月夜のギャンブラー

「リョウタ?」
「完全にアキラの策にハマってる気がする。俺たちを別れさせる気だろ」

リョウタの鋭い視線にアキラ君が息を飲んだ。

「さ、流石にそこまでは考えてないです」
「本当か?」
「本当です。賭けに負けた事は単純に悔しいですけど……」
「いや、勝ってたら地獄だし、お前との縁も切れてたな」

威圧するような低い声。
アキラ君は肩を落としてうつむいた。

「それは……負けて良かったかも……」

その姿に、リョウタは溜息をこぼして黙り込む。

アキラ君はどこまで本気だったのだろう。
そもそも、駅に来たのって……まさか――。

考えたくない方向に思考が進んだ。

「あのさ、アキラ君が駅に来たのは偶然?」

そうであって欲しいけど……。

「いいえ、ユキさんがタクシーから一人で降りるところを見かけて、追いかけて来ました。ちょっとお話ししたくて……」

あっけらかんと答えるアキラ君。

お話しねぇ……。
なんか恐いな、この子。
もしかして、リョウタが脅されたって表現したのは、過去に何かあったから?
それで拒否できなかった?
だとしたら、アキラ君には目の届く所にいてほしいかも……。

「ユキさん、僕の事が嫌いになりましたか?」
「そ、そんな事は無いよ」
「本当ですか?」
「本当だよ。まだまだ聞きたい事もあるし」
「聞きたい事?」
「うん、メイクの方法を教えて欲しい。あと、友達になって」

微笑んで握手を求めると、アキラ君は目を丸くする。

「いいですよ……」

照れ笑いを浮かべながら、私の手を握るアキラ君。
その声も表情も憂いを帯びていて、罪悪感が込み上げた。

本当にリョウタの事が好きなんだね。
少し、酷な事しちゃったかな。
ごめんね……。

一人懺悔(ざんげ)をしていると、リョウタが私とアキラ君の固い握手を引き剥がす。

「そろそろ人が来る。旅館に戻るぞ」
「うん……」

リョウタに手を引かれ、無人駅を後にした。
まだ薄暗い銀色の世界。
転ぶのが怖くてへっぴり腰になっていると、リョウタはイジワルな笑い声をあげる。
イラついたものの、一人では歩けずに仕方なくリョウタの腕を掴んでいると、

「待って!」

アキラ君が私たちを呼び止めた。
その声があまりにも晴れやかで、驚きながら二人で振り返る。

「これ、リョウタ兄さんが勝ったら渡すって約束だったでしょ」

そう言うと、アキラ君は手に持っていた何かを高らかに放り投げた。

ん? あれって、ずっと持ってた缶コーヒー……?

「バカ、高く投げ過ぎなんだよ!」

リョウタは文句を言いながらも、夜空に向かって両腕を伸ばす。