委員会が終わると、昇降口に朝宮がいた。
 壁にもたれ、夕陽に照らされるその姿は、妙に色っぽくて、立ってるだけでサマになるってすげえなって感心してしまう。
 外を眺めていた朝宮の顔が、こちらを向いた。
隣にいた榊が言う。
「俺のこと待ってたのか」
「誰が変態野郎待つんだよ」
 それをバッサリと切り捨てて、朝宮は俺の前まで歩いてくる。
「一緒に帰れる?」
「え、あ……うん。帰れるけど」
 そもそも、一緒に帰る約束なんてしてなかったのに、ずっと俺をここで待ってくれてたのか。
「健(けな)気(げ)だなあ。そんなお前に教えてやるよ、さっき間山がお前のこと――」
「ス、ストーーーップ!」
 榊がとんでもなく口を滑らせ始めたので、慌てて前に出る。
 何を言おうとしたのか分からないが、おそらく都合のいい内容ではない。
 榊は「なんだよ、悪口じゃねえのに」と膨れたような顔を見せるが、だからといってなんでもかんでも朝宮に言っていいわけでもない。むしろ朝宮がいないから言えたことだってたくさんある。
「なに、仲良さそうだけど」
「仲いいというか、これは」
「――嫌だ」
 朝宮が俺の手首を掴む。ぎりっと痛みが走るような強さが躊躇なく俺を捉え、離そうとしない。
「行こう」
 朝宮が校舎を出ようとするから、慌てて靴だけ履き替えた。手首を掴まれたまま、ずんずんと前に進んでいく。
 自分勝手なその動きは、これまで俺に見せることはなかったものだ。振り返れば、呑気そうに手を振って俺たちを見送る榊がいる。
 朝宮、と呼んでみるけど、その足が止まることもなければ、俺を見ることもない。ただそこに道があり、ひたすら歩く動作を繰り返すだけ。
 朝宮、痛いよ。そう言えば、この手は離れるのだろうか。でも、言いたくなかった。
 無遠慮で乱暴で、それでいて俺のことだけしか考えていないような男のことを、俺は知りたかった。もっと、そういうところを見たかった。
 校門を出たところで、ようやく朝宮の足が止まった。
「……ごめん、暴走しました」
 申し訳なさそうに振り返ったその顔に、ふっと笑みがこぼれる。
「いいよ。俺もごめん、朝宮を暴走させて」
 きっと俺のせいだ。
 何か逆鱗に触れるような振る舞いをしてしまったのはたしかなのだろう。
 橙色に染まる空の下、翳りを見せる朝宮は、さっきまでの憤った様子を落ち着かせるようにして言った。
「……こういうの言いたくないけど、でも、嫉妬する」
「嫉妬?」
「榊と仲良さそうにしてたら、それは俺じゃだめだったのかって思うし、そういう自分にも腹が立つし、でも間山を誰にも取られたくないし」
 握られている手は、力加減が弱まっただけで繋がってはいる。
 地面に落ちる影は、俺たちが手を繋いでいるように見えるのに、そんな可愛らしいものではない。じわじわとした痛みだけが残り、上書きするように朝宮の体温が浸透していく。