やれやれ、と呟き先輩が横長のベンチへ腰を下ろした。俺はと言えばどうしても目が泳いでしまう。
「まあ、雨風を凌げる場所があるだけマシだと捉えようじゃないか」
「雨じゃなくて雪が舞っていますけどね」
「吹雪じゃないだけこれまたマシさ。そもそもそんな季節だから此処へ来たわけだし」
「だから終電も無くなっていたわけですが」
溜息が漏れる。お互いに抜けていた、と先輩は小さく笑った。おかっぱ頭の黒い髪が揺れる。白い肌はそれこそ雪みたい。白いダウンコートを脱いだけど、やっぱり寒いかな、と肩に掛け直した。
「暖房、使わせては貰えましたけどまだ入れたばかりですからね」
「風邪を引かないよう暖め合うかい」
その言葉に、御冗談を、と首を振る。先輩は、可愛いねぇ、と唇を三日月形にした。だけど洒落になっていない。だって俺は先輩のことが好きだから。片想いを寄せている相手と急に一夜を共にするとなったら、そりゃあ目も泳ぐ。どうこうする気は無いけど意識はしてしまうのだ。じゃあ終電の時間くらいちゃんと確認しておけという話になるのだけど、あの時刻表の書き方はトラップだと思う。
「まあ目的の写真は撮れたんだ。写真部の活動としては上々だね」
先輩ってば男の俺と密室で一晩過ごすのに呑気なんだから。無人駅の待合室だぞ。そして改めて窓から外を見渡してみても、街灯は点々とあるけど建物は一軒も見当たらない。しかし逆に言えば、俺は先輩に全然意識されていないから警戒もされないのだ。察してちょっと落ち込む。いいけどさ、俺の一方的な片想いだもの。
「まあ、雨風を凌げる場所があるだけマシだと捉えようじゃないか」
「雨じゃなくて雪が舞っていますけどね」
「吹雪じゃないだけこれまたマシさ。そもそもそんな季節だから此処へ来たわけだし」
「だから終電も無くなっていたわけですが」
溜息が漏れる。お互いに抜けていた、と先輩は小さく笑った。おかっぱ頭の黒い髪が揺れる。白い肌はそれこそ雪みたい。白いダウンコートを脱いだけど、やっぱり寒いかな、と肩に掛け直した。
「暖房、使わせては貰えましたけどまだ入れたばかりですからね」
「風邪を引かないよう暖め合うかい」
その言葉に、御冗談を、と首を振る。先輩は、可愛いねぇ、と唇を三日月形にした。だけど洒落になっていない。だって俺は先輩のことが好きだから。片想いを寄せている相手と急に一夜を共にするとなったら、そりゃあ目も泳ぐ。どうこうする気は無いけど意識はしてしまうのだ。じゃあ終電の時間くらいちゃんと確認しておけという話になるのだけど、あの時刻表の書き方はトラップだと思う。
「まあ目的の写真は撮れたんだ。写真部の活動としては上々だね」
先輩ってば男の俺と密室で一晩過ごすのに呑気なんだから。無人駅の待合室だぞ。そして改めて窓から外を見渡してみても、街灯は点々とあるけど建物は一軒も見当たらない。しかし逆に言えば、俺は先輩に全然意識されていないから警戒もされないのだ。察してちょっと落ち込む。いいけどさ、俺の一方的な片想いだもの。
