木タと徳海と一緒に私達は本陣へ。
そこで豆臣達と合流する予定なのだ。
なお、馬はないので自分の足で目的地まで歩かなければいけない。
雨のせいでぬかるんでいて正直歩きづらい。
せめてもの救いは、ポツポツしか雨が降っていないことだろう。ただ、霧状になっていて視界は悪い。
「あとどのくらい歩けばいいんですか……」
「二里半ほど先です」
「え、二里?」
何kmなのか全然わからない。だが、私が距離に驚いていると思ってくれたようで、木タに謝罪されてしまった。
「長い距離を歩かせてしまい、申し訳ございません。できる限り最短で辿り着けるよう最善を尽くします」
とりあえずかなりの距離だと言うことはわかった。体育でくらいしかあまり運動しないし、私の体力は続くのか心配なところだ――
どのくらい歩いただろうか。雨はまた強さを増し、容赦無く体に降りかかってくる。
帰ったらお風呂に入ってすぐに布団でゴロゴロしたい。そんなことを思っていると、背後から馬の足音が聞こえてくる。少数でないことは、足音の数でなんとなく察した。
それが敵なのか、味方なのかそれはわからないが。
「敵の可能性もある。茂みに隠れて様子を見ようぜ」
徳海がそう言って、すぐに草木の生い茂る場所で待機。
少しすると馬がぞろぞろと歩いてくる。乗っているのは織田と明智、そして林だ。
まさか林までこんなところにいるなんて。体はもう大丈夫なのだろうか。
織田は久遠の受け入れを拒否していたし、敵対はしていないと思う。だが、ここで声をかけてもいいのか……?
「ネズミが数匹潜んでいるようだな」
織田の低く冷たい声が、鼓膜を揺らす。人を震え上がらせる天才なのではないだろうか。絶対織田が出るところで子供が泣いてしまう。それくらいの迫力だ。
「そのようですね。いかがいたしましょう」
刀に手をかけた明知に、私は思わず茂みから飛び出した。
「わた、私です! 華鈴――聖女です!!」
「ふふ、大慌てで出てこられましたね」
微笑ましそうに林は私を見つめている。明知も似たような表情を浮かべている。
もしかして私だとわかって言ったのか?
「えっと、皆さんお久しぶりです。……どこに行く予定なんですか?」
「徳海の本陣にな。どうせ行く先は同じだろう? 乗っていけ」
「ありがとうございます! ぜひ乗せてください!」
「おい、勝手に決めるな!」
そう石口は言ったものの、最終的には乗せてもらうことになったのだった。
◇
「いやはや、まさか織田軍と一緒に来るとはね」
先に辿り着いていた豆臣や島は、屋根のある場所で雨を凌いでいた。
また、おとねは手拭いを準備して待っていた。
「ふん、貴様が頼んだのだろうが」
「その道を辿れば華鈴達を見つけられるかも〜とは言いましたけどね。乗せてこいなんて言ってないですよ」
豆臣がわざとらしくそう言えば、「食えないやつよ」と織田は鼻で笑っている。
ちょっとピリピリしている気もするが、私が気にすることでもないか……
「さて、まずここまで来てくれたこと、感謝する」
徳海は豆臣や織田に深々と頭を下げた。その姿を見ても豆臣はにこりともせず言った。
「前置きはいいよ、徳海殿。枯野終道を潰すために一時的に手を組むだけなんだから」
「正直、俺はまだ枯野程度なら俺の軍だけでよくないか? とかちょっと思ってる」
「気絶してたやつが言うことかな?」
「なんでもう知ってんだよ!」
わっと徳海は豆臣にツッコミを入れるが、豆臣は「なんでだろうね〜」と言うつもりはないようだ。
軽口で話していた三人だったが、「さて」と豆臣が言った瞬間、シンと静まり返り雨音だけが響く。
霧によって視界が悪くなっているせいもあり、なんだか異空間に取り残された感覚に陥ってしまう。
「……枯野が裏で用意しているあやかしの力は計り知れない。何度も探ってはいるが、今掴んでいる以上の情報が手に入らないのが気がかりだ」
「豆臣が情報を掴めないのは実に珍しいことよな」
おとねから受け取った茶を飲みながら、織田は豆臣を見ている。豆臣はそれが不愉快なのか、眉間に皺を寄せていた。
「だからこそ、こうして枯野側についていないもので結成しようと言う話になったのではないですか」
「そうだな。それで? いつ攻めるつもりだ?」
「織田殿はあいも変わらずせっかちですね」
そう言いつつ机に地図を広げ、今いる場所に駒を三つ置いた。そして離れた場所に一つ。
「真正面からは徳海軍だけで進軍します。その中にはすでに枯野についている者もいるでしょう。それは華鈴が見つけてくれます」
「全員が呪いを付与されるもんか?」
徳海は首を捻り、豆臣を見た。
確かに付与されていない人だっていそうなものだ。逆に、付与されていても枯野側じゃない可能性だってあるだろう。
「軍の加入条件ならどう?」
「ふむ。毒を進んで飲むほどの何かがある、ということだな」
徳海にそう問いかけるが、徳海よりも織田そう呟いた。
「そう言うことです。例えば家族が人質。例えば野心家。理由はいくらでも作れますよ」
豆臣は置いた四つの駒とは別に小さな駒をまた置いた。よく見ると人形で女性を模している。私だろうか。
「華鈴が呪いを見抜けることが今回の要だ。でないと味方と思っていたものに倒されてしまう」
「あの、呪いが付与されていても敵じゃない場合もあるんじゃないんですかね?」
三人の輪に入るのは正直気が引けたが、聞いておきたい。
質問をしたことで、なぜか豆臣は私を近くの椅子に座らせた。そこまでしてほしいとは言ってないんだけどな……
「それはないと思うよ。枯野久遠が治療を称して近づいたのは、貴女が来てから。その間は口先だけだったんだ」
久遠は、「聖女です」といろんなところに顔と名前を売っていた。だが、まだ未熟だから治療はできないと。ただ、林の時だけは例外で、完治は無理かもしれないが見過ごせない。治療させてくれと名乗り出たのだと言う。
「なるほど……。じゃあ遠慮なく言いますね」
「そうしてくれると助かるよ」
豆臣は私の肩を軽く叩き、笑顔を浮かべた。しかし、すぐに遠くを見つめた。
「誰かな、ここに部外者を入れたのは」
豆臣を筆頭に、その場にいた全員が一点を見つめたまま刀に手をかけた。
そこで豆臣達と合流する予定なのだ。
なお、馬はないので自分の足で目的地まで歩かなければいけない。
雨のせいでぬかるんでいて正直歩きづらい。
せめてもの救いは、ポツポツしか雨が降っていないことだろう。ただ、霧状になっていて視界は悪い。
「あとどのくらい歩けばいいんですか……」
「二里半ほど先です」
「え、二里?」
何kmなのか全然わからない。だが、私が距離に驚いていると思ってくれたようで、木タに謝罪されてしまった。
「長い距離を歩かせてしまい、申し訳ございません。できる限り最短で辿り着けるよう最善を尽くします」
とりあえずかなりの距離だと言うことはわかった。体育でくらいしかあまり運動しないし、私の体力は続くのか心配なところだ――
どのくらい歩いただろうか。雨はまた強さを増し、容赦無く体に降りかかってくる。
帰ったらお風呂に入ってすぐに布団でゴロゴロしたい。そんなことを思っていると、背後から馬の足音が聞こえてくる。少数でないことは、足音の数でなんとなく察した。
それが敵なのか、味方なのかそれはわからないが。
「敵の可能性もある。茂みに隠れて様子を見ようぜ」
徳海がそう言って、すぐに草木の生い茂る場所で待機。
少しすると馬がぞろぞろと歩いてくる。乗っているのは織田と明智、そして林だ。
まさか林までこんなところにいるなんて。体はもう大丈夫なのだろうか。
織田は久遠の受け入れを拒否していたし、敵対はしていないと思う。だが、ここで声をかけてもいいのか……?
「ネズミが数匹潜んでいるようだな」
織田の低く冷たい声が、鼓膜を揺らす。人を震え上がらせる天才なのではないだろうか。絶対織田が出るところで子供が泣いてしまう。それくらいの迫力だ。
「そのようですね。いかがいたしましょう」
刀に手をかけた明知に、私は思わず茂みから飛び出した。
「わた、私です! 華鈴――聖女です!!」
「ふふ、大慌てで出てこられましたね」
微笑ましそうに林は私を見つめている。明知も似たような表情を浮かべている。
もしかして私だとわかって言ったのか?
「えっと、皆さんお久しぶりです。……どこに行く予定なんですか?」
「徳海の本陣にな。どうせ行く先は同じだろう? 乗っていけ」
「ありがとうございます! ぜひ乗せてください!」
「おい、勝手に決めるな!」
そう石口は言ったものの、最終的には乗せてもらうことになったのだった。
◇
「いやはや、まさか織田軍と一緒に来るとはね」
先に辿り着いていた豆臣や島は、屋根のある場所で雨を凌いでいた。
また、おとねは手拭いを準備して待っていた。
「ふん、貴様が頼んだのだろうが」
「その道を辿れば華鈴達を見つけられるかも〜とは言いましたけどね。乗せてこいなんて言ってないですよ」
豆臣がわざとらしくそう言えば、「食えないやつよ」と織田は鼻で笑っている。
ちょっとピリピリしている気もするが、私が気にすることでもないか……
「さて、まずここまで来てくれたこと、感謝する」
徳海は豆臣や織田に深々と頭を下げた。その姿を見ても豆臣はにこりともせず言った。
「前置きはいいよ、徳海殿。枯野終道を潰すために一時的に手を組むだけなんだから」
「正直、俺はまだ枯野程度なら俺の軍だけでよくないか? とかちょっと思ってる」
「気絶してたやつが言うことかな?」
「なんでもう知ってんだよ!」
わっと徳海は豆臣にツッコミを入れるが、豆臣は「なんでだろうね〜」と言うつもりはないようだ。
軽口で話していた三人だったが、「さて」と豆臣が言った瞬間、シンと静まり返り雨音だけが響く。
霧によって視界が悪くなっているせいもあり、なんだか異空間に取り残された感覚に陥ってしまう。
「……枯野が裏で用意しているあやかしの力は計り知れない。何度も探ってはいるが、今掴んでいる以上の情報が手に入らないのが気がかりだ」
「豆臣が情報を掴めないのは実に珍しいことよな」
おとねから受け取った茶を飲みながら、織田は豆臣を見ている。豆臣はそれが不愉快なのか、眉間に皺を寄せていた。
「だからこそ、こうして枯野側についていないもので結成しようと言う話になったのではないですか」
「そうだな。それで? いつ攻めるつもりだ?」
「織田殿はあいも変わらずせっかちですね」
そう言いつつ机に地図を広げ、今いる場所に駒を三つ置いた。そして離れた場所に一つ。
「真正面からは徳海軍だけで進軍します。その中にはすでに枯野についている者もいるでしょう。それは華鈴が見つけてくれます」
「全員が呪いを付与されるもんか?」
徳海は首を捻り、豆臣を見た。
確かに付与されていない人だっていそうなものだ。逆に、付与されていても枯野側じゃない可能性だってあるだろう。
「軍の加入条件ならどう?」
「ふむ。毒を進んで飲むほどの何かがある、ということだな」
徳海にそう問いかけるが、徳海よりも織田そう呟いた。
「そう言うことです。例えば家族が人質。例えば野心家。理由はいくらでも作れますよ」
豆臣は置いた四つの駒とは別に小さな駒をまた置いた。よく見ると人形で女性を模している。私だろうか。
「華鈴が呪いを見抜けることが今回の要だ。でないと味方と思っていたものに倒されてしまう」
「あの、呪いが付与されていても敵じゃない場合もあるんじゃないんですかね?」
三人の輪に入るのは正直気が引けたが、聞いておきたい。
質問をしたことで、なぜか豆臣は私を近くの椅子に座らせた。そこまでしてほしいとは言ってないんだけどな……
「それはないと思うよ。枯野久遠が治療を称して近づいたのは、貴女が来てから。その間は口先だけだったんだ」
久遠は、「聖女です」といろんなところに顔と名前を売っていた。だが、まだ未熟だから治療はできないと。ただ、林の時だけは例外で、完治は無理かもしれないが見過ごせない。治療させてくれと名乗り出たのだと言う。
「なるほど……。じゃあ遠慮なく言いますね」
「そうしてくれると助かるよ」
豆臣は私の肩を軽く叩き、笑顔を浮かべた。しかし、すぐに遠くを見つめた。
「誰かな、ここに部外者を入れたのは」
豆臣を筆頭に、その場にいた全員が一点を見つめたまま刀に手をかけた。


