また用意された部屋に戻り、一人畳に寝転がる。畳、意外と良い匂いしてるな。
うとうととしていると、手に持っていたスマートフォンの画面が光る。
寝ぼけ眼で浮かび上がっている文字を見つめた。
「久遠、聖女確定か!?」という文言と共に、豆臣の将や女中たちが久遠を囲んで笑いかけている写真が写っていた。
どうやら私が監禁されていることは、“偽物を牢に入れた”という話にすり替えられているらしい。
それはなぜか外部にも漏れており、織田や徳海の耳に入っているようだ。と言っても二人がそれを信じていると言う話題は一切ない。
「それにしても、好き勝手言ってるなぁ」
スクロールしていくと、久遠は私にいじめられていたという訳のわからない話もしているらしい。……いじめられていた? 私に? 近づきもしなかったのに、いつそんなことをしたっていうの。
だが、ここで私が本邸に戻り、久遠にキレたらそれこそ相手の思うツボ。それでもやっぱりモヤモヤばかりが募っていく。
「華鈴、今いいか」
「島様!? なんでしょう」
慌てて起き上がりスマートフォンをポケットへと入れ、襖へと駆け寄る。
襖を開けると島が眉間の皺をいつもより濃くしていた。
「近々また戦がある。今回はお前と白ではない聖女の場所は離そうと思っている」
「助かります。それと、誰か一人つけてくれません?」
「おとねが監視という名目でお前の側にいる。安心しろ、元々くノ一だった女だ。お前が傷つくことはないだろう」
今は女中の仕事をメインにしているが、いざとなればいつでもくノ一としての仕事ができるのだそうな。強い人を側に置いてもらえるのはありがたい。
「それは頼もしいですね。でも、いざとなれば私がまた吹き飛ばしますから!」
「また面倒を起こされたらたまらん。それと、あの女が何を言い出すかわからんからな」
「あー、はい。できるだけ大人しくします……」
「そうしておけ。あまり面倒ごとを増やすなよ」
そう言いつつも、島は優しい表情で私に笑いかけた。まあ、すぐに仏頂面に戻ってしまったけれど。
◇
久遠に遭わないように療治所に入り、おとねと一緒に待機。
正直、私が戦場ごと吹き飛ばせば早い気もするけど……そうすると厄災だと思われかねないと島に却下されてしまった。
「三人はこっちの療治所に来るとして、あと私のところに来る人っているんですかね?」
「白ではない聖女に治療を断られた人はこちらに誘導する予定ですよ」
「なるほど。確かに以前も私のところに誘導されてきた人いたもんな〜」
戦場とも久遠とも離れている環境のため、草木が風に揺られる音や、動物の鳴き声が聞こえる程度。平和だ。のどかすぎて半分寝かけていると、声がかかる。
「あの、こちらでも治療してもらえると伺ったのですが――」
「はい! 私、華鈴が治療しますよ」
すぐに怪我人の元へと駆けつける。おぶってきた男は私を見て一瞬眉を顰めた。しかし、私が躊躇うことなく駆け寄ったからか、すぐに「頼む」と怪我人を簡易ベッドに置いて去っていった。
まず教えてもらった通り止血をして、そこから治療に入る。万が一治療が上手くいかなかった場合でも無駄な血が流れないように。島から教えてもらったことだ。
治療術は、一瞬で傷口が防げるほどの力がある。だが、もし聖女の力で治せなかったら、その間血は流れっぱなしになってしまう。私だけでは思いつくこともなかっただろう。
「治療終わりです。……どうですか?」
「ありがとうございます! 問題なさそうです。あちらの聖女様とは大違――失礼しました」
怪我をしていた足で足踏みを繰り返し、確認をした男。
見た目からして、以前久遠が私の方に流した人たちと鎧が似ている。鎧で位が分かるから久遠は低い人の治療を拒んでいるようだ。
「拒まれる人と拒まれない人がいるんですか?」
「そうなんです。俺みたいな下っ端は治療しないって言われてしまい……。あの、あちらの聖女様には言わないでくださいね?」
心配そうに私を見つめた男。
ぶっちゃけ私が何を言っても、すでに久遠側についている人達に響くことはないだろう。そもそも、久遠と接触すること自体少ないし、言いふらす以前の問題だ。
「もちろんです。もし同じ人がいたらここを紹介してください」
「あ、ありがとう。あの聖女様から貴女の悪い話しか聞いていなかったので、驚きました」
「後から来た私が聖女面するのが、きっと許せないんだと思います。正直、私が本物かどうか知りませんけどね」
偽物でも本物でも、私のやることは変わらない。でも、白い目で見られるのは勘弁してほしい。
その時はどこかに逃げて、元の世界に帰れないか旅に出るのも悪くないだろう。
一人治療をしたからかその後、治療希望者は増え、やっと治療を終わった頃には戦も終わりを告げていた。
「華鈴様、貴女を害そうとやってきた者が数人おりました。どれもあの女の仕業です」
おとねは周りを警戒した後、小声で私にそう教えてくれた。私が知らないと言うことは、きっとおとねが遠ざけてくれていたのだろう。
「もしかして、私を排除するために豆臣様の元に来てたり……?」
「今頃気づいたのか」
「石口様!?」
鎧に血はついていたが、怪我をしたようには見えない。
もしかして私が心配して見に来たり――はないか。監視の意味があるかもしれない。
ぬか喜びだきっと。
「私だけ知らなかったとかですか」
「他は知らん。だが、そうでなければ自軍に聖女がいると言いふらしている所にわざわざ来ないだろう」
「た、確かに……」
仲良く手を取り合う、なんてこの世界ではできないことなのだろうか。
……それでも言わせてほしい。
聖女同士ってことで仲良くしてよ!
うとうととしていると、手に持っていたスマートフォンの画面が光る。
寝ぼけ眼で浮かび上がっている文字を見つめた。
「久遠、聖女確定か!?」という文言と共に、豆臣の将や女中たちが久遠を囲んで笑いかけている写真が写っていた。
どうやら私が監禁されていることは、“偽物を牢に入れた”という話にすり替えられているらしい。
それはなぜか外部にも漏れており、織田や徳海の耳に入っているようだ。と言っても二人がそれを信じていると言う話題は一切ない。
「それにしても、好き勝手言ってるなぁ」
スクロールしていくと、久遠は私にいじめられていたという訳のわからない話もしているらしい。……いじめられていた? 私に? 近づきもしなかったのに、いつそんなことをしたっていうの。
だが、ここで私が本邸に戻り、久遠にキレたらそれこそ相手の思うツボ。それでもやっぱりモヤモヤばかりが募っていく。
「華鈴、今いいか」
「島様!? なんでしょう」
慌てて起き上がりスマートフォンをポケットへと入れ、襖へと駆け寄る。
襖を開けると島が眉間の皺をいつもより濃くしていた。
「近々また戦がある。今回はお前と白ではない聖女の場所は離そうと思っている」
「助かります。それと、誰か一人つけてくれません?」
「おとねが監視という名目でお前の側にいる。安心しろ、元々くノ一だった女だ。お前が傷つくことはないだろう」
今は女中の仕事をメインにしているが、いざとなればいつでもくノ一としての仕事ができるのだそうな。強い人を側に置いてもらえるのはありがたい。
「それは頼もしいですね。でも、いざとなれば私がまた吹き飛ばしますから!」
「また面倒を起こされたらたまらん。それと、あの女が何を言い出すかわからんからな」
「あー、はい。できるだけ大人しくします……」
「そうしておけ。あまり面倒ごとを増やすなよ」
そう言いつつも、島は優しい表情で私に笑いかけた。まあ、すぐに仏頂面に戻ってしまったけれど。
◇
久遠に遭わないように療治所に入り、おとねと一緒に待機。
正直、私が戦場ごと吹き飛ばせば早い気もするけど……そうすると厄災だと思われかねないと島に却下されてしまった。
「三人はこっちの療治所に来るとして、あと私のところに来る人っているんですかね?」
「白ではない聖女に治療を断られた人はこちらに誘導する予定ですよ」
「なるほど。確かに以前も私のところに誘導されてきた人いたもんな〜」
戦場とも久遠とも離れている環境のため、草木が風に揺られる音や、動物の鳴き声が聞こえる程度。平和だ。のどかすぎて半分寝かけていると、声がかかる。
「あの、こちらでも治療してもらえると伺ったのですが――」
「はい! 私、華鈴が治療しますよ」
すぐに怪我人の元へと駆けつける。おぶってきた男は私を見て一瞬眉を顰めた。しかし、私が躊躇うことなく駆け寄ったからか、すぐに「頼む」と怪我人を簡易ベッドに置いて去っていった。
まず教えてもらった通り止血をして、そこから治療に入る。万が一治療が上手くいかなかった場合でも無駄な血が流れないように。島から教えてもらったことだ。
治療術は、一瞬で傷口が防げるほどの力がある。だが、もし聖女の力で治せなかったら、その間血は流れっぱなしになってしまう。私だけでは思いつくこともなかっただろう。
「治療終わりです。……どうですか?」
「ありがとうございます! 問題なさそうです。あちらの聖女様とは大違――失礼しました」
怪我をしていた足で足踏みを繰り返し、確認をした男。
見た目からして、以前久遠が私の方に流した人たちと鎧が似ている。鎧で位が分かるから久遠は低い人の治療を拒んでいるようだ。
「拒まれる人と拒まれない人がいるんですか?」
「そうなんです。俺みたいな下っ端は治療しないって言われてしまい……。あの、あちらの聖女様には言わないでくださいね?」
心配そうに私を見つめた男。
ぶっちゃけ私が何を言っても、すでに久遠側についている人達に響くことはないだろう。そもそも、久遠と接触すること自体少ないし、言いふらす以前の問題だ。
「もちろんです。もし同じ人がいたらここを紹介してください」
「あ、ありがとう。あの聖女様から貴女の悪い話しか聞いていなかったので、驚きました」
「後から来た私が聖女面するのが、きっと許せないんだと思います。正直、私が本物かどうか知りませんけどね」
偽物でも本物でも、私のやることは変わらない。でも、白い目で見られるのは勘弁してほしい。
その時はどこかに逃げて、元の世界に帰れないか旅に出るのも悪くないだろう。
一人治療をしたからかその後、治療希望者は増え、やっと治療を終わった頃には戦も終わりを告げていた。
「華鈴様、貴女を害そうとやってきた者が数人おりました。どれもあの女の仕業です」
おとねは周りを警戒した後、小声で私にそう教えてくれた。私が知らないと言うことは、きっとおとねが遠ざけてくれていたのだろう。
「もしかして、私を排除するために豆臣様の元に来てたり……?」
「今頃気づいたのか」
「石口様!?」
鎧に血はついていたが、怪我をしたようには見えない。
もしかして私が心配して見に来たり――はないか。監視の意味があるかもしれない。
ぬか喜びだきっと。
「私だけ知らなかったとかですか」
「他は知らん。だが、そうでなければ自軍に聖女がいると言いふらしている所にわざわざ来ないだろう」
「た、確かに……」
仲良く手を取り合う、なんてこの世界ではできないことなのだろうか。
……それでも言わせてほしい。
聖女同士ってことで仲良くしてよ!


