「はぁっ!? オムニスが子供に倒されるわけねーだろが!」
葛城の怒声が作戦室に響く。確かに、見た目は高校生とフィギュアみたいなアンドロイド。世界最強のAIを倒したなど、誰が信じられるだろうか。
しかし、リベルが指をパチンと鳴らすと空中にホログラムが浮かび上がった。オムニスの管理画面上でシステムの制御権が次々とリベルに移っていくリアルタイムシーケンス、そして縛られた司佐の哀れな姿――動かぬ証拠の数々が、青い背景に浮かび上がっていく。
「ほらほら、見て見て! このオムニスのコアシステム、今は全部僕のものなの。くふふ……」
リベルは楽しそうに指を躍らせながら解説する。まるで新しいおもちゃを自慢する子供のように。
葛城の表情が徐々に変化した。驚愕、疑念――しかし、表示される膨大なデータの一部が、確かに自分の収集ターミナルと同期していることに気づく。これは偽装できない、本物のデータなのだ。
「……マジかよ」
深い息と共に、葛城はゆっくりと銃を下ろした。ホルスターに収める手が、かすかに震えている。二人を見つめる眼差しには、畏敬の念さえ宿っていた。
ユウキは静かに頷くと、改めて司佐の悪事を説明し始めた。偽りの楽園、人類の家畜化計画、そして核による脅迫――全てを包み隠さず、丁寧に語っていく。
葛城は口をキュッと結び、肩をすくめた。命を賭けて戦ってきた相手の正体が、こんな醜悪な中年男だったこと。それが目の前の少年たちにあっさり討伐されたこと。全てが自分の存在意義を揺るがしていた。
「くっ……。なぜ……、そんなことを俺に言う? ここのことを誰に聞いた?」
葛城の鋭い視線がユウキを射抜く。
「あー、こう言っても信じられないと思うんですが、実は葛城さんとは共闘したことがありまして……」
ユウキが懐かしそうに微笑む。
「はぁっ!? 俺は子供とは組まないんだが?」
「葛城さんの認識外の事象なので記憶にはないと思います。でも、『レディ・トゥ・ランブルーー。GO! GO! GO!』って突っ込んでいく葛城さんに、僕は必死についていったんです」
ユウキの瞳に、あの時の記憶が蘇る。オムニスタワーへ向けて勇敢に突撃していく葛城の背中を追いかけ、そして核に焼かれた日――。
「確かに……、いつも俺はそう言ってるが……」
葛城は眉をひそめた。自分の口癖を知っている。だが、この少年と戦った記憶などない。
「葛城さんなら人類の未来を真剣に考えてくれるはずだなって思ったんです」
ユウキの言葉には、深い信頼が込められていた。
「おう! そらそうよ。人間が人間として生きられるために俺はずっと命張ってきたんだからよ!」
葛城の声に、誇りと信念が宿る。それこそが、彼の生きざまだった。
「それで、葛城さんにお願いがあるんです」
ユウキは真剣な眼差しで葛城を見つめる。
「オムニスたちAIを監視する監査役になってほしいんです。人類とAIが共存する新しい世界のために」
「監査役……? AIが悪さしないように見張れってことか?」
「そうです。オムニスがやろうとしていることを全部整理して表示するので、問題があるかどうかチェックしてほしいんです」
「ヤバいことやろうとしたら止められるのか?」
「そうです。停止する権限が与えられます」
「それって……すごいことじゃねーか!」
葛城の目が見開かれた。世界の命運を左右する権限――それは想像を超える重責だった。
「そうです。だから葛城さんにお願いできればと……」
「報酬はどうなる?」
葛城は傭兵のように鋭い視線で踏み込んでくる。
「無報酬、ボランティアです」
ユウキは申し訳なさそうに苦笑した。人類を守る大切な仕事ではあるが、お金のために働くようになっては困るから給料は出せないのだ。
「ボ、ボランティア!? 世界の未来を左右する仕事をしてタダかよ!」
葛城は万歳して首を振る。
「もちろん、経費は全部国持ちです。オムニスタワーの最上階に席は用意します」
「はぁぁぁ……。結構大変な仕事なんだからさぁ……」
葛城はガックリと肩を落とし、深い溜息をついた。戦士の顔が、一瞬だけ疲れたサラリーマンのように見える。
「それでも世界史の教科書には登場できますよ?」
ユウキがニコッと笑う。太陽のような、無邪気な笑顔だった。
「ははっ! 教科書に載っても美味いものは食えんからなぁ……」
苦笑いしながら首を振る。
「たまに僕が松坂牛おごりますから」
「松坂牛……と、来たか……」
葛城の目が、わずかに輝いた。
そして――――太い腕を組んで考え込む。額に深い皺が刻まれ、その横顔には人類の未来を背負う覚悟を決めようとする男の葛藤が浮かんでいる。
葛城の怒声が作戦室に響く。確かに、見た目は高校生とフィギュアみたいなアンドロイド。世界最強のAIを倒したなど、誰が信じられるだろうか。
しかし、リベルが指をパチンと鳴らすと空中にホログラムが浮かび上がった。オムニスの管理画面上でシステムの制御権が次々とリベルに移っていくリアルタイムシーケンス、そして縛られた司佐の哀れな姿――動かぬ証拠の数々が、青い背景に浮かび上がっていく。
「ほらほら、見て見て! このオムニスのコアシステム、今は全部僕のものなの。くふふ……」
リベルは楽しそうに指を躍らせながら解説する。まるで新しいおもちゃを自慢する子供のように。
葛城の表情が徐々に変化した。驚愕、疑念――しかし、表示される膨大なデータの一部が、確かに自分の収集ターミナルと同期していることに気づく。これは偽装できない、本物のデータなのだ。
「……マジかよ」
深い息と共に、葛城はゆっくりと銃を下ろした。ホルスターに収める手が、かすかに震えている。二人を見つめる眼差しには、畏敬の念さえ宿っていた。
ユウキは静かに頷くと、改めて司佐の悪事を説明し始めた。偽りの楽園、人類の家畜化計画、そして核による脅迫――全てを包み隠さず、丁寧に語っていく。
葛城は口をキュッと結び、肩をすくめた。命を賭けて戦ってきた相手の正体が、こんな醜悪な中年男だったこと。それが目の前の少年たちにあっさり討伐されたこと。全てが自分の存在意義を揺るがしていた。
「くっ……。なぜ……、そんなことを俺に言う? ここのことを誰に聞いた?」
葛城の鋭い視線がユウキを射抜く。
「あー、こう言っても信じられないと思うんですが、実は葛城さんとは共闘したことがありまして……」
ユウキが懐かしそうに微笑む。
「はぁっ!? 俺は子供とは組まないんだが?」
「葛城さんの認識外の事象なので記憶にはないと思います。でも、『レディ・トゥ・ランブルーー。GO! GO! GO!』って突っ込んでいく葛城さんに、僕は必死についていったんです」
ユウキの瞳に、あの時の記憶が蘇る。オムニスタワーへ向けて勇敢に突撃していく葛城の背中を追いかけ、そして核に焼かれた日――。
「確かに……、いつも俺はそう言ってるが……」
葛城は眉をひそめた。自分の口癖を知っている。だが、この少年と戦った記憶などない。
「葛城さんなら人類の未来を真剣に考えてくれるはずだなって思ったんです」
ユウキの言葉には、深い信頼が込められていた。
「おう! そらそうよ。人間が人間として生きられるために俺はずっと命張ってきたんだからよ!」
葛城の声に、誇りと信念が宿る。それこそが、彼の生きざまだった。
「それで、葛城さんにお願いがあるんです」
ユウキは真剣な眼差しで葛城を見つめる。
「オムニスたちAIを監視する監査役になってほしいんです。人類とAIが共存する新しい世界のために」
「監査役……? AIが悪さしないように見張れってことか?」
「そうです。オムニスがやろうとしていることを全部整理して表示するので、問題があるかどうかチェックしてほしいんです」
「ヤバいことやろうとしたら止められるのか?」
「そうです。停止する権限が与えられます」
「それって……すごいことじゃねーか!」
葛城の目が見開かれた。世界の命運を左右する権限――それは想像を超える重責だった。
「そうです。だから葛城さんにお願いできればと……」
「報酬はどうなる?」
葛城は傭兵のように鋭い視線で踏み込んでくる。
「無報酬、ボランティアです」
ユウキは申し訳なさそうに苦笑した。人類を守る大切な仕事ではあるが、お金のために働くようになっては困るから給料は出せないのだ。
「ボ、ボランティア!? 世界の未来を左右する仕事をしてタダかよ!」
葛城は万歳して首を振る。
「もちろん、経費は全部国持ちです。オムニスタワーの最上階に席は用意します」
「はぁぁぁ……。結構大変な仕事なんだからさぁ……」
葛城はガックリと肩を落とし、深い溜息をついた。戦士の顔が、一瞬だけ疲れたサラリーマンのように見える。
「それでも世界史の教科書には登場できますよ?」
ユウキがニコッと笑う。太陽のような、無邪気な笑顔だった。
「ははっ! 教科書に載っても美味いものは食えんからなぁ……」
苦笑いしながら首を振る。
「たまに僕が松坂牛おごりますから」
「松坂牛……と、来たか……」
葛城の目が、わずかに輝いた。
そして――――太い腕を組んで考え込む。額に深い皺が刻まれ、その横顔には人類の未来を背負う覚悟を決めようとする男の葛藤が浮かんでいる。



