月夜のギャンブラー

「君の事、いろいろ聞いても良いのかな?」

明るさを取り戻した駅の中。
目の前のイケメンは柔らかくニッコリと笑うが、隣のリョウタは険しい顔で私を見つめる。

「ユキ、俺が悪かった。こいつは女装してお前をからかっただけだから、許してやってくれ」

女装……?
リョウタは本気でそんな事を思っているのだろうか。
彼は――アキラ君は女装なんかじゃない。
ちゃんと女性として私の前に現れた。

アキラ君の心は、リョウタにある。

「こんな大事な事、どうして教えてくれなかったの?」

アキラ君では無くリョウタを睨んだ。
アキラ君本人は、元カノが一番の悪――つまり、自分が悪いと言っていたけど、ぜんぜん違う。
悪いのはリョウタだ。
鈍感すぎるバカ男。
本気でアキラ君の気持ちを考えた事がなかったのだろう。
アキラ君が不憫に思えて悲しくなってきた。

少し、こらしめてやろう!

そう思ったのに……。

「そんなの、本人が話さない事を俺がペラペラ話せる訳ないだろ」

嘘の無い、真っ直ぐな声。
さっきまでは鈍感バカ男だったのに、友達思いの優しい男に変貌されてしまっては文句なんて言えない。私が踏み込んでいい状況では無い気がして、二人を見守っていると、アキラ君は観念したように溜息を吐いた。

「そういう誰にでも優しいところ、結婚したら改めた方がいいですよ」
「何言ってんだ? 俺は優しくなんかないぞ。俺が優しかったら、今頃こんな事にはなってないだろ」

平然と答えるリョウタ。

ダメだ。
やっぱりリョウタは鈍感だ。
なんだかイライラして来た。

「そうそう。リョウタが優しかったら、今頃私は旅館の暖かい布団の中だよ。来るのが遅い!」
「あのなぁ、俺がどれだけ探し回ったと思ってんだ?」
「は? スマホっていう便利な物があるんだから、連絡すれば良かったでしょ?」
「それが出来たら苦労してない」

そう言ってアキラ君の様子を窺うリョウタ。

「何? どういう事?」
「俺、こいつに脅されてたんだよ」

辟易した様子のリョウタは、アキラ君の顔を見下ろしながら嘆息した。