由岐奈は、ふっと目を覚ました。
かなりグッスリ寝ちゃったけど…何時だろう…ゲームしていたタブレットを見ると四時半過ぎだった。
朝食は五時だっけ…トイレに行きたいな。
席を立ってトイレを探した。
先ほどのウェイトレスが由岐奈に気付いて小走りで駆け寄ってきた。
「あのスミマセン、トイレ何処ですか?」
ウェイトレスに案内されながら店の中を見渡すと由岐奈が店に入った時にいた客は、まだ起きていてゲームをしている様子が見えた。
──この店、いいな。穴場だわ。気に入った!
用を済ませた由岐奈は営業時間を訊こうとウェイトレスの姿を探してカウンターに視線を向けた。
カウンター内にいたのは男性で、少し長めの黒髪…おそらく肩に届くくらいの長さを一つに結び、キリッとした切れ長の目、スッキリした顔立ちで由岐奈のタイプの男性だった。
由岐奈に気付いてニッコリと微笑み、
「新規のお客様ですね。いらっしゃいませ。ゲームバー店長の瀧野と申します。出勤が遅かったので、いらした時に御挨拶できず失礼しました。ゆっくりしていってくださいね」
そう話す声は店内で遊ぶ客達に配慮した控えめな音量だったが爽やかな声で由岐奈は痺れた。
「あ、えっと、はい、また来ます!」
由岐奈は瀧野に見とれながら、しどろもどろに答えた。
「ありがとうございます」
瀧野は微笑んだ。
足が宙に浮く感じ、で由岐奈は自分の席に戻って深々と腰掛け、おしぼりで顔を覆った。
──はぁ─────っ!信じられないくらい、めちゃめちゃカッコいい店長。いくつくらいかなぁウェイトレスもアイドル級に可愛いし…ゲームして遊べて始発待ちして…卵サンドも美味しかったし…絶対また来たいな。
ウェイトレスが来た。
「おはようございます。お客様、そろそろ朝食をお持ちしても、よろしいでしょうか?」
「あ、はい、あの、この店って何時からですか?」
「月曜日から木曜日までは夜八時からです。金曜日は夜九時から営業しています。明けて土曜日と日曜日は定休日です」
──そうなんだ…私の仕事が夕方六時までだから開店まで待つ時間長いな…でもでも!絶対にまた来たい!
早めに来れば、もっと、ゆっくり出来るし。
由岐奈は、運ばれてきた朝食を噛みしめながら思った。