「そういえば玉城、相手って決まったー?」
ぎくり。そんな擬音が適切な状況で、僕は声の主である秋羽部長の方を振り向いた。錆びついたロボットのように、ギギギと音が立ちそうなくらいゆっくりと。トレーニングパッドを抱えて歩く秋羽部長は、心配そうな様子だった。
「探してはいるけど、まあ、まだですね」
「皆忙しいだろうしねぇ。私一応弾けるようにしとこーか?」
「いや、それはさすがに。連弾相手見つからなかったら、今年はソロで弾こうかなとか思ってました」
秋羽部長が、目を見開いた。ピアノが弾けなくなったので連弾は無理です、なんて伝えられるはずがない。連弾相手のことで部長の心配事を増やしてしまうくらいなら、ソロコンサートのような形で弾けた方が僕の気持ちは楽だった。
「玉城とだったら『運命』楽しく弾けそうだったんだけどなー」
その曲が案として上がったからこそ、連弾に対して強く気後れしてしまっている。ベートーヴェン作曲、交響曲第五章『運命』第一楽章。中学最後の連弾で、速水のプリモで一緒に弾きたいと、無理を言って演奏した曲だった。
冒頭の音の粒や音色がいくら練習しても合わせられず、よくケンカもしていた。ケンカをしながらも演奏の質を高めるために、二人でピアノに向き合っていた日々が浮かぶ。大切に包装していた思い出が、少しずつ破けて、露出するように。
「それは三送会か最後の定期演奏会でやりましょう」
「お。言ったな? 楽しみにしてるねー。じゃ、おつかれ」
にこりと笑った秋羽部長が、他の部員に呼ばれて歩いて行く。咄嗟の逃げの言葉だった。その時までに、僕はピアノを弾けるようになっているんだろうか。芽吹いた不安の根は強く絡みつき、弾く勇気を奪い吸っていく。
けれど、ピアノを弾けないとは伝えられない。そう伝えてしまったら、二度とピアノの鍵盤に触れられなくなってしまう恐怖心があった。
そそくさと音楽室を後にして、帰路に着く。自室のアップライトピアノは変わらず存在感を放ち、鎮座している。それを横目に見て、部屋着に着替える。室内の姿見に映る僕の体幹は、一週間前よりもあばら骨が浮き出ているような気がする。肩が動くたびに、骨が己の形を強く主張していた。
腹の皮は薄くしか摘まめない。骨が浮いていることがばれないように、大きめの半袖シャツに袖を通した。布団に入って寝ている黒猫が目を開いて、「刺身をよこせ」と話しかけてくるデザインがお気に入りだ。
ゆとりのあるスウェットパンツを履く。ゆるすぎるウェストは、ゴム紐を締めて対応する。三食しっかりと食事を摂っているつもりだったけれど、ピアノが弾けない現状のストレスは想像を超えている。僕が想像しているよりも、ピアノの存在は生活の一部として馴染んでいたようだ。
アップライトピアノの蓋をそっと撫でる。弾けたらいいなと思うけれど、まだ満足に弾いてあげられる気がしない。まだ文化祭までは三週間弱ある。せめて今週中か、来週の初めに相手が決まれば、連弾はきっと形になるはずだ。
部長との連弾は、たしかに楽しかった。でもそれは、速水と弾いたピアノの思い出が下地にあったからだ。連弾は楽しい、そうした記憶が残っているから、速水以外との連弾でも楽しく弾くことができたといっても過言ではない。
連弾は好きだった。ピアノを通して繋がり、理解し合うあの時間、あの温度。去年、楽しさを感じた後に残った小さな棘。それが今になって、ようやく姿を現した。
速水と、連弾がしたい。また、ピアノを通して速水を知りたい。包んだまま忘れていた気持ちが、たしかに今目の前にあった。
「困ったなぁ」
叶わない願望が、宙ぶらりんになって浮いている。僕がピアノを弾く原動力は楽しいから、なんて単純なものではなかったらしい。短く、乾いた笑いが浮かぶ。ピアノから手を離し、気分転換にリビングのソファにごろりと寝転んだ。海洋生物のドキュメンタリーがテレビで流れていた。
シャチの狩りの方法を見ている途中、父が二階から下りてきた。今日は一日リモートワークだったらしく、よれよれの部屋着に分厚い眼鏡、寝起きのままでぼさぼさ頭の出で立ちだった。
「悠、金曜日か土曜日時間あるか?」
さっと頭の中で部活のスケジュールを思い出す。今週の金曜日まではいつも通りの部活。土曜日、日曜日はヤマ先と学校の設備確認の兼ね合いで午前で部活が終了する予定だった。
「土曜か日曜なら部活昼までだけど、なんで?」
「久しぶりに母さんと休みが合うから、海にでも行こうかと思ってるんだけどどうだい?」
去年も行った、蘭嶋ビーチにさ。と父が続ける。蘭嶋ビーチは観光地でもなんでもない、地域に愛される小さなビーチだった。遊泳可能エリアの両脇には、水深の浅い岩場もあり、カニ釣りも楽しめる穴場スポットだ。
「友達呼んでもいい? 来るか分かんないけど」
「もう二人くらいなら乗れるから、好きに誘っといで。当日は車で迎えに行くよ」
「わかった。ありがと」
蘭嶋ビーチの思い出にも、速水の姿がある。真っ赤に焼けるまで外で過ごして、身体を芯から冷やす海に入って、がたがたと震えた夏の日。遠い海の記憶で、速水はやはり困ったように笑っていた。
じりじりと照る太陽。
熱されて陽炎を放つ黒っぽい砂浜。
日光が水面に反射して光る海。
大波、小波が不規則に浜辺に打ち上がる。わずかな磯の香りをかき消すような、炭火と焼き肉のにおい。夏を凝縮したような世界が目の前に広がる。
北幌市から電車で四十分。車で約一時間半かかる位置に目的地の蘭嶋リゾートビーチはあった。リゾートビーチと名づけられているが、リゾートらしさがあったのは海水浴場として開かれて十年ほどの期間。一度大きな飲酒運転事故が発生したこともあり、長らく海開きが自粛されていた。
一昨年からようやく海開きが再開したが海の家は無く、地元や近隣の人たちで賑わうこぢんまりとした海水浴場になった。昨年来た時も、今日と同じようにカンカン照りの日だった。海風が汗と重なって、肌がべたつく。
「海だー!」
「うーみだー!」
昨日のうちに一輝に連絡し、二つ返事で了承があった。部活が終わる時間に合わせて迎えに来てくれた、両親の車に乗り込んだ。父も母もにこにこと笑って、楽しそうにしていた。
海に到着してすぐ、両親はテントの設営を始めた。僕と一輝はすぐに来ていた服を脱いで、砂浜を走る。ビーチサンダルのペラペラなそこは身体を刺させるには不十分で、何度か体勢を崩しそうになりながら、ひんやりとした大海原に突入する。波の押し引きに身体が前後左右に揺れる。
「ゆーう! 早く来いよー!」
すでに沖合近くまで泳いでいる一輝が、立ち泳ぎをして両腕を振る。人にぶつからないように少しずつ泳いでみるが、水の中は動きが制限されてしまい、うまく進むことができない。
「泳ぐの苦手?」
「一輝の運動神経が良すぎ」
波に乗って戻って来た一輝が、水底に足をつけて立つ。互いに胸上まで海にしっかりと浸かって、ゆらゆらと海藻のように揺れる。水上に出ている肩や頭が、じりじりと熱をため込んでいる感覚があった。
「めっちゃきもちー」
「海いいねぇ」
昔はもっと海の水が冷たかったような気がする。小さいときはあっという間に身体が冷えて、紫色の唇で身体がをぶるぶる震わせながら、海の家でラーメンを食べたことを思い出す。すっかり廃墟と化した海の家は、今もその形だけは残っている。
何度か市政に嘆願書や署名が届いたとニュースで流れていたが、どの要求も認められることはなかった。海水浴場近辺での飲酒運転による重大事故が減ることはなかったからだ。
「おい! 悠、おい!」
「なに。今僕海と一体になろうとしてんだけど」
「いいからちょっと見ろって!」
「なんだよー……」
背泳ぎの体勢で浮いていた腕を引かれ、小声の一輝と同じように海の中に立つ。「あそこだよ、あそこっ」と早口で話す一輝が、ある方向を指差していた。強い日光で目が痛いけれど、その指の先をどうにか探す。
「どこ?」
「あそこ! 指の先まっすぐんとこの三人組!」
もう一度よく探すと、白いパラソルの下で楽しそうにはしゃいでいる女性たちがいた。すらりと長い脚や腕、腹まで露出させた細い身体。濡れて肌にぴたりとついた髪。
「俺は右の子めっちゃ好み」
髪の毛を一本縛りして、水色のビキニに太腿のほとんどを露出するショートパンツを履いた女の子を見て、一輝はそう言う。
「一輝どうせ胸しか見てないだろ」
「ばか! 胸が一番いいに決まってんだろ!」
「やめろそんなこと大声で言うなっ」
「はあ? 悠だって胸のがいいだろ? このむっつり野郎」
「おまっ、だから大声出すなって!」
一輝を羽交い締めし、背面から海中に沈ませる。お互い浮かび上がっては、また海の中に沈んでいく。一度始まったじゃれ愛は、互いの息が上がるまで続いた。海水を飲み過ぎて咳込んだ。喉の痛みと海水の塩辛い味が口に広がる。いつの間にか太陽は少し傾いていた。火照る身体を冷ますには、もう十分すぎるくらい楽しんだ。
「そろそろ戻る? 肉焼けてそう」
「おっけ。はー、おもろかった」
ざぶざぶと波を掻き分け、また熱い砂浜に戻る。直に素足に当たる熱に、ふと気づいた。
「一輝、僕のサンダル知らない?」
履いていたはずのサンダルが二足とも無い。一輝の足元を見る。
「や、俺も無いんだよ」
さっきまでのはしゃぎようが嘘のように黙ったまま、僕と一輝は広い海を振り向いた。浮き輪やバルーンを使って泳いでいる人や、波打ち際で座っている親子連れが楽しそうに遊んでいる。サンダルを見つけたと騒いでいるような人は誰もいない。
自然と僕たちは肩を組んで、労わり合うようにして両親が組み立てたテントへと戻った。気に入っていたスポーツブランドのサンダルだったのにな。ちらと横目に海を見るが、かわらず日光を受けてきらきらと光るだけ。サンダルの場所を教えてくれそうな様子はない。
父が朝から意気込んで準備していたい簡易コンロは、テントのすぐ隣に置かれていた。炭火の香りとあまじょ@@あお焼き肉のたれのにおいが、空腹の身体に直撃する。すでに網の上に葉豚バラやせせり、焼き鳥がじゅうじゅうと音を立てていた。
「あれ? あんたたちサンダルは?」
「無くなった」
母が紙皿を差し出し、僕たちはそれを受け取る。「脱いでいかないからだよ」と呆れ口調の母に言われるのを知らんふりをして、焼けていそうな豚バラを取る。父はうちわで炭に空気を送りながら、肉を裏返したりしている。
遠慮がちな一輝の取り皿に、父はいくつかの肉を入れる。「いっぱい食べてね」と言って肉奉行に戻った父に、一輝と顔を見合わせて笑ってしまう。父はこうしたイベントの時、誰よりも張り切る。
「うめー!」
「ん! うんま」
焼き立ての豚バラ肉を頬張ると、脂がじゅわっと口の中に広がる。炭火の香ばしさが鼻に抜けて、思わずうっとりと目が細められた。ターフの日陰に座り、生温い海風を受ける。顔や肩がじんじんと熱く感じるけれど、まだ肌は赤くなっていない。
「おにぎりもあるからね」
「悠の母ちゃん最高! おにぎりください」
母が朝作っていた塩おにぎりがだsれる。僕の家の塩おにぎりは丸型で、米がみっちりと詰まっている。焼き海苔をつけアルミホイルで包んであった。少し冷えてもうっすらと塩気を感じ、焼き肉タレとの相性が良い。
ひたすら肉を食べ、おにぎりを食べ、麦茶を飲む。僕たちが満腹になるころ、ようやく両親がゆっくりと座って焼き肉を楽しみ始めた。僕らはテントのなかに引っ込んで、ごろんとエアマットレスの上に寝転がる。非日常を楽しんでいるようで、贅沢な時間だった。
「いやー。まじ誘ってくれてありがとな」
仰向けに寝転んだ一輝が、お腹をさすりながら眠たそうな声で言う。
「むしろ急だったのにありがとう。やっぱ友達と海来るの楽しいわ」
目を閉じると、すぐ近くまで眠気がやってきていることに気がついた。こうしてゆっくり過ごすことなんて、今思えばほとんどなかった。
「前も友達と来たりしたことあんの?」
「あるよー。僕んちと、あと速水の家と」
一輝の視線を感じる。僕は目を閉じたまま、少しだけ笑って見せた。
「家族ぐるみで仲良くてさ。昔一緒に来たんだ」
その時の記憶は、もう細部がぼやけてしまっている。ただ、笑い声や水しぶきの感触は、妙に鮮明に残っていた。速水は泳ぐことが得意で、潜ってヒトデや貝を拾ってきたりしていたっけ。
「速水も海とか行くんだ」
「うん。その時も楽しかったな」
速水と過ごしたあの夏が戻ってくるわけではないけれど、あの頃、あの時間が楽しかったことは、今でも僕の中に残っている。
「ピアノ弾けなくなったんだ」
がやがやした外の騒がしさと、浪の音に耳を傾けながら僕は一輝に話す。連弾の打診をしたこと、断られてしまったこと、気まずさがなくなったかと思ったら今度はもっと深い溝が生まれてしまったこと。できるだけ淡々と、一輝に伝える。
そして今、ピアノを楽しく弾けなくなってしまったこと。連弾なんて夢のまた夢で、今は弾けるような状況じゃないこと。
「速水と、連弾したいんだ」
「そうかぁ……」
静かに聞いてくれていた一輝が、なるほどなぁと言葉を続けた。ゆったりとした時間がわずかに質量を増したような気がする。
「こういう理由で連弾したいとは言ってないの?」
「言ってない。連弾がしたい、とは伝えたんだけど」
「それ、理由も言わなきゃじゃね? 速水はさ、別に連弾は絶対無理って気持ちで言ってはいなさそうだけどな」
今度は僕が静かになる番だった。
「一回辞めたことに挑戦する、しかも相手は現役ってなるとさ、力量さが不安なわけよ。悠は弾けるけど、俺は足引っ張っちゃうかもってさ」
「うん」
「それでも悠が速水と弾きたいって思うんだったらさ、ちゃんと話した方がいんじゃね? 仲良かった奴らが急に気まずそうにしてさ、ちょっと話してんなーと思ったら実はケンカ中ですってなるのも面倒じゃん。俺も悠たちも。早めに直接話して見た方がいんじゃね?」
一輝の方を見ると、一輝も僕のことをまっすぐ見ていた。切れ長の瞳が僕を射抜く。
「すぐ話せって言わないけどさ。悠はピアノとも速水とも向き合わないといけないだろうし」
「そう、だね」
心のぽっかりと空いた弱いところに言葉が刺さるけれど、嫌な感じはしない。一輝に面倒見の良さを感じていたけれど、僕よりもはるかに大人びている。
「まずはピアノかなぁ」
「おう。そう思うならピアノからの方がいいと気がする。悠はまずさ、なんでピアノを弾きたいのかって考えてみれば?」
「なんで弾きたいか」
「そ。連弾だけしたい人は、すぐにでも相手探しそうじゃん。でもお前はそうじゃないからさ、ピアノを弾きたい理由考えた方がすっきりしそう」
「……なんか、すごい的確なアドバイス」
一輝が苦笑いを浮かべて、寝返りを打つ。顔は見えないまま、少しの沈黙のあとで一輝が口を開いた。
「悠さ、楽しそうに弾いてたじゃん。去年秋羽部長とやってた連弾とかさ。俺、あれマジでびびったんだよ」
「……なにが?」
「こんなに楽しそうにピアノ弾くやついんの? って。しかもさ、へらへらして中身なさそうに見えてたお前がだよ?」
「僕の最初の印象どうなってんだよ」
二人で声を上げて笑う。一輝の声音には悪意も茶化しもない。静かに目を閉じる。薄暗い照明とステージの真ん中に置かれたグランドピアノ。連弾で数曲演奏し、アンコールで披露した『星に願いを』。
「あれ、ほんとはめちゃくちゃ緊張してたよ」
「全然そんな風に見えなかったけどな」
「まあ一人と違ってさ、音で会話をするんだよ連弾って。秋羽部長と合わせるとは思ってなかったけど、秋羽部長のことを少し知れた感じがして楽しかったなぁ」
そう言葉にして初めて、ようやく自分がピアノを楽しんで弾いていたんだという実感が生まれた。ピアノを弾けば旋律がある、それが当たり前だと感じていた。速水と弾きたいという気持ちの原動力は、ピアノの楽しさから生まれていた。誰かと一緒に音を重ねて、少しずつ曲の形が浮かんでいくことが連弾の楽しさだった。
「悠はさ、ピアノ続けんの?」
速水にされたのと同じような問いに、笑みが浮かぶ。速水も一輝も、確認のような、訊いておかないといけないというような気持ちの重さが込められているように感じられた。
「そりゃ続けるよ。今は弾けないけど、弾きたいと思ってる」
「そっか」
静かになったかと思った瞬間、一輝が体勢を仰向けに変えた。
「まあ、なんかあれだな。やりたいけどうまくやれない、みたいなの少し分かる」
「え?」
「俺さ小学校から中学校までサッカーやってたんだけど、中学んときの部活で全然楽しめなくて辞めたんだよ。強豪だったからっていうのもあるんだろうけど、気持ちよくサッカーできなくなったのが耐えられなくてさ」
ゆっくり、噛み締めるように一輝が話す。
「一輝サッカーやってたの初耳だわ」
「気持ちよくできないから辞める、なんて黒歴史過ぎて言えないって」
力なく笑った一輝が、はあ、と息を吐く。
「ま! 俺は今吹奏楽最高って思ってるから、サッカーのことはいいんだ。悠は俺と違って終わりじゃないだろうからさ、ゆっくり休憩して、また軽く弾いてみたらいんじゃね?」
一輝の言葉に、小さく頷く。
「ゆっくり頑張ります」
「おう。文化祭あるから早めになー」
「きびし」
二人でまた、けらけらと笑い合う。ひとしきり笑い、横になった身体に先ほどよりも強い睡魔が襲う。意識が暗転したタイミングは分からなかったけれど、母に起こされて寝ていたことを理解した。一輝は先に起きていたらしく、まっすぐテントの出入口から海を見つめていた。
広い海に大きな夕日がゆっくりと沈んでいく。遮蔽物の少ない場で見る夕日に目を奪われれた。両親がコンロやテントを片づけるのを手伝い、夜風を浴びながら帰路を進む。少しだけ、心が軽い。横で眠る一輝を見て、自然と笑みが浮かんだ。

