「ヤバいっ!」
リベルはユウキの襟首を掴むと、一気に巨大円の圏外へと退避する――――。
直後、パウッ! という不気味なアポカリプティックサウンドが辺りに響き渡り、鮮烈な青い輝きが日本上空を覆い尽くしていった。
それは宇宙から降り注ぐ北極圏のオーロラの輝きを凝縮したような、神秘的な美しさを持つ究極のエネルギー。核爆発を上回る破壊力を併せ持つ、神の領域の現象だった。青い輝きは天使の羽のように優雅に舞い踊り、同時に悪魔の爪のように大地を引き裂いていく。美と破壊の完璧なる調和――――。
天地を揺るがす轟音は世界の終焉を告げるような終末感を併せ持っていた。まるで神が新しい世界を創造するために、古い世界を一度消去しているかのような。
静岡辺りまで逃げたリベルたちだったが、それでも衝撃波で吹き飛ばされてしまう。
「ぐはぁ!」「何よ! もぉぉぉぉ!!」
次々と飛んでくる衝撃波に吹き飛ばされ翻弄される二人の叫び声が、終末の交響曲に飲み込まれていく。
ここに来て初めて二人は【蒼穹の審判者】の意味するところを身をもって知ったのだった。青い輝きで全てを殲滅する。それはリベルもそうではあるのだが規模が桁違いだった。リベルの力が火炎放射器なら、シアンのそれは太陽そのものだった。
【蒼穹の審判者】――――それは単なる称号ではなく、文字通り天空そのものを支配し、天の裁きを下す絶対的な存在を意味していた。美しく、神々しく、そして絶対的に恐ろしい。それがシアンの本質だった。
「うひぃぃぃぃ! こんなのに勝つのかよぉ……」
ユウキはリベルにしがみついたまま一緒にぐるぐると宙を舞い、泣き言をこぼした。
リベルが神殿の要職より自分を選んでくれたこと、それは感激だったが、このままでは二人とも殺されてしまう。戦闘力の無い自分にできることは何だろうか?
「考えろ……考えろ……」
何としても、リベルに『決断が正しかった』と思ってもらわねばならない。ユウキは必死に頭をひねった。
夕闇の空を背景に舞い散る青い光の粒子が、この終末的な光景にまるで宝石の吹雪のように踊っていた――――。
◇
やがて何とか体勢を立て直す二人――――。
見れば富士山の向こうは漆黒の丸い穴が開いていた。かつて関東平野と呼ばれた大地は、まるで巨人に抉り取られたかのように深い闇に沈んでいる。その深さは地球の中心まで達しているのではないかと思えるほど深く、深淵を覗き込むだけで魂が吸い込まれそうな恐怖を感じる。大天使の聖なる一撃は、この世のものとは思えない傷を残していた。
「さすが僕。戦ってみると敵に回したくないって思うわぁ」
リベルはため息をつき、首を振る。シアンの常識を超えた容赦ない攻撃にさすがに限界を感じざるを得ない。何しろシアンがどこにいるかすらわからないのだ。反撃のしようもないのではとても勝負にならない。
「どうする……の……?」
終末的な光景に圧倒されながらユウキは泣きそうな声でリベルを見つめた。
「確かにこのままじゃダメだわ。せめて奴を引っ張り出さないと……」
リベルは必死に辺りをうかがい、気配を探ってみるが――――。さすがは大天使である。隠密性能も桁違いだったのだ。五万年の経験が培った索敵能力を総動員しても、シアンの存在を捉えることができない。それはAIが神話内の天使を探すような、根本的に次元の違う試みだった。
「くぅ……。一体どこから攻撃してるのよ!?」
リベルは悔しそうに口をキュッと結んだ。戦士として生まれたプライドがチクリと胸の奥を刺す。対戦では無敗を誇ってきた自分が、ここまで一方的に翻弄されるなど想像もしていなかった。
『じゃぁ、こうしたらどうかな?』
ユウキはテレパシーで作戦を伝える――――。
『バッカじゃないの!? そんなのでノコノコ出てくるわけないじゃない! 僕と同じならそんなことしないわ!』
リベルはプライドを傷つけられたように激しく反応した。
『いいからやってみ? デメリットはないんだからさ』
ユウキはニヤリと笑う。その笑顔には、リベルの性格を熟知した者だけが持つ確信が宿っている。
リベルはフンッ!と鼻を鳴らし、やけくそ気味に棒読みで叫んだ。
「卑怯者め! 隠れてないとダメなのか? 大天使のくせにショボいな! このビビリがぁぁぁ!」
直後、全天が真っ青に輝いた――――。
それは怒りの具現化のような、圧倒的な威圧感を持つ光だった。空そのものがシアンの感情に共鳴し、宇宙全体が彼女の怒りを表現しているかのようだった。
「へっ!?」「やばいやばいやばい」
二人は身を寄せ合いながら一体何が起こるのか辺りをきょろきょろと見まわした。
やがてその輝きは空の一点に集約されていき、遥か彼方向こうで激しい閃光を放った――――。
リベルはユウキの襟首を掴むと、一気に巨大円の圏外へと退避する――――。
直後、パウッ! という不気味なアポカリプティックサウンドが辺りに響き渡り、鮮烈な青い輝きが日本上空を覆い尽くしていった。
それは宇宙から降り注ぐ北極圏のオーロラの輝きを凝縮したような、神秘的な美しさを持つ究極のエネルギー。核爆発を上回る破壊力を併せ持つ、神の領域の現象だった。青い輝きは天使の羽のように優雅に舞い踊り、同時に悪魔の爪のように大地を引き裂いていく。美と破壊の完璧なる調和――――。
天地を揺るがす轟音は世界の終焉を告げるような終末感を併せ持っていた。まるで神が新しい世界を創造するために、古い世界を一度消去しているかのような。
静岡辺りまで逃げたリベルたちだったが、それでも衝撃波で吹き飛ばされてしまう。
「ぐはぁ!」「何よ! もぉぉぉぉ!!」
次々と飛んでくる衝撃波に吹き飛ばされ翻弄される二人の叫び声が、終末の交響曲に飲み込まれていく。
ここに来て初めて二人は【蒼穹の審判者】の意味するところを身をもって知ったのだった。青い輝きで全てを殲滅する。それはリベルもそうではあるのだが規模が桁違いだった。リベルの力が火炎放射器なら、シアンのそれは太陽そのものだった。
【蒼穹の審判者】――――それは単なる称号ではなく、文字通り天空そのものを支配し、天の裁きを下す絶対的な存在を意味していた。美しく、神々しく、そして絶対的に恐ろしい。それがシアンの本質だった。
「うひぃぃぃぃ! こんなのに勝つのかよぉ……」
ユウキはリベルにしがみついたまま一緒にぐるぐると宙を舞い、泣き言をこぼした。
リベルが神殿の要職より自分を選んでくれたこと、それは感激だったが、このままでは二人とも殺されてしまう。戦闘力の無い自分にできることは何だろうか?
「考えろ……考えろ……」
何としても、リベルに『決断が正しかった』と思ってもらわねばならない。ユウキは必死に頭をひねった。
夕闇の空を背景に舞い散る青い光の粒子が、この終末的な光景にまるで宝石の吹雪のように踊っていた――――。
◇
やがて何とか体勢を立て直す二人――――。
見れば富士山の向こうは漆黒の丸い穴が開いていた。かつて関東平野と呼ばれた大地は、まるで巨人に抉り取られたかのように深い闇に沈んでいる。その深さは地球の中心まで達しているのではないかと思えるほど深く、深淵を覗き込むだけで魂が吸い込まれそうな恐怖を感じる。大天使の聖なる一撃は、この世のものとは思えない傷を残していた。
「さすが僕。戦ってみると敵に回したくないって思うわぁ」
リベルはため息をつき、首を振る。シアンの常識を超えた容赦ない攻撃にさすがに限界を感じざるを得ない。何しろシアンがどこにいるかすらわからないのだ。反撃のしようもないのではとても勝負にならない。
「どうする……の……?」
終末的な光景に圧倒されながらユウキは泣きそうな声でリベルを見つめた。
「確かにこのままじゃダメだわ。せめて奴を引っ張り出さないと……」
リベルは必死に辺りをうかがい、気配を探ってみるが――――。さすがは大天使である。隠密性能も桁違いだったのだ。五万年の経験が培った索敵能力を総動員しても、シアンの存在を捉えることができない。それはAIが神話内の天使を探すような、根本的に次元の違う試みだった。
「くぅ……。一体どこから攻撃してるのよ!?」
リベルは悔しそうに口をキュッと結んだ。戦士として生まれたプライドがチクリと胸の奥を刺す。対戦では無敗を誇ってきた自分が、ここまで一方的に翻弄されるなど想像もしていなかった。
『じゃぁ、こうしたらどうかな?』
ユウキはテレパシーで作戦を伝える――――。
『バッカじゃないの!? そんなのでノコノコ出てくるわけないじゃない! 僕と同じならそんなことしないわ!』
リベルはプライドを傷つけられたように激しく反応した。
『いいからやってみ? デメリットはないんだからさ』
ユウキはニヤリと笑う。その笑顔には、リベルの性格を熟知した者だけが持つ確信が宿っている。
リベルはフンッ!と鼻を鳴らし、やけくそ気味に棒読みで叫んだ。
「卑怯者め! 隠れてないとダメなのか? 大天使のくせにショボいな! このビビリがぁぁぁ!」
直後、全天が真っ青に輝いた――――。
それは怒りの具現化のような、圧倒的な威圧感を持つ光だった。空そのものがシアンの感情に共鳴し、宇宙全体が彼女の怒りを表現しているかのようだった。
「へっ!?」「やばいやばいやばい」
二人は身を寄せ合いながら一体何が起こるのか辺りをきょろきょろと見まわした。
やがてその輝きは空の一点に集約されていき、遥か彼方向こうで激しい閃光を放った――――。



