ということは、俺は朝宮のことが好きなのか?
だとしたらどこで好きになったんだ?
好きという文字が頭の中でぷかぷかと浮遊しては薄くなり消えていく。不確かで、目に見える形ではないからこそ見極めることが難しい。
いつの間にか俺が朝宮を好きになっていたとしよう。
でもそれは、こうして構ってくれるのが朝宮だけだったからってことじゃないのか。
刷り込みってやつだ。
鳥の雛が生まれて初めて見たものを親だと勘違いするみたいに、俺のことを好きだと言う朝宮を過剰に意識しすぎた結果、好きだと思ってしまっているとか。
そもそも、俺なんか教室の空気みたいに存在感なんてなかったんだぞ。
それなのに朝宮が俺のことを見つけてくれて、俺のことをネタじゃなくて本気で好きだって言ってくれてることが奇跡だ。
ガラス窓の向こうにいる連中たちは「お前らデキてんのか」と未だにからかって遊んでいる。
「……お嫁にいけない」
両手で顔を覆う。こんな姿は瞬く間に拡散されてしまうだろう。でも俺なんかが広まるはず……いや、ここには朝宮というとんでもない男がいたんだった。
「間山はどこにもいかせない」
ふと、肩の上に朝宮の顎がのった。
俺を覗き込むように見てくる整った顔は、どうして男の俺にも効果があるのだろう。簡単にドキッとしてしまう。
「俺がもらうのは確定してるから」
「だッ、だから今言うようなセリフじゃないし確定もしてないから」
慌てて返したところで、ガラス窓に反射した自分たちの姿が、どこか他人事のように視界に入ってきた。
……朝宮って、ほんといい体格してるよな。
肩幅も広いし、腰の高さも……って、これは男として、憧れを抱いたものとして見ているだけであって、決してやましいものではない。
なんて誰に言い聞かせるわけでもないのに、必死で取り繕うあたりがダサい。こんな俺は、さすがの朝宮でも引くんじゃないのか。
「はい、イチャイチャタイム終了でーす」
ようやく常川田が開錠してくれたことで、いろいろな意味で耐えがたい時間から解き放たれた。
「榊、いい画撮れた?」
「撮れた。常川田、これはバズるぞ」
「ば、バズ……!? それはやめて」
ガチで拡散でもされようものなら結果は見えている。朝宮を絶賛する声と、釣り合ってないという俺に向けられるコメント。想像するだけでも見たくない。
思わず榊に近寄ろうとしたら、後ろから榊のスマホをかっさらう腕が見えた。
「ネットに上げたら殺す」
朝宮だ。なんか静かに怒っていらっしゃる。
決して俺には向けないような声だと分かっているからこそ、時折見える朝宮の顔に圧倒される。
この男、怒ってても綺麗な顔してんだな。
「冗談に決まってんじゃん。前に朝宮をネットに晒したときにしっかり反省しましたあ」
常川田……勝手に朝宮の写真か動画をアップしたんだな。でも言い方に反省の色が見えない。
だとしたらどこで好きになったんだ?
好きという文字が頭の中でぷかぷかと浮遊しては薄くなり消えていく。不確かで、目に見える形ではないからこそ見極めることが難しい。
いつの間にか俺が朝宮を好きになっていたとしよう。
でもそれは、こうして構ってくれるのが朝宮だけだったからってことじゃないのか。
刷り込みってやつだ。
鳥の雛が生まれて初めて見たものを親だと勘違いするみたいに、俺のことを好きだと言う朝宮を過剰に意識しすぎた結果、好きだと思ってしまっているとか。
そもそも、俺なんか教室の空気みたいに存在感なんてなかったんだぞ。
それなのに朝宮が俺のことを見つけてくれて、俺のことをネタじゃなくて本気で好きだって言ってくれてることが奇跡だ。
ガラス窓の向こうにいる連中たちは「お前らデキてんのか」と未だにからかって遊んでいる。
「……お嫁にいけない」
両手で顔を覆う。こんな姿は瞬く間に拡散されてしまうだろう。でも俺なんかが広まるはず……いや、ここには朝宮というとんでもない男がいたんだった。
「間山はどこにもいかせない」
ふと、肩の上に朝宮の顎がのった。
俺を覗き込むように見てくる整った顔は、どうして男の俺にも効果があるのだろう。簡単にドキッとしてしまう。
「俺がもらうのは確定してるから」
「だッ、だから今言うようなセリフじゃないし確定もしてないから」
慌てて返したところで、ガラス窓に反射した自分たちの姿が、どこか他人事のように視界に入ってきた。
……朝宮って、ほんといい体格してるよな。
肩幅も広いし、腰の高さも……って、これは男として、憧れを抱いたものとして見ているだけであって、決してやましいものではない。
なんて誰に言い聞かせるわけでもないのに、必死で取り繕うあたりがダサい。こんな俺は、さすがの朝宮でも引くんじゃないのか。
「はい、イチャイチャタイム終了でーす」
ようやく常川田が開錠してくれたことで、いろいろな意味で耐えがたい時間から解き放たれた。
「榊、いい画撮れた?」
「撮れた。常川田、これはバズるぞ」
「ば、バズ……!? それはやめて」
ガチで拡散でもされようものなら結果は見えている。朝宮を絶賛する声と、釣り合ってないという俺に向けられるコメント。想像するだけでも見たくない。
思わず榊に近寄ろうとしたら、後ろから榊のスマホをかっさらう腕が見えた。
「ネットに上げたら殺す」
朝宮だ。なんか静かに怒っていらっしゃる。
決して俺には向けないような声だと分かっているからこそ、時折見える朝宮の顔に圧倒される。
この男、怒ってても綺麗な顔してんだな。
「冗談に決まってんじゃん。前に朝宮をネットに晒したときにしっかり反省しましたあ」
常川田……勝手に朝宮の写真か動画をアップしたんだな。でも言い方に反省の色が見えない。

