監禁生活、一日目。
島と石口が様子を見にきた。豆臣と違って心から心配をしてくれている。ちょっと嬉しい。
「お前にそんな真似ができるとは思わなかった」
島、それどういう意味?
びびってばかりの弱そうな女と思われていたのかもしれない。まあ、実際聖女(?)の力がなければ暴行されていたのは私だっただろう。
「確かに私はか弱い少女ですとも。まさか自分より大きい男を吹っ飛ばせるとは思ってませんでしたよ」
「自衛できるのはいいことだ。ただ、あの女に力を見せすぎるな。利用されるぞ」
か弱い少女というのは完璧スルー。しかし、石口は私を素直に褒めてくれるし、注意してくれる。ありがたいことだ。
「では、隣の部屋に行く。お前はその戸棚にある本でも読んでいろ」
「隣の部屋にいるんですか?」
「あの女がいつ来るかわからないからな。豆臣様に許可を貰い、部屋を貸してもらうことにした」
豆臣が右隣。石口と島が左隣なのだそうだ。なんというか、心配なのか、私の方が目を光らせておく必要があるのか、どちらだろう。まあ、どちらでもいいか。久遠や久遠と仲の良い人と関わらないだけストレスもないはずだ。
二人が部屋を出ていった後、私はまた「今さら聞けない、世界情勢がすぐわかる!」と書いてあるアプリを開く。そこには、「徳海は枯野終道との同盟の取り下げ!」とまるで新聞の見出しのような表示の仕方だ。
ライブのように切り替わるのか、織田が土地を奪ったとか豆臣が白ではない聖女を匿っているとかそういったものも書かれている。
「華鈴様、食事の準備ができました。部屋を移動しましょう」
廊下から女中の声が聞こえ、慌ててスマートフォンをポケットに入れる。
監禁されているのだから、てっきり食事もこの部屋だと思っていた。
「監禁じゃなかったでしたっけ」
「名目上は、ですね。ご安心ください。ここには貴女の知っている方しかおりませんよ」
襖から顔を覗かせたのは、いつも食事の用意をしてくれていた女中だった。私が女中と会話することなどなかったが、豆臣がここに連れてきてもいいと思うほど信頼している人なのだろう。
女中に案内され、別邸の広間へ。そこには見慣れた顔である豆臣と石口、島がいた。
それにしても、ただの“聖女かもしれない?”くらいの私に、毎回このメンバーが揃うって、やっぱ異常でしょ。
食事を並べて、豆臣の後ろに控えた女中。豆臣は振り返ることなく言葉を投げかけた。
「おとね、あの女の様子は?」
「はい。白ではない聖女は、豆臣様の影武者にご執心です。夜伽の申し込みもされておりましたね」
おとねと呼ばれた女中は、すぐさま説明をしてくれた。
豆臣の姿をした影武者は、積極的に久遠と話しているようだ。そのせいもあって、最近は影武者とばかりいるらしい。影武者の人は大丈夫なのだろうか……
「うわ、僕の影武者色気づきすぎだよね?」
「どうやら白ではない聖女が、“自分の背中に聖女の証がある”と発言したようです。今夜、その確認を求めるようで――」
「いや、待て。なぜ止めない? 影武者といえど、今のあいつは僕なんだよ?」
豆臣が信じられないと言いたげな表情で女中――おとねを睨んだ。
おとねは顔色ひとつ変えず、頭を下げた。
「申し訳ございません。必要なことと思いまして」
あまりにも堂々とした態度で言うため、豆臣は強く叱れない様子。大きくため息を吐いた後、豆臣は別の提案を持ちかけた。
「仲良くなった女中がいただろう? あれに風呂の手伝いを任せればいいだろう」
「そうですね。今からそうしましょう」
「できるだけ早くね?」
初めて豆臣の慌てっぷりを見た。申し訳ないが面白い。
どうしても口角が上がってしまうので、口元を押さえてどうにか耐える。石口と島も私と同じ気持ちのようで笑いを堪えてそうな表情だ。
おとねが去った後、豆臣は私達の表情を見てムッとした顔をした。
「三人だけでよかったよ……。話を聞き出すのが上手い女中がいる。きっと何かしら掴めるだろう」
「私のためにありがとうございます」
「貴女だけのためではないからね、気にしないで」
食事に手をつけ始めた豆臣。他の二人も食べ始めたのでやっと私も食事をいただく。この習わし、はっきり言って面倒くさいな……
「ところで私はいつ本邸に戻れるんですか?」
そう豆臣に問いかけてみると、豆臣は苦く笑う。
「まだ半刻しか経っていないのだけれど? そんなにここが嫌?」
「そう言うわけではないんですけど、私だけ逃げてる感じがして……いいのかなぁとか思ったり」
「逞しい子だね。やはり嫁に欲しい人材だ」
……褒められてるはずなのに、なんか違う意味で言われた気がする。
その時、石口が少し反応したが、きっと豆臣様に相応しくないとか言いたいのだろう。
それは私も思う。
「勘弁してください。この世界のことを知らない、しかも自分の力さえ知らない小娘ですよ」
「これから知れば問題ないよ。大丈夫、貴女には素質があるよ」
「……豆臣様、おふざけも大概になさってください」
石口は我慢ならなくなったのか、そう言って息を吐いた。豆臣はそんな石口の様子を面白そうに見つめ、「わかった、わかった」とそれ以上は何も言わなかった。
なんでちょっと居心地の悪い空気になってしまったんだ。
ちらりと島を見たが、首を横に振るだけ。
「魚じゃないお肉、食べたいなぁ」
小さな声でつぶやいてみたが、誰もツッコミを入れてくれることはなく食事を済まされた。
……誰もツッコんでくれないの、なんか地味に寂しいんだけど。
島と石口が様子を見にきた。豆臣と違って心から心配をしてくれている。ちょっと嬉しい。
「お前にそんな真似ができるとは思わなかった」
島、それどういう意味?
びびってばかりの弱そうな女と思われていたのかもしれない。まあ、実際聖女(?)の力がなければ暴行されていたのは私だっただろう。
「確かに私はか弱い少女ですとも。まさか自分より大きい男を吹っ飛ばせるとは思ってませんでしたよ」
「自衛できるのはいいことだ。ただ、あの女に力を見せすぎるな。利用されるぞ」
か弱い少女というのは完璧スルー。しかし、石口は私を素直に褒めてくれるし、注意してくれる。ありがたいことだ。
「では、隣の部屋に行く。お前はその戸棚にある本でも読んでいろ」
「隣の部屋にいるんですか?」
「あの女がいつ来るかわからないからな。豆臣様に許可を貰い、部屋を貸してもらうことにした」
豆臣が右隣。石口と島が左隣なのだそうだ。なんというか、心配なのか、私の方が目を光らせておく必要があるのか、どちらだろう。まあ、どちらでもいいか。久遠や久遠と仲の良い人と関わらないだけストレスもないはずだ。
二人が部屋を出ていった後、私はまた「今さら聞けない、世界情勢がすぐわかる!」と書いてあるアプリを開く。そこには、「徳海は枯野終道との同盟の取り下げ!」とまるで新聞の見出しのような表示の仕方だ。
ライブのように切り替わるのか、織田が土地を奪ったとか豆臣が白ではない聖女を匿っているとかそういったものも書かれている。
「華鈴様、食事の準備ができました。部屋を移動しましょう」
廊下から女中の声が聞こえ、慌ててスマートフォンをポケットに入れる。
監禁されているのだから、てっきり食事もこの部屋だと思っていた。
「監禁じゃなかったでしたっけ」
「名目上は、ですね。ご安心ください。ここには貴女の知っている方しかおりませんよ」
襖から顔を覗かせたのは、いつも食事の用意をしてくれていた女中だった。私が女中と会話することなどなかったが、豆臣がここに連れてきてもいいと思うほど信頼している人なのだろう。
女中に案内され、別邸の広間へ。そこには見慣れた顔である豆臣と石口、島がいた。
それにしても、ただの“聖女かもしれない?”くらいの私に、毎回このメンバーが揃うって、やっぱ異常でしょ。
食事を並べて、豆臣の後ろに控えた女中。豆臣は振り返ることなく言葉を投げかけた。
「おとね、あの女の様子は?」
「はい。白ではない聖女は、豆臣様の影武者にご執心です。夜伽の申し込みもされておりましたね」
おとねと呼ばれた女中は、すぐさま説明をしてくれた。
豆臣の姿をした影武者は、積極的に久遠と話しているようだ。そのせいもあって、最近は影武者とばかりいるらしい。影武者の人は大丈夫なのだろうか……
「うわ、僕の影武者色気づきすぎだよね?」
「どうやら白ではない聖女が、“自分の背中に聖女の証がある”と発言したようです。今夜、その確認を求めるようで――」
「いや、待て。なぜ止めない? 影武者といえど、今のあいつは僕なんだよ?」
豆臣が信じられないと言いたげな表情で女中――おとねを睨んだ。
おとねは顔色ひとつ変えず、頭を下げた。
「申し訳ございません。必要なことと思いまして」
あまりにも堂々とした態度で言うため、豆臣は強く叱れない様子。大きくため息を吐いた後、豆臣は別の提案を持ちかけた。
「仲良くなった女中がいただろう? あれに風呂の手伝いを任せればいいだろう」
「そうですね。今からそうしましょう」
「できるだけ早くね?」
初めて豆臣の慌てっぷりを見た。申し訳ないが面白い。
どうしても口角が上がってしまうので、口元を押さえてどうにか耐える。石口と島も私と同じ気持ちのようで笑いを堪えてそうな表情だ。
おとねが去った後、豆臣は私達の表情を見てムッとした顔をした。
「三人だけでよかったよ……。話を聞き出すのが上手い女中がいる。きっと何かしら掴めるだろう」
「私のためにありがとうございます」
「貴女だけのためではないからね、気にしないで」
食事に手をつけ始めた豆臣。他の二人も食べ始めたのでやっと私も食事をいただく。この習わし、はっきり言って面倒くさいな……
「ところで私はいつ本邸に戻れるんですか?」
そう豆臣に問いかけてみると、豆臣は苦く笑う。
「まだ半刻しか経っていないのだけれど? そんなにここが嫌?」
「そう言うわけではないんですけど、私だけ逃げてる感じがして……いいのかなぁとか思ったり」
「逞しい子だね。やはり嫁に欲しい人材だ」
……褒められてるはずなのに、なんか違う意味で言われた気がする。
その時、石口が少し反応したが、きっと豆臣様に相応しくないとか言いたいのだろう。
それは私も思う。
「勘弁してください。この世界のことを知らない、しかも自分の力さえ知らない小娘ですよ」
「これから知れば問題ないよ。大丈夫、貴女には素質があるよ」
「……豆臣様、おふざけも大概になさってください」
石口は我慢ならなくなったのか、そう言って息を吐いた。豆臣はそんな石口の様子を面白そうに見つめ、「わかった、わかった」とそれ以上は何も言わなかった。
なんでちょっと居心地の悪い空気になってしまったんだ。
ちらりと島を見たが、首を横に振るだけ。
「魚じゃないお肉、食べたいなぁ」
小さな声でつぶやいてみたが、誰もツッコミを入れてくれることはなく食事を済まされた。
……誰もツッコんでくれないの、なんか地味に寂しいんだけど。


