憑ヶ物つくり


「私って、主人公なのに扱い、散々じゃないですか?」


汐里は皆(噤、寧々、壬生狼、朽縄)が揃った独楽鳥屋敷で、ぽつりと呟く。
それを聞いた噤は呆れたように手を振った。

「なーに言ってんのよ! ホラーの主人公が無双してどうすンのよ」
「ホラーだったんですかこれ!? 逆ハーレム♥って聞いてたんですけど!」
「逆ハーで車の窓に手形つくわけないでしょ」
「くそっ! こんな所にいられるか! 私は幸の物だけもらって帰る!」

噤が「しっかりと宝物だけ奪う気だわこの娘!」とヒィィする中、壬生狼が止めた。

「待て! 嫁!」
「嫁じゃねぇ!」
「口調が本編と違うぞ! 大丈夫だ! お前は俺が守る! べっ、別に嫁だからとか大好きだからとか一生一緒に居たいからとかじゃないんだからな!」
「ここで無駄にツンデレプロポーズをお発揮されましても!」

無駄とか言うなと壬生狼がぷんすこする中、汐里はシクシクしながら、朽縄の雄っぱいを背後からモミモミしていた。

噤と壬生狼が同時に「何してんのよ!」「止めろ! 嫁! 朽縄一族相手に汚らわしい!」と叫ぶ。
が、汐里は

「貧乳男は黙っていてもらおうか!(野太い声)」

と、朽縄のむちむちに張った筋肉を揉む。

朽縄は困惑していたが、ハリといい、ツヤといい、色と肉付きといい、最高の雄っぱいを前に耐えられるわけもなく、汐里は朽縄の長く白い髪に埋もれてスーハーしながら、背後から揉みまくる。

「……シュ~、……」
困惑する朽縄に壬生狼が自身の着物の胸元をはだけさせ、汐里に呼びかけた。

「体なら俺も鍛えている! 汐里、こっちだ!」

懐かない猫を呼ぶように「ちっ、ちっ」と呼ぶ壬生狼に汐里は首を振る。

「壬生狼さんのは雄っぱい以外のモノも本編で見てますし、私のも見せちゃってますからァー!」
「はしたない事を大声で言うな嫁!」
「幸の物くれないと、嫁(仮)は実家に帰らせていただきます!」
「わ、わかった嫁(確定)! おい! 噤! 直ぐに幸の物を準備しろ!」

そんな汐里と壬生狼に、噤は「御神子祭の意味わかってんのアンタらぁ!」と怒鳴りつける。

それから……

「アタシだってそりゃあ、この娘の願いなら叶えてあげたいわよ。でもねえ、古くからの伝統や儀式ってそういうものじゃあないでしょう? ちゃあんと意味があるの! それを破れば禁忌であることも昔からのクドクドネチネチガミガミペラペラ!」

すっごい長い説教をされた。

そんな騒動の中、今までプロットを書いていた寧々が呟く。



「そもそも、この話って、逆ハーなの? ホラーなの? どっちも要素も薄くない?」



ズギャァアアアアアアアアアン!


皆の背景に雷撃が閃く。

噤が『恐ろしい子(白目)』の表情で後ずさる。

「た、確かに……! 車の窓に手形ついて石コロ飛んできただけだし! ピンチらしいピンチといえば、この娘が尿意こらえてるシーンばかりだし!」

壬生狼が最終回のように真っ白に燃え尽きる。

「汐里に迫っているのは俺だけだし……! 何故だ! 何故、汐里の魅力を全人類が理解しないんだ!」

汐里は「わーん!」と喚きながら光速で朽縄の雄っぱいをむっちむちに揉む為、朽縄はされるがままに困惑していた。ムチムチムチムチ

しかし噤は「これからよ! これからなのよ!」と割って入る。

「これからこの娘が斧を持った殺人鬼になってアタシ達に襲いかかってきたり、物の怪に憑かれて首が反転したり、悪霊に憑かれて四つん這いで階段を駆け下りてきたりするのよ! きっと!」
「しません! そんなこと!」
「しなさいよホラーなんだから!」
「ホラーって言えば何しても許されると思ってる発言!」

汐里がワーンと泣くのを朽縄が頭を撫でてヨシヨシしている傍で、壬生狼が真顔で呟いていた。

「俺は……、愛し続けていられるのか……? 斧を持ち、反転した汐里を……」
「悩まないでください! 反転しませんから!」
「いや! 愛していられる! 何故なら今も好きで好きでたまらないからだ!」
「私の話を聞いてくれてないのに愛も憎しみも何もないですよ!」

そう言っているのに、壬生狼にぎゅーっと抱きしめられた。

それを見た寧々も「ぼくも~」と、トコトコ近づいてきて、ぎゅーっとしてくる。

噤まで「ズルイわよアンタ達!」と走ってきて、ぎゅーっと抱きしめる。

それを見ていた朽縄は茶を飲んで、呟いた。

「シュ~……(もう帰っていいのだろうか……)」