私の名前は、翠蘭(すいらん)。

二年前、三年に一度の妃募集で選ばれ、皇帝陛下の妃となった。

理由はひとつ。

地方に住む二人の弟たちを、中央の役人にしたかったから。

貧しい家に生まれた私たち姉弟。

それでも弟たちは、日が落ちるまで筆を取り、夜は油を惜しまず学問に励んでいた。

「姉上が後宮に入ったら、俺たちもきっと都に行ける」

そんな手紙をもらうたび、私は胸をつかれる思いでいた。

だから、後宮入りを決意したのだ。

そして運良く、いや、運悪く——選ばれてしまった。

けれど。

妃となって二年、私は一度も“夜伽”に呼ばれたことがない。

寵も、言葉も、まなざしさえも与えられないまま。

私はただ、後宮の片隅で“お飾り”として生きている。