だから、第一印象はどこか冷たそうな感じを抱いていたことは確かだ。
でも、別に冷たい人間ってわけではなかった。
一年のときも同じクラスだったけど、クラスメイトが困ってたら普通に声をかけるし、さりげなくフォローすることも得意だなと思ったりもした。
授業中、よく生徒を当ててくる教師の前で、答えられずにいたクラスメイトに対しても、横から答えを言ってしまうとか。
そこで「朝宮に聞いてんじゃねえぞ」と注意されても「さーせんしたあ」と謝罪の気持ちがこもっていない言葉で周囲を助けたりする。
俺は男だけど、やっぱり憧れてしまうようなカリスマ性があって、どこか遠い存在という気がしていた。
「まーやま」
今とは別の関係性だった過去を思い出していたところで、朝宮の顔がどアップに見えて我に返る。
「な、なに」
「上着を着てください」
何かを訴えてきていたということは察したが、まさか上着問題だとは思わなかった。
五月。新緑の季節の日中は上着を羽織るほど寒くはない。それなのに朝宮はなぜか上着を強調する。
「着てください、頼むから」
「え、なんで?」
「この前、シャツだけだったから汗かいたときに肌が透けてた」
たしか先週もグラウンドで走り回った記憶がある。そのときのことを言っているのだろうが、透けていたぐらいで何が問題なのだろうか。
女の子だとしたら問題だけど、男の俺が上着を着るような事態になるとは思えない。
そんな俺の思考を読み解くように「あれは」と朝宮が続けた。
「ほかの奴に見せるわけにはいかない」
「男の俺の肌なんか見て誰が喜ぶんだよ」
「俺」
「……真面目にレスしてくんな」
多分、俺に対して独占欲みたいなものを抱いてくれているらしい。リアクションしづらい。
着てる奴なんて誰もいないと抗議したが「よそはよそ、うちはうち」という、どこかの家で聞こえてきそうな家訓とともに、朝宮の上着を押し付けられた。
もちろん断ることもできたが、切羽詰まった顔で「お願いします」と懇願されてしまえば頑なに拒絶もできなかった。
次からは肌が透けないインナーでも着てこよう。
「準備体操しろー」
グラウンドに着くと、体育教師が笛をピーピー鳴らしている。今までは近くにいた人同士でペアをするのが規則だったけど、最近は少し変わっていた。
「間山、相手やって」
「あ、うん」
不思議なことに朝宮と準備体操をするというイベントが発生していた。今まで他の仲いいメンバーとやっていたのに、なぜか相手を俺にしようとこだわっている。
でも、別に冷たい人間ってわけではなかった。
一年のときも同じクラスだったけど、クラスメイトが困ってたら普通に声をかけるし、さりげなくフォローすることも得意だなと思ったりもした。
授業中、よく生徒を当ててくる教師の前で、答えられずにいたクラスメイトに対しても、横から答えを言ってしまうとか。
そこで「朝宮に聞いてんじゃねえぞ」と注意されても「さーせんしたあ」と謝罪の気持ちがこもっていない言葉で周囲を助けたりする。
俺は男だけど、やっぱり憧れてしまうようなカリスマ性があって、どこか遠い存在という気がしていた。
「まーやま」
今とは別の関係性だった過去を思い出していたところで、朝宮の顔がどアップに見えて我に返る。
「な、なに」
「上着を着てください」
何かを訴えてきていたということは察したが、まさか上着問題だとは思わなかった。
五月。新緑の季節の日中は上着を羽織るほど寒くはない。それなのに朝宮はなぜか上着を強調する。
「着てください、頼むから」
「え、なんで?」
「この前、シャツだけだったから汗かいたときに肌が透けてた」
たしか先週もグラウンドで走り回った記憶がある。そのときのことを言っているのだろうが、透けていたぐらいで何が問題なのだろうか。
女の子だとしたら問題だけど、男の俺が上着を着るような事態になるとは思えない。
そんな俺の思考を読み解くように「あれは」と朝宮が続けた。
「ほかの奴に見せるわけにはいかない」
「男の俺の肌なんか見て誰が喜ぶんだよ」
「俺」
「……真面目にレスしてくんな」
多分、俺に対して独占欲みたいなものを抱いてくれているらしい。リアクションしづらい。
着てる奴なんて誰もいないと抗議したが「よそはよそ、うちはうち」という、どこかの家で聞こえてきそうな家訓とともに、朝宮の上着を押し付けられた。
もちろん断ることもできたが、切羽詰まった顔で「お願いします」と懇願されてしまえば頑なに拒絶もできなかった。
次からは肌が透けないインナーでも着てこよう。
「準備体操しろー」
グラウンドに着くと、体育教師が笛をピーピー鳴らしている。今までは近くにいた人同士でペアをするのが規則だったけど、最近は少し変わっていた。
「間山、相手やって」
「あ、うん」
不思議なことに朝宮と準備体操をするというイベントが発生していた。今まで他の仲いいメンバーとやっていたのに、なぜか相手を俺にしようとこだわっている。

