席替えしたら、どうやら後ろの男が俺のこと好きらしい

 あるとき、美化委員の榊を常川田と教室で待っていた。
「やばいよ虹!!」
 窓から見えたそれを、常川田がベストポジションで収めようとスマホ片手に教室を飛び出した。そのタイミングで間山だけが戻ってきた。
 俺と目が合ったことで気まずいと思ったのか「えっと」と声をあげた。
「榊……待ってたりするよね?」
「うん」
「先生にまだ残れって言われてたから、戻ってくるのもう少し先だと思う」
 視線が右往左往している。緊張しているらしい。
 言われてみれば、こうして話すのは初めてか。
「どうも」
 それだけ伝えれば、いえいえと恐縮そうに笑顔を浮かべる。
 でもそれは心から笑っているというよりは、愛想笑いに近いもので、無理して作ってますみたいな顔だ。
 そのまま間山は何かに気づいたように教卓の上を見て、それから近づいた。手を伸ばしたのは、置き去りにされていた日誌だ。
 ……そういえば、常川田のやつ、今日日直じゃなかったっけ。
 今日一日、書いていたところを見ていないから、忘れていたのだろう。
 俺が渡しておく、と言いかけたところで、なぜか間山がパラパラと日誌をめくり始めた。それから持っていたペンケースからシャーペンを取り出すと、黙々と書いていく。
「え」
 思わず声が出ていた。間山も驚いたように日誌から顔をあげる。
「それ、間山の仕事じゃないでしょ」
「あー……うん。でも、俺が見つけちゃったから」
「日直じゃないんだから、日直にやらせとけばよくね」
「俺が気づいてできるものは、やったほうがいいかなって。俺、できないことが多いから」
 「できないことって……」と言いかけて、去年の体育祭のリレーでド派手に転んでいたことを思い出す。
 五月。まだクラスでも馴染めていない中で、涼しいうちに体育祭をやっておこうということで入学してすぐに体育祭になった。
 全クラス対抗リレーで、間山は見事なパフォーマンスを見せていた。
 別にそのことを言っていたわけでもないと思うけれど、それでも間山がすることではない。
 間山の場合、これはお人好しレベルを超えている。
「誰もやらないなら、俺がやっても別にいいかなって」
「……そんなの、都合よく使われるぞ」
「そうなんだけど」