席替えしたら、どうやら後ろの男が俺のこと好きらしい

「あの付箋、意外と助かってる。寝ぐせとか、丸い背中とか」
 どういう意図で付箋を俺に宛てているのか不明だけど、それでも気になるようにはなった。ひとまず寝ぐせは毎朝できるだけ直すようにしている。
「助かってんの?」
「えっ、うん。改善点を教えてくれてんのかなって解釈して」
「間山の好きなところだけど」
 さらりと言うけど、今、とんでもないことを口にしたよな……?
 好きなところって、しかも俺のって――。
 そこまで考えて、告白された日のことを思いだした。あのとき、「これから知って」と朝宮は言っていた。
ということは、それを有言実行していたというわけか。
「そ……うだったのか。うん、考えたらそうだよな。確かにそうかも」
 何がそうなんだよ、ひとつも納得いってねえよ。
 それを俺は丁寧にノートにまとめていたんだから。そろそろ一冊目が終わろうとしているんだぞ。
「嫌だった?」
 それはどこかでも聞いたことがあるような気がするけど、どこだっけ。
……ああ、そうか、告られたときだ。
 俺を好きだと言う度胸はあるのに、俺が嫌がることを極端に気にする。
「嫌じゃないよ。なんでそんな気になるの?」
「間山にだけは嫌われたくないから」
 即答だ。なんの迷いもない。
 いつだって朝宮は、俺への気持ちをぶつけてくる。それと同時に、俺に嫌われることを恐れて、それを隠さずに見せてくる。
 だから戸惑ってしまう。
朝宮の本音に近いそれを俺が見てしまっていいのかと。
 そこに俺はきちんと応えられるのかと。
「……付箋、書くの大変だろうから、ペース落としてもらって大丈夫」
 そんな変な気遣いを見せたところで朝宮には「いや」と断られる。
「結構ペース落としてたつもり」
「そうなの!?」
「あんなのまだ序の口で、ほとんど書けてないぐらい」
 どれだけあるんだよ。そんなに俺の……好きな、ところとかないだろ。
 もし、と静かに響く低音に顔を上げる。
「間山が嫌じゃないなら続けたいんだけど」
 それでいて好意を伝えるということに遠慮がない。どこまでも深く伝えてこようとするそれは、朝宮にとっては通常なのかもしれない。
 ……今までの彼女にも、同じようなことをしていたのだろうか。
「どっちでもいいと思う、かな」
「ならよかった」
 一瞬過った彼女という存在に、胸がざわりと嫌な音を立てた。なんだ、これ。 それにしても朝宮って、人を好きになると結構一途なんだな。
「あとさ、聞きたかったことあるんだけど」
 さらに朝宮からの問いかけは続き、この数分で動揺した気持ちを落ち着かせるように「うん」と相槌を打つと。