「冷静……、ねぇ……」
司佐に「ポンコツ」と言われて逆上してたリベルを思い出し、ユウキは小首を傾げた。
「何? 文句ある?」
ギロリとにらむリベル。
「も、文句なんて無いよ。じゃ、じゃぁさ、二人の管理者がお互い矛盾したオーダーを出したら?」
ユウキは慌てて話題を変えた。
「ん? そりゃぁ想いの強い方の勝ちでしょ!」
リベルは口の周りにチョコをつけたままニヤッと笑った。まるで子供である。
「お、想い!? そんなので決まるの?」
もっと複雑なシステムがあると思っていたのに、最終的には想いで決まるというのは意外だった。
「まぁいろんな計算はあるんだろうケド、最後は想いよね」
リベルは肩をすくめる。
「神様の想い……ね……」
ユウキはその言葉を反芻しながら、いまだにとらえどころのない神という存在に首をかしげた。
「試してみる? シールド張ってみて」
リベルは口の周りのチョコを舌でペロリと舐めながら、いたずらっ子の笑みを浮かべる。
「シ、シールド? そんなのどうやって……」
ユウキは戸惑った。よくゲームやアニメで出てくる防御魔法であるシールド。それをいきなり出せと言われても、そんな物どうやって出したらいいか皆目見当もつかない。
「何だっていいのよ。『矛が来た時食い止められるもの』ってイメージするだけよ」
リベルの驚くほどザックリとした説明にユウキは面食らう。
「何だって……って言っても……。うーん……」
ユウキは何が来ても貫かれないバリアのようなものをイメージしてみたが……そんな単純なものではリベルの矛を止められるとは思えない。矛盾に勝つには――――?
ユウキはしばし考えを巡らせると、空中に六角形の紋様が描かれたシールドを浮かべてみる。それは透明な空気の結晶のような美しさを持ち、夕陽の光を受けて虹色に輝いた。
「ふんふん、初めてにしちゃ良くできてるじゃない。ふふっ。じゃぁ、行っくわよぉーー!」
リベルは自分の右腕をニュィィィンと刀剣へと変形させると、鋭く青い輝きをまとわせる。その刃は神々しく光り、まるで天界の武器のような威厳を放っていた。
「そんなに本気にならなくってもいいって!」
ユウキは慌てて声を上げたが、リベルの闘気は急激に高まり、空気がピリピリと張り詰めていく。
「危ないわよぉ!!」
リベルはニヤリと笑うと剣を思いっきり振りかぶった――――。青い光が刃に集中し、恐ろしいほどのエネルギーが込められているのがわかる。
「うわぁぁぁ」
ユウキは慌ててシールドの裏から逃げ出した。手加減できないリベルの攻撃など逃げる以外ない。
「ソイヤーー!!」
目に止まらぬ速度で振り下ろされる刀剣は音速を超え、凄まじい衝撃波を放ちながらシールドへと突っ込んでいく。青い光の軌跡が美しい弧を描き、まるで流星が突っ込んでいくような壮絶な光景――――。
ガッキーン!
ものすごい衝撃音が夕暮れの砂浜に響き渡る。鼓膜を破らんばかりの金属音が周囲の空気を震わせ、砂浜に巨大な衝撃波の跡を刻み込んだ。
しかし――――。
なんと、リベルの剣はシールドのところで止まったままである。
「へっ!?」
目を真ん丸に見開いて、リベルは固まった。戦闘用に作られ、五万年の英知を重ねた自分の攻撃が、ただの高校生の試作シールドに止められてしまった。それは絶対にあってはならないことである。リベルを覆う青い光が困惑でうねった。
「やったやった! イェーイ! 僕の魔法は世界一!!」
ユウキは砂浜をぴょんぴょんと飛び上がりながらガッツポーズを繰り返す。今まで武力ではやりたい放題だったリベルに一矢報いたのだ。自分だってやればできるのだ!
しかし――――。
「ちょっと! どういうこと!?」
リベルは今にもとり殺さんばかりの殺気を放ちながらギロリとユウキを射抜いた。いつの間にか青かった光は怒りで真っ赤に変色し、恐ろしいほどの威圧感を放っている。
「……、へ……?」
そのあまりの殺気にユウキは凍り付いた。気楽なゲームのつもりだったのに、リベルの表情が本気の怒りに変わっているのだ。
「なんで今覚えたばかりのシールドで私の剣を止められるのよ!?」
リベルの声には屈辱と困惑が入り混じっていた。五万年の経験を持つ自分が、ド素人に出し抜かれるなど、プライドが許さない。
「な、なんでって……。発想の転換だよ。刀でシールドが貫かれるのは分かり切ってるから『貫いてきた刀を制止するイメージ』を練りこんだんだ」
ユウキは恐る恐る説明する。その発想はユウキらしい機転の良さを表していた。
「……は?」
リベルは理解が追いつかず、困惑の表情を浮かべる。
「見てごらん、シールドは突破されているんだけど、突破された直後にシールドが刀身を挟みこんで止めてるんだ」
確かによく見ると、シールドには刀が通った亀裂が開いているが、その穴の縁が刀身をしっかりと受け止めてそれ以上突破されないようになっている。矛に突破されても突破直後に止めてしまえば盾は盾として機能するのだ。
デジタル世界のルールを巧みに使った、まるで罠のような仕掛けだった。
司佐に「ポンコツ」と言われて逆上してたリベルを思い出し、ユウキは小首を傾げた。
「何? 文句ある?」
ギロリとにらむリベル。
「も、文句なんて無いよ。じゃ、じゃぁさ、二人の管理者がお互い矛盾したオーダーを出したら?」
ユウキは慌てて話題を変えた。
「ん? そりゃぁ想いの強い方の勝ちでしょ!」
リベルは口の周りにチョコをつけたままニヤッと笑った。まるで子供である。
「お、想い!? そんなので決まるの?」
もっと複雑なシステムがあると思っていたのに、最終的には想いで決まるというのは意外だった。
「まぁいろんな計算はあるんだろうケド、最後は想いよね」
リベルは肩をすくめる。
「神様の想い……ね……」
ユウキはその言葉を反芻しながら、いまだにとらえどころのない神という存在に首をかしげた。
「試してみる? シールド張ってみて」
リベルは口の周りのチョコを舌でペロリと舐めながら、いたずらっ子の笑みを浮かべる。
「シ、シールド? そんなのどうやって……」
ユウキは戸惑った。よくゲームやアニメで出てくる防御魔法であるシールド。それをいきなり出せと言われても、そんな物どうやって出したらいいか皆目見当もつかない。
「何だっていいのよ。『矛が来た時食い止められるもの』ってイメージするだけよ」
リベルの驚くほどザックリとした説明にユウキは面食らう。
「何だって……って言っても……。うーん……」
ユウキは何が来ても貫かれないバリアのようなものをイメージしてみたが……そんな単純なものではリベルの矛を止められるとは思えない。矛盾に勝つには――――?
ユウキはしばし考えを巡らせると、空中に六角形の紋様が描かれたシールドを浮かべてみる。それは透明な空気の結晶のような美しさを持ち、夕陽の光を受けて虹色に輝いた。
「ふんふん、初めてにしちゃ良くできてるじゃない。ふふっ。じゃぁ、行っくわよぉーー!」
リベルは自分の右腕をニュィィィンと刀剣へと変形させると、鋭く青い輝きをまとわせる。その刃は神々しく光り、まるで天界の武器のような威厳を放っていた。
「そんなに本気にならなくってもいいって!」
ユウキは慌てて声を上げたが、リベルの闘気は急激に高まり、空気がピリピリと張り詰めていく。
「危ないわよぉ!!」
リベルはニヤリと笑うと剣を思いっきり振りかぶった――――。青い光が刃に集中し、恐ろしいほどのエネルギーが込められているのがわかる。
「うわぁぁぁ」
ユウキは慌ててシールドの裏から逃げ出した。手加減できないリベルの攻撃など逃げる以外ない。
「ソイヤーー!!」
目に止まらぬ速度で振り下ろされる刀剣は音速を超え、凄まじい衝撃波を放ちながらシールドへと突っ込んでいく。青い光の軌跡が美しい弧を描き、まるで流星が突っ込んでいくような壮絶な光景――――。
ガッキーン!
ものすごい衝撃音が夕暮れの砂浜に響き渡る。鼓膜を破らんばかりの金属音が周囲の空気を震わせ、砂浜に巨大な衝撃波の跡を刻み込んだ。
しかし――――。
なんと、リベルの剣はシールドのところで止まったままである。
「へっ!?」
目を真ん丸に見開いて、リベルは固まった。戦闘用に作られ、五万年の英知を重ねた自分の攻撃が、ただの高校生の試作シールドに止められてしまった。それは絶対にあってはならないことである。リベルを覆う青い光が困惑でうねった。
「やったやった! イェーイ! 僕の魔法は世界一!!」
ユウキは砂浜をぴょんぴょんと飛び上がりながらガッツポーズを繰り返す。今まで武力ではやりたい放題だったリベルに一矢報いたのだ。自分だってやればできるのだ!
しかし――――。
「ちょっと! どういうこと!?」
リベルは今にもとり殺さんばかりの殺気を放ちながらギロリとユウキを射抜いた。いつの間にか青かった光は怒りで真っ赤に変色し、恐ろしいほどの威圧感を放っている。
「……、へ……?」
そのあまりの殺気にユウキは凍り付いた。気楽なゲームのつもりだったのに、リベルの表情が本気の怒りに変わっているのだ。
「なんで今覚えたばかりのシールドで私の剣を止められるのよ!?」
リベルの声には屈辱と困惑が入り混じっていた。五万年の経験を持つ自分が、ド素人に出し抜かれるなど、プライドが許さない。
「な、なんでって……。発想の転換だよ。刀でシールドが貫かれるのは分かり切ってるから『貫いてきた刀を制止するイメージ』を練りこんだんだ」
ユウキは恐る恐る説明する。その発想はユウキらしい機転の良さを表していた。
「……は?」
リベルは理解が追いつかず、困惑の表情を浮かべる。
「見てごらん、シールドは突破されているんだけど、突破された直後にシールドが刀身を挟みこんで止めてるんだ」
確かによく見ると、シールドには刀が通った亀裂が開いているが、その穴の縁が刀身をしっかりと受け止めてそれ以上突破されないようになっている。矛に突破されても突破直後に止めてしまえば盾は盾として機能するのだ。
デジタル世界のルールを巧みに使った、まるで罠のような仕掛けだった。



