だいばーしてぃ!

パチパチパチパチパチ!!
ホールの至る所から、拍手の音が響く。
今は、みんなに1番呼んで欲しい卒業文集を先生方が選び、選ばれた俺が声に出して発表していたところだ。
俺、岩音葵。
中学3年生11.9ヶ月。
つまり、あと1週間で中学卒業。
高校生になる。
さっきの卒業文集は、俺が書いたもの。
こう見えても、俺は文系なんだ。
そう、国語が大の得意な文系なのだ!(まぁ社会は中の下、理科は上の上だから中途半端ではあるんだけど!)
みんなに文章が認められたことで、俺は今喜びに浸って…。
「発表も終わったところで。さぁ、気合いを入れて卒業式練習するぞー!」
「「おおー!!」」
あ、ねぇちょっと待って!
もっと喜びに浸らせて!

「第3学年、1組!」
バッと、俺を含めた1組の2〜6番が席を立つ。大勢の生徒・保護者が見ている中、俺はステージの中央少し右に立った。
「色波紅蓮。」
先生が『欠席者』の名前を呼ぶ。
そして1拍置き、次に俺は中央に進む。
「岩音葵。」
「はい。」
大きめの声で返事。
練習通り、練習通り。
俺は心の中で連呼しながら、先生の言葉が終わるのを待った。
「卒業証書。あなたは今日をもって、花宮中学校を卒業することをここに称する。2024年度3月19日、増田中学校長、秋吉雅弘。おめでとうございます。」
練習通り、練習通り。
俺は卒業証書を受け取り、ステージを降りた。

「葵ー!!卒業したよー!!」
「うぉっと」
俺が母と話していると、後ろから親友:猫宮獅音が現れた。
「ご無沙汰してます、葵のお母様!」
「お母様だなんて…獅音くんはいつも元気でいいわねぇ。」
「葵のおかげっす!」
「あらそう?でも迷惑かけてないかしら。」
「迷惑って言うより、お世話になってます!こいつがいることで周りに虫がつきにく...。」
あっちょっと黙ろうか獅音クン?
「ほら獅音、写真撮るために来たんだろ?」
「そうだった!撮ろうぜ、はいっチーズ!」
くっそ、調子のいいヤツめ。
「なぁ獅音、高校の入学式いつだっけ」
「あ、たしかに!なぁ、高校で友達できるかなー!」
話が全くもって噛み合わない。
「どんなとこだとしても、『獅音グランプリ』みたいなもの開催すんなよ?開催したら俺、お前の親友だってことを一生否定して生きていかなきゃならなくなる。」
「まさか。しないしない。俺を何歳だと思ってんの。小6で辞めたよ。」
「そりゃよかった…って、小6までやってたのか?!初耳だよ!!」
そうやって掛け合っている時、ハッとして周りを見渡すと、案の定みんなが笑いながらこちらを見ていた。
「最後の最後まで変わらないなイワネコw」
「やっぱ2人は漫才師になる可能性があるな。」
「え、それいいな!やろうぜアオイ!コンビ名はアオマタタビ!」
「ダッサ!!獅音、そのマタタビ腐ってるから間違っても食べるなよ!!」