「うちの周りにある小さな国を一掃しよう」豆臣はそう言って、何度も攻めてきていた国へと照準を合わせ戦支度をしていた。
慌ただしく動いている姿に、私も何かできないかと人に声をかけようとした。しかし、逆に邪魔をしてしまいそうで話しかけられなかった。
その様子を見かねた豆臣が「城が手薄になってしまうから、結界を張れないか」と提案してくれた。
私は早速張ってみようとスマートフォンを掲げた。豆臣の領地全部守れますようにと念じながら――
するとスマートフォンに通知が入り、"結界は領地全体を囲んだ"と記載がされていた。
本当に全域に渡っているのか、効果がどの程度あるのか怪しいが、ないよりかはマシだろう。
うっすらと見える結界を眺め一息ついていると、豆臣は私の隣に立ち、一緒に結界を眺めた。
「領地全体に張れるなんて、貴女の力には驚かされてばかりだよ」
「私達は普通に入れちゃうから、ちゃんと機能しているのかわかりませんけどね……」
「大丈夫だよ。ちゃんと試しただろう」
少し前に捕まえていた男を使って防御術の力は実証済みではある。だが、やはり国全体となれば規模が違いすぎる。
「そもそも張っていない前提で考えておくから、気にしなくていいからね」
「わかりました。……それで、いつ頃出発するんですか?」
「そろそろいけると思うよ。ほら、島が手を振ってる」
豆臣は手をふり返して島の方へと歩き出す。
島は豆臣の話に頷き、深くお辞儀した。その後私の方向へと歩いてきた。
「今回、四方八方から敵が攻めてきている。背後を取られることもあるだろう」
「それなら療治所にも防御術かけておきますか?」
私がスマートフォンを取り出すと、島は眉間に皺を寄せ、私を睨むように見つめた。
「お前、あれだけやってまだできるのか?」
「多分? だって疲れてないですもん」
「……」
今絶対"こいつ前線で戦ってもらった方がよくね"とか思ってそう。
お願いだからただのJKに人殺しまでさせないでほしい。
「お前はまだ馬には乗れなかったな?」
「はい。やっと人の手を借りて動かない馬に乗れる程度ですね」
「ではお前は俺の後ろに乗れ。療治所まで送ってやる」
島は連れてきた馬に私を乗せてくれた。あまりにも軽々私を馬へと乗せてくれるが、重くないのだろうか。鍛えているだろうし、私を持ち上げるくらい簡単なことなのかもしれない。
◇
療治所でおとねと合流し、島の背中を見送った。
防御術で療治所に結界を張った。おとねはその姿を見て目を瞬かせる。
「ここに来る前、領地全体に結界を張ったと聞いていたのですが……? 体調に問題はないのですか?」
「全然問題ないです! これなら一人一人に防御術張れそうです!」
「ええ……?」
いつも冷静なおとねも私の元気っぷりに驚いている。
この調子で豆臣と石口も私のタフさに驚いてほしいくらいだ。
「その調子でしたら、治療も大丈夫そうですね」
「はい!」
ニコニコで答えると、おとねは微笑んでくれた。
そんな柔らかな雰囲気でいると、石口が入ってきた。
「どうかしましたか?」
「今回は背後からの奇襲も考え、俺は療治所の周りを守ることになった。何か困ったことがあれば俺を呼べ」
そう言って私に握らせたそれは、小さな笛だった。……一瞬だけ視線が交わる。これを吹けば石口が飛んできてくれるのだろうか。
「……石口様、もう少し素直になられたらいかがですか?」
「どう言う意味だ。……何を想像しているのか知らんが、この場所を指定したのは豆臣様であって俺ではないぞ」
「かんざし」
石口に言われてつけ始めた銀色のかんざし。それをおとねは指差し石口を見つめた。すると、石口は動揺した声でおとねに問いかける。
「なぜお前がそれを知って――」
「カマをかけただったんですけど、やっぱりそうなんですね」
目を細めるおとねの姿は、まるで豆臣のようだ。
石口は嵌められたことに苦い顔をしたが、私と目が合い「遠慮は不要だからな」と笛を指差し療治所から出て行ってしまった。
「不器用な人ですね……」
「えっと、私関連の話っぽいですけど、なんだったんですか?」
「気にしないでください。笛、暇な時にでも吹いてあげてくださいね」
「いやいや、それは絶対怒られるやつですし、嫌ですよ」
「用もないのに呼ぶな」とキレ気味に帰ったり「そんなに暇なのか」と怒りを通り越して呆れられる未来が簡単に想像できる。
それなのにおとねは、なぜそんなことを言うのか。
「吹かなければ、それはそれで怒られそうだと私は思いますけどね」
「そんなことあります? 無駄嫌いっぽいですけど」
おとねは一瞬だけ目を細め、ふっと笑った。
「確かに無駄なことは好みませんけど……例外もありますよ」
なぜか楽しそうに笑うおとね。
あの様子だと石口が私に気が合うように聞こえるが、流石に私の妄想が逞しすぎるだけだろう。
あんな美形がただのJKに興味を持つはずがない。初対面で『妖か?』なんて言ってきたくらいだ。
「妖って言われたこと根に持ってますか?」
なぜバレた? そもそもおとねにその話をしたか?
そんなことを思ったが、おとねは私の言葉を待たずに言葉を続けた。
「妖は気持ち悪いという意味ではなく、不思議なという意味もあります。石口様にとって、華鈴様は人を惑わすほどに美しい存在だったのかもしれませんね」
ふふ。と温かい目で見つめられ、私はどう返答していいか分からず、「そうなんですね」と言うのが精一杯だった。
慌ただしく動いている姿に、私も何かできないかと人に声をかけようとした。しかし、逆に邪魔をしてしまいそうで話しかけられなかった。
その様子を見かねた豆臣が「城が手薄になってしまうから、結界を張れないか」と提案してくれた。
私は早速張ってみようとスマートフォンを掲げた。豆臣の領地全部守れますようにと念じながら――
するとスマートフォンに通知が入り、"結界は領地全体を囲んだ"と記載がされていた。
本当に全域に渡っているのか、効果がどの程度あるのか怪しいが、ないよりかはマシだろう。
うっすらと見える結界を眺め一息ついていると、豆臣は私の隣に立ち、一緒に結界を眺めた。
「領地全体に張れるなんて、貴女の力には驚かされてばかりだよ」
「私達は普通に入れちゃうから、ちゃんと機能しているのかわかりませんけどね……」
「大丈夫だよ。ちゃんと試しただろう」
少し前に捕まえていた男を使って防御術の力は実証済みではある。だが、やはり国全体となれば規模が違いすぎる。
「そもそも張っていない前提で考えておくから、気にしなくていいからね」
「わかりました。……それで、いつ頃出発するんですか?」
「そろそろいけると思うよ。ほら、島が手を振ってる」
豆臣は手をふり返して島の方へと歩き出す。
島は豆臣の話に頷き、深くお辞儀した。その後私の方向へと歩いてきた。
「今回、四方八方から敵が攻めてきている。背後を取られることもあるだろう」
「それなら療治所にも防御術かけておきますか?」
私がスマートフォンを取り出すと、島は眉間に皺を寄せ、私を睨むように見つめた。
「お前、あれだけやってまだできるのか?」
「多分? だって疲れてないですもん」
「……」
今絶対"こいつ前線で戦ってもらった方がよくね"とか思ってそう。
お願いだからただのJKに人殺しまでさせないでほしい。
「お前はまだ馬には乗れなかったな?」
「はい。やっと人の手を借りて動かない馬に乗れる程度ですね」
「ではお前は俺の後ろに乗れ。療治所まで送ってやる」
島は連れてきた馬に私を乗せてくれた。あまりにも軽々私を馬へと乗せてくれるが、重くないのだろうか。鍛えているだろうし、私を持ち上げるくらい簡単なことなのかもしれない。
◇
療治所でおとねと合流し、島の背中を見送った。
防御術で療治所に結界を張った。おとねはその姿を見て目を瞬かせる。
「ここに来る前、領地全体に結界を張ったと聞いていたのですが……? 体調に問題はないのですか?」
「全然問題ないです! これなら一人一人に防御術張れそうです!」
「ええ……?」
いつも冷静なおとねも私の元気っぷりに驚いている。
この調子で豆臣と石口も私のタフさに驚いてほしいくらいだ。
「その調子でしたら、治療も大丈夫そうですね」
「はい!」
ニコニコで答えると、おとねは微笑んでくれた。
そんな柔らかな雰囲気でいると、石口が入ってきた。
「どうかしましたか?」
「今回は背後からの奇襲も考え、俺は療治所の周りを守ることになった。何か困ったことがあれば俺を呼べ」
そう言って私に握らせたそれは、小さな笛だった。……一瞬だけ視線が交わる。これを吹けば石口が飛んできてくれるのだろうか。
「……石口様、もう少し素直になられたらいかがですか?」
「どう言う意味だ。……何を想像しているのか知らんが、この場所を指定したのは豆臣様であって俺ではないぞ」
「かんざし」
石口に言われてつけ始めた銀色のかんざし。それをおとねは指差し石口を見つめた。すると、石口は動揺した声でおとねに問いかける。
「なぜお前がそれを知って――」
「カマをかけただったんですけど、やっぱりそうなんですね」
目を細めるおとねの姿は、まるで豆臣のようだ。
石口は嵌められたことに苦い顔をしたが、私と目が合い「遠慮は不要だからな」と笛を指差し療治所から出て行ってしまった。
「不器用な人ですね……」
「えっと、私関連の話っぽいですけど、なんだったんですか?」
「気にしないでください。笛、暇な時にでも吹いてあげてくださいね」
「いやいや、それは絶対怒られるやつですし、嫌ですよ」
「用もないのに呼ぶな」とキレ気味に帰ったり「そんなに暇なのか」と怒りを通り越して呆れられる未来が簡単に想像できる。
それなのにおとねは、なぜそんなことを言うのか。
「吹かなければ、それはそれで怒られそうだと私は思いますけどね」
「そんなことあります? 無駄嫌いっぽいですけど」
おとねは一瞬だけ目を細め、ふっと笑った。
「確かに無駄なことは好みませんけど……例外もありますよ」
なぜか楽しそうに笑うおとね。
あの様子だと石口が私に気が合うように聞こえるが、流石に私の妄想が逞しすぎるだけだろう。
あんな美形がただのJKに興味を持つはずがない。初対面で『妖か?』なんて言ってきたくらいだ。
「妖って言われたこと根に持ってますか?」
なぜバレた? そもそもおとねにその話をしたか?
そんなことを思ったが、おとねは私の言葉を待たずに言葉を続けた。
「妖は気持ち悪いという意味ではなく、不思議なという意味もあります。石口様にとって、華鈴様は人を惑わすほどに美しい存在だったのかもしれませんね」
ふふ。と温かい目で見つめられ、私はどう返答していいか分からず、「そうなんですね」と言うのが精一杯だった。


