まるで、何かを埋めるように、失うまいとするように――。

「ダメ……これ以上は……」

そう言いかけた私に、景文の切ない声が降りる。

「……受け取ってくれ。」

耳元で、吐息混じりに囁かれた声に、心が揺れる。

「受け取って欲しい。……俺のすべてを。」

口づけが、さっきまでの熱から、どこか甘く、名残惜しげに変わる。

その唇が伝えるものは、ただの欲望ではなく、確かな想い。

「翠蘭……君は俺の……」

「景文っ!」

「……愛、そのものだ。」

その一突きが、深く私の奥に届いた時、私は愛の証を知った。

愛が交わるとは、こういうことなのだと。

「翠蘭……側に、」

言葉の終わりは、寂しげだった。

「……俺の側にいてくれ。」

彼の声が、胸の奥に溶けていく。

私はその額に、そっと手を添えた。

「……ええ。どこにも行きません。ずっと、あなたの側に。」