月夜のギャンブラー

綺麗に弧を描く缶コーヒー。
音も無くリョウタの手にすっぽりと納まった。
その瞬間――、

「冷っ!! うわぁ!!」
 
リョウタは盛大に転び、苦悶の表情を浮かべる。
私は足許でひっくり返るリョウタを見下ろし、大笑いしてやった。

「へー、雪国の人でも滑って転ぶんだー」
「おい、笑ってないで手を貸せ」
「知らなーい」

助けを求めるリョウタを無視していると、アキラ君がケラケラと笑いながら駆け寄って来る。
その足取りはスケート選手のように軽やかだ。
 
「滑って転ばない遺伝子はないみたいですね」
「何言ってんだ?」
「僕とユキさんの秘密です」

アキラ君はペロッと舌を出すと、リョウタの手では無く私の腕にしがみ付く。
振りほどくべきなんだろうけど、可愛すぎて出来なかった。
リョウタへの仕返しという事で、今日だけは許してもらおう。
 
「ユキさん、今日、一緒にお昼ご飯を食べに行きませんか?」
「いいよ。おすすめのお店があったら教えて」
「あ、最近ファミレス出来たんですよ、チェーン店ですけど」
「いいね、行こう行こう」

アキラ君を支えに、氷の上を歩き出す。
 
リョウタと仲直りは出来たけど、この先も波乱は起きそうだ。
                                  fin