「リベル! 彼女を助けて!」
真っ直ぐに見つめるユウキの目には迷いのかけらもない。
「へ? 黒幕はどうすんのよ?」
油断している今が、黒幕を仕留める絶好のチャンス。リベルが救出に力を使えば逃げられる可能性だってあった。それは分かっている。しかし――――。
「僕が先行して突っ込むから、彼女を助けたら追いかけてきて」
自分が先行することで少しでも逃げられるリスクを減らそうと考えたのだ。
「本気……? 死ぬわよ?」
リベルは呆れた顔でユウキをにらむ。
「大丈夫、こう見えて僕はラッキーな奴だからさ」
ユウキは優しく微笑んだ。表情には吹っ切れた不思議な凛々しさが宿る。
「これだから人間は! もう……」
リベルは口を尖らせる。
ガァァァ! きゃぁぁぁぁ!
トラの咆哮と逃げ惑う綾香の悲鳴が重なり合う。もう一刻の猶予もない。
「マズいっ! いいよね?」
ユウキはリベルの瞳をのぞきこむ。
はぁぁぁ……。
リベルは大きく息を吐くと、ジト目で小さくうなずいた。
「ありがとう!!」
ユウキは小さなリベルの頬に優しく頬ずりをすると、全身の力を込めてステージの方へ放り投げた――――。
クルクルッと回ったリベルは、直後青白く輝き、一直線にトラへと飛翔する。光は会場の華やかな照明の中でひときわ神々しく、まるで流星のようだった。
となると、次は自分の番……。
「行かなくっちゃ……。くぅぅぅ……」
もうサイは投げられた。後戻りはできない。ユウキはパァン!と自分の頬を力強く叩き、気合いを入れる――――。
ヨシッ!
瞳には決意の光が宿っていた。タッタッタと軽やかな足取りで、煌びやかなパーティー会場を駆け登っていく。
トラは獲物を弄ぶように、ゆっくりと綾香を隅へと追い詰めていた。残虐な光景に、会場は興奮の渦に包まれている。陶酔した観客たちは、駆け抜ける少年の姿も、宙を翔ける青白い光も、誰一人として気にかけなかった。
綾香を追い詰めたトラは、獲物を前に舌なめずりをする。目は獲物への渇望に満ちていた――――。
「ひぃぃぃぃ……」
必死に逃げ回り続け、ついに足が止まった綾香はガクガクと震えながら力なく崩れ落ちる。瞳には、もはや生きる希望すら映っていなかった。
誰もが、運命の瞬間が訪れたと思った時――――。
パァン!
青白い稲妻がトラの頭部を貫き、会場に眩い閃光が走る。
グォッ……。
トラの巨体が、まるでスローモーションのように倒れていく――――。
圧倒的な暴力の権化だったトラはズン!と大きな音を立て、ステージに巨体を転がした。
はぁ!? な、なんだよ! おいおいおいおい!
会場が騒然となる。
嗜虐的なショーの佳境が台無しにされたことに、観客は納得が行かなかった。
「あっ! なんか飛んでるぞ!」
「ドローンだ! 撃ち落とせ!!」
すぐにユウキを追おうとしたリベルだったが、あっという間に発見されてしまう。会場の至る所に設置された対ドローン用の砲門が、一斉に彼女へと向けられた。
パン! パン!
会場のあちこちに配置された迎撃システムから、幾重もの電磁ネット弾が撃ち出される。
「おわぁ! 危ない! 危ないっての!!」
リベルは命からがらギリギリの回避を続ける。高電圧をまとったワイヤーネットが広がりながら襲い掛かってくる電磁ネット弾は、ナノマシンのリベルにとっても極めて厄介だった。
「だから嫌だったのよぉぉぉ! おぉっとぉ!!」
リベルは泣きそうな顔をしながら必死にかわし続けた。
混乱の渦の中、ユウキは息を切らしながら階段を駆け上がっていく。目指す先は、この会場の最上階――――。
「トマリナサイ!」
武骨なガーディアンロボット二機が、青白く輝く電磁警棒を携え、ユウキの前に立ちはだかった。
「くぅっ!」
奇襲であれば、リベルが一瞬で片付けた警備ロボット。だが今は、全て自分の手で切り開くしかない。
ふぅぅぅぅ。
息を整えると、ユウキは掌の中のスティックをギュッと握りしめた。心臓の鼓動が早鐘を打つ。
ぐぐっと確かな手応えが伝わり、スティックは青白い輝跡を残しながら一振りの刀へと姿を変えていく――――。その輝きは、暗がりに浮かぶ氷月のように神秘的だった。
しかし、武骨で大型のロボットは対峙すると予想以上の圧を感じる。デカいにもかかわらず動きは予想以上に俊敏で、そう簡単に刀が通用しそうにはなかった。
ブゥンブゥン!と、ロボットが振り回す電磁警棒が不気味な音を立てる。ユウキはたまらず距離を取った。
真っ直ぐに見つめるユウキの目には迷いのかけらもない。
「へ? 黒幕はどうすんのよ?」
油断している今が、黒幕を仕留める絶好のチャンス。リベルが救出に力を使えば逃げられる可能性だってあった。それは分かっている。しかし――――。
「僕が先行して突っ込むから、彼女を助けたら追いかけてきて」
自分が先行することで少しでも逃げられるリスクを減らそうと考えたのだ。
「本気……? 死ぬわよ?」
リベルは呆れた顔でユウキをにらむ。
「大丈夫、こう見えて僕はラッキーな奴だからさ」
ユウキは優しく微笑んだ。表情には吹っ切れた不思議な凛々しさが宿る。
「これだから人間は! もう……」
リベルは口を尖らせる。
ガァァァ! きゃぁぁぁぁ!
トラの咆哮と逃げ惑う綾香の悲鳴が重なり合う。もう一刻の猶予もない。
「マズいっ! いいよね?」
ユウキはリベルの瞳をのぞきこむ。
はぁぁぁ……。
リベルは大きく息を吐くと、ジト目で小さくうなずいた。
「ありがとう!!」
ユウキは小さなリベルの頬に優しく頬ずりをすると、全身の力を込めてステージの方へ放り投げた――――。
クルクルッと回ったリベルは、直後青白く輝き、一直線にトラへと飛翔する。光は会場の華やかな照明の中でひときわ神々しく、まるで流星のようだった。
となると、次は自分の番……。
「行かなくっちゃ……。くぅぅぅ……」
もうサイは投げられた。後戻りはできない。ユウキはパァン!と自分の頬を力強く叩き、気合いを入れる――――。
ヨシッ!
瞳には決意の光が宿っていた。タッタッタと軽やかな足取りで、煌びやかなパーティー会場を駆け登っていく。
トラは獲物を弄ぶように、ゆっくりと綾香を隅へと追い詰めていた。残虐な光景に、会場は興奮の渦に包まれている。陶酔した観客たちは、駆け抜ける少年の姿も、宙を翔ける青白い光も、誰一人として気にかけなかった。
綾香を追い詰めたトラは、獲物を前に舌なめずりをする。目は獲物への渇望に満ちていた――――。
「ひぃぃぃぃ……」
必死に逃げ回り続け、ついに足が止まった綾香はガクガクと震えながら力なく崩れ落ちる。瞳には、もはや生きる希望すら映っていなかった。
誰もが、運命の瞬間が訪れたと思った時――――。
パァン!
青白い稲妻がトラの頭部を貫き、会場に眩い閃光が走る。
グォッ……。
トラの巨体が、まるでスローモーションのように倒れていく――――。
圧倒的な暴力の権化だったトラはズン!と大きな音を立て、ステージに巨体を転がした。
はぁ!? な、なんだよ! おいおいおいおい!
会場が騒然となる。
嗜虐的なショーの佳境が台無しにされたことに、観客は納得が行かなかった。
「あっ! なんか飛んでるぞ!」
「ドローンだ! 撃ち落とせ!!」
すぐにユウキを追おうとしたリベルだったが、あっという間に発見されてしまう。会場の至る所に設置された対ドローン用の砲門が、一斉に彼女へと向けられた。
パン! パン!
会場のあちこちに配置された迎撃システムから、幾重もの電磁ネット弾が撃ち出される。
「おわぁ! 危ない! 危ないっての!!」
リベルは命からがらギリギリの回避を続ける。高電圧をまとったワイヤーネットが広がりながら襲い掛かってくる電磁ネット弾は、ナノマシンのリベルにとっても極めて厄介だった。
「だから嫌だったのよぉぉぉ! おぉっとぉ!!」
リベルは泣きそうな顔をしながら必死にかわし続けた。
混乱の渦の中、ユウキは息を切らしながら階段を駆け上がっていく。目指す先は、この会場の最上階――――。
「トマリナサイ!」
武骨なガーディアンロボット二機が、青白く輝く電磁警棒を携え、ユウキの前に立ちはだかった。
「くぅっ!」
奇襲であれば、リベルが一瞬で片付けた警備ロボット。だが今は、全て自分の手で切り開くしかない。
ふぅぅぅぅ。
息を整えると、ユウキは掌の中のスティックをギュッと握りしめた。心臓の鼓動が早鐘を打つ。
ぐぐっと確かな手応えが伝わり、スティックは青白い輝跡を残しながら一振りの刀へと姿を変えていく――――。その輝きは、暗がりに浮かぶ氷月のように神秘的だった。
しかし、武骨で大型のロボットは対峙すると予想以上の圧を感じる。デカいにもかかわらず動きは予想以上に俊敏で、そう簡単に刀が通用しそうにはなかった。
ブゥンブゥン!と、ロボットが振り回す電磁警棒が不気味な音を立てる。ユウキはたまらず距離を取った。



