戦虚空に転生したJK、聖女だからと武将たちに囲われそうになってますが?

 お腹を満たした後、私は島に連れられてある部屋へと通された。
 そこには石口がいて、だが豪華な座椅子には別の男が座っている。
 歴史に疎い私でもさすがに、その男が豆臣だと察しがついた。
 
 豆臣が朗らかに笑いかけてくるのを見て、私は島とは違って素直で真正面から優しくしてくれそうな人だとちょっとだけ安心した。
 指定された場所に正座。胡座とか崩して座ったりなんかしたらきっと島から怒られてしまいそうだ。

 座ったがすぐには始まらず、私が何かしなければいけないの? と辺りを見渡す。
 すると島が大股でやってきて、私の頭を手で強制的に下げさる。

「頭を下げろ」

 島はキレ気味に、でも声量は小さくそう言った。
 作法を知らない私は、なぜ頭を下げなくてはならないのかわからない。よくわからないまま従い、ぐいぐいと押さえつけられる頭が早く解放してもらえるよう、心の中で願った。
 一応痛いというほどではない。加減はしてくれているようだが、手を出すよりも先に口だけで言ってほしかったな……

「こらこら、女子の頭をそんなに力強く握るもんじゃない」

 豆臣は島の手を退け私の頭を優しく撫でてくれた。
 それを見た島は一歩退がり、会釈。その後、石口の後ろに下がると、島はまるで武具の一部のように静まり返った。
 もう島はこの部屋に居る間、そのまま動かないでほしい!

「貴女が聖女――華鈴だね?」
「あ、はい。聖女かはわからないんですけど、名前は華鈴、です」

 豆臣も美形だった。私は石口や島を含めアイドルグループか何かか? と動揺してしまう。
 主要っぽい人たちは美形揃いなのに、まわりの人はびっくりするほど全員同じ顔に見える。
 もしこれが乙女向けゲームだったら、そういう仕様なんだろうなぁ。

「貴女が石口を助けてくれたと聞いたよ。ありがとう」

 豆臣は女子が黄色い声をあげて失神しそうなほどの笑顔で私を見た。でもなんかヒヤッとしたのはなぜだろう。島がまた私に何か言いたくて睨んでいるのだろうか。

「とんでもないです! お役に立てたようで嬉しいです!」

 とりあえず謙遜しとくか! と笑顔でそう返す。すると、豆臣は私の目を見て目を細めた。

「また助けてくれるかい?」
「もちろんです!」
「ふふ、ありがとう」

 なぜか「言質取ったぞ」と言われた気がした。また寒気がする。
 嫌な予感しかない。ただ美形から笑顔を向けられているだけなのに……
 豆臣は私の頬を撫で、優しい声色で言う。

「じゃあ、お言葉に甘えて遠征に参加してもらおうかな」
「……へ?」

 ◇

 今、私は馬に乗っている。私のすぐ後ろには石口。
 そう、私は今石口と同じ馬に乗っているのだ。いやいや、どゆこと……?
 
 石口の鎧のせいか無駄に圧迫感を感じる。正直に言うととても狭い。
 イケメンと密着してドキドキ! とか甘い雰囲気は一切ない。鎧でなければもう少しドキドキ感を味わえたりしたのだろうか。
 ため息を吐きたいところだが、何か言われたら大変だ。大人しくしておこう。
 
 ぼんやりと景色を眺めていると、突然林の中から人が数人飛び出してきた。
 どう見ても穏やかじゃない、相手方は不気味な笑みを浮かべている。
 リーダーらしき男が、石口を見て言う。

「怪我したくなきゃ、金目のもん置いてけや」

 この人たちは、石口が誰なのか知らないのだろう。
 どの程度強いのかは私も知らないが、きっと華奢だから舐められているのだと思われる。
 これは私の主観だけど。
 
「賊、か。華鈴、お前は馬から降りるなよ?」
「は、はい! 馬が暴れてもしがみついてますね!」
「そこまでは言わんが……まあいい」

 石口は馬から降り、男達を一望した。

「俺に会ったことを後悔しろ」

 刀を鞘から抜くと同時に、雷のような光がバチバチと音を立て刃の部分に集まっている。
 何これ。私以外にも特殊能力が使えるの?

「か、雷!? ということは雷に選ばれし将、石口五成か! 雷の使い手なんて、伝説だけかと思ってたが……!」
「今更謝っても遅いぞ」

 石口は雷を纏った刀を振い、多数いた男達を一斉に気絶させた。
 悲鳴が上がる前に倒したからか、あまりにもあっけない。
 石口は倒れた男達を無視して、あらためて馬に乗った。

「すごいですね。……その力って選ばれた人しか使えないんですか?」
「ああ、どのように選ばれるのか不明だが、豆臣様と島も別の属性能力を持っている」
「え、じゃあもしかして結構戦場では属性バトルが繰り広げられてるってこと!?」

 異世界ファンタジーで、戦場で属性能力を使って戦う――私が来た世界はかなりロマンのある世界だったようだ。
 興味津々な私に、石口は呆れた表情を浮かべた。

「お前は治療よりも、戦闘の方がお似合いだったのかもしれんな」
「それは流石に怖いんで勘弁して欲しいです!」

 全力で拒否したからか、おかしそうに石口は笑みを浮かべたのだった。