光が収まり、目を開けると神具の輝きは、何事もなかったかのように落ち着いていた.。
「なんだったんだ? 豆臣様にお借りした書物には何も書かれていなかったのだが……」
石口は私を見て、神具を見た。何かを考えるように顎に手を添えた。その時に見えた手の甲。
「石口様、石口様。なんか右手の甲、ついてます」
「は? 俺のか?」
「はい、見てください」
訝しげに石口は自身の右手の甲を見た瞬間、石口の瞳が見開かれ――私の左手を掴んだ。
「ななな、なんですか!?」
突然のことで私の声は裏返り、慌てて手を引っ込める。
私の慌てっぷりに石口はハッとしたのか「すまん」と謝罪をした後、石口は私の目の前に自身の右手の甲を見せ言う。
「お前の紋様か?」
そう言われて私も左手の甲を確認した。私のものは、丸い印の中に、八つの小さな勾玉が円を描くように並び、その中心に花弁のような紋様。石口のものと並べて比較してみたが、寸分違わず同じだった。扇を石口に持たせようとしたからだろうか。
「もしかして私の代わりに聖女に?」
「バカ言え、そんなわけあるか」
聖女とは異世界から来た者で女であることが条件。これまで例外はない。など、石口は知っている聖女の情報を話した後、扇を指差した。
「扇を渡そうとしてなったのだから、扇に何かあるんだろう」
私が改めて石口の方へ手持ち部分を向ける。だが、何も起こらなかった。
石口は扇を手に持ったが、棚の時のように弾かれる様子もない。
「外に出て仰いでみません?」
好奇心で石口に提案してみる。だが、石口はジト目で私を見て首を横に振った。
「やめておこう。まずは豆臣様にご報告をしなければ」
私に扇を返し、石口は何もなかったかのように下駄を履き歩き始める。
私を見ずに歩いていく姿に、慌てて棚を閉め一応お辞儀をしてから足早に外へと出る。
迷路はまだ道を覚えていないので一人で帰れる気がしない。私は置いてかれないように石口の後を追ったのだった――
「おめでとう、華鈴。そして石口」
豆臣の部屋へと行き先ほどの話を説明すると、満面の笑みを浮かべて祝福の言葉を贈ってきた豆臣。
訳もわからず感謝の言葉を返す私と石口。
それを見ておかしそうに笑いながら、豆臣は言った。
「扇は最強と呼ばれている神具らしいよ。織田の書庫で盗み見た一部の情報だけど」
うちの神具って扇だったんだ〜と喜んでいる豆臣。どうやら家系により所持している神具はモノが違うらしい。
石口はハッとした表情で豆臣を見た。
「……独立する前、よく書庫に入り浸っていましたね」
そんな意図があったのかと納得している石口。石口の表情にニコニコしている豆臣。
私にはわからない話だが、織田しか知り得ない情報を、織田に悟られぬよう収集し、独立したようだ。本当にこの人は抜け目がないな。
「石口に付与された紋様だけど、それは属性能力を底上げしてくれるものらしいよ」
付与できる条件は知らないんだけど。と言いつつ豆臣の瞳は、まるで宝を前にした子供のように輝いていた。
豆臣も紋様が欲しいのだろうか。強くなるのなら、欲しいのもわかるけど。
「豆臣様も付与、試してみますか?」
何度も付与できるかはわからない。だが、あっさり付与できたのだから、今回も大丈夫な気がする。私の存在自体がチートみたいだし。
いつでも扇を差し出せるように両手で持っていると、豆臣は首を横に振った。
「興味はあるけど、無闇矢鱈と付与はしないほうがいいかな。せめて織田の書物で情報を正確に手に入れてからね」
「……まさか織田に書物を借りるつもりですか?」
石口としてはあまり織田を頼りたくないのだろう。以前"残念なことに完全に縁が切れたわけではない"と言っていたし。
豆臣は石口の気持ちを知っていて無視しているのか、頷いた後に口を開く。
「こちら側だったら考えてもいいかなと思ってるよ」
「こちら側……聖女関係でしょうか?」
「そうかもしれないね」
曖昧な返事をされ、石口は眉間に皺を寄せる。正解を教える気はないようで、豆臣は石口の姿を見て少しだけ口角をあげた。その様子を面白そうに見ているようだ。
豆臣は石口から目を離し、私を見た。
「華鈴、織田は今どんな状況か見える?」
「ちょっと待ってください」
スカートのポケットからスマートフォンを取り出して織田について調べる。
織田のページには、久遠を受け入れることなく追い出したとの見出し。理由としては、織田が保管している書物と相違があり、久遠を聖女として認められないという。
「ぶっちゃけ、書物の信憑性ってそんなに高いもんなんですか?」
「もちろん。基本、特別な書物には書き換えられないように術を施しているからね」
豆臣は筆を取り、書物へと適当な文字を書いた。しかしすぐにそれは紙へと溶け、元通りになった。
「過去の聖女様が書き換え不可、嘘をかけないようにしたらしいよ」
「へぇ。だから書物と照らし合わせるんですね」
「そう。だから、織田があの女を認めなかったのも、術が施されている書物だからだよ」
なお、久遠は聖具を持っていると見せびらかしている。それっぽいものを作ったのだろう。
だが、それでも織田は自身の書物では判断できないとして取り合っていないのだとか。
「便利だなぁ」
他にも、枯野に宣戦布告をしているらしい。それは以前私が治療した林の治療に、久遠や枯野が絡んでいたからだと書いてある。
「あと、久遠の治療した人たちが、ことごとく体調不良を訴えているらしいです。しかもその人たちを枯野の指示で他国の将が1つの国に集めているとか」
「なるほど……最後のは知らなかったな。行方不明とは聞いていたけど」
久遠が帰ってきたら治療させるつもりなのだろうか。それとも別の思惑が……?
豆臣は「調べる必要がありそうだ」と側で控えていた忍へとアイコンタクト。
すぐさま忍は頷き、その場から姿を消した。
「これで徳海も織田も枯野と同盟を組むことはなさそうだ。あとは枯野の陰謀をどれだけ暴けるか、だね」
豆臣は楽しそうに笑ったのだった。
その笑みが、これから何かとんでもないことが起きる前触れのように思えてならなかった。
「なんだったんだ? 豆臣様にお借りした書物には何も書かれていなかったのだが……」
石口は私を見て、神具を見た。何かを考えるように顎に手を添えた。その時に見えた手の甲。
「石口様、石口様。なんか右手の甲、ついてます」
「は? 俺のか?」
「はい、見てください」
訝しげに石口は自身の右手の甲を見た瞬間、石口の瞳が見開かれ――私の左手を掴んだ。
「ななな、なんですか!?」
突然のことで私の声は裏返り、慌てて手を引っ込める。
私の慌てっぷりに石口はハッとしたのか「すまん」と謝罪をした後、石口は私の目の前に自身の右手の甲を見せ言う。
「お前の紋様か?」
そう言われて私も左手の甲を確認した。私のものは、丸い印の中に、八つの小さな勾玉が円を描くように並び、その中心に花弁のような紋様。石口のものと並べて比較してみたが、寸分違わず同じだった。扇を石口に持たせようとしたからだろうか。
「もしかして私の代わりに聖女に?」
「バカ言え、そんなわけあるか」
聖女とは異世界から来た者で女であることが条件。これまで例外はない。など、石口は知っている聖女の情報を話した後、扇を指差した。
「扇を渡そうとしてなったのだから、扇に何かあるんだろう」
私が改めて石口の方へ手持ち部分を向ける。だが、何も起こらなかった。
石口は扇を手に持ったが、棚の時のように弾かれる様子もない。
「外に出て仰いでみません?」
好奇心で石口に提案してみる。だが、石口はジト目で私を見て首を横に振った。
「やめておこう。まずは豆臣様にご報告をしなければ」
私に扇を返し、石口は何もなかったかのように下駄を履き歩き始める。
私を見ずに歩いていく姿に、慌てて棚を閉め一応お辞儀をしてから足早に外へと出る。
迷路はまだ道を覚えていないので一人で帰れる気がしない。私は置いてかれないように石口の後を追ったのだった――
「おめでとう、華鈴。そして石口」
豆臣の部屋へと行き先ほどの話を説明すると、満面の笑みを浮かべて祝福の言葉を贈ってきた豆臣。
訳もわからず感謝の言葉を返す私と石口。
それを見ておかしそうに笑いながら、豆臣は言った。
「扇は最強と呼ばれている神具らしいよ。織田の書庫で盗み見た一部の情報だけど」
うちの神具って扇だったんだ〜と喜んでいる豆臣。どうやら家系により所持している神具はモノが違うらしい。
石口はハッとした表情で豆臣を見た。
「……独立する前、よく書庫に入り浸っていましたね」
そんな意図があったのかと納得している石口。石口の表情にニコニコしている豆臣。
私にはわからない話だが、織田しか知り得ない情報を、織田に悟られぬよう収集し、独立したようだ。本当にこの人は抜け目がないな。
「石口に付与された紋様だけど、それは属性能力を底上げしてくれるものらしいよ」
付与できる条件は知らないんだけど。と言いつつ豆臣の瞳は、まるで宝を前にした子供のように輝いていた。
豆臣も紋様が欲しいのだろうか。強くなるのなら、欲しいのもわかるけど。
「豆臣様も付与、試してみますか?」
何度も付与できるかはわからない。だが、あっさり付与できたのだから、今回も大丈夫な気がする。私の存在自体がチートみたいだし。
いつでも扇を差し出せるように両手で持っていると、豆臣は首を横に振った。
「興味はあるけど、無闇矢鱈と付与はしないほうがいいかな。せめて織田の書物で情報を正確に手に入れてからね」
「……まさか織田に書物を借りるつもりですか?」
石口としてはあまり織田を頼りたくないのだろう。以前"残念なことに完全に縁が切れたわけではない"と言っていたし。
豆臣は石口の気持ちを知っていて無視しているのか、頷いた後に口を開く。
「こちら側だったら考えてもいいかなと思ってるよ」
「こちら側……聖女関係でしょうか?」
「そうかもしれないね」
曖昧な返事をされ、石口は眉間に皺を寄せる。正解を教える気はないようで、豆臣は石口の姿を見て少しだけ口角をあげた。その様子を面白そうに見ているようだ。
豆臣は石口から目を離し、私を見た。
「華鈴、織田は今どんな状況か見える?」
「ちょっと待ってください」
スカートのポケットからスマートフォンを取り出して織田について調べる。
織田のページには、久遠を受け入れることなく追い出したとの見出し。理由としては、織田が保管している書物と相違があり、久遠を聖女として認められないという。
「ぶっちゃけ、書物の信憑性ってそんなに高いもんなんですか?」
「もちろん。基本、特別な書物には書き換えられないように術を施しているからね」
豆臣は筆を取り、書物へと適当な文字を書いた。しかしすぐにそれは紙へと溶け、元通りになった。
「過去の聖女様が書き換え不可、嘘をかけないようにしたらしいよ」
「へぇ。だから書物と照らし合わせるんですね」
「そう。だから、織田があの女を認めなかったのも、術が施されている書物だからだよ」
なお、久遠は聖具を持っていると見せびらかしている。それっぽいものを作ったのだろう。
だが、それでも織田は自身の書物では判断できないとして取り合っていないのだとか。
「便利だなぁ」
他にも、枯野に宣戦布告をしているらしい。それは以前私が治療した林の治療に、久遠や枯野が絡んでいたからだと書いてある。
「あと、久遠の治療した人たちが、ことごとく体調不良を訴えているらしいです。しかもその人たちを枯野の指示で他国の将が1つの国に集めているとか」
「なるほど……最後のは知らなかったな。行方不明とは聞いていたけど」
久遠が帰ってきたら治療させるつもりなのだろうか。それとも別の思惑が……?
豆臣は「調べる必要がありそうだ」と側で控えていた忍へとアイコンタクト。
すぐさま忍は頷き、その場から姿を消した。
「これで徳海も織田も枯野と同盟を組むことはなさそうだ。あとは枯野の陰謀をどれだけ暴けるか、だね」
豆臣は楽しそうに笑ったのだった。
その笑みが、これから何かとんでもないことが起きる前触れのように思えてならなかった。


