今日は久遠も参加しての戦。
目も合わせたくないと言いたげな表情で私を一瞥した久遠。
「わたくしはこちらで治療をいたしますわ。あなたはそちらでお願いしますね」
カーテンで仕切られた療治所。別にこんな仕切り必要ないと思うのだが、それだけ私を視界に入れたくないということだろうか。
まあ、それはいい。それは良いのだが、時々意味もなくカーテンを覗いて様子を見に来る男どもは、どう見ても私を品定めしている様な視線だ。正直不快だが、きっとあの噂によるものだろう。
「治療の必要がない人がなぜここに来るのですか?」
覗いていた男二人に私はできるだけそっけなく質問をしてみた。
すると男二人は口を開いた。
「久遠様に何かしたらタダじゃおかないからな」
「仕切りをつけたのはお前が男を連れ込むためじゃないのか」
「久遠様とは距離を保っています。久遠様の方に行くことはありません。あと、ここは治療するための場です。それ以外に私から入れることはありません」
あまりにも淡々と話したからか、舌打ちをした後男たちは去っていった。なんだったんだ。
暴力を振るわれてもおかしくない雰囲気だった。だが、流石に女相手には手を出しづらいのか……
「久遠様、治療をお願いします」
「ええ、もちろんですわ。さあ、傷口を――」
隣は繁盛しているようだ。次々に久遠様、久遠様と鼻の下でも伸ばしているのかと思うほどの声色で名前を呼んでいる。
私はと言うと、閑古鳥が鳴くとか言ったか、それのように人は来ない。今回の戦、久遠だけでよかったんじゃないかと思うほどだ。
暇つぶしにスマートフォンを触っていると、誤って火に包まれた地球儀のマークのアプリを開いてしまう。
慌ててアプリを閉じようとしても読み込み中なのか、操作は不可能。
仕方なく待っていると、炎が燃える演出の後、文字が羅列されていく。
そこには、織田と豆臣、徳海の名前。そして第4勢力として枯野の名前が載っていた。
詳しく見ようと名前をタップしようとしたところで、カーテンが捲られ慌ててポケットにスマートフォンを入れた。
「華鈴。治療を頼めるか」
「石口様……久遠様の方じゃなくていいんですか?」
「バカ言え。誰があの女の治療など受けるものか」
私の前に用意されていた椅子にどっかりと座り、腕を突き出してきた。すでに応急処置は済んでおり、私が治療するほどの傷には見えなかった。
私の疑問を察したのか、石口は耳元に口を近づけて話す。
「お前の様子を見に来ただけだ。だが、あまり言いふらすなよ。面倒になる」
「お気遣いありがとうございます。……治療しますね」
手紙を私に握らせた後、石口は治療を受け、すぐに戦場へと戻っていった。
いつから見ていたのか、久遠はカーテンをめくって私を睨みつけている姿があった。
どうやら石口の姿が見えたからか、自分のところに来ることを期待していたようだ。それなのに私のところに来て、ご立腹の様子。
「どんな手で石口様を落としたのかしら?」
「そんなことしてませんよ。ほら、早く戻らないと久遠様を待ってる人がまた来てますよ」
「チッ」
勢いよくカーテンを閉め、媚び売り声で治療を再開する。だが時々、「あなたはあっちに行きなさいな」と流され、私の元へ来る負傷者がちらほら。重傷な人もいれば、そうでもない人もいる。
重度で振り分けられているわけではない。では、何を基準にこちらへ回されているのだろう。よくわからないが、治療する以外の選択肢は私にはない。
ひたすらに治療を繰り返し、血の臭いや久遠が治療術を使うたび漂う黒い霧に吐き気が湧き上がる。
必死に治療をしていたら、いつの間にか人はいなくなっていた。
一息ついて意味もなくスマートフォンを取り出した。アプリを開きっぱなしにしていたようで、名前検索がされていた。私が治療した人の大半は足軽だったようだ。プロフィールには名前と足軽としか書かれていない。
まあ、だから何だと言う話なのだが。アプリを閉じて、温くなってしまった水を飲んだ。水筒があればまだ冷たくて美味しい水だったんだろうなぁと思いつつ、私は竹筒を足元に置いた。
「そう言えば、手紙……」
手紙は達筆すぎて、正直私には読めなかった。
もしかして、スマートフォンで読み取れば読めたりして……と思ってカメラを向けると、文字が馴染みのある表示に変わった。
なにこれ便利すぎる!
中身は私への謝罪。自分の軽率な判断で私が悪く言われてしまっていることを知ったようだ。
元を辿れば久遠だし、広まってしまったのはしょうがない。わざわざ手紙にして渡してくるなんて、律儀だ。
文字は読めなかったけど、丁寧に書かれたことだけは伝わった。
私はそれを写真に撮り、手紙は小さく折りたたみ、スマホケースに挟んだ。
「今日の戦は長いなぁ」
早く終わらせて帰りたい。空を眺め、息を吐く。
少しして大男が現れた。血の臭いはなく、怪我も見当たらない。
「……どこを怪我されてるんですか?」
そう問いかけても、にやつくだけ。嫌な予感しかしない。戦前に会った男のように、ただ私を見に来ただけかもしれない。そう思っていたが外へ出る様子はない。
「治療の必要がないのなら、出ていってもらえませんか」
「あんたに心でも癒してもらおうと思ってなぁ」
絶対これよろしくない方向のやつじゃん。
だからと言って私は戦える術なんて持っていない。逃げようにも背後は布とはいえ壁だ。すぐに逃げ出せるわけもない。
少しずつ近づいてくる大男に、私は後ずさる。
「おいおい、俺じゃ物足りないってか?」
「ちょっと、やめて!」
腕を掴まれ、恐怖で力が入るわけもなく。ただただ私は恐怖で荒い呼吸を繰り返す。
頬に触れようとしてきた瞬間、私は思いっきり叫んだ。
「やめろって言ってるだろうが!!」
その瞬間、手の甲から光が放たれ、爆ぜる。悲鳴とともに、男の体が跳ね飛ばされた。
目も合わせたくないと言いたげな表情で私を一瞥した久遠。
「わたくしはこちらで治療をいたしますわ。あなたはそちらでお願いしますね」
カーテンで仕切られた療治所。別にこんな仕切り必要ないと思うのだが、それだけ私を視界に入れたくないということだろうか。
まあ、それはいい。それは良いのだが、時々意味もなくカーテンを覗いて様子を見に来る男どもは、どう見ても私を品定めしている様な視線だ。正直不快だが、きっとあの噂によるものだろう。
「治療の必要がない人がなぜここに来るのですか?」
覗いていた男二人に私はできるだけそっけなく質問をしてみた。
すると男二人は口を開いた。
「久遠様に何かしたらタダじゃおかないからな」
「仕切りをつけたのはお前が男を連れ込むためじゃないのか」
「久遠様とは距離を保っています。久遠様の方に行くことはありません。あと、ここは治療するための場です。それ以外に私から入れることはありません」
あまりにも淡々と話したからか、舌打ちをした後男たちは去っていった。なんだったんだ。
暴力を振るわれてもおかしくない雰囲気だった。だが、流石に女相手には手を出しづらいのか……
「久遠様、治療をお願いします」
「ええ、もちろんですわ。さあ、傷口を――」
隣は繁盛しているようだ。次々に久遠様、久遠様と鼻の下でも伸ばしているのかと思うほどの声色で名前を呼んでいる。
私はと言うと、閑古鳥が鳴くとか言ったか、それのように人は来ない。今回の戦、久遠だけでよかったんじゃないかと思うほどだ。
暇つぶしにスマートフォンを触っていると、誤って火に包まれた地球儀のマークのアプリを開いてしまう。
慌ててアプリを閉じようとしても読み込み中なのか、操作は不可能。
仕方なく待っていると、炎が燃える演出の後、文字が羅列されていく。
そこには、織田と豆臣、徳海の名前。そして第4勢力として枯野の名前が載っていた。
詳しく見ようと名前をタップしようとしたところで、カーテンが捲られ慌ててポケットにスマートフォンを入れた。
「華鈴。治療を頼めるか」
「石口様……久遠様の方じゃなくていいんですか?」
「バカ言え。誰があの女の治療など受けるものか」
私の前に用意されていた椅子にどっかりと座り、腕を突き出してきた。すでに応急処置は済んでおり、私が治療するほどの傷には見えなかった。
私の疑問を察したのか、石口は耳元に口を近づけて話す。
「お前の様子を見に来ただけだ。だが、あまり言いふらすなよ。面倒になる」
「お気遣いありがとうございます。……治療しますね」
手紙を私に握らせた後、石口は治療を受け、すぐに戦場へと戻っていった。
いつから見ていたのか、久遠はカーテンをめくって私を睨みつけている姿があった。
どうやら石口の姿が見えたからか、自分のところに来ることを期待していたようだ。それなのに私のところに来て、ご立腹の様子。
「どんな手で石口様を落としたのかしら?」
「そんなことしてませんよ。ほら、早く戻らないと久遠様を待ってる人がまた来てますよ」
「チッ」
勢いよくカーテンを閉め、媚び売り声で治療を再開する。だが時々、「あなたはあっちに行きなさいな」と流され、私の元へ来る負傷者がちらほら。重傷な人もいれば、そうでもない人もいる。
重度で振り分けられているわけではない。では、何を基準にこちらへ回されているのだろう。よくわからないが、治療する以外の選択肢は私にはない。
ひたすらに治療を繰り返し、血の臭いや久遠が治療術を使うたび漂う黒い霧に吐き気が湧き上がる。
必死に治療をしていたら、いつの間にか人はいなくなっていた。
一息ついて意味もなくスマートフォンを取り出した。アプリを開きっぱなしにしていたようで、名前検索がされていた。私が治療した人の大半は足軽だったようだ。プロフィールには名前と足軽としか書かれていない。
まあ、だから何だと言う話なのだが。アプリを閉じて、温くなってしまった水を飲んだ。水筒があればまだ冷たくて美味しい水だったんだろうなぁと思いつつ、私は竹筒を足元に置いた。
「そう言えば、手紙……」
手紙は達筆すぎて、正直私には読めなかった。
もしかして、スマートフォンで読み取れば読めたりして……と思ってカメラを向けると、文字が馴染みのある表示に変わった。
なにこれ便利すぎる!
中身は私への謝罪。自分の軽率な判断で私が悪く言われてしまっていることを知ったようだ。
元を辿れば久遠だし、広まってしまったのはしょうがない。わざわざ手紙にして渡してくるなんて、律儀だ。
文字は読めなかったけど、丁寧に書かれたことだけは伝わった。
私はそれを写真に撮り、手紙は小さく折りたたみ、スマホケースに挟んだ。
「今日の戦は長いなぁ」
早く終わらせて帰りたい。空を眺め、息を吐く。
少しして大男が現れた。血の臭いはなく、怪我も見当たらない。
「……どこを怪我されてるんですか?」
そう問いかけても、にやつくだけ。嫌な予感しかしない。戦前に会った男のように、ただ私を見に来ただけかもしれない。そう思っていたが外へ出る様子はない。
「治療の必要がないのなら、出ていってもらえませんか」
「あんたに心でも癒してもらおうと思ってなぁ」
絶対これよろしくない方向のやつじゃん。
だからと言って私は戦える術なんて持っていない。逃げようにも背後は布とはいえ壁だ。すぐに逃げ出せるわけもない。
少しずつ近づいてくる大男に、私は後ずさる。
「おいおい、俺じゃ物足りないってか?」
「ちょっと、やめて!」
腕を掴まれ、恐怖で力が入るわけもなく。ただただ私は恐怖で荒い呼吸を繰り返す。
頬に触れようとしてきた瞬間、私は思いっきり叫んだ。
「やめろって言ってるだろうが!!」
その瞬間、手の甲から光が放たれ、爆ぜる。悲鳴とともに、男の体が跳ね飛ばされた。


