おはよう私。あの織田を振り切って豆臣に帰れると思う?
いや、そもそも帰った方がいいのかもわからないんだけど――
選べないまま女中に起こされるまで寝てたなんて、流石に私ってば図太すぎじゃない?
でも眠かったんだからしょうがないじゃん。と脳内会議を繰り広げながら、制服に着替えた。
うん、やっぱり制服の方が落ち着くな。
血はすべて洗い流されており、よく乾いている。
そこそこ生地は厚いと思っていたけれど、こんなにも早く乾くものなんだなぁ。
女中に言われるがまま部屋を移動し朝食を貰って、織田との対面。
あまりにも早すぎる織田との対面に、私は冷や汗が出そうだ。
もっと考えさせてくれ……
昨日すぐに寝なければ考える時間など山ほどあった。と言われればそれまでだが。
「それで、考えはまとまったか?」
「帰ります」
ごちゃごちゃ理由を並べることはやめた。また失言したくないし。
「ふふっ、はっはっはっ!」
するとあまりにもストレートな私の物言いが良かったのか、大きな声で笑った。
もう私が見る最初で最後の笑顔だったのじゃないかと思うほどだ。
織田の側で待機していた明知さえも、呆然としている。
……ちょっと待って? 織田の部下が驚くほどの笑いって何!?
ひとしきり笑った後、織田は私を見据えた。
「一切の言い訳も無し、か。実に潔い」
「ええっと、ありがとうございます?」
「褒められてないぞ。……まあいい、そう言うことなので俺達は帰ります」
「ああ、ご苦労だった。気が変わったら遣いを出せ。すぐに迎えを用意しよう」
「ありがとうございます」
そうしてお礼の品や感謝の言葉を送られた後、私はまた石口と同じ馬へ乗ることになったのだった。
誰かに馬の乗り方教えてもらった方がいいかもしれない。
それにしても嫌われていなかったようでよかった。むしろこれは気に入られたと思ってもいい?
もし豆臣の雲行きが怪しくなってきたら頼るのもありかも。
そんなことを考えていると、石口が背後から声をかけてきた。
「寝返る算段か?」
「え"……なんでそう思うんですか」
「あまりにも嬉しそうだったからな」
「やだなー、違いますよ。むしろ万が一私が偽物で追い出された場合のことを……」
「やはり寝返る算段ではないか」
「だから、万が一です!」
そんなやりとりをしながら豆臣のお城へと帰ってきた。
威圧感もなくちょっと安心してしまう。私はもう毒されてしまったのかもしれない。
すぐに豆臣のいる部屋へと通され、ニコニコの豆臣が待っていた。
お礼の品はすぐに島が受け取って、豆臣に一度見せてから蓋を閉じた。
「お帰り。織田はどうだった? 相変わらず偉そうなんだろうね」
元上司に結構な言い草だな……
島には腰が引けているように見えると言われていたが、もしかしてあえてそう見えるよに仕向けている可能性があったり。いや、それとも逆……?
「それが、織田が華鈴を欲しいと言ってきました」
「まさか本気でスカウトされるとはね、これは上出来だ」
「……」
石口は呆れた表情を豆臣に向けたが、気にする様子のない豆臣。
その代わり島が小さくため息を吐き、困った表情をしていた。だが、口を挟まず静かに見守っている。
「それで、次は徳海に行ってほしいんだ」
豆臣は懐から手紙を取り出し、石口に見せた。石口はその手紙を見て眉間に皺を寄せている。
「なぜ徳海にまで見せびらかす必要が?」
「聖女欲しさにこっちへつかないかなぁと」
「そんなに単純な相手ではないでしょう……。それに、白ではない聖女が徳海に交渉中だと聞きますが?」
「だからいいんだよ。どっちが良いかなんて分かりきってるはずだ」
偽物だと思われる聖女を取り込む前に私を見せびらかし、私に視線を釘付けにさせたい、と。
そこまで聖女欲しいもん……?
というか私が本物だと思っているようだが、聖女だと確証できる何かが私にあるのだろうか。
「不思議そうにしてるね。自分の手の甲を見たかい?」
「手の甲? ……あれ、これは?」
気づいていなかったが、左手の甲にはうっすらと紋様が浮かび上がっている。昨日私がかなりの力を使ったからだろうか。
「ご先祖さまが残してた書物に、本物は聖女の証が浮かび上がると書いてあったんだ。多分それだろう?」
「へぇ〜。……でも、今回は聖女が二人来たって可能性は考えられないんですか?」
「絶対にあり得ない、とは言えない。前例はないよ。けど、俺はどうも白ではない聖女を本物とは認められないんだ」
きな臭い女だよ。とどこか含んだ良い様だ。何かしら引っ掛かることがあるのだろうが、私には話してくれそうもない。いや、石口も島も理解していないさそうだし、まだ話すほどではないと思っているのかもしれない。
「白ではない聖女は現在、父親と一緒に別の戦場にいるらしい。徳海を訪問するには適している」
「聖女同士を合わせた方が、どちらが本物かわかるのではないですか?」
「今はダメだよ。まだこの子の力は完璧に発現していないからね」
豆臣が言うには、覚醒すると手の甲の紋様は更に色濃く神々しくなるらしい。
ずっと手の甲かギラギラ始めたらどうしよう。
「華鈴。僕と一緒に徳海へ行こう」
「ええ……。私さっき帰ってきたばっかりなんですけど」
「大丈夫、今回は馬車で行くし、ゆっくりできるよ」
そう言うことではないんだよな……
いや、そもそも帰った方がいいのかもわからないんだけど――
選べないまま女中に起こされるまで寝てたなんて、流石に私ってば図太すぎじゃない?
でも眠かったんだからしょうがないじゃん。と脳内会議を繰り広げながら、制服に着替えた。
うん、やっぱり制服の方が落ち着くな。
血はすべて洗い流されており、よく乾いている。
そこそこ生地は厚いと思っていたけれど、こんなにも早く乾くものなんだなぁ。
女中に言われるがまま部屋を移動し朝食を貰って、織田との対面。
あまりにも早すぎる織田との対面に、私は冷や汗が出そうだ。
もっと考えさせてくれ……
昨日すぐに寝なければ考える時間など山ほどあった。と言われればそれまでだが。
「それで、考えはまとまったか?」
「帰ります」
ごちゃごちゃ理由を並べることはやめた。また失言したくないし。
「ふふっ、はっはっはっ!」
するとあまりにもストレートな私の物言いが良かったのか、大きな声で笑った。
もう私が見る最初で最後の笑顔だったのじゃないかと思うほどだ。
織田の側で待機していた明知さえも、呆然としている。
……ちょっと待って? 織田の部下が驚くほどの笑いって何!?
ひとしきり笑った後、織田は私を見据えた。
「一切の言い訳も無し、か。実に潔い」
「ええっと、ありがとうございます?」
「褒められてないぞ。……まあいい、そう言うことなので俺達は帰ります」
「ああ、ご苦労だった。気が変わったら遣いを出せ。すぐに迎えを用意しよう」
「ありがとうございます」
そうしてお礼の品や感謝の言葉を送られた後、私はまた石口と同じ馬へ乗ることになったのだった。
誰かに馬の乗り方教えてもらった方がいいかもしれない。
それにしても嫌われていなかったようでよかった。むしろこれは気に入られたと思ってもいい?
もし豆臣の雲行きが怪しくなってきたら頼るのもありかも。
そんなことを考えていると、石口が背後から声をかけてきた。
「寝返る算段か?」
「え"……なんでそう思うんですか」
「あまりにも嬉しそうだったからな」
「やだなー、違いますよ。むしろ万が一私が偽物で追い出された場合のことを……」
「やはり寝返る算段ではないか」
「だから、万が一です!」
そんなやりとりをしながら豆臣のお城へと帰ってきた。
威圧感もなくちょっと安心してしまう。私はもう毒されてしまったのかもしれない。
すぐに豆臣のいる部屋へと通され、ニコニコの豆臣が待っていた。
お礼の品はすぐに島が受け取って、豆臣に一度見せてから蓋を閉じた。
「お帰り。織田はどうだった? 相変わらず偉そうなんだろうね」
元上司に結構な言い草だな……
島には腰が引けているように見えると言われていたが、もしかしてあえてそう見えるよに仕向けている可能性があったり。いや、それとも逆……?
「それが、織田が華鈴を欲しいと言ってきました」
「まさか本気でスカウトされるとはね、これは上出来だ」
「……」
石口は呆れた表情を豆臣に向けたが、気にする様子のない豆臣。
その代わり島が小さくため息を吐き、困った表情をしていた。だが、口を挟まず静かに見守っている。
「それで、次は徳海に行ってほしいんだ」
豆臣は懐から手紙を取り出し、石口に見せた。石口はその手紙を見て眉間に皺を寄せている。
「なぜ徳海にまで見せびらかす必要が?」
「聖女欲しさにこっちへつかないかなぁと」
「そんなに単純な相手ではないでしょう……。それに、白ではない聖女が徳海に交渉中だと聞きますが?」
「だからいいんだよ。どっちが良いかなんて分かりきってるはずだ」
偽物だと思われる聖女を取り込む前に私を見せびらかし、私に視線を釘付けにさせたい、と。
そこまで聖女欲しいもん……?
というか私が本物だと思っているようだが、聖女だと確証できる何かが私にあるのだろうか。
「不思議そうにしてるね。自分の手の甲を見たかい?」
「手の甲? ……あれ、これは?」
気づいていなかったが、左手の甲にはうっすらと紋様が浮かび上がっている。昨日私がかなりの力を使ったからだろうか。
「ご先祖さまが残してた書物に、本物は聖女の証が浮かび上がると書いてあったんだ。多分それだろう?」
「へぇ〜。……でも、今回は聖女が二人来たって可能性は考えられないんですか?」
「絶対にあり得ない、とは言えない。前例はないよ。けど、俺はどうも白ではない聖女を本物とは認められないんだ」
きな臭い女だよ。とどこか含んだ良い様だ。何かしら引っ掛かることがあるのだろうが、私には話してくれそうもない。いや、石口も島も理解していないさそうだし、まだ話すほどではないと思っているのかもしれない。
「白ではない聖女は現在、父親と一緒に別の戦場にいるらしい。徳海を訪問するには適している」
「聖女同士を合わせた方が、どちらが本物かわかるのではないですか?」
「今はダメだよ。まだこの子の力は完璧に発現していないからね」
豆臣が言うには、覚醒すると手の甲の紋様は更に色濃く神々しくなるらしい。
ずっと手の甲かギラギラ始めたらどうしよう。
「華鈴。僕と一緒に徳海へ行こう」
「ええ……。私さっき帰ってきたばっかりなんですけど」
「大丈夫、今回は馬車で行くし、ゆっくりできるよ」
そう言うことではないんだよな……


