戦虚空に転生したJK、聖女だからと武将たちに囲われそうになってますが?

 どうか、言い訳をさせて欲しい。
 最近イライラすることが多すぎたのだ。久遠が来てから周りの人からの視線が痛い。人によっては私の顔を見て不快そうにする。何もしてないと言うのに、なぜこんな仕打ちを受けなければいけないのだろう。
 そう思うと無性に腹立たしくなった。そして今回ついにキレてしまい、なんか術が出てしまったのだと。
 第一、まさかそんな力が聖女にあるなんて知らなかったし。あんな巨体が軽く吹っ飛ぶとは思わない。

 私が男を吹き飛ばした音を聞きつけたのだろう、豆臣が慌ててやってきた。
 まず私の赤くなった腕を見て、次に吹き飛ばされた男を見た。
 一つ息を吐いた後、豆臣は私に質問する。

「貴女がやったのかな?」
「わたくし、見たのです!  治療のために訪れた方へ、あの小娘が不気味な光で暴行を加える姿を!」
「貴女には聞いてなかったんだけど。それで華鈴、今のは事実かい?」
「確かに吹き飛ばしたのは私です。でもほら、あの人怪我もしてない男ですよ? 冷やかしに来ただけで――」
「嘘をおっしゃい! 治療すればいいからと暴行を加えていたのでしょう!?」

 久遠に言葉を重ねられ、私は驚いて言葉を引っ込めてしまう。
 それが後ろめたいものだと思われたのか、野次馬達がひそひそと「やっぱり、異国の女は怖いな……」「あれが“本当の聖女”のやることか?」など話している。
 ひそひそ話すくらいならもっと私に聞こえないようにしてほしいものだ。
 
 豆臣はまた一つ息を吐き、冷めた視線で私を見つめた。

「……この戦いもそろそろ終わる。終わったら華鈴、貴女は僕の部屋に来て。今後の貴女の処遇について話し合おう」
「でしたらわたくしもお呼びください。今回隣でずっとその小娘の行動は見ておりましたので」

 自信満々に豆臣を見たが、豆臣は久遠を見ることなく言った。
 
「不要だ。貴女は自分のことでも考えておいてくれ」
「は、はい……」

 ◇

 戦を終えて帰宅後、早々に豆臣の部屋へ。石口や豆臣とは別の男が側に控えている。周りの視線を気にしてのことだろう。また3人で同じ部屋になんかいたら新たな勘違いが生まれそうだし。
 
「さて、華鈴。貴女が吹き飛ばした男のことだが――」
「申し訳ありません! もう、罰でも追放でも好きにしてください!」

 もしかしたら殺されるかもしれないけど、その時は聖女の力で壁吹っ飛ばして逃げてしまおう。そうしよう。そんなことを思っていたが、豆臣は笑いそうになっているのか、肩を震わせながら私に言う。
 
「落ち着いて? 名目だけの罰を与えるよ。形式上、君を“監禁”ということにする」
「監禁……ですか?」
「うん。あの女との接触を遮断するにはそれが最適だ」

 漫画の世界でしか聞いたことのないセリフだ。
 とりあえず反省部屋みたいなところで一週間程度閉じ込められる、と。その間に久遠のことをもう少し調べようと言う魂胆らしい。
 でも名目だけ、なんて絶対に嘘だ。
 豆臣なら、私の動きを監視して当然だと思っているはず。
 ……この世界で、そう簡単に人を信じてはいけない。それは、もう学んだ。
 スマートフォンをいじるときは気をつけないと。

「わかりました。それで、どこですか?」
「別邸さ。そこなら久遠も、久遠の息がかかった人間も足を踏み入れることはできない」

 どう言う原理? と思ったが、豆臣は説明する気がなさそうだ。
 
「それなら、どうして最初からそこを使わなかったんですか?」
「使いたくなかったんだよ。貴女が本物である可能性が、あの時点ではまだ半信半疑だったから」

 結構雑だな……。そう思ったが、口にせず「なるほど」と相槌だけ打っておく。
 偽物を別邸に招くのは避けたい。と言うことなのだろうが、本当に私をその別邸に置いておいていいのだろうか。

「本当にいいんですか?」
「うん。貴女なら始末しても問題ないしね」

 めっちゃ怖いこと言ったな今。

「冗談だよ、冗談。本物の聖女を殺すと呪いにかかるらしいし、そんな物騒なことするつもりないって」

 どんな表情をしていたのか、自分でもわからないが大笑いの豆臣。

「じゃ、今から移動ね」

 そうして男を連れたまま別邸の道を歩く。迷路のように道は複雑。だが、豆臣は迷わず道を選んで、すぐに別邸へと到着した。
 あまり人が訪れないところだと勝手に想像していた。だが、隅々まで掃除が行き届いているようだ。外も中も埃一つ見当たらない。

「それで、貴女は僕の隣の部屋で監禁ってことにするから」
「それ本当に監禁ですか?」
「うん。監禁」

 部屋まで案内され、鍵もついていない襖を開ける。
 そこは、私が本邸で与えられていた部屋よりも豪華な部屋。本当にここが私の監禁部屋なのか?

「部屋、間違えてませんか?」
「いいや、ここだよ」
 
 この部屋であればすぐにでも逃げられてしまうだろう。あの迷路を通らずとも、森を抜けさえできればどうとでもなりそうだ。そんなことを考えていると、豆臣に笑顔で言われた。

「貴女は僕から、逃げないよね?」
「……はい。逃げませんよ、絶対に」
 
 背筋に冷たいものが走る。
 豆臣は“優しい顔”で人を閉じ込めることに、何の躊躇もないタイプだ。