私はルヴェルディ帝国の皇女、アナスタシア・ミカ・ルヴェルディ。

皇帝であるお父様アルフォンス・トレヴィ・ルヴェルディ陛下と、皇后クリスティナ・リーズ・ルヴェルディ陛下の間に生まれた双子の『姉』の方である。

そして隣で転がっている、私と全く同じ顔をした赤ん坊。
彼女が双子の『妹』の方、トリアージェ・サラ・ルヴェルディだ。

二人とも銀髪に緑色の瞳で、とっても美しい赤ん坊なんだって!
いつもお母様の侍女やお父様の側近たちが、目をまん丸にして驚くもの。

みんな抱っこしたいらしいんだけれど、お父様が『だめだっ!!』って言って、誰にも触らせないの。
大切で大切で胸が苦しくなるんですって。

私たちは、今から二週間ほど前にこの世に生まれた。
身体が赤ん坊なおかげで、全く身動きがとれないけれどね。
実は私たち、中身はともに20代なのである。

 ◇

まず私の話からしよう。

前世は日本のOL、前野美香。28歳。
趣味はロマンスファンタジー小説。仕事は経理。
恋愛経験なし、友達少なめ、天涯孤独。

だけど心だけは元気で、毎晩「異世界転生した〜い」と祈っていた。
……そしたら本当に転生しちゃった!!

でもその転生先は、小説『復讐の皇后アナスタシア』の世界。
将来お嫁に行く予定のザッカーブルク帝国で、政略結婚→悪女化→処刑される運命。

冗談じゃない!

 ◇

そして妹、トリアージェの話。

彼女は「死に戻り」。
ファリス帝国に嫁ぎ、愛人持ちの皇太子に虐げられ、悪女にされて処刑されたらしい。

——そりゃ、男なんて信じられなくなるわけだよ。

そう、私たちは誓い合ったの。

「もう恋なんてしない!!」
「結婚なんて御免こうむる!!」
「人生まるごと、ぜーーーんぶ自分で決めるんだ!!」

生後二週間の双子姉妹。
今ここに、確固たる人生の目標を定めたのだった。

 

──次回:「爽やかな朝とマリシス兄様の優しさ」