「おぉ、おぉぉぉぉ!」

 息を呑む。神々(こうごう)しい輝きは、まさに希望そのもの。部屋が神秘的な光に包まれ、心臓が高鳴る。

 ヴヴヴッ!

 高周波音が響く。新たな生命の誕生を告げる鼓動のように。

 瑞々(みずみず)しい光の塊が、バチッ! バチッ! とスパークしながら宙に浮かび上がる。やがて黄金色から青白い光へと変容し、完璧な卵形を成していく。

 固唾を呑んで見守る。待ち焦がれた奇跡が、今まさに起ころうとしている――――。

 卵にヒビが走っていった。生命の誕生のように、徐々に微細な造形が施され、有機的な形へと変わっていく。

 おぉぉぉ……。

 やがて、膝を抱えた少女の姿が浮かび上がってきた。天使の降臨のような神々しさにユウキは圧倒される。

「リ、リベル……」

 自然と涙が湧いてきた。再生の神秘に心が震える。

 少女がゆっくりと手足を伸ばす。宙に十字を描き、胸を張る。芸術作品のような美しさ。

 露わになる気高い肢体――――。

 目を逸らすべきだと分かっていても、視線が離せない。ギリシャ彫刻のような完璧な曲線。ふくよかなふくらみからの流れるようなフォルム。

 やがて銀色のボディスーツが形成されてきた。胸元から背中へ、青い回路(サーキット)模様が刻まれていく。それは機械の血管のような幾何学的に整然と描かれた。

 次の瞬間、うつむいた彼女が、力強く顔を上げる――――。

 青い髪が舞い、碧眼(へきがん)が開かれる。確かな生命の輝きが、そこにあった。

「リ、リベルぅ……」

 震え声で呼びかける。期待と不安で喉が渇く。

 リベルがゆっくりと見下ろす。碧眼は氷のように冷たく、見知らぬ者を見るようだった。

「ぼ、僕だよ、分かる?」

 小首を傾げるリベル。幼子のような愛らしさ。

「キミは……ユウキ……」

 呟きと共に、碧眼がキラリと輝いた。懐かしい温もりが戻ってくる。

 太陽のような笑顔を浮かべると、一気にユウキの胸に飛び込んできた。

「アリガトー! 助かったわ!」

 柔らかな感触。春の花のような甘い香り。思いがけない展開に、目を白黒させる。

「おほぉ……。や、役に立てたなら……良かった……」

 心臓が早鐘を打った。

「なに? こういう時はキスをしたら……いいの?」

 リベルは首を傾げ、水晶のような瞳で見上げる。無邪気で魅惑的な仕草。

「ど、ど、どうなんだろう……?」

 ユウキは焦って言葉を濁す。こういう時にサラッと上手いことを言えない自分の愚昧さに辟易としてしまう。

「ふぅん、キスしたくないんだ……」

 リベルは(つや)のある唇を(とが)らせ、つまらなそうな表情を浮かべると、ふわりと宙に浮かび上がっていく。

「あっ……」

 ユウキは自分の痛恨のミスに気づき、思わず宙を仰いだ。