「パンが買えた……まじでよかった」
朝宮に約束のパンを用意できたのはよかった。
翌日、起きる予定の二時間前からアラームをかけつづけ、睡魔よりも先に朝宮を優先したことで無事に起きることができた。
自分の部屋を出ようとしたとき、ちょうど起きてきた兄貴の天と鉢合わせた。天の目が俺を捉え、すぐさま持っていたスマホで画面を確認していたけど、あれは遅刻を疑ったからだと思う。
「晴が寝坊してないとかどういうこと!?」
「失礼すぎだろ」
「俺が起こさなくても起きれるようになったんだな!」
「……いや、ごめん。明日から通常運転だと思う」
そうしてコンビニに着いて、パンコーナーの前で吟味すること数十分。
いくつか朝宮が食べそうなものに目星をつけてみたはいいものの、朝宮が好きかどうかは分からなかった。
それを登校してきた朝宮にすぐ渡すと、目を輝かせた。
「間山からのパンと一緒に火葬してくれ」
「縁起でもないこと言うなよ。あと腐るから食べろよな」
「……じゃあ、今日食べる」
ずいぶん悲しそうに言うな。
なんとか約束を果たせたことで俺の気持ちは晴れていた。早起きをしたからだろうか。
そのまま授業は進み、四限目の体育。俺が振り返ってしまったことで、とんでもないことが起こってしまった。
今まで体育の着替えを気にしたことなんて一度もない。
着替えを済ませ、体育館なりグラウンドなりに向かおうとしていたのに、今日はたまたま振り返ってしまったばかりに、朝宮の裸体が目に飛び込んできて凝視してしまった。
「どした」
上を着ようとしていた朝宮の手が止まった。
「あ、いや……朝宮って鍛えてたりする?」
「たまに電車間に合わなくてダッシュするぐらい」
「まじか」
引き締まった身体にしっかりと割れた腹筋。脱いだときの朝宮を見たことがなかったけど、俺とは大違いだ。
「間山にそんなじろじろ見られると着替えづらい」
「ごっ、ごめん。その、いいなって思って」
「いい?」
「俺はひょろいから」
昔から筋肉がつかない体質で、プロテインを飲んでも、腕立てや腹筋を頑張ってみても、身になったことはない。結果的に細いだけなのと健康的な暮らしを送っているだけになる。
それなら潔く諦めたほうがいいと、最近思ったばかりだった。
「間山は筋肉つけたいの?」
「うーん、まあ憧れたりはするかな」
天は運動が好きだから、「動いていれば鍛えられるよ」と爽やかな笑顔で言い放ってくる。風呂上りは上半身裸で動きまわっているけど、やはり引き締まっている。
「俺はどんな間山でも好きだよ」
ひょいっと上を着た朝宮に空いた口がふさがらない。
「だ、だから! そういうのをなんで平気で」
「思ったことは言ってかないと」
言いすぎだ。過剰摂取する身にもなってほしい。
十七年間、言われ慣れるほど浴びてきた言葉たちでもない。
褒められることすら皆無に等しかった中で、ここ二週間は怒涛のフィーバーが起こっている状態だ。
だから疑ってしまう。実は俺にだけではなく、誰にでも言っているのではないかと。
特に常川田と榊には俺と同じように接しているのかと思ってしまうが、ふたりの前では割とスマートというか、すんとしてることが多い。
あとスマホゲームばっかしてて人の話を聞いてない。
「遊びに行こうぜ」と誘われても「ああ、おめでとう」と適当な返しをしていたぐらいには興味もないらしい。
さらにしつこく誘われれば「クエストのほうが大事なんだよ」とゲーム優先を堂々と言い放っていた。
そんな朝宮に周りは動じない。「また言ってるわ」と流し、結果的に朝宮を除いたメンバーで遊びに行っているらしい。
朝宮が満足そうにゲームをしているのを見ている限り、あんまり人には興味がないんだろうなって思ってた。
朝宮に約束のパンを用意できたのはよかった。
翌日、起きる予定の二時間前からアラームをかけつづけ、睡魔よりも先に朝宮を優先したことで無事に起きることができた。
自分の部屋を出ようとしたとき、ちょうど起きてきた兄貴の天と鉢合わせた。天の目が俺を捉え、すぐさま持っていたスマホで画面を確認していたけど、あれは遅刻を疑ったからだと思う。
「晴が寝坊してないとかどういうこと!?」
「失礼すぎだろ」
「俺が起こさなくても起きれるようになったんだな!」
「……いや、ごめん。明日から通常運転だと思う」
そうしてコンビニに着いて、パンコーナーの前で吟味すること数十分。
いくつか朝宮が食べそうなものに目星をつけてみたはいいものの、朝宮が好きかどうかは分からなかった。
それを登校してきた朝宮にすぐ渡すと、目を輝かせた。
「間山からのパンと一緒に火葬してくれ」
「縁起でもないこと言うなよ。あと腐るから食べろよな」
「……じゃあ、今日食べる」
ずいぶん悲しそうに言うな。
なんとか約束を果たせたことで俺の気持ちは晴れていた。早起きをしたからだろうか。
そのまま授業は進み、四限目の体育。俺が振り返ってしまったことで、とんでもないことが起こってしまった。
今まで体育の着替えを気にしたことなんて一度もない。
着替えを済ませ、体育館なりグラウンドなりに向かおうとしていたのに、今日はたまたま振り返ってしまったばかりに、朝宮の裸体が目に飛び込んできて凝視してしまった。
「どした」
上を着ようとしていた朝宮の手が止まった。
「あ、いや……朝宮って鍛えてたりする?」
「たまに電車間に合わなくてダッシュするぐらい」
「まじか」
引き締まった身体にしっかりと割れた腹筋。脱いだときの朝宮を見たことがなかったけど、俺とは大違いだ。
「間山にそんなじろじろ見られると着替えづらい」
「ごっ、ごめん。その、いいなって思って」
「いい?」
「俺はひょろいから」
昔から筋肉がつかない体質で、プロテインを飲んでも、腕立てや腹筋を頑張ってみても、身になったことはない。結果的に細いだけなのと健康的な暮らしを送っているだけになる。
それなら潔く諦めたほうがいいと、最近思ったばかりだった。
「間山は筋肉つけたいの?」
「うーん、まあ憧れたりはするかな」
天は運動が好きだから、「動いていれば鍛えられるよ」と爽やかな笑顔で言い放ってくる。風呂上りは上半身裸で動きまわっているけど、やはり引き締まっている。
「俺はどんな間山でも好きだよ」
ひょいっと上を着た朝宮に空いた口がふさがらない。
「だ、だから! そういうのをなんで平気で」
「思ったことは言ってかないと」
言いすぎだ。過剰摂取する身にもなってほしい。
十七年間、言われ慣れるほど浴びてきた言葉たちでもない。
褒められることすら皆無に等しかった中で、ここ二週間は怒涛のフィーバーが起こっている状態だ。
だから疑ってしまう。実は俺にだけではなく、誰にでも言っているのではないかと。
特に常川田と榊には俺と同じように接しているのかと思ってしまうが、ふたりの前では割とスマートというか、すんとしてることが多い。
あとスマホゲームばっかしてて人の話を聞いてない。
「遊びに行こうぜ」と誘われても「ああ、おめでとう」と適当な返しをしていたぐらいには興味もないらしい。
さらにしつこく誘われれば「クエストのほうが大事なんだよ」とゲーム優先を堂々と言い放っていた。
そんな朝宮に周りは動じない。「また言ってるわ」と流し、結果的に朝宮を除いたメンバーで遊びに行っているらしい。
朝宮が満足そうにゲームをしているのを見ている限り、あんまり人には興味がないんだろうなって思ってた。

