しばらくまどろんでいると、景文が目を覚ました。

「疲れていたのね。」

私がそう囁くと、景文はふっと微笑んだ。

「君を抱いて疲れるのなら、毎晩お願いしたい。」

その冗談めいた言葉に、私も小さく笑った。

「ねえ……なぜ私を選んだの?」

問いかけた声が、静かに部屋の空気を揺らす。

ずっと、胸の奥で気になっていたこと。

彼の優しさの裏に、憐れみがあったのではないかと、そんな不安を拭いきれずにいた。

「私に……同情して?」

「同情?」

私は景文の胸に顔を埋めた。

「実家に戻されるなんて、可哀想だって思ったから、私を拾ってくれたんじゃ……」

すると景文が、軽く笑った。

「ああ、あれか。」

くしゃりと私の髪を撫でる手が、どこまでも優しい。

「あれは、嘘だ。」

「嘘⁉」

私は驚いて身を起こした。

温もりを残した寝台の上で、視線が景文にすがる。