「ごめん、聞きづらいこと聞いていい?」
「……もしかして余命のこと…?」
あたったみたい
湊くんは驚いた顔をしたあと少し頷いた
「いいよ。…なんでも聞いて」
「あと残りどれくらい…なの?」
正直ここで嘘を言うことだってできた
でもしたくない
「今10月頭だから…2ヶ月ちょい!クリスマスまで生きれるかどうかってところ」
あれを言わないと
「ね、ねぇ。湊くん。私も言わないといけないことがあるの」
「なーに」
「私湊くんの両親のこと聞いちゃった。いないって…」
湊くんは私から目を逸らした
「別に隠してたわけじゃねーよ。言うつもりなかっただけというか。奏いたし。」
私は頷いた
「私も親いないよ。なんなら親戚もいない」
「え入院とかどうやってるの、?」
「親が残していったお金とか国からの支援とか」
正直これ以上親の話をしたくない
でも最低限は言っておこう
「物心ついた頃から父親はいなかった。母親は私が脳腫瘍あって余命が残り3ヶ月って言われたとき、責任感じちゃったらしく手紙だけ残して自殺」
そうかと呟く湊くん
「手紙だけでも残してくれたんだな。最後まで愛があるね」
「愛なんかあったら自殺なんてしないでしょ」
「俺の母さんは突然の事故で亡くなったから手紙もなにもないよ」
湊くんはきっと寂しいのだろう
私は返す言葉を見失った

