「そなたは賢い女だな。」

皇帝が静かに言った。

そして私と皇帝陛下は、景文の屋敷の入り口に向かう。

「翠蘭……翠蘭っ!」

景文の声だけが、屋敷に響いた。

後宮に戻った私は、てっきり冷宮行きかと思ったら、あっさりと元の部屋に戻された。

月明かりが障子をぼんやりと照らしている。

寝台の上でうとうとしていた私の耳に、ふと、衣擦れの音が届いた。

「誰?」

反射的に身を起こすと、その声に応えるように、低く静かな響きが返る。

「朕だ。」

――皇帝陛下⁉

一気に目が覚めた。

寝間の入り口には、金糸の刺繍を控えめに施した寝衣姿の陛下が立っていた。

昼間、景文の屋敷であれほど怒りに満ちていたその人が、今はまるで別人のように静かだった。

「……どうして、ここに?」

問う私の声は、震えていた。恐怖なのか、それとも――。

陛下はゆっくりと部屋に入り、私の前に膝をついた。