全校集会と学年集会もおえ、体験入部の時間になった。
しかし、体験入部は当然、中止となった。

けれど僕は諦めなかった。先輩たちもそうだった。

「先生、もう一度、吹かせてください」

岩田先生が目を見開いた。

「……中止です。また事件があったら…」

「でも、僕は、吹奏楽をやりたくてここに来たんです!犯人が誰だろうと、僕には関係ない!」

そのとき、宮坂先輩が言ってくれた。

「先生、和田くん、すごく上手だったんですよ。体験で、カエルの歌吹いちゃって。しかも初めてで!」

ざわつく先輩たち。岩田先生はしばらく黙ってから、ため息をついた。

「……そこまでいうなら、仕方ない。体験入部楽しんで!」

「はい!」

許可が出た。僕は、もう一度、トロンボーンを手にした。
でも――その前に、やるべきことがある。

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――楽器倉庫内。
皆が体験入部してる中、先生に頼み込み、僕は一人で倉庫を訪れた。
扉の金具を調べ、昨日の破壊場所を思い出す。

(あれ?昨日見せてくれた時と位置が違う……)

棚の下に、細くて黒い何かが引っかかっていた。取り出すと――小さな靴跡の跡があった。

(……あいつじゃない。あれ、僕より大きい)

鍵穴付近に擦れた跡もある。

(やっぱり、正面からじゃない。裏口だ)

裏にまわると、非常口の下――そこにも、擦れた跡が残っていた。

(壊された楽器は、最初からこっちの扉から運ばれてきたんだ)

つまり、針金は――偽装だった。
本当の侵入口は、ここだ。
つまり…音楽室にいた誰かなのか?

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戻ろうとしたとき、ふと、あの新入生が、角の影から現れた。

「へえ、来たんだ。倉庫まで。」

「……お前がやったのか?」

「さあ。どうだろうね。でも君、ちょっと見直したよ。ちゃんと調べるんだねw」

「僕の体験入部を壊して、何がしたかったんだ?」

「壊した?違うよ。君が本気かどうか、試しただけ。」

「……ふざけんな。」

「ふざけてないさ。君がループしてるって気づいてるなら、次は自分で進めることだ。」

そう言い残して、彼はまた人混みに消えていった。

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――翌朝
僕は岩田先生に証拠を提出した。

「この裏口の鍵、壊されてました。足跡も、針金とは別の人物のものだと…。」

先生たちは驚き、副部長と現場を確認に向かった。

結局、針金は“偽の証拠”である可能性が高まり、体験入部は再開されることとなった。

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――放課後に再び体験入部が始まる。
多くの見学者が戻ってきた。
「和田くん、吹ける?」と先輩に問われ、僕は深く息を吸って、トロンボーンを構えた。

カエルの歌が、昨日よりもずっと澄んだ音で鳴る。

拍手が起きた。
僕は、少しだけ、胸を張れた気がした。

見ていた。あの新入生も、隅の方で黙って見ていた。
そして、口の動きだけでこう言った。

「じゃあ、次はどうする?」

僕は、答えなかった。
でも心の中で、こう返した。

(――今度は、負けない)