かなり広い土地にカカシが数体置かれている場所。
豆臣は、訓練場として充実させたいらしい。だが、まだ何も決まっていないため、カカシくらいしか置いていないのだとか。
片手に聖女に関する本を持ち、おとねは指導をしてくれた。
とはいえ、「聖女の指導などしたことがありません」と本を睨むかのようにおとねは見つめていたが。
治療術はすでに何度も使っているので訓練はなし。どうやら同じ方法で悪きものを浄化もできるらしい。それこそ妖みたいなタイプだろう。多分。
「まずは攻撃術から。右手で殴りたいなら右手に力を貯めてください。足蹴りがしたいのであれば、蹴り上げる足に力を」
「力、ちから……」
治療術は手をかざすだけでできたが、攻撃は違うらしい。よくわからないまま「右手に力、たまれ〜」と念じて、カカシを殴ってみた。
すると、カカシの顔面部分からメキメキと音を立て、遠くまで吹っ飛んでしまった。
残った頭部以外は吹っ飛びはしなかったが、かなりの破損だ。
無傷の拳をさすりながら、思わず私は口にする。
「こっっっわ」
「貴女の力ですよ」
私の馬鹿力を目の前にしても、冷静なツッコミを入れるだけのおとね。
……それはそれで怖いな。そう思っていると、おとねは私の心を読んだかのように説明を始める。
「この世界では選ばれた者だけ強い力を手に入れます。華鈴、貴女もその一員ですよ」
「ということは、これよりもさらに暴力的なものがまだあると」
聖女の力は治療に特化しているため、攻撃や防御の術はおまけ程度。それなのにこの火力……戦場はかなり恐ろしい場所かもしれない。
私は戦場に出ていないので、実際の戦いっぷりは知らない。見てみたい気もするが、巻き込まれるのは嫌だし、足を引っ張ることになっては大変だ。
「そういうことになりますね。……ところで、属性の話はご存知ですか?」
「石口様が雷属性を使えるっていうのを知ってるだけです。賊に"伝説かと思った"とか言われてましたね」
「属性持ち自体がかなり貴重ですので。属性は全部で十ありますが、同じ時代にすべて揃うことは滅多にありません。今はその稀有な時代なのかもしれませんね」
そんな稀を今回引き当てているらしい。
と言っても、聖女が授かると言われている光が大体欠けているらしい。
きっとそう何度もこの世界に転生してしまう人はいないのだろう。
待って? そうなると私もかなり希少な異世界転生者ってこと?
特別感がありすぎるでしょ。
「聖女は光で固定なんですか?」
「おそらく。過去、光属性以外の聖女は発見されておりません。また、光属性持ちは全員聖女でしたので」
ということは、聖女が来ない限り、光属性は現れないのかもしれない。
まあ、聖女と言えば光属性っぽいよな……
「ちなみに豆臣様は風、島様は土です」
ということは、豆臣軍には風と雷、土の使い手がいるということか。
これはただの予想だが、織田が炎を手から出していたのを見ると、織田が炎なのだろう。
「さて……おしゃべりはここまでにして、次は防御術を――いえ、華鈴様に訓練は必要なさそうですね」
ページをめくったおとねは、首を横に振った。
「どういうことですか?」
「白ではない聖女の攻撃を聖具で防ぎましたよね? あれが防御術のようです」
「無意識に攻撃も防御も使ってたんですね私……」
「そのようです。とはいえ、今回も上手くできるかはわかりません。ちゃんと意識して発動できるか、試しておきましょうか」
「はい、よろしくお願いします!」
最初は痛くないようにおとねが藁で殴りつける方法。問題なさそうだと判断すれば次第に鋭利なものへと変わっていき、最終的には島を呼んで土属性の攻撃を防いだ。
なお、正直なところ、土属性は戦闘向きではないらしい。壁として使うことが多く、攻撃の要として使う砂は少々操作が難しいと島が言っていた。
「お前を鍛えて戦場に出すのもアリかもしれないな」
「怖いので勘弁してください」
「心配するな。俺が守ってやるから」
聞いたこともないほどに優しい声色。そして優しい微笑みに、ドキドキしてしまう。
とはいえ、島が私を好きと言うことはないだろう。
「いや〜、照れますね……?」
「あ? ……はぁ!? 違う! 勘違いするな!」
島は自身の発言を思い出し、顔を真っ赤にして怒り出してしまった。
「島様、あまり乙女心を弄んではいけませんよ」
おとねは相変わらず落ち着いた様子で、島を諭す。
島はその言葉に口をわなわなとさせた。
「……チッ、もう俺は不要だろ。仕事に戻るからな」
耳まで真っ赤な島は、いつもよりドスドスと足音を立てて行ってしまった。
そんなに私に勘違いされたのが嫌だったのか。今後は気をつけよう……
頭を巡る島の声と表情。そんな困惑を打ち消すように、パンッとおとねが手を叩いた。
「さて、一通りやりましたし今日は終わりにしましょう。華鈴様は聡明でいらっしゃいますので、訓練はあまり必要なさそうですけどね」
「聡明だなんて、そんな……」
「謙遜は不要ですよ。ささ、戻って豆臣様に報告いたしましょう。きっと喜ばれます」
おとねに言われ、私は豆臣がどのような反応をするのか少し楽しみになった。
あと、石口もきっと私の有能さに驚くはずだ。
……それと、島も。
豆臣は、訓練場として充実させたいらしい。だが、まだ何も決まっていないため、カカシくらいしか置いていないのだとか。
片手に聖女に関する本を持ち、おとねは指導をしてくれた。
とはいえ、「聖女の指導などしたことがありません」と本を睨むかのようにおとねは見つめていたが。
治療術はすでに何度も使っているので訓練はなし。どうやら同じ方法で悪きものを浄化もできるらしい。それこそ妖みたいなタイプだろう。多分。
「まずは攻撃術から。右手で殴りたいなら右手に力を貯めてください。足蹴りがしたいのであれば、蹴り上げる足に力を」
「力、ちから……」
治療術は手をかざすだけでできたが、攻撃は違うらしい。よくわからないまま「右手に力、たまれ〜」と念じて、カカシを殴ってみた。
すると、カカシの顔面部分からメキメキと音を立て、遠くまで吹っ飛んでしまった。
残った頭部以外は吹っ飛びはしなかったが、かなりの破損だ。
無傷の拳をさすりながら、思わず私は口にする。
「こっっっわ」
「貴女の力ですよ」
私の馬鹿力を目の前にしても、冷静なツッコミを入れるだけのおとね。
……それはそれで怖いな。そう思っていると、おとねは私の心を読んだかのように説明を始める。
「この世界では選ばれた者だけ強い力を手に入れます。華鈴、貴女もその一員ですよ」
「ということは、これよりもさらに暴力的なものがまだあると」
聖女の力は治療に特化しているため、攻撃や防御の術はおまけ程度。それなのにこの火力……戦場はかなり恐ろしい場所かもしれない。
私は戦場に出ていないので、実際の戦いっぷりは知らない。見てみたい気もするが、巻き込まれるのは嫌だし、足を引っ張ることになっては大変だ。
「そういうことになりますね。……ところで、属性の話はご存知ですか?」
「石口様が雷属性を使えるっていうのを知ってるだけです。賊に"伝説かと思った"とか言われてましたね」
「属性持ち自体がかなり貴重ですので。属性は全部で十ありますが、同じ時代にすべて揃うことは滅多にありません。今はその稀有な時代なのかもしれませんね」
そんな稀を今回引き当てているらしい。
と言っても、聖女が授かると言われている光が大体欠けているらしい。
きっとそう何度もこの世界に転生してしまう人はいないのだろう。
待って? そうなると私もかなり希少な異世界転生者ってこと?
特別感がありすぎるでしょ。
「聖女は光で固定なんですか?」
「おそらく。過去、光属性以外の聖女は発見されておりません。また、光属性持ちは全員聖女でしたので」
ということは、聖女が来ない限り、光属性は現れないのかもしれない。
まあ、聖女と言えば光属性っぽいよな……
「ちなみに豆臣様は風、島様は土です」
ということは、豆臣軍には風と雷、土の使い手がいるということか。
これはただの予想だが、織田が炎を手から出していたのを見ると、織田が炎なのだろう。
「さて……おしゃべりはここまでにして、次は防御術を――いえ、華鈴様に訓練は必要なさそうですね」
ページをめくったおとねは、首を横に振った。
「どういうことですか?」
「白ではない聖女の攻撃を聖具で防ぎましたよね? あれが防御術のようです」
「無意識に攻撃も防御も使ってたんですね私……」
「そのようです。とはいえ、今回も上手くできるかはわかりません。ちゃんと意識して発動できるか、試しておきましょうか」
「はい、よろしくお願いします!」
最初は痛くないようにおとねが藁で殴りつける方法。問題なさそうだと判断すれば次第に鋭利なものへと変わっていき、最終的には島を呼んで土属性の攻撃を防いだ。
なお、正直なところ、土属性は戦闘向きではないらしい。壁として使うことが多く、攻撃の要として使う砂は少々操作が難しいと島が言っていた。
「お前を鍛えて戦場に出すのもアリかもしれないな」
「怖いので勘弁してください」
「心配するな。俺が守ってやるから」
聞いたこともないほどに優しい声色。そして優しい微笑みに、ドキドキしてしまう。
とはいえ、島が私を好きと言うことはないだろう。
「いや〜、照れますね……?」
「あ? ……はぁ!? 違う! 勘違いするな!」
島は自身の発言を思い出し、顔を真っ赤にして怒り出してしまった。
「島様、あまり乙女心を弄んではいけませんよ」
おとねは相変わらず落ち着いた様子で、島を諭す。
島はその言葉に口をわなわなとさせた。
「……チッ、もう俺は不要だろ。仕事に戻るからな」
耳まで真っ赤な島は、いつもよりドスドスと足音を立てて行ってしまった。
そんなに私に勘違いされたのが嫌だったのか。今後は気をつけよう……
頭を巡る島の声と表情。そんな困惑を打ち消すように、パンッとおとねが手を叩いた。
「さて、一通りやりましたし今日は終わりにしましょう。華鈴様は聡明でいらっしゃいますので、訓練はあまり必要なさそうですけどね」
「聡明だなんて、そんな……」
「謙遜は不要ですよ。ささ、戻って豆臣様に報告いたしましょう。きっと喜ばれます」
おとねに言われ、私は豆臣がどのような反応をするのか少し楽しみになった。
あと、石口もきっと私の有能さに驚くはずだ。
……それと、島も。


