朝になるとたまに幻聴が聞こえてくる。
 そして、思わず「おはよう」と口を滑らす。

「おはよう」と言ったって誰も返すことはないのに。
 この部屋には、私しかいないのに。

 彼との日々が私を溶かしていたのだと実感する。
 彼から貰ったドライフラワーはずっと、玄関に飾ってる。

「静かだよ・・・」
 前はもっとうるさかった。楽しくて居心地がよかった。

「好きだよ」
 そう言って、触れるだけ優しいキスをしてくれた彼。

「愛してる」
 そう言って、ギュッと抱きしめてくれた彼。

「もう離してやれない」
 そう言って、いつもより荒々しく溶けるようなキスをした彼。

 今でも鮮明に思い出せる。
 ずっと、忘れることはない宝もの。

「愛してる」

 言葉は静かな部屋に溶けていった。