自然と目が覚めると、すでに徳海の領地に入っていると言う。
どの程度寝ていたのかわからないが、起きるにはちょうどよかったのかもしれない。
「到着する前に、徳海って人がどんな人か聞いてもいいですか?」
「ああ、そうだね」
豆臣は頷いて、軽く肩をすくめた。
「名前は徳海 宅康。辛抱強く守りに徹している将だよ」
「聞いたことあるような、ないような……」
すかさず島が補足を入れる。
「地味だが、徐々に領地を広げてる。寝返る将も後を絶たない」
「そうそう。だから人だけはやたら多いんだよね」
"やたら多い"という部分に棘があったような気がしたが、気のせいだろうか。もしかして豆臣からも寝返った人がいるのだろうか。
そんなことを考えていると、島が咳払いをした。
……聞かない方がよさそうだ。
徳海は小さな土地にかなりの人数を派遣しあっさりと手中に治めたり、土地の長が「徳海ならいいか」と寝返ったりすることもあるレベルらしい。織田とは違う意味で強そうだ。
「正直、徳海よりもその臣下が優秀なんだよね。各国が臣下の引き抜きに必死になるほどに、ね。僕も木タ 只勝は欲しい」
徳海はお人好しで民を中心に老若男女誰にでも好かれる。そして臣下で一番注目を集めているのが木タという男。
とりあえずそれだけ覚えていればよさそうだ――
徳海のことをしていると、いつの間にか徳海の城が見えてきた。
徳海の城は大きいが、威圧的な雰囲気はない。やっぱり織田が怖かっただけなんだ……
城に到着して、すぐに徳海のいる部屋へと通された。徳海と思われる男は健康的な褐色肌をしている。また、好青年らしい話しかけやすそうな雰囲気。
私達が部屋に入るなり、徳海は屈託なく歯を見せて笑った。
あまりにも無邪気で、思わずたじろいだ。そのせいで、周囲の家臣の鋭い視線が際立つ。
「よく来てくれた! 白の聖女、華鈴……そして豆臣殿と島殿」
「ついでみたいなの、傷つくなぁ」
「すまんすまん。聖女に気を取られすぎた!」
豆臣が大袈裟に悲しそうな表情を見せると、徳海は気にしていない様子でカラカラと笑う。
「それで、オレに会いに来たのは聖女を見せるためだろう?」
「そうだよ。貴方が白ではない聖女に丸め込まれないか心配で来たんだ」
「まるで偽物は、白ではない聖女と言いたげな発言だな」
どちらが本物かなんて誰も知らないこと。だからだろう、不思議そうな表情を見せる徳海。
豆臣は笑顔で言葉を返す。
「そう思うからこそ連れてきたんだ。まあ、まだ自信を持って本物とは言えない。でも、白ではない聖女を受け入れるのは待って欲しい」
豆臣がそう言うと、徳海の臣下が一人、手を上げた。徳海が頷くと会釈してから口をひらく。
「割り込み失礼。なぜ敵国が案じてくださるので?」
「さすが木タ殿。不信感でいっぱいのようだ」
豆臣は薄く笑い、木タを見た。木タはその薄気味悪い笑みに眉をしかめている。
「徳海殿にも恩を売っておきたいからね。確か近々占拠する予定の土地があるんだろう?」
懐から取り出した手紙を眺めながら、豆臣は徳海を見た。徳海は目を瞬かせ、頭をかく。
「ありゃ、なんでそんなこと知ってるんだ? オレ、漏らしたか?」
「徳海殿、人を受け入れるにしても、誰に何を話すかは慎重になった方がいい。筒抜けなんだよ」
手紙を徳海へと渡すと、徳海は文字を必死に読み上げているようで忙しなく目が動いている。
読み終わったようで手紙を畳み、息を吐いた。
「白ではない聖女のとこの臣下かぁ……。これはどこで手に入れた?」
「僕の優秀な忍に頼んでね」
何が書かれていたのか、二人以外が知る由もなく。だが、私でもダメな情報が漏れているのだと察した。というか今更だけど、この部屋の空気重すぎる。逃げ出したい。
「島、すまないが華鈴と一緒に散歩でもしていてくれるかい?」
「はっ、仰せの通りに」
聞かせたくない話だったのだろう。私は島に連れられて外へと出た。
やっと思いっきり息が吸える。
大きく息を吸うと、何を思ったのか頭を軽く叩かれてしまった。島なりの労いと思ってもいいのだろうか。よくわからないけど、悪くはない。
廊下を歩き、庭へと出た。庭に設置されている長椅子に腰をかけると、どこで見ていたのか女中がすぐに緑茶を用意してくれた。
島が丁寧にお礼を言ったからか、女中は照れながら「とんでもございません」と表情筋が緩みきった笑み。
私がお礼を言っても、そこまで喜んでなかったよね!? これがイケメンの特権?
「話が終われば戦に出ることになるだろう。とはいえ、療治所での待機とはなるがな」
「今度は徳海の人達を治療するのかぁ……」
「辛ければ言え。元よりお前に期待していない」
「ひどい! ちゃんと治療できます! 私の力で島さんをぎゃふんと言わせてやりますからね!」
「ふっ、言うじゃねぇか。お前の活躍、しっかり見といてやるよ」
小馬鹿にしていそうな表情で私を見た島。
まーた嵌められた気がするな……
「木タ殿、できる男だけど話すと疲れてしまうなぁ」
話が終わったのだろう豆臣が頭を掻きながらやってきた。
疲れたと言っているが、そのような雰囲気はなくむしろ楽しそうだ。
「休憩終わったら戦について行くよ。華鈴、見せつけてやってね」
僕のためにも。と豆臣は私にウインクしてきた。
イケメンのウインクは嬉しいものだけど、今はあまり嬉しくないと初めて思ったりしたのだった。
どの程度寝ていたのかわからないが、起きるにはちょうどよかったのかもしれない。
「到着する前に、徳海って人がどんな人か聞いてもいいですか?」
「ああ、そうだね」
豆臣は頷いて、軽く肩をすくめた。
「名前は徳海 宅康。辛抱強く守りに徹している将だよ」
「聞いたことあるような、ないような……」
すかさず島が補足を入れる。
「地味だが、徐々に領地を広げてる。寝返る将も後を絶たない」
「そうそう。だから人だけはやたら多いんだよね」
"やたら多い"という部分に棘があったような気がしたが、気のせいだろうか。もしかして豆臣からも寝返った人がいるのだろうか。
そんなことを考えていると、島が咳払いをした。
……聞かない方がよさそうだ。
徳海は小さな土地にかなりの人数を派遣しあっさりと手中に治めたり、土地の長が「徳海ならいいか」と寝返ったりすることもあるレベルらしい。織田とは違う意味で強そうだ。
「正直、徳海よりもその臣下が優秀なんだよね。各国が臣下の引き抜きに必死になるほどに、ね。僕も木タ 只勝は欲しい」
徳海はお人好しで民を中心に老若男女誰にでも好かれる。そして臣下で一番注目を集めているのが木タという男。
とりあえずそれだけ覚えていればよさそうだ――
徳海のことをしていると、いつの間にか徳海の城が見えてきた。
徳海の城は大きいが、威圧的な雰囲気はない。やっぱり織田が怖かっただけなんだ……
城に到着して、すぐに徳海のいる部屋へと通された。徳海と思われる男は健康的な褐色肌をしている。また、好青年らしい話しかけやすそうな雰囲気。
私達が部屋に入るなり、徳海は屈託なく歯を見せて笑った。
あまりにも無邪気で、思わずたじろいだ。そのせいで、周囲の家臣の鋭い視線が際立つ。
「よく来てくれた! 白の聖女、華鈴……そして豆臣殿と島殿」
「ついでみたいなの、傷つくなぁ」
「すまんすまん。聖女に気を取られすぎた!」
豆臣が大袈裟に悲しそうな表情を見せると、徳海は気にしていない様子でカラカラと笑う。
「それで、オレに会いに来たのは聖女を見せるためだろう?」
「そうだよ。貴方が白ではない聖女に丸め込まれないか心配で来たんだ」
「まるで偽物は、白ではない聖女と言いたげな発言だな」
どちらが本物かなんて誰も知らないこと。だからだろう、不思議そうな表情を見せる徳海。
豆臣は笑顔で言葉を返す。
「そう思うからこそ連れてきたんだ。まあ、まだ自信を持って本物とは言えない。でも、白ではない聖女を受け入れるのは待って欲しい」
豆臣がそう言うと、徳海の臣下が一人、手を上げた。徳海が頷くと会釈してから口をひらく。
「割り込み失礼。なぜ敵国が案じてくださるので?」
「さすが木タ殿。不信感でいっぱいのようだ」
豆臣は薄く笑い、木タを見た。木タはその薄気味悪い笑みに眉をしかめている。
「徳海殿にも恩を売っておきたいからね。確か近々占拠する予定の土地があるんだろう?」
懐から取り出した手紙を眺めながら、豆臣は徳海を見た。徳海は目を瞬かせ、頭をかく。
「ありゃ、なんでそんなこと知ってるんだ? オレ、漏らしたか?」
「徳海殿、人を受け入れるにしても、誰に何を話すかは慎重になった方がいい。筒抜けなんだよ」
手紙を徳海へと渡すと、徳海は文字を必死に読み上げているようで忙しなく目が動いている。
読み終わったようで手紙を畳み、息を吐いた。
「白ではない聖女のとこの臣下かぁ……。これはどこで手に入れた?」
「僕の優秀な忍に頼んでね」
何が書かれていたのか、二人以外が知る由もなく。だが、私でもダメな情報が漏れているのだと察した。というか今更だけど、この部屋の空気重すぎる。逃げ出したい。
「島、すまないが華鈴と一緒に散歩でもしていてくれるかい?」
「はっ、仰せの通りに」
聞かせたくない話だったのだろう。私は島に連れられて外へと出た。
やっと思いっきり息が吸える。
大きく息を吸うと、何を思ったのか頭を軽く叩かれてしまった。島なりの労いと思ってもいいのだろうか。よくわからないけど、悪くはない。
廊下を歩き、庭へと出た。庭に設置されている長椅子に腰をかけると、どこで見ていたのか女中がすぐに緑茶を用意してくれた。
島が丁寧にお礼を言ったからか、女中は照れながら「とんでもございません」と表情筋が緩みきった笑み。
私がお礼を言っても、そこまで喜んでなかったよね!? これがイケメンの特権?
「話が終われば戦に出ることになるだろう。とはいえ、療治所での待機とはなるがな」
「今度は徳海の人達を治療するのかぁ……」
「辛ければ言え。元よりお前に期待していない」
「ひどい! ちゃんと治療できます! 私の力で島さんをぎゃふんと言わせてやりますからね!」
「ふっ、言うじゃねぇか。お前の活躍、しっかり見といてやるよ」
小馬鹿にしていそうな表情で私を見た島。
まーた嵌められた気がするな……
「木タ殿、できる男だけど話すと疲れてしまうなぁ」
話が終わったのだろう豆臣が頭を掻きながらやってきた。
疲れたと言っているが、そのような雰囲気はなくむしろ楽しそうだ。
「休憩終わったら戦について行くよ。華鈴、見せつけてやってね」
僕のためにも。と豆臣は私にウインクしてきた。
イケメンのウインクは嬉しいものだけど、今はあまり嬉しくないと初めて思ったりしたのだった。


