村の中心部だけでなく霧が晴れている場所、概ね半径300mくらい
の範囲で先程の惨状と同じ様子を確認できた。
おそらくだが、ここまで来る途中の霧の中でも同じ光景が広がって
いたのかもしれない。
これ以上の探索は霧の中になる事から一度攻略方法を検討する為に
村の外に引き返し拠点を作る事にした。
人数分のテントと竈門と獣避けの焚き火のスペースを用意した。
拠点の準備と食事を終え今後の行動を議論する。
『聞いてや、あの状況から推測するとやな、村の生存者と調査に来た
冒険者は絶望的やろ、生存者の捜索はせんと原因の究明を優先
せなあかんな。それでええか?』
他のメンバーも僕もリケッツの判断は妥当だと思っている
あの惨状では生存者は絶望だろうし、原因不明であれば僕たちも
危険である、しかしどんな方法で探るつもりなんだろうか?
何か有効な魔法を知っているのだろうか?
『でさ、何か調べる方法でもあるの? 私は戦闘系の魔法しか
使えないわよ』
『当然、アバンも私も魔法は使えないですよ。ユウの魔法は?』
『そうですね・・・皆もご存知でしょうが、放出系の攻撃魔法
しか今は使えません』
前回の仕事の時もリケッツが探査系の魔法は使ってなかったはず。
今回も探査か調査系の魔法は有効だと思う、何か考えがあるのだろうか?
『ユウ、今日は一度も魔法は使ってないやろ?
なら魔力量は十分やな、広域的な放出系の魔法は何か使えるか?』
『そうですね、アイスミストは使えますが』
『なら、それでいこか!』
◇◇◇◇◇
『ユウ、村を包み込む感じでやな、ありったけの魔力を放出で
頼むで、ユウの事はワテらが守るさかい』
何とも無茶な・・・魔力を使い切るのは脱力感が半端ないん
だよ、しばらく動けないし・・・
ま、みんなが守ってくれるみたいだし大丈夫か。
『じゃ、始めるよ「アイスミスト・・・」』
村全体を覆うのに30分ほどの時間を有した。
霧が氷になりダイヤモンドダストの様に空中でキラキラと
輝いていた、僕は放心状態でその光景を見つめていた。
霧が晴れ視界が開かれたその時、村の入口の反対側から
膨大な魔力が放たれた。え〜ヤバくない?その時!
リケッツの声が聞こえた。
『今や、メーディアあそこに行くで!』
僕は二人が突撃して行くのを見つめていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第1章 13話
放たれた魔力の正体は攻撃系だったが相手に対して殺傷性のある
魔法ではなく、寄せ付けない目的で使用される類の魔法だった。
魔力の込められた空気の塊を打つけられる魔法なのだが、魔力の
膨大さから十分な効果があった。
どうやらリケッツは魔法の特性を見抜いていたらしく危険が無いと
判断し突進したのだろう。
『これやな、この穴から放たれとるよってワイが穴を押さえてさかい
結界魔法で固定しなはれ』
『も〜いつも無茶ばかり言うのね、人使いが荒いんだから・・・』
その様子を僕とアバンは見ていたが結界で塞がれたと同時に
穴を覗き込むリケッツとメーディアの下に向かった。
『見てみなはれ、こないな事は初めてやな・・・見てみ』
『これは・・・』
その穴の向こうには広い空間があった、空間??別世界??
良く観察すれば広大な風景があったのだ。
ま、僕も異なる世界から来たわけで驚くのも今更か・・・
この事はメンバーには話していない、シャナとリケッツだけが
知る秘密だ。
『ユウ、ちょっと聞きたい事あるんやけど、こっち来なはれ』
何となくだがリケッツに呼ばれる様な気がしてた・・・
リケッツは僕が異世界人だと知っている、だから今目の前にある
世界が僕が来た世界と関係あるのか確認したいのだろう。
『これ、どないや?関係あるんか?』
『この風景は僕の記憶には無いよ、こんな赤黒い空なんて初めて
見たよ、それに少し危険な感じがするんですけど・・・』
『ちょっと二人で何をコソコソ話してるの?何か知ってるの?』
『何でもあらへんよ、三人もこっちに来なはれ、どないするか
決めるさかい』
僕たちは今後の行動を話し合った、今の状況は入口を結界魔法で
固定しているが状態は安定している。
短時間だがリケッツは結界から向こうに侵入し行動に支障無いのを
確認した。
リケッツは調査する事を主張したがメーディア、カルロス、アバンは
一度引き返しギルドに報告してから体制を整えて調査する事をリケッツ
に進言した。
僕は危険は避けたい・・・生活も軌道に乗ってきたし、守るべき家族も
増えたし・・・それにギルドに報告するだけでも依頼は達成にならない
のだろうか?
『そやな確かにリスクはあるやろな、報告だけやから報酬は減らされる
が一応達成扱いになる。
でもワイはこの先が見たくなったんや、一人でも行くさかい、ここで
待っててや』
『待ってるなんてできないでしょホントに・・・困った人ね』
『おい、俺等がお前一人に行かせるわけないだろうが。あ、ユウは無理
すんなよ、まだ新婚なんだしよ』
『私もシャナさんに怒られたくはなくてよ』
『そやなユウは無理はせんように』
『みんな聞いてくれ僕だって仲間なんだから一緒に行くさ、シャナだって
そこは理解はしている、気遣いは嬉しいよ』
みんなの気持ちは嬉しいけど、ここに一人でいる方が危険な気がするよ
それに僕も少なからず興味がある、何となくの印象だが魔界って雰囲気
だし、魔族なんて居たりして・・・怖いけど見てみたい。
『ほな行くで、メーディアはん用心や結界用のアイテム持つとったよな?
それも設置しといてや、閉じたら洒落にならんさかい』
『も〜リケッツったら、あれ高いのよ!報酬の分前は考慮してよ』
『わかっとるがな、頼むで』
僕たちは警戒しながら穴の中へ侵入した、赤黒い空は何処までも
続いていた、気候的には此方の世界よりも暖かく感じるが少し
生暖かいと表現した方が正確だ。
『なかなかオモロイところやな、近くには人の気配はないわな
皆はどうや?』
『そうね、私の探知魔法にも反応は無いわ、アバン殺気は?』
『今のところ殺気は感じられない』
流石一流の面々だ、危険察知に関しては僕は完全に戦力外だな。
でもこの空間は今回の調査依頼に関係しているのは確かだと思う。
先ほど魔力が放たれた事を考えると誰かが居るのは間違いない、
それにこれ程に広い空間に誰も居ないと考える方が無理がある。
そんな事を考えていると遠くに揺らいでいる影が見えた。
『リケッツ!この先に揺らいで影が見えるよ』
『ほんまか?どこや』
『ほらあそこ、向かっている方向の50mくらい先だよ』
『ワイは見えへんけど、メーディア達は見えるんか?』
『私にも見えないわ、カルロス、アバンは見える?』
『『見えないな『』
なぜ僕にだけ見える・・・こう言っては何だが僕は異世界人
だけど、彼らを凌ぐ様な特殊能力は無いと思う。
何でだ???
でも見えているのは僕だけで対応できるか分からないが、それでも
何か対応しないとな。
『よう分からんが見えてんのはユウだけや、調べてみてや』
『わかった、やってみる』
僕は揺らいでいる影に近づいて行く、半分ほど詰めたところで
影が人の形に見えてきた。
でも実体が確認できない、このまま近づくのは危険な気がする、でも
正体も分からない状態で下手に攻撃するのは何か短絡的だよな・・・
攻撃的でない魔法はアイスミストくらいしか使えない、試してみるか。
『(アイスミスト!)』
周りを囲むように徐々に影を包んでいく、次にミストの濃度を濃く
していくと温度が下がり始めた、すると影の揺らぎが治まりだした。
影に視覚阻害の効果があったようで弱まった事でリケッツ達にも
見えてきたようだ。
『おお見えてきよった、ユウ、良くやった! ワイも攻撃に参加
するで〜』
『待って! 相手には攻撃する意思は無いように思う。
もう少し様子を見よう』
『よー分からんがユウが・・・任せたで、皆もええか?』
『『『任せた』』』
何か信頼されてるのか投げやりなのか微妙は返答だったが
良しとしよう。
僕には攻撃の意思と言うよりフラフラと漂ってつ感じにしか
感じられないのだ、僕にしか認識できなかった理由は分からないが
この有利な条件で攻撃しないのは始めから攻撃の意思が無いと僕は
判断した。
さて、皆に任されたがどうするか・・・
今は揺らぎも治まり棒立ちしている様に見える、このまま近づいて
確認するしかないよな・・・用心の為、アイスウォールを展開しな
がらの接近だな。
ゆっくりと接近し影まで20mの所まで近づいた時、影の中に人の
様なシルエットが見えた。
目を凝らすと女性の様に見える、しかも頭部に角があるような・・・
それに影の様な物は彼女自身から発せられる魔力だと感じた。
この風景、頭部の角、魔力となれば「魔族」だよなたぶん。
異世界、魔族ときたら敵勢力のボス的存在だし、一度戻って対策を
立てた方が良いな。
『どないや?ユウ』
『それなんだけど、女性の様な人影が見えたんだけど、頭部に角が
あってさ・・・魔族?って存在してるの?』
『いるで、滅多に遭遇はせえへんけどな』
『私も見た事は無いけど噂話は聞いた事あるわね、カルロス、アバン
はどう?』
『何処かで話に聞いたくらいだな』
『俺もだ』
どうやら魔族は存在しているようだが滅多に会えない存在らしい。
であれば危険性は不明なのかな?
『リケッツ、魔族は危険な存在なのかい?
先ほどより接近して調べないと状況判断だできないと思うんだ』
『そやな・・・ワテの知ってんのは魔族が危険っちゅうのは無いな
人族や獣人族なんかと同じやしどんな種族にも危険な奴はおるで
皆はどうや?』
『そうね〜私も危険な種族とは聞いた事は無いわ、魔力は独特な
物を持っていると聞いた事はあるけどね』
ここまで話を聞くと絶対ではないが危険は少ない感じだが
無警戒で近づくのは愚かだろう、どうするかな・・・
そんな事を考えているとリケッツが話始めた。
『今度はワイも行くさかい、正体を確かめようやないか』
『じゃ、行きましょう』
リケッツも来るなら心強い、残る問題は纏っている魔力を
何とか消さないとな、アイスミストを強めに直接当てれば
消えるだろうか?
確信は無いが今の僕の使える魔法の中で使えそうな魔法だしな。
ダメならリケッツに任せよう。
僕はリケッツがいる安心感から一気に接近し魔法を放つ。
今度のアイスミストは液体が凍結する強さだ。
目論見通り纏っている魔力の消去に成功した、見えてきたのは
頭部に角がある少女だった。
僕たちは立ち止まり現れた少女を見つめていた。
『リケッツ、少女だよね・・・今のところ危険は無いと思うけど
どうしようか・・・』
『そやな〜相手は女の子やし、ここはメーディアに任せるか・・・』
『お〜いメーディア! 来てや』
その案は正解だと思う、女性と言う以外にも理由が・・・
何か薄い半透明な生地の布を纏っているだけで男にはちょっと
目のやり場に困るのだ。
特に危険が無ければメーディアに任せるのが良いと思う。
『何???え!、ちょっと向こう見なさいよ貴方達』
『これを使ってください』
僕は収納魔法で持ってきた毛布をメーディアに手渡した。
それにしても変わった衣装だな、どんなに種族が違えど彼女の
衣装は特殊だと思う、何となくだが儀式用の衣装って感じだ。
メーディアは手渡した毛布で体を覆い近くにあった倒木に
座らせ僕たちは彼女の前に立った。
『リケッツどうする? 話しかけるにしても、魔族の言葉って
僕たちは理解できるのかな?』
『大丈夫やろ、魔族はな言語が違っても魔力で理解しよる』
何か凄いな・・・僕も欲しい能力だな、でも安心できたよ
始めは挨拶かな?意識が有るか確認したいな。
『ねえ君・・・僕の声が聞こえるかい?』
僕は繰り返し彼女に語り掛けた、何度語り掛けたか・・・
数分後に彼女の体が少しだけ動きがあった。
『大丈夫かい?』
すると彼女の目がゆっくりと開き、僕を見つめてきた。
『!!&%0−−%#@#0−』
『僕の言葉は分かるかい?』
彼女は少し考える素振りを見せ、その後話し始めた
『貴方は誰?、ここは何処?』
『僕はユウ、何と言うか・・・冒険者かな?、ギルドからの
依頼でこの場所を調査しに来たんだけど、場所と言うかこの
空間については僕たちも良く分からないんだ。
もし、貴方がこの空間の事を知っていたら教えてほしいな。
後ろに居るのは僕の仲間だよ』
『貴方達の事は理解した、私に危害を加ないなら私は攻撃は
しない、この空間は魔族に伝わる古い魔道具で作った。
理由あって身を隠している、何故に我と接触した?』
『何故って・・・僕たちはこの地に調査に来たんだ。
ここに住まう住人多数が行方不明となり先行して調査を行って
いた調査隊も音信不通となり僕たちが調査に来たんだよ。
君は何か心当たりは無いかな?』
彼女は少し考える素振りを見せた。
この状況は少なからず彼女が関係してると思う、何か聞き出せると
良いのだが。
『ああ・・・なるほどな。良いかよく聞くのだ、この空間は我を
守る為の空間結界じゃ、お主等が何事もなくこの空間に存在でき
るのは入ってきた穴に空間を固定した魔法が通り抜ける際に
肉体を守る役目も果たしたのであろうな。
それが無ければ肉体は崩壊する、行方不明の者たちは生きては
おらんじゃろ』
その話が真実なら・・・いや真実だろうな、生存者は全て死亡と
報告するしかない。
こうなった原因は穴の存在だ、ギルドの調査依頼を考えると穴は
最近出来たと思われるがそのあたりを聞いてみるか。
『この穴は貴方が出現させたのか?』
『そんな事は知らんよ、我はここに身を潜めていたに過ぎぬ。
隠れている状況で侵入を許す事になろう穴など作る理由は
無かろう・・・じゃが、予測出来ん魔力の揺らぎが原因で
意図せず穴が空くことも否定はせんが』
なるほどな不可抗力で出来た穴の影響で多く被害者を出したが
この世界は魔法など超常的な力が存在している事で、自分の身は
自分で守ると言う基本的な常識がある。
害意による殺戮は別だが魔力暴走などで命が奪われる事はよくある
事らしく罪に問われる事はあまり無い。
この世界は命を軽く見ているのではなく、世界観の違いによる
常識の様な感じだ、僕も始めは戸惑ったが今は受け入れている。
『聞いた通りだけど、このままギルドに報告って事で解決だよね?』
『そやな、魔族絡みの魔力が原因やし報告で終わりやな・・・皆も
ええな』
『仕方ないと思うわ、巻き込まれた方は可哀想と思うけど、これは
私達に何か出来る訳でもないでしょ? 私はリケッツに賛成』
その後カルロス、アバンも、そして僕も同意した。
しかし問題も残った、魔族である彼女の存在である。
ギルドに報告する場合の証拠として彼女から証言が必要になるのだが
彼女がこの場所から離れてしまったら空間結界は消滅するそうだ。
もう一度空間結界を発動するためには膨大な魔力を必要とするらしく
当時は30人の魔族でこの空間結界を設置したのだそうだ。
なので彼女一人では数年かかるらしく、それまでの彼女の生活を
どうするかが問題となった。
『この様な場合はギルドは引き受けてくれないのだろうか?』
『ユウ、ギルドはな慈善団体やないし、相手は魔族やからな・・・
間違いなく押し付けられるわな』
『私は無理だからね・・・』
『俺も無理』
『同じく』
『わてかて無理や、次の仕事が待っとる』
『え〜〜僕だって・・・』
困り果てた所で彼女が会話に入ってきた。
『何じゃお主等、妾を放り出すつもりかえ・・・無理やし結界から
出しておいて無責任ではないかえ。
詳しくは語れぬが妾は隠れていなければならんのじゃ。
なんとかせい!』
この流れは僕が何とかしなければならない流れだよな・・・
しかし僕が一人で決めて良い理由ないし、家族と相談しないと怒られ
そうだよ。
それに魔族だし・・・大丈夫かな?
『分かったけど僕だけで決める事は出来ないよ、家族と相談させて
ください』
『そやろな・・・よし、ユウが相談してる間はワテらがここで
この魔族さんを預かるよってな、皆もええか?』
他のメンバーもリケッツの提案には賛成だった、僕は急ぎ帰宅し
この事を家族全員と話し合った。
アンナと子供達は賛成してくれたが、シャナは少し不安な様子だった。
魔族でもあり年若く見える容姿が不安になったのだろう、そこで預かる
条件として増築し、そこに住まわせる事だった。
でも良く考えてみると我が家の状況は異種族が集まっている
人族にエルフに獣人そして魔族、まるでコスプレ家族状態だよね・・・
大丈夫だろうか・・・
僕は家族の了承を得てリケッツの下に戻り彼女を連れて家路についた。
リケッツと他のメンバーはギルドに報告と報酬を受取に行くので別行動
となった、僕の分の報酬は届けてくれるらしい。
気になるのはギルドの彼女に対する対応である、僕が引き取る事を容認
するのだろうか?
結界内には戻すのは簡単ではなく、それに理由があり身を隠してる
そこを考えると匿うにもリスクがありそうだ・・・
その辺もリケッツに相談したいところだが今は考えてもしかたないな。
彼女を連れて戻ると部屋の増築は終わっていた、ズムコ流石仕事が
早い!頼りになる建築屋だ。
そして大切な事を忘れていたのに気づいた、それは彼女の名前を聞いて
いなかったのだ、一緒に暮らすのだから聞かないとマズイよね。
途中で購入した生活用具を部屋に置くと夕飯時になったので一緒に食べる
のか聞いたが今回は部屋で一人で食べたいらしく別々の夕食となった。
食べ終わった頃に来て名前を聞くとしよう。
『食事は美味しかった?』
僕は彼女の部屋に来ていた。
『うん、美味しかったよ』
『これから一緒に暮らすのだから名前を聞いても良いかな?
会話するのに不便だからさ』
『シェルファ』
『シェルファ、僕はユウ、よろしくね、今日はゆっくり休んでね
家族の紹介は明日するから』
『わかった』
彼女は移動と緊張からなのか多少疲れている様に見える
それにシャナ達ともう少しシェルファの事を説明しなくてはならないし
できればシェルファが隠れている理由が聞ければと考えた。
『もし差し支えなければシェルファが隠れている理由を教えて
ほしい、家族に危険が及ぶようなら対策をしないといけないしね』
しばらく考え込んでいる様子、やはり危険なのだろうか?
リケッツには預かる事を承諾したしな・・・危険なら家から離れた場所で
僕とリケッツ二人で対処する事も考えた方が良さそうだ。
『・・・・・・・・私は・・・・ある事から逃げているのです。
私はシェラウ魔王国王女なのです・・・』
シェルファの話だと王国の王位継承争いに巻き込まれたらしく
それで隠れているらしい。
彼女は第一王女であり王位継承権第2位、兄の第一王子が王位を継ぐ
はずだった。
魔族の世界では実力のある者が王位を継ぐのがよくある事でそこに
男女の区別は無いのだそうだ。
彼女の魔力、魔法レベルは非常に高くシェルファを時期国王に押す
声が高まってきた事で兄の派閥から命を狙われた。
彼女の側近達は武に精通した者が少なく守りきれないと判断し隠す
事でこの争いから遠ざけようとしたらしい。
ここまでが彼女の記憶でその後の事は分からないらしい。
正直この状況は僕には荷が重いと感じている、現在進行系で狙われ
ているのであれば家族にも危険が及ぶだろう。
でも僕がここを離れ調べに行くのは避けたいな、家族が無防備になって
しまう。
ここはリケッツに調査を頼むのが良いだろう、状況を説明すれば
引き受けてくれると思うしね。
でもこの状況で家族に説明するのは難しいな、ある程度は真実を
隠して話す事にしよう。
『シェルファ話は分かった、でもこのまま家族に話すには刺激が
強すぎると思うんだ、王女である事、王位継承の事も今は伏せ
させてくれ。
魔法実験中に魔力暴走で空間に閉じ込められて事にしたいけど
どうかな?』
『それでいい・・・でも貴方達を危険な事に巻き込むかもしれない』
『その辺の事情と調査を僕の仲間に頼む事にするよ』
その後、家族に事情を説明し彼女の事を受け入れてもらった、
数日後にやってきたリケッツには魔王国の調査を頼んだ。
王位継承とかゴタゴタが解決してると良いのだが・・・
『それで私はここで何かしなくてはいけないのでしょうか?
私は貴方達の事を何も知らんでの・・・』
『そうだな、特に無いんだが・・・何かしたい事とかあるかな?
まだ来たばかりだ、焦らないで徐々にね』
こうして彼女との生活が始まった。
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第1章 14話
シェルファ(シェラウ魔王国王女)との生活も二ヶ月を過ぎた頃には
家族として受け入れられた感じになった。
ここは彼女を発見した場所からかなり離れた場所であり、家の敷地全体に
魔力反応を封じる結界魔法をリケッツに施してもらい外部から探知され
る事は無いとの事。
彼女には少々不自由を感じさせると思うが家族の安全の為、我慢して
ほしいと伝えたら、あっさりと承諾された。
以前の様に封じられるよりはマシとの事。
程々に広い敷地と家の中で好きな事をしながら彼女なりに楽しんでいる
感じだ、まずは一安心。
僕の方は元の世界での資金調達(投資活動など)について考えを整理
していた、此方の世界で手に入れた物資を元の世界で売った資金を投資
に回して増やしているのだが、将来的には元の世界で商売なんかをして
生活できればと考えている。
何故かと言えば異世界と元の世界では命の危険が違いすぎる、現代日本
では余程の無茶や運が悪くないかぎり普通に生活してて死ぬ事はない。
魔法や魔獣が普通に存在する異世界では自分の命は自分で守るのが一般的
なのだ、この世界にも騎士や憲兵は存在するが基本は自己防衛だ。
弱い者は強気者に蹂躙される事は珍しくない、平和な世界を経験した者に
とっては異世界に定住するのは少し抵抗がある。
でも異世界の全てを否定はしない、今まで出会った人々には素朴さと
誠実さが有る様に思えるからだ、普通に生活するだけでも緊張感が伴う
事が少なくない状況ではお互い思いやりや助け合いが必要となる。
だから集団生活で互いの結びつきが重要なのだろう。
関係性が希薄な元の世界の方が孤独だった自分状況を考えるとどちらが
良いのか考えさせられてしまう。
異世界で結婚した僕は子供を儲けると思う、どちらに似るか分からない
けど見た目が人族であれば元の世界で教育を受けさせた方が・・・
なんて考えたりもする。妻(シャナ)には怒られるかな?
異世界での教育は読み書き計算を教える小学校みたいな所はあるようだが
庶民の教育はそこまでらしい、貴族は初めから家庭教師による教育を受け
複雑な算術や魔術、歴史などを学ぶらしい。
しかし教育水準などは生きていく環境に合っているのが良いのではないか?
僕の場合で考えると元の世界の知識を異世界で有効活用できたとは思って
いない、異世界には場合によっては科学を超える魔法が存在しているからだ。
比較すれば科学で出来る事は魔法でも可能な事が多いと思うし、逆に魔法
で出来る事を科学技術でしようと思えば僕一人では多分不可能であろう。
何より魔法の優れている点は個人の力である所である。
例えるなら火を使うだけなら簡単な魔法らしく異世界に生活する者なら
殆どが使えるが僕は来たばかりの時はライターでもないと無理であった。
今では簡単な生活魔法は習得したので元の世界と遜色ない環境で生活が
できている。
不便と言うか不満に感じる事は娯楽だと思う、異世界では音楽、映像、
遊びなどは比較にならない程クオリティーが低い。
音楽などは単純な弦楽器を使った演奏であり、歌と言えば吟遊詩人が
いるだけである。
配信による映像文化も無い、遊びと言えば子供の遊び程度で大人が楽しむ
事と言えば酒を飲み友と騒ぐなんて事くらいだ。
そもそも生きる事で精一杯な異世界では娯楽は必要無いのだろうが
僕としてはボードゲームの様な物はあっても良いのではと思うのだが。
ん?、これってもしかしたら売れるのでは・・・リバーシなら木で作れる
かもな、そのうち試作してみよう。
異世界との往復商売で元の世界での現金は500万程貯蓄できた。
200万は異世界で仕入れた置物などの売上で他は株の売買をこまめに
行った成果である。
ある程度資金ができた事で投資(現物取引)に本腰を入れようと思う。
コツコツと狩りを行いロックラビットの魔石を貯めたので未来の新聞を
取り寄せる事が出来るので全額投資でもリスク無く運用する事ができる。
目標はカフェ開業の資金である、まだ構想の段階ではあるがコスプレカフェ
を考えている、何故なら従業員がエルフや獣人でも自然に受け入れられる
と思う。
シャナや子供達も一緒なら定住じゃなくても皆で一緒に過ごせる時間が
多くなるし楽しいのではないだろうか。
シャナも連れてきた時は凄く楽しそうだった、子供達も楽しめると思う。
この辺も含めて今度シャナに話してみるかな。
今日はヤニスの店で仕入れる為にシャナと街に来ていた、狙いは金属製
の置物である、銀製の置物は査定も早く高値で売れるからだ。
前回も一つ20万程で買い取ってもらった。
『雄靖さん、二人で街に来るのは久しぶりですね』
『そうだね、最近は子供達の事で忙しかったしね、仕入れが済んだら
食事でもしながら、ゆっくりしないか?』
『はい、嬉しいです』
ヤニスの店で物色していると、ちょっと変わった置物を見つけた
僕から見たら特に変わってるとは思わないが、異世界に有る事が
不自然なのだ、それは観音像によく似た・・・いや観音像だよ。
異世界では偶像崇拝は殆ど無く、自然信仰が普通と以前シャナから
聞いた事がある。
それにたまたま似てるって言うか、そのまんま観音様ですよ。
ん〜見れば見る程・・・僕以外にも転移者はいるのだろうか?
ちょっと気になるのは額にはめられた宝石の様な石かな、魔石とは
ちょっと違う感じの光を放っていて、僕の知識ではダイヤモンドに
似ている感じがする。
魔石は少しくすんだ光を放つので僕でも違いがわかるのだ。
こちらにも宝石はあると思うが僕はまだ見たことが無い。
聞いてみるか・・・
『ヤニス、ちょっと良いか? この置物の額に付いてる石は魔石か?』
『ああ、それか、魔石ではないぞ、ただ綺麗な石ってだけの価値の
無い石さ、気になるのか?』
『これはよく取れるのか?』
『そうだな、石材を採取する際に一緒に取れるのさ、魔石に似てるが
魔力は無く使い道の無い石さ』
『この置物はいくらなんだ?』
『何か他の物を買ってくれたら、おまけに付けるさ、売れなくて
困っていた物だからな』
この置物には何か秘密が有りそうな気がする、持ち帰って調べてみるか。
他に銀製の置物数点とギルド依頼で使用できそうな魔石を何個か購入した。
『シャナは何か欲しい物はある?』
『そう言えば母から怪我用の治癒のポーションを買ってきてと』
『ヤニス、聞いた通りだ、何個か追加してくれ』
『今は3本しか在庫がなくてな・・・いいか?』
『分かった、全部貰おう』
商品仕入れを終えた僕達はしばらく街を散策してから今晩宿泊
する宿屋の食堂で食事をする事にした。
二人でゆっくりと過ごすには宿屋の方が良い、お酒も飲みたいし
酔っても宿屋だしね。
『そう言えばポーションって誰か怪我してるの?』
『シェルファさんが時々魔法を暴発させる事がありまして、擦り傷
が絶えないのですよ、大怪我になる事は無いと思うのですが・・・
備えですね』
『シェルファは魔力も多いし時間を持て余してるんじゃないかな?
魔法以外にも何か興味を持ってくれると良いのだけれど』
『賢い子ですから心配はしていませんよ、魔法で怪我をしてからは
考え込んでいたようですが、最近何か始めようとしているみたいで
雄靖さんが集めてたロックラビットの魔石を弄っている事が多い
ですよ』
『え、あの魔石を・・・』
ちょっと怖いな、彼女は魔族だし僕が世界を行き来している事と
魔石の関係を・・・知っているのだろうか?
でも話してないし・・・それとも異世界転移の方法を知っているのか?
今度聞いてみるか、今はシャナの事に集中しよう。
仕入れを終え僕達は宿の食堂で食事をする事にした、お互い軽めの
食事を取りお酒を飲みながら時間を過ごす事にした、普段は仕事や
生活の雑事に追われ二人でゆっくりと話す時間が最近は取れない事が
多くお互い話したい事が溜まっていた。
『食事、美味しかったね、今日はシャナと色々話したくてさ・・・
どうかな?』
『私もよ、あなた。あ、そうだわ・・・変わった置物を買ったみたい
だけど、貴方にはあれが何か分かっているの?』
『あ〜あれか。僕も驚いたんだけどさ、あれは僕の世界の仏像・・・
解らないよね、神様の像なんだ。
僕も見た時は驚いたよ、まさか此方の世界にあるなんて・・・』
『神様?あなたの世界には人の様な神様がいるの?』
『いや、実在はしてないよ、中には熱心に信じている人もいるけどね
僕は違うけど。
でもちょっと違和感があったから調べようと思って買ったのさ。
それに僕以外にもこっちの世界に来ている人がいるのかと思ってね』
『そうなのね・・・。 他にも色々と仕入れたみたいだけど近々
元の世界に行く予定はあるのよね? 黙っていかないでよね!』
『行く時は話しますよ、それに一緒に行きたいしね。 それに相談
した事があるんだよ』
『相談?』
『2つの世界を行き来しての商売で結構お金が溜まってさ、前から
計画してた事があって・・・・・・・』
僕は彼女に一定の資金が出来たら元の世界で商売を計画していた
事を話した。
商売はコスプレカフェ、彼女に理解しやすく異種族が働く軽食屋と
説明した。
それを聞き疑問に満ちた顔をしていたのは以前一緒に元の世界に
来た時には人種族の世界でありそれ以外の種族は存在していない事を
知っていたのだ、なので異種族が働く軽食屋を不思議に思ったようだ。
これを理解いしてもらうにはコスプレを説明しなくてはならない、
元の世界には好きな想像上の存在を変装によって表現する文化があり
そのような行為をコスプレと言う。
それにこれが上手く行けばシャナや子供達も一緒に過ごせる可能性が
ある事も付け加えた。
『面白そうね、私も貴方と過ごす時間が増えれば嬉しいわ、それに
あなたの来た世界も好きだし、また行きたいわ、でも子供達は
どうかしら・・・シェルファは興味を示しそうだけど魔法を使われ
たら大変じゃなくて?』
『そうだね、興味があれば何回か連れて慣れさせる事とあちらの世界
の常識を教えてからかな』
『お母さんも連れて行きたいわ、二人で買い物なんかも行きたいし
きっと喜ぶと思うの・・・いかがでしょうか?』
『そうだね、今後お母さんの理解を得る為にも必要かもね、でもこの
事を知ったらどんな反応をされるか・・・ちょっと不安かな
でもいつかは話そうと決めていたんだ、良い機会だと思っている』
『お母さんは理解してくれると思うわ、だって私の幸せを一番に考えて
くれるお母さんが私の愛した人を信じているだろうし、あなたの
誠実さも分かっているのだから、貴方が何処から来たのかは気に
しないと思うから、あまり心配しないで』
『話す時は傍にいてくれるかい?』
『そのつもりよ』
『二三日後に行きたいと思っている、大丈夫かい?』
『じゃ、母には出かける事を話しますね』
しかしこの後、予想外の展開になった。
シャナの母が付いて行くと言い出したのだ、僕と娘の行き先が気に
なっていたらしくシャナが問い詰められてしまった。
詳しくは後から僕が話す事で納得してもらったらしい。
何時かは話さなくてはならない事だったし、良い機会と考え話す
事にした。
『お母さんに話すのは問題ないよ、僕も話さなければと思っていたし。
でも、一緒に行きたいんだよね?
僕の真実を知って、それでも同行したいとなった場合さ子供達は
どうしよう・・・ここに置いてくわけにもいかないよね』
『そうですよね・・・困りましたわ』
『その辺は後から考えるとして、できるだけ話すのは早い方が良い
と思うんだ、今晩あたり話さないか?』
『そうよね、私も同じこと考えていました』
その夜、食事を済ませ子供達を寝かしつけてから三人ではなしを
した、初めは僕がこの世界に来た経緯と2つの世界を自由に行き来
できる様になった事。
彼女に対する気持ち、今後は元の世界と両方で生活する事を考えて
いる事などを話した。
大雑把な説明を終え次に彼女が僕に対する想いと僕の来た世界に共に
渡った時の事や両世界での生活に同意している事を話した。
一通り話し終えると母は質問してきた。
『雄靖さん、貴方が来た世界へ私も行く事はできますか?娘の話を
聞いて私も行ってみたくなりました』
『大丈夫ですよ、でも三人で行くとなると子供達を残しては行けません
から子供達に色々話さなくてはなりません。
僕の来た世界は人族だけの世界なのでエルフや魔族は見た目を何とか
ごまかせると思うのですが、獣人はちょっと工夫が必要でしょうね』
その後は三人で行くことを前提に何からすべきか話し合った。
お母さんについてはシャナと同様に耳の特徴を隠せば問題は無い、
シェルファも同様で外見はエルフと変わらないので外見は良いのだが
魔族なので魔力が多く常識も他の種族とは違うようで行く前に丁寧に
理解しやすく教える必要があるな。
難しいのはアズ(猫人族)だな、人族とはちょっと顔立ちは問題ないが
耳が猫耳なんだよな・・・ずっと部屋にって理由にもいかないし。
『そうですわ、いつ聞いたか忘れましたが身に付けると姿を誤魔化せる
魔石があると聞いた覚えがあります、詳しくは分からないのですが』
『あ、お母さん・・・私も聞いた事ありますわ』
『それは良いですね、何処かで売っているのですか?』
『よく覚えていないのだけれど、何処かで売ってたような・・・』
『今度ヤニスの店で聞いてきますよ』
話は子供達も連れて行く事で話は纏まった、僕が異なる世界から
来た事は驚かれる事も無く受け入れられたのは・・・なぜだろう?
不安や疑問よりも興味の方が勝ったのだろうか・・・
僕としては驚きの表情が見たかった気持ちもある、でも心配されたり
拒絶される方が怖いかな。
お母さんが行きたい気持ちも何となくだが理解できる、僕だって
話を聞いたら、そして危険が感じられなければ行きたいと思うよな。
異世界って言葉はワクワクする言葉だしね。
話し合った結果、元の世界には全員で行く事になった、時期は
身に付けると姿を誤魔化せる魔石を手に入れてからになるだろう。
僕はヤニスの店に行き情報収集、シャナは子供達の着替えなどの
準備を始めた。
『ヤニス、ちょっと聞きたい事が有るんだが』
『いきなりだな、おい。物事には順序ってのがあんだよ、始めに
挨拶じゃないか・・・』
『あ、すまん。元気か?ヤニス、来たぞ〜、これで良いか?』
『何だそれ、しかたね〜な、で、何を聞きたいんだ?』
『身に付けると姿が変わるって魔石が有ると聞いたんだけど
ここでも手に入るのか?』
『ああ、それか・・・売り物じゃないぞ、確か・・・何処ぞの
魔女が魔石に魔法を施して作るはずだ』
『何か簡単ではなさそうな気がするが・・・』
『何でも魔女はお金で引き受けないらしく、作る為の条件を
言うらしいな、条件は俺には分からんがな、魔石はここでも
売ってるぞ、買うか?』
『そうなのか!買わせてもらう』
『これが魔石さ、求言保の魔石だよ、一つで良いのか?』
『高くなければ二つ欲しいな、いくらだ』
『あまり使い道の無い魔石だから安いぞ、一つ銀貨一枚だ』
『なるほど、魔石にしては安いな、二つ貰うよ』
魔石を購入し魔女の事を聞こうとしたがヤニスは知らない
らしくギルドなら情報が有るかもしれないと聞きギルドに向かった。
ギルドでの情報は誰でも聞けるのだろうか?
やはり受付で聞くのが無難だろう。
『すみません、聞きたい事があるのですがギルドでの情報提供を受ける
には何か手続きが必要なのでしょうか?』
『そうですね情報の秘匿性にもよりますが、差し支えなければどの様な
情報なのか教えていただけますか?』
『じつは魔石に魔法の付与を依頼したく付与が行える魔女の居場所を
知りたいのですが』
『そうですか、ギルドは仕事依頼の仲介も行っておりますので何人かの
魔女様の紹介は可能です、ランクにより付与費用は異なりますので
どうなさいますか? ランクはA〜Cの三段階です』
『ランクによる違いを知りたいのですが可能でしょうか?』
『そうですね、簡単に説明すれば付与に係る時間の違いでしょうか』
なるほど・・・よほど極端でなければ時間の違いはそれほど気に
ならないし、それより距離の問題かな・・・
『あまり遠くでない方が希望なんですが・・・』
その条件でお願いしたところ、ここから徒歩で3時間程の町外れに住む
魔女を紹介された、ちなみにランクはBらしく名はカルグスレン、今から
訪ねる事にした。
一度家に戻りシャナに魔女の所に行く事を伝え4時間程で到着した。
魔女に会い魔石の付与を依頼したが、報酬は金銭ではなく魔女が心踊る
出来事、または魔女が見たこともない物品の提供を条件としたきたのだ。
面倒くさいな、この魔女は・・・どうしようか・・・
彼女が心踊る出来事なんて、考えもつかないしな・・・
であれば魔女が見たこともない物で考えた方が良いだろう。
僕は以前ヤニスに好評だった虹色に輝くグラスを空間収納から取り出し
魔女に見せた。
『ま、何だいこれは!信じられない・・・』
だよね〜異世界ではガラス製品は貴重品だし百均製品だけど、こちらの
世界ではかなりクオリティーは高いのだ。
『これでどうですか?魔女様?』
『ちょっと鑑定しても構わないかい?』
『どうぞ』
魔女は何かの魔法を発動した、その後しばらく考え込んでいたが
僕の目をじっと見つめ質問してきた。
『お前は何者で何処から来た?』
『え、なぜその様な事を聞くのでしょうか?』
『この魔法は物の過去を遡り見る事ができるのです、見えたのは
雰囲気がまるで違う町と見たことも無い機械、不思議な格好を
した人々、こことは異なる世界に思える。
どうゆうことか説明してもらいましょう、商談はそれからですね』
そんな魔法があったとは・・・これは多分誤魔化せないな。
リケッツにも話したし、絶対的な秘密と言うわけでもないが今回の
場合は魔石に付与依頼する関係上話さないと断られそうだな・・・
でも、口外はしない事を条件にする。
『わかりました、でも僕から聞いた話を口外しない事、そして約束を
守る為の手段を提示してください、これが話す条件です』
『そうだな、契約魔術ってのが有るんだよ、互いに条件を定め条件が
守られなかった場合は予め決めた制裁を受ける魔術。
これでどうだ?』
そんな魔術が有るのか、なら大丈夫そうだ。
こちらの条件としては、この件で僕から得た情報は僕以外には口外
してはならない。魔女側は正確な情報を得る。
制裁としては少し厳しいが内容が内容なだけに消滅だろうな。
僕はこの条件を魔女に伝え契約魔術を実行した。
『驚いた、君は異なる世界から来たのか?・・・
思考を覗かせてもらったが、こちらとはかなり違う世界のようだね
魔法は無い世界みたいだが、それに変わる技術が存在していて
なかなか興味深い・・・そしてこのガラス製品もその技術で作られた
物なんだね』
驚いたな、そこまで詳細に見えるのか・・・契約魔術を行ったのは
正解だったようだ。
魔女の言葉を聞くと鑑定魔法の域を超えてると思うのだが、何処まで
見通せるのか確認しなくては!
『確認したいのですが、鑑定魔法ですよね?何かそれ以上見えてる様な
気がするのですが?』
『ああ、すまん。鑑定とは言ったが今使ったのは時遡の魔法と言われる
魔法で対象物と周辺を見渡す事が出来るのさ、あまりにも異質な物
だったので、念の為見させてもらった』
これは下手な誤魔化しは不審がられるだろうな・・・
付与魔法を断られるのは避けたいし魔女がどの様に理解するかは
分からないけど正直に話してみるか。
『実は僕は異世界からの転移者なのです・・・・・・・』
僕は元の世界から来た経緯と自由に行き来出来る事を説明し、今回の
依頼も理由も話した、色々な戦いやリケッツ達の事は話してはいない。
話している間、魔女は興味津々な眼差しで聞き入っていたが、話を終え
ると話しかけてきた。
『なるほど・・・面白いね。分かった! 付与の件は引き受けよう
しかし条件が有る、「私も同行させる」これが条件だ、その代わり
付与費用は必要無い。どうだ?』
この魔女は好奇心が旺盛らしい、同行には問題は無いが勝手な行動
をされるとマズイと思う、変な要望や行動を僕が抑えるのは難しそうだ
実力の有る魔女みたいだし・・・どうしよう。
そうだ、リケッツにも僕の来た世界の事は話したし同行できるか聞いて
みるか、彼なら魔女を抑える事ができるかも、よし!
『同行する事は問題無いけど、約束してほしいことがある。
単独行動と勝手な行動はしない事、持ち帰りたい物は僕に相談する事、
魔法は使わない、あちらの世界では争い事は絶対ダメです。
服装の事もあるので少し準備期間が必要です。
この条件を承知するなら良いですよ』
魔女は少し考えていたが、この条件を受け入れると約束した。
話は纏まったので魔石に魔法付与を行い、転移する日が決まれば知らせる
と約束し家路に就いた。
帰宅した僕はシャナに魔石付与を終えた事、転移に魔女も同行する事を
話した、魔女の勝手な行動を警戒する為にリケッツも同行させる事を考えて
いる事などに彼女の考えを聞いてみた。
『良い考えだと思いますよ、私は賛成です』
と了承を得、早速リケッツに連絡したところ
『行くで!、任しときなはれ』
だよね、僕の世界の事はリケッツも興味あったみたいだし、この返事は
僕も予想してた。
転移の為の準備、洋服や子供達への注意事項の説明、リケッツや魔女と
細々しい事の打ち合わせを済ませ出発は1ヶ月後と決まった。
大丈夫かな・・・不安・・・。
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第1章 15話 皆で元の世界へ
出発は1ヶ月後と決まり僕達は準備に追われた、僕の準備は然程無いので
子供達の準備を手伝っている。
お母さんはシャナと楽しそうに話しながら毎日、何処に行こうかと話して
いる、シャナは何度か来ているので話しを聞きながらワイワイといった感じだ。
エルフの容姿は魔石によって何とかなるが、衣服だけは購入するみたいだ。
お母さんは見た目も若くシャナと姉妹と言っても良いくらいだし体力的にも
精神的にも長寿の影響で若々しく有るのだろう。
子供達は特に騒ぐ事もなく過ごしている、多分だが実感が湧かないのだと
思が転移後の行動、守るルールは教えるつもりだ。
一番心配なのは言葉が通じないので勝手な行動はしない事だ、必ず僕と行動
する事を守る事。
シャナ以外は会話は無理なので今回は集団行動になる、それと魔法ま勿論
行使は不可、身体能力についても人間を超える事はダメな事は子供達には
絶対に守る事を教えなくては・・・
『アズは思いっきり飛んだり跳ねたり全力で走ったりはしないように、そして
アゼロは魔法は絶対にダメだよ、それと世界を渡ったら魔法で僕と同じ種族
に見える様にするからね』
『『なんで〜』』
『これから向かう世界にはエルフや獣人はいないんだよ、人間だけの世界なんだ
それに魔法も無い、だから正体が知れたら大騒ぎになるんだ』
『『わかった〜』』
横で聞いていたアンナ(母)も頷いていた、魔女カルグスレンにはもう一度
注意してた方が良いな・・・かなり好奇心が強いようだし。
各々が着替えなどの準備をしながら出発の日を迎えた。
『これから出発するけどいいかな?』
『楽しみね〜』
『『行こ〜〜』』
『問題無しじゃ、早よ始めよ』
皆の言葉と共に僕は腕輪に転移の意思をつたえた、光に包まれ
転移先である僕のアパート(僕の借りている部屋に)到着した。
自分で言うのも何だが殺風景な部屋なのだがシャナ以外は初めての
場所なので興味津々に周りを見ていた。
『皆聞いてくれ、僕はここから世界を渡ったんだ。今いる場所はこの世界で
住んでいた部屋だけど今後の活動拠点になるからね。
何か聞きたい事有るかな?』
『『はい、はい、は〜い』』
初めに聞いてきたのは子供達だ。
『何?』
『『お腹減った〜〜、ご飯食べたいよ〜』』
育ち盛りだからな・・・環境が変わっても動じない食欲・・・逞しい。
さて、どうするかだが外食が主なので部屋には買い置きの食料は置いてない
しな・・・子供達以外も食事を希望なら少しは不安だが外食またはトラブル
を考えなくて良い買い出しにするかだな。
『子供達は食べたいみたいだけど、他の皆はどうする?』
『我も食したいな』
『お母さんは食べる?』
『そうね、皆さんに合わせますよ』
『じゃ、来たばかりなので、お弁当を買ってくるので部屋で
食べながら落ち着きませんか?』
この提案に皆は賛成してくれた。
そこで弁当の希望を聞いたのだが全員肉料理を食べたいようだ
弁当の種類を細かく説明したら好みはバラバラだった。
シャナは豚肉の生姜焼き弁当、お母さんは肉入り野菜炒め弁当
魔女カルグスレンは焼き鮭弁当、子供達は一つに決められなくて
唐揚げ弁当とトンカツ弁当2人分を食べるようだ、僕は鉄火丼にした。
全ての弁当を僕とシャナで近くのショッピングモールで購入し帰宅。
皆、味わいながら食事を終えた、子供達は量が多かったのか
食後の睡眠タイムとなった。
食事を終え夕刻となってしまい出かけるのは翌日にする事になり
寝る前にお茶を飲みながら明日の行動予定を話し合う事になる。
『行きたい所ってある?』
『いきなり聞かれても困るのじゃ、皆もそうじゃろ?』
『『うん』』(子供達)
『私は娘から大体の事は聞いているので、ショッピングモールには
行きたいと思います』
『どんな所が有り行ける所と行けない所が有るのか?その辺の話を
聞かせてほしいいのう、まずは話の出たショッピングモールから
聞かせておくれ』
言われてみればそうか・・・子供達とカルグスレンは全くの未知の
世界なのだから。
だからシャナに話した時の様に、この世界にあり行くのに問題のない
場所から説明した。
『じゃあショッピングモールから説明するよ・・・』
異世界では雑貨屋、武器屋、食料品を売る市場などは有るが、どれも
個人商店で食品市場以外は街に点在している。
雑貨、食品、衣類、薬などの店が一つの大きな建物の中に集まっていて
そこでは食事も出来る事を説明したら子供達とカルグスレンは目を輝かせて
いた、その後はどんな食べ物の食事ができるのかや雑貨は何を売って
いるのかなど一時間ほど質問攻めになった。
子供達は食べ物、カルグスレンは以前に見せたガラス製品やアクセサリー
などに興味を持ったようだ。
彼女は貴族ではないが一般人とは違う身分であることから多少変わった
物を購入しても秘匿性を考慮すれば問題は無いと思う。
そしてシャナとお母さんは何やら二人で回るショップを決めているらしい。
『他にショッピングモール以外にも色々な施設が有るのだけれど今回は
二泊三日の滞在と決めているので滞在期間の短さと慣れない環境を考えると
滞在期間は団体行動とします、よって一箇所で多くを見れるショッピングモール
を初日に、後は皆の意見を聞きながら二日目は決めたいと思います』
『ま、それは仕方ないじゃろな・・・お主の心配も理解はできるしな
我はそれで構わぬよ、また来る機会も有るかもしれんしな』
『お母さんと子供達は何かあるかい?』
『『美味しいご飯が食べれれば、言う事無し!』』
『娘と色々話してたので行きたい所は決めていますのよ』
『そうでしたか、シャナと行動を共にするのであれば僕も安心です』
なるほど・・・お母さんはシャナが同行するならショッピングモール
の中であれば二人だけでの行動も良いかもしれない。
そこで昼食までは二手に分かれて行動する事にした、シャナはお母さんと
他の三人は僕が案内する事にした。
『さてと何処から回ろうか?』
『我はお主が持っておるガラス製品を買い求めた所に行きたいのだが』
ああ、そうだった・・・欲しがってたもんな、100円ショップで
満足できなければ他に案内するとして・・・100円ショップなら子供達も
玩具があるので大丈夫と思う。
『アズ、アゼロ、これから行く所は玩具も有るからいいよね?』
『『は〜い』』
そして僕達は100円ショップで物色する事になった。
『おおおお、これは・・・何とも素晴らしい、値段はいかほどなのだ』
『気に入りましたか?お金の事は気にせずこの籠に入れ下さい、僕が
支払いますので』
『よいのか?よいのか?』
僕は了承し彼女は籠にガラス製のコップや小物入れを次々と入れていた。
子供達は初めは玩具を見ていたようだが食べ物を見つけ籠に入れている。
こちらの世界のお菓子や飲み物は新鮮に感じるのだろう。
でもこの後食事の予定なので買った食べ物は帰ってからと注意した。
『ねえねえ、この籠いっぱいに買ってもいいの?』
『二人で籠一つ分だよ、いいね。こっちの小さな袋に入っているお菓子なら
沢山の種類が買えるよ』
『この色のついた水は飲み物なの?』
『ここに並んでいるのは飲み物で果実の味が多いかな、何本か買ってみな』
子供達は目移りしながらドリンクを選び始めた、見ているとオレンジと
ぶどう味を選んだようだ、異世界で子供が飲めるのは水くらいなので
見た目にも美味しそうなのを選んだのだろう。
買った商品を人目を避け収納魔法を使って保管、カルグスレンは収納魔法
が使えるようで自分で保管していた。
僕は異世界で使えそうな自分用の筆記用具や整理箱、商売用には陶器製の
小さな人形や調味料(唐辛子や胡椒など)を買った、異世界でもやはり
香辛料などは高価なようだ。
シャナとお母さんはどうしているのか・・・
『お母さん、何から見る?』
『そうね、アクセサーリーや洋服がいいわ』
『それじゃ私が行った事があるお店に行きましょうか』
*二人は安くて比較的品揃えがあるアクセサリーを売る店に向かう。
『ここは凄いわ、何か目移りしちゃう・・・とても高価そうに見える
けど大丈夫かしら・・・』
『安心してお母さん、宝石ぽく見えるのは模造品だから思っている
ほど高くないわよ、安心して選んでねお金は足りると思うわ』
洋服は幅広い年代のが揃っている店がいいよね、母がどんなデザインを
好むか予想できないし品揃えが豊富な方が安心かな。
だとすれば、ユ◯◯ロかG◯がいいわね・・・そんなに高くもないし。
僕達は午前中の買い物を終え、ビュッフェスタイルスタイルの飲食店
の前で待ち合わせ中に入った。
皆の好みは分からないし少しノンビリしたかったのだ。
『ここは好きな物を好きなだけ食べれる所なんだ、でも食べ残しはルール
違反だから加減しながら食べるんだよ、なれるまでは僕とシャナが
付き添うからね・・・さ、行こう』
当然ながら異世界にはこのような食事の形式は無い、それよりも食べ放題
と聞いた子供達は驚いているようだ。
子供達には僕が付き添い、カルグスレンとお母さんはシャナが付き添う事に
なった。
子供達やカルグスレンの話す言葉は異世界語なのだが見た目は外国人なので
あまり違和感がない、それに今日は平日なので人が少なくそれほど目立って
はいない感じだ。
大人たちは食べ放題よりも品数の多さに驚いている、子供達は皿に山盛りに
取ろうとしてたが僕が山盛りでない取り方を指導した。(山盛りは目立つ)
その為、子供達は何回も往復していた。
カルグスレンも子供達もスイーツが珍しいようで食事の大半をスイーツで
カルグスレンはスイーツだけ食している。
逆にお母さんは料理に興味津々だ特に揚げ物は異世界では珍しく唐揚げや
トンカツを取りテーブルで観察している、異世界の調理の基本は焼くか
煮込むのが一般的で油で揚げる事はしない、何故なら油は貴重品なのだ。
『教えてほしいのだけれど、この黄色い食べ物の調理法は知っているかしら?』
『ああ、お母さん唐揚げですね、それは肉に衣を付けて熱した油の中に入れ
調理しているんです、隣の大きな物(トンカツ)もですよ』
『油・・・ですか、何と贅沢な・・・でも食べても大丈夫なのでしょうか?』
そうなんだよな、異世界での油は明かりに使われ原材料は魔物や動物の
脂肪から作られ作られる量も少なく貴重品なのだ。
料理に使うなど考えられないし調理法も確立されていない、それに品質も
悪く燃やすには差し支えないが口にするには向かないだろう。
『あ、そうだったね、でもこちらで使われている油は食べれる物と
食べられない物の二種類有るのですよ、これは食べれる油で作られた
料理だから大丈夫ですよ、それにそれほど高価ではありません』
『並んでいる料理を見ましたが、こちらの食文化はとても多彩で
驚きましたわ、味もとても美味しくて!』
『それは良かったです、こちらの世界ではもっと沢山の種類の料理が
有るのですが、今日はここの建物で食べれる料理をご案内できますよ
夕飯は買って帰るか、ここで食べましょう』
食事を終えた僕達は午後も興味のある店を二手に分かれて回り再び
夕方には合流し今夜の食事につて話し合う事になった。
昼と同じ場所で食事をするのは皆から反対された、折角の機会なので
色々な食事を経験したいらしい。
店で食べる以外にも弁当を買う選択もある事を話したら、興味が
有りそうだったので食品売場に行く事になった。
『え〜何ここ〜、これ全部食べ物なの???大きな市場みたい!』
あまりの広さと豊富に陳列されている食材に子供達が驚いている
大人たちも言葉を失っている感じだ。
異世界の市場は肉・野菜が中心でそこに僅かばかりの雑貨という
構成であり、飲み物やスイーツなどは売っていない。
ここは肉・野菜・スイーツ・飲み物・雑貨などが豊富に並び清潔で
明るく並べられた商品が輝いて見える。
一回りして皆に聞くことにした。
『どうかな?ここで食料を買い家で食べる?それとも食堂で食べて
帰る?』
子供達はここの品揃えに驚き、いろいろな食物を買って行きたい
ようだ、カルグスレンとシャナ親子は先程とは別の店で食べたそう
だったが今日のところは子供達の要望に合わせたいとの事。
子供達は肉料理とデザートを山盛りに買い物籠に入れている主に
ハムやローストビーフ等、そしてゼーリー、ケーキ、プリン。
見ている僕は、全部食べれるの???状態。
女性陣はデザートは子供達と同様で多めに購入しプチ弁当を数種類
購入していた。
夕飯の買い物を終え帰宅した僕達は部屋の中で購入した物を見せあって
いた、子供達は早速玩具で遊び始めカルグスレンはコップなどのガラス製品
を基準は分からないが分け始めた。
妻と母親は服とアクセサリーを買ったようで早速試着を始めた。
異世界には無いデザインばかりで向こうで着るのは目立つのでどうかと思う。
気になったので聞いてみたが、今度こちらに来た際に着る為の物らしい。
異世界と比較しても服飾は豊富でお洒落だと男の僕でも思う。
明日の事を食後に話し合った結果はもう一日だけショッピングモールに
行きたいと希望された・・・
気に入ってくれたようで良かった、明日も楽しんでくれたら嬉しいな。
アズ、猫人族
◆腕輪の力◆
*
の範囲で先程の惨状と同じ様子を確認できた。
おそらくだが、ここまで来る途中の霧の中でも同じ光景が広がって
いたのかもしれない。
これ以上の探索は霧の中になる事から一度攻略方法を検討する為に
村の外に引き返し拠点を作る事にした。
人数分のテントと竈門と獣避けの焚き火のスペースを用意した。
拠点の準備と食事を終え今後の行動を議論する。
『聞いてや、あの状況から推測するとやな、村の生存者と調査に来た
冒険者は絶望的やろ、生存者の捜索はせんと原因の究明を優先
せなあかんな。それでええか?』
他のメンバーも僕もリケッツの判断は妥当だと思っている
あの惨状では生存者は絶望だろうし、原因不明であれば僕たちも
危険である、しかしどんな方法で探るつもりなんだろうか?
何か有効な魔法を知っているのだろうか?
『でさ、何か調べる方法でもあるの? 私は戦闘系の魔法しか
使えないわよ』
『当然、アバンも私も魔法は使えないですよ。ユウの魔法は?』
『そうですね・・・皆もご存知でしょうが、放出系の攻撃魔法
しか今は使えません』
前回の仕事の時もリケッツが探査系の魔法は使ってなかったはず。
今回も探査か調査系の魔法は有効だと思う、何か考えがあるのだろうか?
『ユウ、今日は一度も魔法は使ってないやろ?
なら魔力量は十分やな、広域的な放出系の魔法は何か使えるか?』
『そうですね、アイスミストは使えますが』
『なら、それでいこか!』
◇◇◇◇◇
『ユウ、村を包み込む感じでやな、ありったけの魔力を放出で
頼むで、ユウの事はワテらが守るさかい』
何とも無茶な・・・魔力を使い切るのは脱力感が半端ないん
だよ、しばらく動けないし・・・
ま、みんなが守ってくれるみたいだし大丈夫か。
『じゃ、始めるよ「アイスミスト・・・」』
村全体を覆うのに30分ほどの時間を有した。
霧が氷になりダイヤモンドダストの様に空中でキラキラと
輝いていた、僕は放心状態でその光景を見つめていた。
霧が晴れ視界が開かれたその時、村の入口の反対側から
膨大な魔力が放たれた。え〜ヤバくない?その時!
リケッツの声が聞こえた。
『今や、メーディアあそこに行くで!』
僕は二人が突撃して行くのを見つめていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第1章 13話
放たれた魔力の正体は攻撃系だったが相手に対して殺傷性のある
魔法ではなく、寄せ付けない目的で使用される類の魔法だった。
魔力の込められた空気の塊を打つけられる魔法なのだが、魔力の
膨大さから十分な効果があった。
どうやらリケッツは魔法の特性を見抜いていたらしく危険が無いと
判断し突進したのだろう。
『これやな、この穴から放たれとるよってワイが穴を押さえてさかい
結界魔法で固定しなはれ』
『も〜いつも無茶ばかり言うのね、人使いが荒いんだから・・・』
その様子を僕とアバンは見ていたが結界で塞がれたと同時に
穴を覗き込むリケッツとメーディアの下に向かった。
『見てみなはれ、こないな事は初めてやな・・・見てみ』
『これは・・・』
その穴の向こうには広い空間があった、空間??別世界??
良く観察すれば広大な風景があったのだ。
ま、僕も異なる世界から来たわけで驚くのも今更か・・・
この事はメンバーには話していない、シャナとリケッツだけが
知る秘密だ。
『ユウ、ちょっと聞きたい事あるんやけど、こっち来なはれ』
何となくだがリケッツに呼ばれる様な気がしてた・・・
リケッツは僕が異世界人だと知っている、だから今目の前にある
世界が僕が来た世界と関係あるのか確認したいのだろう。
『これ、どないや?関係あるんか?』
『この風景は僕の記憶には無いよ、こんな赤黒い空なんて初めて
見たよ、それに少し危険な感じがするんですけど・・・』
『ちょっと二人で何をコソコソ話してるの?何か知ってるの?』
『何でもあらへんよ、三人もこっちに来なはれ、どないするか
決めるさかい』
僕たちは今後の行動を話し合った、今の状況は入口を結界魔法で
固定しているが状態は安定している。
短時間だがリケッツは結界から向こうに侵入し行動に支障無いのを
確認した。
リケッツは調査する事を主張したがメーディア、カルロス、アバンは
一度引き返しギルドに報告してから体制を整えて調査する事をリケッツ
に進言した。
僕は危険は避けたい・・・生活も軌道に乗ってきたし、守るべき家族も
増えたし・・・それにギルドに報告するだけでも依頼は達成にならない
のだろうか?
『そやな確かにリスクはあるやろな、報告だけやから報酬は減らされる
が一応達成扱いになる。
でもワイはこの先が見たくなったんや、一人でも行くさかい、ここで
待っててや』
『待ってるなんてできないでしょホントに・・・困った人ね』
『おい、俺等がお前一人に行かせるわけないだろうが。あ、ユウは無理
すんなよ、まだ新婚なんだしよ』
『私もシャナさんに怒られたくはなくてよ』
『そやなユウは無理はせんように』
『みんな聞いてくれ僕だって仲間なんだから一緒に行くさ、シャナだって
そこは理解はしている、気遣いは嬉しいよ』
みんなの気持ちは嬉しいけど、ここに一人でいる方が危険な気がするよ
それに僕も少なからず興味がある、何となくの印象だが魔界って雰囲気
だし、魔族なんて居たりして・・・怖いけど見てみたい。
『ほな行くで、メーディアはん用心や結界用のアイテム持つとったよな?
それも設置しといてや、閉じたら洒落にならんさかい』
『も〜リケッツったら、あれ高いのよ!報酬の分前は考慮してよ』
『わかっとるがな、頼むで』
僕たちは警戒しながら穴の中へ侵入した、赤黒い空は何処までも
続いていた、気候的には此方の世界よりも暖かく感じるが少し
生暖かいと表現した方が正確だ。
『なかなかオモロイところやな、近くには人の気配はないわな
皆はどうや?』
『そうね、私の探知魔法にも反応は無いわ、アバン殺気は?』
『今のところ殺気は感じられない』
流石一流の面々だ、危険察知に関しては僕は完全に戦力外だな。
でもこの空間は今回の調査依頼に関係しているのは確かだと思う。
先ほど魔力が放たれた事を考えると誰かが居るのは間違いない、
それにこれ程に広い空間に誰も居ないと考える方が無理がある。
そんな事を考えていると遠くに揺らいでいる影が見えた。
『リケッツ!この先に揺らいで影が見えるよ』
『ほんまか?どこや』
『ほらあそこ、向かっている方向の50mくらい先だよ』
『ワイは見えへんけど、メーディア達は見えるんか?』
『私にも見えないわ、カルロス、アバンは見える?』
『『見えないな『』
なぜ僕にだけ見える・・・こう言っては何だが僕は異世界人
だけど、彼らを凌ぐ様な特殊能力は無いと思う。
何でだ???
でも見えているのは僕だけで対応できるか分からないが、それでも
何か対応しないとな。
『よう分からんが見えてんのはユウだけや、調べてみてや』
『わかった、やってみる』
僕は揺らいでいる影に近づいて行く、半分ほど詰めたところで
影が人の形に見えてきた。
でも実体が確認できない、このまま近づくのは危険な気がする、でも
正体も分からない状態で下手に攻撃するのは何か短絡的だよな・・・
攻撃的でない魔法はアイスミストくらいしか使えない、試してみるか。
『(アイスミスト!)』
周りを囲むように徐々に影を包んでいく、次にミストの濃度を濃く
していくと温度が下がり始めた、すると影の揺らぎが治まりだした。
影に視覚阻害の効果があったようで弱まった事でリケッツ達にも
見えてきたようだ。
『おお見えてきよった、ユウ、良くやった! ワイも攻撃に参加
するで〜』
『待って! 相手には攻撃する意思は無いように思う。
もう少し様子を見よう』
『よー分からんがユウが・・・任せたで、皆もええか?』
『『『任せた』』』
何か信頼されてるのか投げやりなのか微妙は返答だったが
良しとしよう。
僕には攻撃の意思と言うよりフラフラと漂ってつ感じにしか
感じられないのだ、僕にしか認識できなかった理由は分からないが
この有利な条件で攻撃しないのは始めから攻撃の意思が無いと僕は
判断した。
さて、皆に任されたがどうするか・・・
今は揺らぎも治まり棒立ちしている様に見える、このまま近づいて
確認するしかないよな・・・用心の為、アイスウォールを展開しな
がらの接近だな。
ゆっくりと接近し影まで20mの所まで近づいた時、影の中に人の
様なシルエットが見えた。
目を凝らすと女性の様に見える、しかも頭部に角があるような・・・
それに影の様な物は彼女自身から発せられる魔力だと感じた。
この風景、頭部の角、魔力となれば「魔族」だよなたぶん。
異世界、魔族ときたら敵勢力のボス的存在だし、一度戻って対策を
立てた方が良いな。
『どないや?ユウ』
『それなんだけど、女性の様な人影が見えたんだけど、頭部に角が
あってさ・・・魔族?って存在してるの?』
『いるで、滅多に遭遇はせえへんけどな』
『私も見た事は無いけど噂話は聞いた事あるわね、カルロス、アバン
はどう?』
『何処かで話に聞いたくらいだな』
『俺もだ』
どうやら魔族は存在しているようだが滅多に会えない存在らしい。
であれば危険性は不明なのかな?
『リケッツ、魔族は危険な存在なのかい?
先ほどより接近して調べないと状況判断だできないと思うんだ』
『そやな・・・ワテの知ってんのは魔族が危険っちゅうのは無いな
人族や獣人族なんかと同じやしどんな種族にも危険な奴はおるで
皆はどうや?』
『そうね〜私も危険な種族とは聞いた事は無いわ、魔力は独特な
物を持っていると聞いた事はあるけどね』
ここまで話を聞くと絶対ではないが危険は少ない感じだが
無警戒で近づくのは愚かだろう、どうするかな・・・
そんな事を考えているとリケッツが話始めた。
『今度はワイも行くさかい、正体を確かめようやないか』
『じゃ、行きましょう』
リケッツも来るなら心強い、残る問題は纏っている魔力を
何とか消さないとな、アイスミストを強めに直接当てれば
消えるだろうか?
確信は無いが今の僕の使える魔法の中で使えそうな魔法だしな。
ダメならリケッツに任せよう。
僕はリケッツがいる安心感から一気に接近し魔法を放つ。
今度のアイスミストは液体が凍結する強さだ。
目論見通り纏っている魔力の消去に成功した、見えてきたのは
頭部に角がある少女だった。
僕たちは立ち止まり現れた少女を見つめていた。
『リケッツ、少女だよね・・・今のところ危険は無いと思うけど
どうしようか・・・』
『そやな〜相手は女の子やし、ここはメーディアに任せるか・・・』
『お〜いメーディア! 来てや』
その案は正解だと思う、女性と言う以外にも理由が・・・
何か薄い半透明な生地の布を纏っているだけで男にはちょっと
目のやり場に困るのだ。
特に危険が無ければメーディアに任せるのが良いと思う。
『何???え!、ちょっと向こう見なさいよ貴方達』
『これを使ってください』
僕は収納魔法で持ってきた毛布をメーディアに手渡した。
それにしても変わった衣装だな、どんなに種族が違えど彼女の
衣装は特殊だと思う、何となくだが儀式用の衣装って感じだ。
メーディアは手渡した毛布で体を覆い近くにあった倒木に
座らせ僕たちは彼女の前に立った。
『リケッツどうする? 話しかけるにしても、魔族の言葉って
僕たちは理解できるのかな?』
『大丈夫やろ、魔族はな言語が違っても魔力で理解しよる』
何か凄いな・・・僕も欲しい能力だな、でも安心できたよ
始めは挨拶かな?意識が有るか確認したいな。
『ねえ君・・・僕の声が聞こえるかい?』
僕は繰り返し彼女に語り掛けた、何度語り掛けたか・・・
数分後に彼女の体が少しだけ動きがあった。
『大丈夫かい?』
すると彼女の目がゆっくりと開き、僕を見つめてきた。
『!!&%0−−%#@#0−』
『僕の言葉は分かるかい?』
彼女は少し考える素振りを見せ、その後話し始めた
『貴方は誰?、ここは何処?』
『僕はユウ、何と言うか・・・冒険者かな?、ギルドからの
依頼でこの場所を調査しに来たんだけど、場所と言うかこの
空間については僕たちも良く分からないんだ。
もし、貴方がこの空間の事を知っていたら教えてほしいな。
後ろに居るのは僕の仲間だよ』
『貴方達の事は理解した、私に危害を加ないなら私は攻撃は
しない、この空間は魔族に伝わる古い魔道具で作った。
理由あって身を隠している、何故に我と接触した?』
『何故って・・・僕たちはこの地に調査に来たんだ。
ここに住まう住人多数が行方不明となり先行して調査を行って
いた調査隊も音信不通となり僕たちが調査に来たんだよ。
君は何か心当たりは無いかな?』
彼女は少し考える素振りを見せた。
この状況は少なからず彼女が関係してると思う、何か聞き出せると
良いのだが。
『ああ・・・なるほどな。良いかよく聞くのだ、この空間は我を
守る為の空間結界じゃ、お主等が何事もなくこの空間に存在でき
るのは入ってきた穴に空間を固定した魔法が通り抜ける際に
肉体を守る役目も果たしたのであろうな。
それが無ければ肉体は崩壊する、行方不明の者たちは生きては
おらんじゃろ』
その話が真実なら・・・いや真実だろうな、生存者は全て死亡と
報告するしかない。
こうなった原因は穴の存在だ、ギルドの調査依頼を考えると穴は
最近出来たと思われるがそのあたりを聞いてみるか。
『この穴は貴方が出現させたのか?』
『そんな事は知らんよ、我はここに身を潜めていたに過ぎぬ。
隠れている状況で侵入を許す事になろう穴など作る理由は
無かろう・・・じゃが、予測出来ん魔力の揺らぎが原因で
意図せず穴が空くことも否定はせんが』
なるほどな不可抗力で出来た穴の影響で多く被害者を出したが
この世界は魔法など超常的な力が存在している事で、自分の身は
自分で守ると言う基本的な常識がある。
害意による殺戮は別だが魔力暴走などで命が奪われる事はよくある
事らしく罪に問われる事はあまり無い。
この世界は命を軽く見ているのではなく、世界観の違いによる
常識の様な感じだ、僕も始めは戸惑ったが今は受け入れている。
『聞いた通りだけど、このままギルドに報告って事で解決だよね?』
『そやな、魔族絡みの魔力が原因やし報告で終わりやな・・・皆も
ええな』
『仕方ないと思うわ、巻き込まれた方は可哀想と思うけど、これは
私達に何か出来る訳でもないでしょ? 私はリケッツに賛成』
その後カルロス、アバンも、そして僕も同意した。
しかし問題も残った、魔族である彼女の存在である。
ギルドに報告する場合の証拠として彼女から証言が必要になるのだが
彼女がこの場所から離れてしまったら空間結界は消滅するそうだ。
もう一度空間結界を発動するためには膨大な魔力を必要とするらしく
当時は30人の魔族でこの空間結界を設置したのだそうだ。
なので彼女一人では数年かかるらしく、それまでの彼女の生活を
どうするかが問題となった。
『この様な場合はギルドは引き受けてくれないのだろうか?』
『ユウ、ギルドはな慈善団体やないし、相手は魔族やからな・・・
間違いなく押し付けられるわな』
『私は無理だからね・・・』
『俺も無理』
『同じく』
『わてかて無理や、次の仕事が待っとる』
『え〜〜僕だって・・・』
困り果てた所で彼女が会話に入ってきた。
『何じゃお主等、妾を放り出すつもりかえ・・・無理やし結界から
出しておいて無責任ではないかえ。
詳しくは語れぬが妾は隠れていなければならんのじゃ。
なんとかせい!』
この流れは僕が何とかしなければならない流れだよな・・・
しかし僕が一人で決めて良い理由ないし、家族と相談しないと怒られ
そうだよ。
それに魔族だし・・・大丈夫かな?
『分かったけど僕だけで決める事は出来ないよ、家族と相談させて
ください』
『そやろな・・・よし、ユウが相談してる間はワテらがここで
この魔族さんを預かるよってな、皆もええか?』
他のメンバーもリケッツの提案には賛成だった、僕は急ぎ帰宅し
この事を家族全員と話し合った。
アンナと子供達は賛成してくれたが、シャナは少し不安な様子だった。
魔族でもあり年若く見える容姿が不安になったのだろう、そこで預かる
条件として増築し、そこに住まわせる事だった。
でも良く考えてみると我が家の状況は異種族が集まっている
人族にエルフに獣人そして魔族、まるでコスプレ家族状態だよね・・・
大丈夫だろうか・・・
僕は家族の了承を得てリケッツの下に戻り彼女を連れて家路についた。
リケッツと他のメンバーはギルドに報告と報酬を受取に行くので別行動
となった、僕の分の報酬は届けてくれるらしい。
気になるのはギルドの彼女に対する対応である、僕が引き取る事を容認
するのだろうか?
結界内には戻すのは簡単ではなく、それに理由があり身を隠してる
そこを考えると匿うにもリスクがありそうだ・・・
その辺もリケッツに相談したいところだが今は考えてもしかたないな。
彼女を連れて戻ると部屋の増築は終わっていた、ズムコ流石仕事が
早い!頼りになる建築屋だ。
そして大切な事を忘れていたのに気づいた、それは彼女の名前を聞いて
いなかったのだ、一緒に暮らすのだから聞かないとマズイよね。
途中で購入した生活用具を部屋に置くと夕飯時になったので一緒に食べる
のか聞いたが今回は部屋で一人で食べたいらしく別々の夕食となった。
食べ終わった頃に来て名前を聞くとしよう。
『食事は美味しかった?』
僕は彼女の部屋に来ていた。
『うん、美味しかったよ』
『これから一緒に暮らすのだから名前を聞いても良いかな?
会話するのに不便だからさ』
『シェルファ』
『シェルファ、僕はユウ、よろしくね、今日はゆっくり休んでね
家族の紹介は明日するから』
『わかった』
彼女は移動と緊張からなのか多少疲れている様に見える
それにシャナ達ともう少しシェルファの事を説明しなくてはならないし
できればシェルファが隠れている理由が聞ければと考えた。
『もし差し支えなければシェルファが隠れている理由を教えて
ほしい、家族に危険が及ぶようなら対策をしないといけないしね』
しばらく考え込んでいる様子、やはり危険なのだろうか?
リケッツには預かる事を承諾したしな・・・危険なら家から離れた場所で
僕とリケッツ二人で対処する事も考えた方が良さそうだ。
『・・・・・・・・私は・・・・ある事から逃げているのです。
私はシェラウ魔王国王女なのです・・・』
シェルファの話だと王国の王位継承争いに巻き込まれたらしく
それで隠れているらしい。
彼女は第一王女であり王位継承権第2位、兄の第一王子が王位を継ぐ
はずだった。
魔族の世界では実力のある者が王位を継ぐのがよくある事でそこに
男女の区別は無いのだそうだ。
彼女の魔力、魔法レベルは非常に高くシェルファを時期国王に押す
声が高まってきた事で兄の派閥から命を狙われた。
彼女の側近達は武に精通した者が少なく守りきれないと判断し隠す
事でこの争いから遠ざけようとしたらしい。
ここまでが彼女の記憶でその後の事は分からないらしい。
正直この状況は僕には荷が重いと感じている、現在進行系で狙われ
ているのであれば家族にも危険が及ぶだろう。
でも僕がここを離れ調べに行くのは避けたいな、家族が無防備になって
しまう。
ここはリケッツに調査を頼むのが良いだろう、状況を説明すれば
引き受けてくれると思うしね。
でもこの状況で家族に説明するのは難しいな、ある程度は真実を
隠して話す事にしよう。
『シェルファ話は分かった、でもこのまま家族に話すには刺激が
強すぎると思うんだ、王女である事、王位継承の事も今は伏せ
させてくれ。
魔法実験中に魔力暴走で空間に閉じ込められて事にしたいけど
どうかな?』
『それでいい・・・でも貴方達を危険な事に巻き込むかもしれない』
『その辺の事情と調査を僕の仲間に頼む事にするよ』
その後、家族に事情を説明し彼女の事を受け入れてもらった、
数日後にやってきたリケッツには魔王国の調査を頼んだ。
王位継承とかゴタゴタが解決してると良いのだが・・・
『それで私はここで何かしなくてはいけないのでしょうか?
私は貴方達の事を何も知らんでの・・・』
『そうだな、特に無いんだが・・・何かしたい事とかあるかな?
まだ来たばかりだ、焦らないで徐々にね』
こうして彼女との生活が始まった。
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第1章 14話
シェルファ(シェラウ魔王国王女)との生活も二ヶ月を過ぎた頃には
家族として受け入れられた感じになった。
ここは彼女を発見した場所からかなり離れた場所であり、家の敷地全体に
魔力反応を封じる結界魔法をリケッツに施してもらい外部から探知され
る事は無いとの事。
彼女には少々不自由を感じさせると思うが家族の安全の為、我慢して
ほしいと伝えたら、あっさりと承諾された。
以前の様に封じられるよりはマシとの事。
程々に広い敷地と家の中で好きな事をしながら彼女なりに楽しんでいる
感じだ、まずは一安心。
僕の方は元の世界での資金調達(投資活動など)について考えを整理
していた、此方の世界で手に入れた物資を元の世界で売った資金を投資
に回して増やしているのだが、将来的には元の世界で商売なんかをして
生活できればと考えている。
何故かと言えば異世界と元の世界では命の危険が違いすぎる、現代日本
では余程の無茶や運が悪くないかぎり普通に生活してて死ぬ事はない。
魔法や魔獣が普通に存在する異世界では自分の命は自分で守るのが一般的
なのだ、この世界にも騎士や憲兵は存在するが基本は自己防衛だ。
弱い者は強気者に蹂躙される事は珍しくない、平和な世界を経験した者に
とっては異世界に定住するのは少し抵抗がある。
でも異世界の全てを否定はしない、今まで出会った人々には素朴さと
誠実さが有る様に思えるからだ、普通に生活するだけでも緊張感が伴う
事が少なくない状況ではお互い思いやりや助け合いが必要となる。
だから集団生活で互いの結びつきが重要なのだろう。
関係性が希薄な元の世界の方が孤独だった自分状況を考えるとどちらが
良いのか考えさせられてしまう。
異世界で結婚した僕は子供を儲けると思う、どちらに似るか分からない
けど見た目が人族であれば元の世界で教育を受けさせた方が・・・
なんて考えたりもする。妻(シャナ)には怒られるかな?
異世界での教育は読み書き計算を教える小学校みたいな所はあるようだが
庶民の教育はそこまでらしい、貴族は初めから家庭教師による教育を受け
複雑な算術や魔術、歴史などを学ぶらしい。
しかし教育水準などは生きていく環境に合っているのが良いのではないか?
僕の場合で考えると元の世界の知識を異世界で有効活用できたとは思って
いない、異世界には場合によっては科学を超える魔法が存在しているからだ。
比較すれば科学で出来る事は魔法でも可能な事が多いと思うし、逆に魔法
で出来る事を科学技術でしようと思えば僕一人では多分不可能であろう。
何より魔法の優れている点は個人の力である所である。
例えるなら火を使うだけなら簡単な魔法らしく異世界に生活する者なら
殆どが使えるが僕は来たばかりの時はライターでもないと無理であった。
今では簡単な生活魔法は習得したので元の世界と遜色ない環境で生活が
できている。
不便と言うか不満に感じる事は娯楽だと思う、異世界では音楽、映像、
遊びなどは比較にならない程クオリティーが低い。
音楽などは単純な弦楽器を使った演奏であり、歌と言えば吟遊詩人が
いるだけである。
配信による映像文化も無い、遊びと言えば子供の遊び程度で大人が楽しむ
事と言えば酒を飲み友と騒ぐなんて事くらいだ。
そもそも生きる事で精一杯な異世界では娯楽は必要無いのだろうが
僕としてはボードゲームの様な物はあっても良いのではと思うのだが。
ん?、これってもしかしたら売れるのでは・・・リバーシなら木で作れる
かもな、そのうち試作してみよう。
異世界との往復商売で元の世界での現金は500万程貯蓄できた。
200万は異世界で仕入れた置物などの売上で他は株の売買をこまめに
行った成果である。
ある程度資金ができた事で投資(現物取引)に本腰を入れようと思う。
コツコツと狩りを行いロックラビットの魔石を貯めたので未来の新聞を
取り寄せる事が出来るので全額投資でもリスク無く運用する事ができる。
目標はカフェ開業の資金である、まだ構想の段階ではあるがコスプレカフェ
を考えている、何故なら従業員がエルフや獣人でも自然に受け入れられる
と思う。
シャナや子供達も一緒なら定住じゃなくても皆で一緒に過ごせる時間が
多くなるし楽しいのではないだろうか。
シャナも連れてきた時は凄く楽しそうだった、子供達も楽しめると思う。
この辺も含めて今度シャナに話してみるかな。
今日はヤニスの店で仕入れる為にシャナと街に来ていた、狙いは金属製
の置物である、銀製の置物は査定も早く高値で売れるからだ。
前回も一つ20万程で買い取ってもらった。
『雄靖さん、二人で街に来るのは久しぶりですね』
『そうだね、最近は子供達の事で忙しかったしね、仕入れが済んだら
食事でもしながら、ゆっくりしないか?』
『はい、嬉しいです』
ヤニスの店で物色していると、ちょっと変わった置物を見つけた
僕から見たら特に変わってるとは思わないが、異世界に有る事が
不自然なのだ、それは観音像によく似た・・・いや観音像だよ。
異世界では偶像崇拝は殆ど無く、自然信仰が普通と以前シャナから
聞いた事がある。
それにたまたま似てるって言うか、そのまんま観音様ですよ。
ん〜見れば見る程・・・僕以外にも転移者はいるのだろうか?
ちょっと気になるのは額にはめられた宝石の様な石かな、魔石とは
ちょっと違う感じの光を放っていて、僕の知識ではダイヤモンドに
似ている感じがする。
魔石は少しくすんだ光を放つので僕でも違いがわかるのだ。
こちらにも宝石はあると思うが僕はまだ見たことが無い。
聞いてみるか・・・
『ヤニス、ちょっと良いか? この置物の額に付いてる石は魔石か?』
『ああ、それか、魔石ではないぞ、ただ綺麗な石ってだけの価値の
無い石さ、気になるのか?』
『これはよく取れるのか?』
『そうだな、石材を採取する際に一緒に取れるのさ、魔石に似てるが
魔力は無く使い道の無い石さ』
『この置物はいくらなんだ?』
『何か他の物を買ってくれたら、おまけに付けるさ、売れなくて
困っていた物だからな』
この置物には何か秘密が有りそうな気がする、持ち帰って調べてみるか。
他に銀製の置物数点とギルド依頼で使用できそうな魔石を何個か購入した。
『シャナは何か欲しい物はある?』
『そう言えば母から怪我用の治癒のポーションを買ってきてと』
『ヤニス、聞いた通りだ、何個か追加してくれ』
『今は3本しか在庫がなくてな・・・いいか?』
『分かった、全部貰おう』
商品仕入れを終えた僕達はしばらく街を散策してから今晩宿泊
する宿屋の食堂で食事をする事にした。
二人でゆっくりと過ごすには宿屋の方が良い、お酒も飲みたいし
酔っても宿屋だしね。
『そう言えばポーションって誰か怪我してるの?』
『シェルファさんが時々魔法を暴発させる事がありまして、擦り傷
が絶えないのですよ、大怪我になる事は無いと思うのですが・・・
備えですね』
『シェルファは魔力も多いし時間を持て余してるんじゃないかな?
魔法以外にも何か興味を持ってくれると良いのだけれど』
『賢い子ですから心配はしていませんよ、魔法で怪我をしてからは
考え込んでいたようですが、最近何か始めようとしているみたいで
雄靖さんが集めてたロックラビットの魔石を弄っている事が多い
ですよ』
『え、あの魔石を・・・』
ちょっと怖いな、彼女は魔族だし僕が世界を行き来している事と
魔石の関係を・・・知っているのだろうか?
でも話してないし・・・それとも異世界転移の方法を知っているのか?
今度聞いてみるか、今はシャナの事に集中しよう。
仕入れを終え僕達は宿の食堂で食事をする事にした、お互い軽めの
食事を取りお酒を飲みながら時間を過ごす事にした、普段は仕事や
生活の雑事に追われ二人でゆっくりと話す時間が最近は取れない事が
多くお互い話したい事が溜まっていた。
『食事、美味しかったね、今日はシャナと色々話したくてさ・・・
どうかな?』
『私もよ、あなた。あ、そうだわ・・・変わった置物を買ったみたい
だけど、貴方にはあれが何か分かっているの?』
『あ〜あれか。僕も驚いたんだけどさ、あれは僕の世界の仏像・・・
解らないよね、神様の像なんだ。
僕も見た時は驚いたよ、まさか此方の世界にあるなんて・・・』
『神様?あなたの世界には人の様な神様がいるの?』
『いや、実在はしてないよ、中には熱心に信じている人もいるけどね
僕は違うけど。
でもちょっと違和感があったから調べようと思って買ったのさ。
それに僕以外にもこっちの世界に来ている人がいるのかと思ってね』
『そうなのね・・・。 他にも色々と仕入れたみたいだけど近々
元の世界に行く予定はあるのよね? 黙っていかないでよね!』
『行く時は話しますよ、それに一緒に行きたいしね。 それに相談
した事があるんだよ』
『相談?』
『2つの世界を行き来しての商売で結構お金が溜まってさ、前から
計画してた事があって・・・・・・・』
僕は彼女に一定の資金が出来たら元の世界で商売を計画していた
事を話した。
商売はコスプレカフェ、彼女に理解しやすく異種族が働く軽食屋と
説明した。
それを聞き疑問に満ちた顔をしていたのは以前一緒に元の世界に
来た時には人種族の世界でありそれ以外の種族は存在していない事を
知っていたのだ、なので異種族が働く軽食屋を不思議に思ったようだ。
これを理解いしてもらうにはコスプレを説明しなくてはならない、
元の世界には好きな想像上の存在を変装によって表現する文化があり
そのような行為をコスプレと言う。
それにこれが上手く行けばシャナや子供達も一緒に過ごせる可能性が
ある事も付け加えた。
『面白そうね、私も貴方と過ごす時間が増えれば嬉しいわ、それに
あなたの来た世界も好きだし、また行きたいわ、でも子供達は
どうかしら・・・シェルファは興味を示しそうだけど魔法を使われ
たら大変じゃなくて?』
『そうだね、興味があれば何回か連れて慣れさせる事とあちらの世界
の常識を教えてからかな』
『お母さんも連れて行きたいわ、二人で買い物なんかも行きたいし
きっと喜ぶと思うの・・・いかがでしょうか?』
『そうだね、今後お母さんの理解を得る為にも必要かもね、でもこの
事を知ったらどんな反応をされるか・・・ちょっと不安かな
でもいつかは話そうと決めていたんだ、良い機会だと思っている』
『お母さんは理解してくれると思うわ、だって私の幸せを一番に考えて
くれるお母さんが私の愛した人を信じているだろうし、あなたの
誠実さも分かっているのだから、貴方が何処から来たのかは気に
しないと思うから、あまり心配しないで』
『話す時は傍にいてくれるかい?』
『そのつもりよ』
『二三日後に行きたいと思っている、大丈夫かい?』
『じゃ、母には出かける事を話しますね』
しかしこの後、予想外の展開になった。
シャナの母が付いて行くと言い出したのだ、僕と娘の行き先が気に
なっていたらしくシャナが問い詰められてしまった。
詳しくは後から僕が話す事で納得してもらったらしい。
何時かは話さなくてはならない事だったし、良い機会と考え話す
事にした。
『お母さんに話すのは問題ないよ、僕も話さなければと思っていたし。
でも、一緒に行きたいんだよね?
僕の真実を知って、それでも同行したいとなった場合さ子供達は
どうしよう・・・ここに置いてくわけにもいかないよね』
『そうですよね・・・困りましたわ』
『その辺は後から考えるとして、できるだけ話すのは早い方が良い
と思うんだ、今晩あたり話さないか?』
『そうよね、私も同じこと考えていました』
その夜、食事を済ませ子供達を寝かしつけてから三人ではなしを
した、初めは僕がこの世界に来た経緯と2つの世界を自由に行き来
できる様になった事。
彼女に対する気持ち、今後は元の世界と両方で生活する事を考えて
いる事などを話した。
大雑把な説明を終え次に彼女が僕に対する想いと僕の来た世界に共に
渡った時の事や両世界での生活に同意している事を話した。
一通り話し終えると母は質問してきた。
『雄靖さん、貴方が来た世界へ私も行く事はできますか?娘の話を
聞いて私も行ってみたくなりました』
『大丈夫ですよ、でも三人で行くとなると子供達を残しては行けません
から子供達に色々話さなくてはなりません。
僕の来た世界は人族だけの世界なのでエルフや魔族は見た目を何とか
ごまかせると思うのですが、獣人はちょっと工夫が必要でしょうね』
その後は三人で行くことを前提に何からすべきか話し合った。
お母さんについてはシャナと同様に耳の特徴を隠せば問題は無い、
シェルファも同様で外見はエルフと変わらないので外見は良いのだが
魔族なので魔力が多く常識も他の種族とは違うようで行く前に丁寧に
理解しやすく教える必要があるな。
難しいのはアズ(猫人族)だな、人族とはちょっと顔立ちは問題ないが
耳が猫耳なんだよな・・・ずっと部屋にって理由にもいかないし。
『そうですわ、いつ聞いたか忘れましたが身に付けると姿を誤魔化せる
魔石があると聞いた覚えがあります、詳しくは分からないのですが』
『あ、お母さん・・・私も聞いた事ありますわ』
『それは良いですね、何処かで売っているのですか?』
『よく覚えていないのだけれど、何処かで売ってたような・・・』
『今度ヤニスの店で聞いてきますよ』
話は子供達も連れて行く事で話は纏まった、僕が異なる世界から
来た事は驚かれる事も無く受け入れられたのは・・・なぜだろう?
不安や疑問よりも興味の方が勝ったのだろうか・・・
僕としては驚きの表情が見たかった気持ちもある、でも心配されたり
拒絶される方が怖いかな。
お母さんが行きたい気持ちも何となくだが理解できる、僕だって
話を聞いたら、そして危険が感じられなければ行きたいと思うよな。
異世界って言葉はワクワクする言葉だしね。
話し合った結果、元の世界には全員で行く事になった、時期は
身に付けると姿を誤魔化せる魔石を手に入れてからになるだろう。
僕はヤニスの店に行き情報収集、シャナは子供達の着替えなどの
準備を始めた。
『ヤニス、ちょっと聞きたい事が有るんだが』
『いきなりだな、おい。物事には順序ってのがあんだよ、始めに
挨拶じゃないか・・・』
『あ、すまん。元気か?ヤニス、来たぞ〜、これで良いか?』
『何だそれ、しかたね〜な、で、何を聞きたいんだ?』
『身に付けると姿が変わるって魔石が有ると聞いたんだけど
ここでも手に入るのか?』
『ああ、それか・・・売り物じゃないぞ、確か・・・何処ぞの
魔女が魔石に魔法を施して作るはずだ』
『何か簡単ではなさそうな気がするが・・・』
『何でも魔女はお金で引き受けないらしく、作る為の条件を
言うらしいな、条件は俺には分からんがな、魔石はここでも
売ってるぞ、買うか?』
『そうなのか!買わせてもらう』
『これが魔石さ、求言保の魔石だよ、一つで良いのか?』
『高くなければ二つ欲しいな、いくらだ』
『あまり使い道の無い魔石だから安いぞ、一つ銀貨一枚だ』
『なるほど、魔石にしては安いな、二つ貰うよ』
魔石を購入し魔女の事を聞こうとしたがヤニスは知らない
らしくギルドなら情報が有るかもしれないと聞きギルドに向かった。
ギルドでの情報は誰でも聞けるのだろうか?
やはり受付で聞くのが無難だろう。
『すみません、聞きたい事があるのですがギルドでの情報提供を受ける
には何か手続きが必要なのでしょうか?』
『そうですね情報の秘匿性にもよりますが、差し支えなければどの様な
情報なのか教えていただけますか?』
『じつは魔石に魔法の付与を依頼したく付与が行える魔女の居場所を
知りたいのですが』
『そうですか、ギルドは仕事依頼の仲介も行っておりますので何人かの
魔女様の紹介は可能です、ランクにより付与費用は異なりますので
どうなさいますか? ランクはA〜Cの三段階です』
『ランクによる違いを知りたいのですが可能でしょうか?』
『そうですね、簡単に説明すれば付与に係る時間の違いでしょうか』
なるほど・・・よほど極端でなければ時間の違いはそれほど気に
ならないし、それより距離の問題かな・・・
『あまり遠くでない方が希望なんですが・・・』
その条件でお願いしたところ、ここから徒歩で3時間程の町外れに住む
魔女を紹介された、ちなみにランクはBらしく名はカルグスレン、今から
訪ねる事にした。
一度家に戻りシャナに魔女の所に行く事を伝え4時間程で到着した。
魔女に会い魔石の付与を依頼したが、報酬は金銭ではなく魔女が心踊る
出来事、または魔女が見たこともない物品の提供を条件としたきたのだ。
面倒くさいな、この魔女は・・・どうしようか・・・
彼女が心踊る出来事なんて、考えもつかないしな・・・
であれば魔女が見たこともない物で考えた方が良いだろう。
僕は以前ヤニスに好評だった虹色に輝くグラスを空間収納から取り出し
魔女に見せた。
『ま、何だいこれは!信じられない・・・』
だよね〜異世界ではガラス製品は貴重品だし百均製品だけど、こちらの
世界ではかなりクオリティーは高いのだ。
『これでどうですか?魔女様?』
『ちょっと鑑定しても構わないかい?』
『どうぞ』
魔女は何かの魔法を発動した、その後しばらく考え込んでいたが
僕の目をじっと見つめ質問してきた。
『お前は何者で何処から来た?』
『え、なぜその様な事を聞くのでしょうか?』
『この魔法は物の過去を遡り見る事ができるのです、見えたのは
雰囲気がまるで違う町と見たことも無い機械、不思議な格好を
した人々、こことは異なる世界に思える。
どうゆうことか説明してもらいましょう、商談はそれからですね』
そんな魔法があったとは・・・これは多分誤魔化せないな。
リケッツにも話したし、絶対的な秘密と言うわけでもないが今回の
場合は魔石に付与依頼する関係上話さないと断られそうだな・・・
でも、口外はしない事を条件にする。
『わかりました、でも僕から聞いた話を口外しない事、そして約束を
守る為の手段を提示してください、これが話す条件です』
『そうだな、契約魔術ってのが有るんだよ、互いに条件を定め条件が
守られなかった場合は予め決めた制裁を受ける魔術。
これでどうだ?』
そんな魔術が有るのか、なら大丈夫そうだ。
こちらの条件としては、この件で僕から得た情報は僕以外には口外
してはならない。魔女側は正確な情報を得る。
制裁としては少し厳しいが内容が内容なだけに消滅だろうな。
僕はこの条件を魔女に伝え契約魔術を実行した。
『驚いた、君は異なる世界から来たのか?・・・
思考を覗かせてもらったが、こちらとはかなり違う世界のようだね
魔法は無い世界みたいだが、それに変わる技術が存在していて
なかなか興味深い・・・そしてこのガラス製品もその技術で作られた
物なんだね』
驚いたな、そこまで詳細に見えるのか・・・契約魔術を行ったのは
正解だったようだ。
魔女の言葉を聞くと鑑定魔法の域を超えてると思うのだが、何処まで
見通せるのか確認しなくては!
『確認したいのですが、鑑定魔法ですよね?何かそれ以上見えてる様な
気がするのですが?』
『ああ、すまん。鑑定とは言ったが今使ったのは時遡の魔法と言われる
魔法で対象物と周辺を見渡す事が出来るのさ、あまりにも異質な物
だったので、念の為見させてもらった』
これは下手な誤魔化しは不審がられるだろうな・・・
付与魔法を断られるのは避けたいし魔女がどの様に理解するかは
分からないけど正直に話してみるか。
『実は僕は異世界からの転移者なのです・・・・・・・』
僕は元の世界から来た経緯と自由に行き来出来る事を説明し、今回の
依頼も理由も話した、色々な戦いやリケッツ達の事は話してはいない。
話している間、魔女は興味津々な眼差しで聞き入っていたが、話を終え
ると話しかけてきた。
『なるほど・・・面白いね。分かった! 付与の件は引き受けよう
しかし条件が有る、「私も同行させる」これが条件だ、その代わり
付与費用は必要無い。どうだ?』
この魔女は好奇心が旺盛らしい、同行には問題は無いが勝手な行動
をされるとマズイと思う、変な要望や行動を僕が抑えるのは難しそうだ
実力の有る魔女みたいだし・・・どうしよう。
そうだ、リケッツにも僕の来た世界の事は話したし同行できるか聞いて
みるか、彼なら魔女を抑える事ができるかも、よし!
『同行する事は問題無いけど、約束してほしいことがある。
単独行動と勝手な行動はしない事、持ち帰りたい物は僕に相談する事、
魔法は使わない、あちらの世界では争い事は絶対ダメです。
服装の事もあるので少し準備期間が必要です。
この条件を承知するなら良いですよ』
魔女は少し考えていたが、この条件を受け入れると約束した。
話は纏まったので魔石に魔法付与を行い、転移する日が決まれば知らせる
と約束し家路に就いた。
帰宅した僕はシャナに魔石付与を終えた事、転移に魔女も同行する事を
話した、魔女の勝手な行動を警戒する為にリケッツも同行させる事を考えて
いる事などに彼女の考えを聞いてみた。
『良い考えだと思いますよ、私は賛成です』
と了承を得、早速リケッツに連絡したところ
『行くで!、任しときなはれ』
だよね、僕の世界の事はリケッツも興味あったみたいだし、この返事は
僕も予想してた。
転移の為の準備、洋服や子供達への注意事項の説明、リケッツや魔女と
細々しい事の打ち合わせを済ませ出発は1ヶ月後と決まった。
大丈夫かな・・・不安・・・。
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第1章 15話 皆で元の世界へ
出発は1ヶ月後と決まり僕達は準備に追われた、僕の準備は然程無いので
子供達の準備を手伝っている。
お母さんはシャナと楽しそうに話しながら毎日、何処に行こうかと話して
いる、シャナは何度か来ているので話しを聞きながらワイワイといった感じだ。
エルフの容姿は魔石によって何とかなるが、衣服だけは購入するみたいだ。
お母さんは見た目も若くシャナと姉妹と言っても良いくらいだし体力的にも
精神的にも長寿の影響で若々しく有るのだろう。
子供達は特に騒ぐ事もなく過ごしている、多分だが実感が湧かないのだと
思が転移後の行動、守るルールは教えるつもりだ。
一番心配なのは言葉が通じないので勝手な行動はしない事だ、必ず僕と行動
する事を守る事。
シャナ以外は会話は無理なので今回は集団行動になる、それと魔法ま勿論
行使は不可、身体能力についても人間を超える事はダメな事は子供達には
絶対に守る事を教えなくては・・・
『アズは思いっきり飛んだり跳ねたり全力で走ったりはしないように、そして
アゼロは魔法は絶対にダメだよ、それと世界を渡ったら魔法で僕と同じ種族
に見える様にするからね』
『『なんで〜』』
『これから向かう世界にはエルフや獣人はいないんだよ、人間だけの世界なんだ
それに魔法も無い、だから正体が知れたら大騒ぎになるんだ』
『『わかった〜』』
横で聞いていたアンナ(母)も頷いていた、魔女カルグスレンにはもう一度
注意してた方が良いな・・・かなり好奇心が強いようだし。
各々が着替えなどの準備をしながら出発の日を迎えた。
『これから出発するけどいいかな?』
『楽しみね〜』
『『行こ〜〜』』
『問題無しじゃ、早よ始めよ』
皆の言葉と共に僕は腕輪に転移の意思をつたえた、光に包まれ
転移先である僕のアパート(僕の借りている部屋に)到着した。
自分で言うのも何だが殺風景な部屋なのだがシャナ以外は初めての
場所なので興味津々に周りを見ていた。
『皆聞いてくれ、僕はここから世界を渡ったんだ。今いる場所はこの世界で
住んでいた部屋だけど今後の活動拠点になるからね。
何か聞きたい事有るかな?』
『『はい、はい、は〜い』』
初めに聞いてきたのは子供達だ。
『何?』
『『お腹減った〜〜、ご飯食べたいよ〜』』
育ち盛りだからな・・・環境が変わっても動じない食欲・・・逞しい。
さて、どうするかだが外食が主なので部屋には買い置きの食料は置いてない
しな・・・子供達以外も食事を希望なら少しは不安だが外食またはトラブル
を考えなくて良い買い出しにするかだな。
『子供達は食べたいみたいだけど、他の皆はどうする?』
『我も食したいな』
『お母さんは食べる?』
『そうね、皆さんに合わせますよ』
『じゃ、来たばかりなので、お弁当を買ってくるので部屋で
食べながら落ち着きませんか?』
この提案に皆は賛成してくれた。
そこで弁当の希望を聞いたのだが全員肉料理を食べたいようだ
弁当の種類を細かく説明したら好みはバラバラだった。
シャナは豚肉の生姜焼き弁当、お母さんは肉入り野菜炒め弁当
魔女カルグスレンは焼き鮭弁当、子供達は一つに決められなくて
唐揚げ弁当とトンカツ弁当2人分を食べるようだ、僕は鉄火丼にした。
全ての弁当を僕とシャナで近くのショッピングモールで購入し帰宅。
皆、味わいながら食事を終えた、子供達は量が多かったのか
食後の睡眠タイムとなった。
食事を終え夕刻となってしまい出かけるのは翌日にする事になり
寝る前にお茶を飲みながら明日の行動予定を話し合う事になる。
『行きたい所ってある?』
『いきなり聞かれても困るのじゃ、皆もそうじゃろ?』
『『うん』』(子供達)
『私は娘から大体の事は聞いているので、ショッピングモールには
行きたいと思います』
『どんな所が有り行ける所と行けない所が有るのか?その辺の話を
聞かせてほしいいのう、まずは話の出たショッピングモールから
聞かせておくれ』
言われてみればそうか・・・子供達とカルグスレンは全くの未知の
世界なのだから。
だからシャナに話した時の様に、この世界にあり行くのに問題のない
場所から説明した。
『じゃあショッピングモールから説明するよ・・・』
異世界では雑貨屋、武器屋、食料品を売る市場などは有るが、どれも
個人商店で食品市場以外は街に点在している。
雑貨、食品、衣類、薬などの店が一つの大きな建物の中に集まっていて
そこでは食事も出来る事を説明したら子供達とカルグスレンは目を輝かせて
いた、その後はどんな食べ物の食事ができるのかや雑貨は何を売って
いるのかなど一時間ほど質問攻めになった。
子供達は食べ物、カルグスレンは以前に見せたガラス製品やアクセサリー
などに興味を持ったようだ。
彼女は貴族ではないが一般人とは違う身分であることから多少変わった
物を購入しても秘匿性を考慮すれば問題は無いと思う。
そしてシャナとお母さんは何やら二人で回るショップを決めているらしい。
『他にショッピングモール以外にも色々な施設が有るのだけれど今回は
二泊三日の滞在と決めているので滞在期間の短さと慣れない環境を考えると
滞在期間は団体行動とします、よって一箇所で多くを見れるショッピングモール
を初日に、後は皆の意見を聞きながら二日目は決めたいと思います』
『ま、それは仕方ないじゃろな・・・お主の心配も理解はできるしな
我はそれで構わぬよ、また来る機会も有るかもしれんしな』
『お母さんと子供達は何かあるかい?』
『『美味しいご飯が食べれれば、言う事無し!』』
『娘と色々話してたので行きたい所は決めていますのよ』
『そうでしたか、シャナと行動を共にするのであれば僕も安心です』
なるほど・・・お母さんはシャナが同行するならショッピングモール
の中であれば二人だけでの行動も良いかもしれない。
そこで昼食までは二手に分かれて行動する事にした、シャナはお母さんと
他の三人は僕が案内する事にした。
『さてと何処から回ろうか?』
『我はお主が持っておるガラス製品を買い求めた所に行きたいのだが』
ああ、そうだった・・・欲しがってたもんな、100円ショップで
満足できなければ他に案内するとして・・・100円ショップなら子供達も
玩具があるので大丈夫と思う。
『アズ、アゼロ、これから行く所は玩具も有るからいいよね?』
『『は〜い』』
そして僕達は100円ショップで物色する事になった。
『おおおお、これは・・・何とも素晴らしい、値段はいかほどなのだ』
『気に入りましたか?お金の事は気にせずこの籠に入れ下さい、僕が
支払いますので』
『よいのか?よいのか?』
僕は了承し彼女は籠にガラス製のコップや小物入れを次々と入れていた。
子供達は初めは玩具を見ていたようだが食べ物を見つけ籠に入れている。
こちらの世界のお菓子や飲み物は新鮮に感じるのだろう。
でもこの後食事の予定なので買った食べ物は帰ってからと注意した。
『ねえねえ、この籠いっぱいに買ってもいいの?』
『二人で籠一つ分だよ、いいね。こっちの小さな袋に入っているお菓子なら
沢山の種類が買えるよ』
『この色のついた水は飲み物なの?』
『ここに並んでいるのは飲み物で果実の味が多いかな、何本か買ってみな』
子供達は目移りしながらドリンクを選び始めた、見ているとオレンジと
ぶどう味を選んだようだ、異世界で子供が飲めるのは水くらいなので
見た目にも美味しそうなのを選んだのだろう。
買った商品を人目を避け収納魔法を使って保管、カルグスレンは収納魔法
が使えるようで自分で保管していた。
僕は異世界で使えそうな自分用の筆記用具や整理箱、商売用には陶器製の
小さな人形や調味料(唐辛子や胡椒など)を買った、異世界でもやはり
香辛料などは高価なようだ。
シャナとお母さんはどうしているのか・・・
『お母さん、何から見る?』
『そうね、アクセサーリーや洋服がいいわ』
『それじゃ私が行った事があるお店に行きましょうか』
*二人は安くて比較的品揃えがあるアクセサリーを売る店に向かう。
『ここは凄いわ、何か目移りしちゃう・・・とても高価そうに見える
けど大丈夫かしら・・・』
『安心してお母さん、宝石ぽく見えるのは模造品だから思っている
ほど高くないわよ、安心して選んでねお金は足りると思うわ』
洋服は幅広い年代のが揃っている店がいいよね、母がどんなデザインを
好むか予想できないし品揃えが豊富な方が安心かな。
だとすれば、ユ◯◯ロかG◯がいいわね・・・そんなに高くもないし。
僕達は午前中の買い物を終え、ビュッフェスタイルスタイルの飲食店
の前で待ち合わせ中に入った。
皆の好みは分からないし少しノンビリしたかったのだ。
『ここは好きな物を好きなだけ食べれる所なんだ、でも食べ残しはルール
違反だから加減しながら食べるんだよ、なれるまでは僕とシャナが
付き添うからね・・・さ、行こう』
当然ながら異世界にはこのような食事の形式は無い、それよりも食べ放題
と聞いた子供達は驚いているようだ。
子供達には僕が付き添い、カルグスレンとお母さんはシャナが付き添う事に
なった。
子供達やカルグスレンの話す言葉は異世界語なのだが見た目は外国人なので
あまり違和感がない、それに今日は平日なので人が少なくそれほど目立って
はいない感じだ。
大人たちは食べ放題よりも品数の多さに驚いている、子供達は皿に山盛りに
取ろうとしてたが僕が山盛りでない取り方を指導した。(山盛りは目立つ)
その為、子供達は何回も往復していた。
カルグスレンも子供達もスイーツが珍しいようで食事の大半をスイーツで
カルグスレンはスイーツだけ食している。
逆にお母さんは料理に興味津々だ特に揚げ物は異世界では珍しく唐揚げや
トンカツを取りテーブルで観察している、異世界の調理の基本は焼くか
煮込むのが一般的で油で揚げる事はしない、何故なら油は貴重品なのだ。
『教えてほしいのだけれど、この黄色い食べ物の調理法は知っているかしら?』
『ああ、お母さん唐揚げですね、それは肉に衣を付けて熱した油の中に入れ
調理しているんです、隣の大きな物(トンカツ)もですよ』
『油・・・ですか、何と贅沢な・・・でも食べても大丈夫なのでしょうか?』
そうなんだよな、異世界での油は明かりに使われ原材料は魔物や動物の
脂肪から作られ作られる量も少なく貴重品なのだ。
料理に使うなど考えられないし調理法も確立されていない、それに品質も
悪く燃やすには差し支えないが口にするには向かないだろう。
『あ、そうだったね、でもこちらで使われている油は食べれる物と
食べられない物の二種類有るのですよ、これは食べれる油で作られた
料理だから大丈夫ですよ、それにそれほど高価ではありません』
『並んでいる料理を見ましたが、こちらの食文化はとても多彩で
驚きましたわ、味もとても美味しくて!』
『それは良かったです、こちらの世界ではもっと沢山の種類の料理が
有るのですが、今日はここの建物で食べれる料理をご案内できますよ
夕飯は買って帰るか、ここで食べましょう』
食事を終えた僕達は午後も興味のある店を二手に分かれて回り再び
夕方には合流し今夜の食事につて話し合う事になった。
昼と同じ場所で食事をするのは皆から反対された、折角の機会なので
色々な食事を経験したいらしい。
店で食べる以外にも弁当を買う選択もある事を話したら、興味が
有りそうだったので食品売場に行く事になった。
『え〜何ここ〜、これ全部食べ物なの???大きな市場みたい!』
あまりの広さと豊富に陳列されている食材に子供達が驚いている
大人たちも言葉を失っている感じだ。
異世界の市場は肉・野菜が中心でそこに僅かばかりの雑貨という
構成であり、飲み物やスイーツなどは売っていない。
ここは肉・野菜・スイーツ・飲み物・雑貨などが豊富に並び清潔で
明るく並べられた商品が輝いて見える。
一回りして皆に聞くことにした。
『どうかな?ここで食料を買い家で食べる?それとも食堂で食べて
帰る?』
子供達はここの品揃えに驚き、いろいろな食物を買って行きたい
ようだ、カルグスレンとシャナ親子は先程とは別の店で食べたそう
だったが今日のところは子供達の要望に合わせたいとの事。
子供達は肉料理とデザートを山盛りに買い物籠に入れている主に
ハムやローストビーフ等、そしてゼーリー、ケーキ、プリン。
見ている僕は、全部食べれるの???状態。
女性陣はデザートは子供達と同様で多めに購入しプチ弁当を数種類
購入していた。
夕飯の買い物を終え帰宅した僕達は部屋の中で購入した物を見せあって
いた、子供達は早速玩具で遊び始めカルグスレンはコップなどのガラス製品
を基準は分からないが分け始めた。
妻と母親は服とアクセサリーを買ったようで早速試着を始めた。
異世界には無いデザインばかりで向こうで着るのは目立つのでどうかと思う。
気になったので聞いてみたが、今度こちらに来た際に着る為の物らしい。
異世界と比較しても服飾は豊富でお洒落だと男の僕でも思う。
明日の事を食後に話し合った結果はもう一日だけショッピングモールに
行きたいと希望された・・・
気に入ってくれたようで良かった、明日も楽しんでくれたら嬉しいな。
アズ、猫人族
◆腕輪の力◆
*
