戦虚空に転生したJK、聖女だからと武将たちに囲われそうになってますが?

 雨は動きがゆっくりとなったと思いきや、一気に骸骨の頭や体を貫き行動を封じた。
 そこに止めを刺すかのように鋭利な岩が落ち、頭蓋骨を破壊。バラバラと大きな音を立てて骸骨は地面へと崩れた。

「随分と遅いではないか」

 織田は遅れてやってきた徳海と木タにそう言葉を投げかけた。しかし、表情は"面白いものが見られた"とでも言うかのような微笑みだ。

「すまんすまん。ちょっと寄り道をしてきたんだ」

 ニコニコと余裕の笑みで徳海は親指を立てた。木タは徳海の背後で、織田に無言でお辞儀をした。

「骸骨の相手は俺と木タがやるから、お前達はあやかしの相手を頼む!」
「いいだろう。せいぜいくたばってくれるなよ」
「おう! あやかしを仕留めたら、加勢よろしくな」

 徳海は織田と会話をした後、すぐに木タと一緒に骸骨へと走り出した。
 
 枯野はさきほどの攻撃を見て、感心するように頷いた。
 大慌てで修復する久遠の隣で枯野は指を鳴らし、骸骨の修復を瞬時に終わらせる。そして久遠を見た。

「ここはお前に任せる。頼りにしているよ、私の大事な娘……」
「は、はい! お任せください、お父様!」

 ぱあっと明るい笑顔でそう返した久遠。
 そんな久遠を枯野はそれを見向きもせず、狼のあやかしと一緒に姿を消した。

「あんたら如き、わたくし一人で十分ですわ!」

 意気揚々に私達を睨みつけた久遠。呪符で人間をあやかしに変え、ついには人間はすべてあやかしとなってしまった。
 そして、久遠はあやかしや骸骨へ呪文を唱えた。その途端、赤いオーラを放ち出すあやかし達。

「これは一体?」
「増強術ですわ! お父様にいただいた闇属性の一部――」

 ふふっと妖しい笑みを浮かべながら、久遠は手を前に突き出し私達へ攻撃するように仕向ける。
 こちらへ寄ってきたあやかしにすぐさま浄化を試みるが、人に戻ることはなかった。加えて、霧のように死体さえ残さず消えた。

「倒しても骸骨に吸収されてしまいますし、私が全員浄化しちゃいましょう!」
「それがよさそうだな。やっちゃえ、華鈴!」

 倒したあやかしを林が触手で引き寄せてくれ、私はそれを浄化していく。
 その度に久遠が呪符をこちらに投げて邪魔してくるが、それは林が触手で弾いてくれる。

「チッ、あの時もっと呪いを仕込んでおくべきだったようね……!」
「やはりお前が林に呪いを付与していたか」

 織田は久遠を睨んだ。久遠は悲鳴こそ上げなかったが、ビクッと体を震わせ、一歩後ろへと下がる。
 だが、「もう聖女を騙れないのなら、隠す必要もないわね」と一言つぶやいた後、必死で笑顔を作り私達を睨んだ。
 
「ええ、そうですわ。わたくしの付与する呪いは、属性持ちには特に強く反応が出るのです」
 
 久遠が言うには、属性が反発することで呪いが悪化。悪化すると林のように寝込むほどになってしまった。林は元々身体が弱かったため、さらに呪いを加速させたのだと言う。

「……すっごく今更なんですけど、もう大丈夫なんですか?」
「私は後方支援が主な仕事だから大丈夫」

 気づいていなかったが、林は触手を自在に操り、ほとんどその場から動いていない。
 
「貴女の治療してもらった時に言ったけど、身体が軽くなったんだ。あれ以降、私は体調を崩していないよ」
「それは良かったです! もし私の力が必要になったらいつでも呼んでくださいねっ!」

 そう言いつつ、林の背後に忍び寄っていたあやかしを浄化する。

「ありがとう。この戦いが終わったら、またお茶に付き合って欲しいな」
「ぜひ!」
 
 そんな会話をしながら、どんどんあやかしを減らしていく。
 久遠は骸骨から何かを取り出し、あやかしを生成している。

「あれで骸骨の弱体化とかなりませんかね?」
「あやかしを取り込んで強化されましたし、逆もまたあるかと」
「ですよね! よーし、一気に片付けちゃいましょう」

 私は意気揚々とあやかしへと突っ込むのだった――


「あんたの体力、底なしすぎじゃないかしら!? やはり聖女ではなくバケモノでなくって?」

 骸骨からあやかしを作り出せなくなった久遠は、息を切らしながら私を睨みつけた。
 久遠の周りには、もう弱体化した骸骨とあやかし数体しかいない。
 
「それを言うと他の人もじゃない? ……いや、ただの女子高生がこれだけ動けたら怖いかぁ」

 あれだけ戦っていたにも関わらず息も上がっていない武将達。戦慣れしていない久遠や私がピンピンしていたら、違和感を覚えるのは当たり前だろうと私は自己完結した。

「無駄口はいいからさっさと降参して!」

 久遠の周りにいたあやかしを浄化で消し去り、私は久遠を目掛けて走った。
 だが、すぐに骸骨に阻まれ後退。

「華鈴、浄化ありがとな! 骸骨は俺と木タに任せろ!」

 木タが岩で徳海を上まで上げ、徳海はまた雨で骸骨の動きを止めた。
 その隙に徳海は長槍を持って飛び上がり、骸骨の頭に突き刺す。だが、す弾かれてしまい徳海は舌打ち。
 それにいち早く気づいた木タは、すぐさま岩を徳海の槍に纏わせる。徳海は、その岩槍を振り翳し、骸骨の頭を貫く――!
 ひび割れ頭蓋骨が粉砕した瞬間、骸骨は野太い悲鳴を上げ崩れ落ちる。
 地面へと骨が散らばったかと思えば、跡形もなく骨は消え、残ったのは久遠だけ。

「ああ、そんな。これも壊されてしまうの……?」
 
 久遠は膝から崩れ落ち、粒子となった骸骨を呆然と眺めた。だが、すぐにハッとして震える声で私達に言った。
 
「いや……来ないで!」

 久遠は限界なのか呪符を投げるが、呪符はなんの反応もなく地面へと落ちる。

「お父、様……」

 小さくつぶやいた久遠は、父親がいないことを思い出し、唇を噛んだ。
 拘束しようと林が触手を伸ばしたところで、久遠は無理やり立ち上がり、呪符を足元に投げつけた。

「今度こそ終わらせる!」

 煙が立ち込める中、私は久遠のいた場所まで走ったが、もうそこには久遠はいなかった。

「早く追いかけましょう!」
「良い。どうせ枯野のところであろう。枯野の場所は、豆臣の諜報から報せが来たからな」

 織田は豆臣の家紋の載った手紙を見せながら、そう言ったのだった。